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愛は夜更け過ぎに××へと変わる プロローグ

それは、寒くなってきた11月末のこと。

鳴子
「それで、仕方ないからそのあとは一人で買い物してたんだけど」
「もう、街中クリスマス一色でね。居たたまれなくなって帰ってきたよ」

サトコ
「クリスマスか‥もうそんな時期なんだね」

鳴子
「彼氏がいればテンションも上がるけど、今年も今のところ一人だし‥」
「はぁ~彼氏ほしいなぁ~」
「せめてクリスマスだけでも!」

サトコ
「そうだ、サンタさんにお願いすればいいんじゃない?」

鳴子
「サンタさんにお願いした彼氏がやってくる頃には、もうクリスマスは終わってるでしょ」

サトコ
「あ、そうか」

鳴子
「サトコはいいよね~。なんだかんだ言って、一緒に過ごす人がいそうだし」

鳴子には教官と付き合ってることは内緒だけど、薄々その存在は気づかれている。

サトコ
「あは、あはは‥」

鳴子
「まぁ、私たちも何かあれば駆り出されるかもしれないしね」

(そうだよね‥そもそも何か事件が起これば、クリスマスなんてなくなっちゃうし)
(どうかクリスマスは、世間様は平和でありますように‥)

サトコ
「そうしたら私も、心置きなく教官と‥」

鳴子
「サトコー。また妄想?」

サトコ
「え!?」

鳴子
「最近、一人でブツブツ言ったりボーっとしてること多くない?」

サトコ
「そ、そう?」

(っていうか、それじゃあ、私変な人じゃない‥)
(でも、そんなところを教官に見られたら恥ずかしすぎる‥気を付けよう)

千葉
「2人とも、おはよう。玄関に貼り出されてた行事予定が更新されてたけど、見た?」

鳴子
「えっ、見てない!何か変わってた?」

千葉
「うん、12月24日に全校集会と納会が入ってた‥」

鳴子
「えーーー!?納会!?」

思わず、鳴子と顔を見合わせる。

サトコ
「納会って、忘年会みたいなアレだよね‥」

鳴子
「なんだってよりによってクリスマスイブに!?」

千葉
「わからないけど、どうやら成田教官の提案らしいよ」

鳴子
「成田‥!」

サトコ
「しっ‥どこで成田教官が聞いているかわからないから!」

(集会はすぐに終わるとしても、納会‥それって絶対出さなきゃダメなのかな)
(教官たちはクリスマス、どうするんだろう?)

その時、ポケットの携帯がメールの着信を知らせた。

(メールの送信者は‥)

<選択してください>

A: 後藤

(後藤教官からだ!えーっと、『クリスマス、楽しみだな』‥)
(これって‥お誘いメールだと思っていいの?)

鳴子
「ニヤニヤしてどうしたのよ~」

サトコ
「な、なんでもない!」
「なんでもないってば!」

鳴子
「なに、一人で焦ってんの?」

B: 加賀

(加賀教官からメールなんて珍しいな‥えーと、『25日の予定は?』‥)
(‥25日!?クリスマス!?)

鳴子
「サトコ、どうしたの?なんか今、いきなりテンションあがった?」

サトコ
「そ、そんなことないよ!」

C: 石神

(石神教官から‥!『クリスマスは仕事か?』‥)
(今のところは仕事も予定も入ってないけど‥)

サトコ
「25日って、クリスマス‥!?」

鳴子
「わかってるってば。今その話してるんでしょ?」

サトコ
「あ‥ご、ごめん」

D: 颯馬

(『25日は空けておいてくれますか?』‥颯馬教官から?)
(これって、クリスマスの約束だって思っていいんだよね‥)
(『もちろんです!』‥送信!)

鳴子
「サトコ?メール誰から?」

サトコ
「え!?えーっと‥お、お母さんから!」

E: 東雲

(東雲教官から‥?『サンタのコスプレ衣装、持ってる?』)

サトコ
「‥‥‥」

鳴子
「どうしたの?すっごい顔になってるけど」

サトコ
「いや‥なんか色々、嫌な予感が」

(サンタのコスプレって‥東雲教官、私に何させるつもり‥?)

(でもよかった‥一緒に過ごしたいって思ってくれてたんだ)
(イブはダメでも、せめて25日だけでも一緒に過ごせたら‥)

サトコ
「そうだ、プレゼント!」
「千葉さん、男の人って、クリスマスに何をもらったら嬉しいかな」

千葉
「えっ?」

サトコ
「あの、その‥さ、参考までに!」

千葉
「そ、そうだな‥やっぱり普段から使えるものとかがいいんじゃないかと」

鳴子
「千葉さ~ん、なんで真っ赤になってるの~?」

千葉
「べ、別になんでもないよ」

サトコ
「千葉さん、ほんとに顔が赤いよ。もしかして、風邪ひいたとか‥?」

千葉
「いや、だから、これは‥!」

颯馬
まったく‥あなたも罪作りな方ですね

振り返ると、いつの間にか颯馬教官が私たちの後ろに立っていた。

サトコ
「罪作り‥?」

颯馬
サトコさんからのプレゼントなら、なんでも嬉しいと思いますよ
そうですよね、千葉くん

千葉
「は、はい!なんでもいいです!」

サトコ
「なんでもいい‥」

(そう言われると、逆に困っちゃうな‥うーん、普段使えるもので、なんでもいい‥)
(クリスマスまでまだ時間もあるし、色々調べてみようっと)

数日後

鳴子
「それでね、一柳さんのクリスマスの予定を聞きたいんだけど、どうしたらいいか」

サトコ
「鳴子は相変わらず、一柳さんの大ファンだね」

鳴子
「ファンの域を超えてるよ。あんなイケメンに警護されてみたい‥」
「でも、クリスマスはやっぱり忙しいかな‥」


「あっちでもこっちでも、クリスマスの話題ばっかりだな」

聞き覚えのある声に振り返ると、一柳さんが食堂に入ってきたところだった。

鳴子
「サトコ!どうしよう、本物!」

サトコ
「本物って」


「お疲れ。お前らもクリスマスの相談か?」

鳴子
「は、はい!」
「あの、一柳さんは、クリスマスのご予定は‥!」


「今のところオフだけど、どうなるかわからないな」

そう言いながらも、一柳さんがテーブルに手をついて、私の顔を覗き込む。


「お前は?相手がいないなら、オレと過ごすか?」

サトコ
「え!?」

(こ、これって‥クリスマスのお誘い!?)

石神
相変わらず、お祭り課は仕事もせずに騒いでるだけか

低い声が聞こえて、石神教官が一柳さんを睨みながら歩いてくるのが見えた。

石神
よほど暇なようだな。手が空いている連中ばかりで羨ましい


「面倒なのが来たな」

石神
うちの生徒に手を出さないでもらえるか

指でメガネを押し上げる石神教官に、一柳さんも応戦する。


「手を出してるのは、どっちだろうな」

石神
‥言っている意味がわからない


「もっと頭を柔らかくしたらどうだ?」

(ひ、火花が散ってる‥怖い!)

睨み合う2人を遮るように、校内アナウンスが流れた。

黒澤
氷川サトコさん、氷川サトコさーん、至急、教官室に来てくださーい

サトコ
「えっ」

石神
黒澤め‥なんだあの浮ついた放送は


「こっちにも祭り野郎がいたってことだな」

石神
お前らと一緒にするな
氷川、いくぞ

サトコ
「は、はい!」
「一柳さん、失礼します!じゃあね、鳴子」

鳴子
「頑張ってね~」

一柳さんと鳴子に見送られ、急いで石神教官の後を追いかけた。



教官室には、珍しく難波室長もいた。

サトコ
「もしかして、なにか事件でも‥?」

黒澤
そうです、大事件です!
氷川さん、12月24日と言えば!?

サトコ
「へ?ク、クリスマスイブ‥?」

黒澤
そう!そのクリスマスイブが、全校集会と納会に占領されて大変なんですよ!
これはもう、うちのクリスマス会は25日にやるしかないですね

サトコ
「はぁ‥」

(ん?)

サトコ
「‥『うちのクリスマス会』?」

黒澤
そうです!みんなでごちそう食べたり、プレゼント交換したりするんですよ

(ええ!?それを25日にやるってこと‥?)
(24日は行事で、25日はみんなでクリスマス会‥じゃあ、教官とは)

黒澤
楽しみですよねー、氷川さん

サトコ
「え、えっと‥」

笑って誤魔化しながらも教官たちに助けを求めると、
みんな、黒澤さんとは目を合わせないようにしているのがわかる。

東雲
それ、ほんとにやるの?

黒澤
やりますよ!なんてったって、難波さんお墨付きですからね

難波
たまにはそういうのもいいだろ
普段、プライベートも休みもないからな。お前らも少しはゆっくりしろ

サトコ
「あ、ありがとうございます‥」

東雲
その優しさ、いらない‥

東雲教官が、あからさまに面倒そうにため息をつく。

加賀
俺は用がある。パスだ

黒澤
えーっ、加賀さん、来ないんですか?

難波
安心しろ、お前の分も楽しんでやる

加賀
任せます

(え!加賀教官、もしかして仕事‥?潜入捜査とか‥?)

東雲
ああ、いつものアレですか

加賀
余計なこと言うな

東雲
はいはーい

ヒソヒソ話す2人をよそに、後藤教官が少しソワソワしている。

サトコ
「後藤教官?もしかして‥クリスマス会、楽しみなんですか?」

後藤
‥‥‥
‥悪い。浮かれてた

(浮かれてた!?後藤教官が!?)
(でも、照れてる顔、かわいい‥)

石神
クリスマス会、か‥学生のようなノリだな

颯馬
まあ、形だけでも出席すればいいでしょうから

(形だけでも、か‥教官たちが出席するなら、私も出た方がいいよね)
(せめて夜くらいは、教官と一緒に過ごせるかな‥)



サトコ
「‥とうことで、今年のクリスマスは教官たちのクリスマス会に出ることに‥」

鳴子
「えーっ、いいないいな、誘われたの、サトコだけでしょ?」
「教官たちとクリスマスかあ‥きっとすごく楽しいだろうね」

サトコ
「黒澤さんも難波室長も、パーッとやりたいみたいな感じだったから」
「きっと、鳴子も来て大丈夫だと思うよ」

鳴子
「いいの!?やった、行く行く!」

(せめて夜だけでも、って思ったけど、やっぱり今年は2人だけで会うのは難しいかな)
(‥ん?メールだ‥誰からだろう)

<選択してください>

A: 後藤

B: 加賀

C: 石神

D: 颯馬

E: 東雲

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