カテゴリー

クリスマス 後藤2話

クリスマス会当日。
並んだ料理や飲み物を手に盛り上がっていた。

(いざ始まると、みんな楽しんじゃうんだよね)

後藤
アンタ‥なんかいつもと雰囲気が違うな

サトコ
「や、やっぱりわかりますか?」

さりげなく私のところに来た後藤さんが私を見て瞳を輝かせる。

サトコ
「いつもはリップクリームだけなんですけど、今日は口紅にしてみたんです‥」

(鳴子に折角のクリスマスなんだからって言われて、口紅つけてみたけど‥)
(気合い入れすぎって思われるかな‥)

いざ見つめられると恥ずかしくて目を伏せてしまう。

サトコ
「派手‥ですかね?」

後藤
いや‥

ジッと見つめた後藤さんがポツリと声をこぼす。

後藤
早く2人で過ごしたくなった

サトコ
「!?」

心なしか顔が赤い後藤さんに私も頬に血がのぼる。

(鳴子、ありがとう!頑張ってみてよかった!)


「なにトナカイの鼻より赤い顔してんだよ。もう酔っ払ってんのか?」

後藤
お前‥
誰もお前なんか呼んでない。さっさと帰れ


「こっちだって来たくて来たんじゃねーよ。難波さんに話があって寄っただけだ」

後藤
用が済んだなら、もういいだろ。お前はお祭り課のクリスマス会に行ってろ

サトコ
「まあまあ。せっかく顔出してくださったんですから‥」
「一柳教官、クリスマスケーキ食べますか?結構種類あるみたいですよ」


そうだな‥

後藤
構うな、サトコ。ケーキが食いたければ勝手に食っていけ


「後藤、お前な‥お前の今年の漢字は『恩』にしろ」

後藤
は?漢字?ついに会話の流れまで読めないほどボケたのか?


「偉そうに突っかかれる立場かよ」
「お前のためにクリスマス限定のテディベアを用意してやったのは誰だ?」

後藤
一柳!それは‥

サトコ
「え!一柳教官が後藤さんにテディベア贈ったんですか!?」

(あれって贈ると永遠に幸せになれるってクマじゃ‥)

後藤・昴<
「違う!」

サトコ
「へ?それじゃ‥?」


「コイツがどうしてもクリスマス限定のテディベアを手に入れたいって言うから」
「特別に手配してやってんだよ」

サトコ
「後藤さんがテディベアを‥?」

後藤さんを見ると、後藤さんは照れ臭そうに視線を逸らす。

黒澤
今、聞き捨てならないオイシイ話が聞こえてきましたよー!

東雲
後藤さん、クリスマスにクマのぬいぐるみ買ったんですか?頑張った自分へのご褒美?
うわー、引くー

後藤
どうでもいいだろ


「親戚の友達の弟の娘が欲しがってるって話だったか?」
「次に聞いた時は親戚の友達の妹になってたけどな」

黒澤
後藤さーん、そういう設定を作る時はしっかり決めておかなきゃダメですよ

東雲
ていうか、後藤さんが一柳さんに頼むなんて‥
よーっぽど、そのクマが欲しかったんですかね~

黒澤さんと東雲教官がニヤニヤと私を見る。

(なんか‥後藤さんと私のことバレてる気が‥)

黒澤
でも一柳警部補、せっかくのサプライズなんだからバラしちゃダメじゃないですか


「オレは後藤の親戚の誰かさんのために探してやったって言っただけだろ」
「それに、こういうのは裏話聞いといた方が思いでに残るんじゃねーの?」

一柳教官が私に視線を送ってフッと微笑む。

(あ‥一柳教官は後藤さんが頑張ったことを伝えるためにわざと‥?)

黒澤
一柳警部補って、なんだかん言って後藤さん想いですよね‥オレ、感激しちゃいます!

東雲
でも、まさかのまさかで自分用だったりして

黒澤
まさかのまさかのまさかで石神さんへのプレゼントだったりして!


「‥後藤が石神にテディベアを渡すとかホラーだろ」

後藤
‥‥‥

サトコ
「ご、後藤さん?待ってください!」

ユラっと隅の方に後藤さんは行ってしまう。

東雲
あーあ‥先輩をイジメちゃダメだよ、透

黒澤
いえいえ、これも先輩愛なんです‥
って、何、自分はやってない!みたいな顔してるんですか

サトコ
「もう‥あんまり後藤さんをからかわないでください」


「けど、2人で話しやすくなっただろ」

サトコ
「え‥」


「隅でドンヨリしてるアイツに声かけるヤツなんていないよな」

黒澤
クリスマスパーティで大事な時間を頂戴しちゃいましたからね

東雲
後藤さんのメンタル立て直すの手伝ってあげたら?
キミって、専属の補佐官なんでしょ?

サトコ
「‥‥‥」

(後藤さんと私が話せるように考えてくれたの?)

東雲
でもいい機会だから、もうちょっとキツく追い込んでもよかったかなー


「お前、純粋に後藤からかうの楽しんでんだろ」

東雲
まさか!そんなに悪どく見えます?
まぁ‥このテディベアネタはバレンタインくらいまで引っ張れますけど

(お、鬼だ‥後藤さんのために、キノコ頭ネタでお返しを‥)

<選択してください>

A: マッシュルーム食べたいな

サトコ
「あー、なんか急にマッシュルーム食べたくなっちゃったなぁ」

東雲
へぇ‥マッシュルームが好きなの?
それなら、頑張ったサトコちゃんへクリスマスプレゼントで缶詰山ほどあげようか?
なくなるまで、毎日毎食、食べろよ

(ま、満面の笑顔で怖い!)

サトコ
「‥き、気の迷いだったみたいです」

(ムリだった‥)

B: 東雲教官、髪型変えました?

サトコ
「東雲教官、髪型変えました?いつもより丸みを帯びて、よりアレっぽいっていうか‥」

東雲
変えてなけど、氷川の化粧はいつもと違うね
口紅だけ目立って‥
おてもやんみたい

サトコ
「おてもやん‥」

(くっ‥やっぱり東雲教官には敵わない‥)

C: 最近、キノコ苦手なんですよね

サトコ
「私、最近キノコ苦手なんですよね~。どうしてかなー」

東雲
苦手を克服するには、とにかく食べるのが効果的らしいよ
氷川の食事だけ毎食キノコになるようにしてあげようか

(こ、これ、本気でやる顔だ!)

サトコ
「ダイエットできそうですけど、結構です‥」

サトコ
「私、後藤さんのところに行ってきます」

黒澤
一柳警部補も楽しんでいってくださいよ


「充分楽しんだから、またな」

東雲
後藤さんと面白いことをやる時は呼んでくださいね


「知るか」

気楽な声を背に、私は隅っこにいる後藤さんのところに行く。

サトコ
「後藤さん‥?」

後藤
‥ローズマリーは帰ったのか

サトコ
「はい‥って、かなりお酒飲んでます!?」

(顔はうっすら赤いくらいだけど、強いお酒の匂いがする‥)

後藤
颯馬さんの酒を少しもらっただけだ

サトコ
「颯馬教官のお酒って、この青い瓶ですか?」

青く細長い瓶に顔を近づけると、匂いだけで度数の高い日本酒だとわかる。

(20度‥って、そこそこ高めなんじゃ‥)

サトコ
「これ、ほとんどカラですよ!?」

後藤
そうか?適当に飲んでたから、よくわからないな‥

サトコ
「後藤さん‥ふらついてます」
「大丈夫ですか?気分悪いなら、休んだ方が‥」

後藤
いや‥大丈夫だ。大丈夫‥

サトコ

「後藤さん?」
うつむいたかと思ったら、そのまま船を漕ぎ始めている。

(寝ちゃった‥?ど、どうしよう‥)

黒澤
後藤さん、大丈夫ですか?
‥あっ!

サトコ
「黒澤さん!?コードが足元に!」

コードにつまずいた黒澤さんが大きく転ぶ。
その手にあったビールのコップが宙を舞い、後藤さんの頭上に飛んでいく。

(このままだと、後藤さんにビールが!)

サトコ
「‥っ!」

手を伸ばし、何とかコップをキャッチしたものの、
中のビールは近くにあった私のカバンにかかってしまった

黒澤
ああ!サトコさん、すみません!大丈夫でしたか!?

サトコ
「は、はい。何とか‥後藤さんをビールから守ることはできました」

黒澤
でも、サトコさんのカバンが‥

サトコ
「これくらい大丈夫ですよ。すぐに拭けば‥」

ハンドタオルでビールを拭うが、バックにしまっておいた後藤さんへのプレゼントにも
ビールがかかってた。

(あー包装紙が濡れてクシャっとなっちゃってる)

黒澤
本当に大丈夫ですか?

サトコ
「ええ‥黒澤さんこそ平気ですか?」

黒澤
とっさに前転で受け身を取ったので無傷です!こんな失態を犯すなんてお恥ずかしい

サトコ
「もしかして結構酔ってます?」

黒澤
いやー、皆さんに勧められてついつい‥
でも、オレより後藤さんの方が相当酔ってません?

サトコ
「強い日本酒を一気に飲んでしまったみたいで‥寝落ちしちゃったんです」

黒澤
そういうことなら‥サトコさん、後藤さんを家まで送ってあげてください

サトコ
「え‥途中で抜けちゃっていいんですか?」

黒澤
こんな酔っぱらってる姿、後藤さんだって他の人たちに見せたくないでしょうし
あとのことはオレが石神さんたちに上手く話しておきますから

そこで言葉を切って、黒澤さんは声を潜める。

黒澤
クリスマス、あと3時間は残ってます。お二人で過ごしてください

サトコ
「黒澤さん‥」

黒澤
あー‥なんか酔っ払っちゃったなー。後藤さん、悪いけど肩貸してください
よいしょっと‥って、オレに寄っかからないでくださいよー

サトコ
「わ、私もお手伝いします!」

黒澤
オレからのささやかなクリスマスプレゼントです

黒澤さんはこっそりタクシーを手配すると、後藤さんと私を乗せてくれた。

サトコ
「もう少しでソファですから頑張ってください!」

後藤
ああ‥

(タクシーの中で起きてくれたけど、まだ酔いは醒めてないみたい‥)

ソファに横になると、後藤さんは腕で顔を覆い、大きなため息をついた。

後藤
すまない‥情けない姿を見せてしまったな‥
アンタが楽しみにしてたクリスマスなのに‥

<選択してください>

A: 酔った後藤さんも可愛いです

サトコ
「酔った後藤さんも可愛かったです」

後藤
それ、誉め言葉か?」

サトコ
「はい、こんな後藤さん、他の人には見せたくないですよ」

後藤
そういうセリフは男が言うもんだけどな‥アンタには負けた

B: 一柳教官との漫才楽しかった

サトコ
「一柳教官との漫才楽しかったですよ」

後藤
漫才‥アンタの目にはそう見えるのか‥

サトコ
「ふふっ、冗談です。でも本当に気にしないでください」
「冗談言えるくらい、私は楽しかったんですから」

C: 一緒にいられるだけで充分です

サトコ
「一緒に過ごせるだけで充分楽しいですよ」

後藤
アンタは優しいな

サトコ
「本当のことですから。どんなクリスマスでも、後藤さんが一緒じゃなきゃ楽しくないです」

後藤
‥‥‥
なら‥
来年は同じ失敗を繰り返さないようにする

顔から腕を外した後藤さんは、急にお酒が抜けたような顔をしていた。

サトコ
「あの‥少しだけ片付けてもいいですか?このままだと書類を踏んで転んでしまいそうなので」

後藤
ああ‥アンタが来るって分かってたら片付けたんだが‥
クリスマスに掃除させるなんて最低だな

サトコ
「急にお邪魔しちゃった私が悪いんですから、気にしないでください」

後藤
‥水、飲んでくる

サトコ
「足元、気を付けてくださいね」

後藤
ああ‥

床に散乱している書類を簡単にまとめると、後藤さんが戻ってくる気配がする。

サトコ
「本と書類は一応分けておいたので‥」

立ち上がって振り返ると、そこには‥

後藤
メリークリスマス、サトコ

サトコ
「後藤さん‥」

(クリスマス限定のテディベア!)

後藤
サプライズで渡したかったんだが‥
慣れないことは上手くいかないもんだな

サトコ
「そのテディベア‥私が欲しがってるって、どうしてわかったんですか?」

後藤
寮の食堂で一柳との話を聞いたんだ
このクマを恋人に贈ると幸せになれるんだろ‥?

後藤さんがそっと私にテディベアを渡す。

サトコ
「すごくうれしいです!一生大事にします!」

後藤
一生は大げさだ

サトコ
「だって‥こんなに嬉しいクリスマスプレゼント初めてだから‥」

一柳教官に頼んでまで手に入れてくれた限定のテディベア。
後藤さんの想いが詰まったベアをギュッと抱きしめる。

サトコ
「私からもクリスマスプレゼントがあるんですけど‥」

バッグから、包装紙がクシャっとなった小さな包みを取り出す。

サトコ
「お店で転んだ黒澤さんのビールグラスをキャッチしたら、プレゼントにかかってしまって‥」

後藤
俺へのプレゼントか?

サトコ
「はい‥でも、ビールの匂いもするので、後日改めて別のものを用意してもいいですか?」

後藤
これがいい

サトコ
「後藤さん‥」

後藤
開けていいか?

サトコ
「は、はい。中まで染みてないといいんですけど‥」

後藤さんは包みを解くと中の箱を開ける。

後藤
革の手袋‥

サトコ
「後藤さん指先冷たいことが多かったので‥張り込みの時とか、もっと寒いんじゃないかと思って」

後藤
ありがとう。さっそく明日から使わせてもらう

それぞれのプレゼントを手にソファに並んで座る。

後藤
もっとロマンチックなクリスマスにしてやりたかったんだが‥悪い

時計を見ると、日付が変わるまであと一時間半。

サトコ
「クリスマス、まだ終わってません」

後藤
「‥今から取り返してもいいか?

サトコ
「はい‥」

後藤さんが手袋をテーブルへ、テディベアをソファの肘置きに乗せる。
その手が肩にかかると、ゆっくりと押し倒された。

後藤
サトコ‥

甘く名前を呼ばれ、目を閉じると‥

ボフッ

サトコ
「!?」

触れたのは期待していた柔らかい感触ではなく、モフモフの毛玉。

サトコ
「ク、クマ!?」

後藤
肘置きから落っこちてきたみたいだな

苦笑いを浮かべながら、後藤さんがクマをテーブルに置き直す。

後藤
ココは俺だけのものだ
今日、アンタを見た時から‥ずっとキスしたいと思ってた

サトコ
「後藤さん‥」

今度こそ待ちわびていた愛しい唇が触れて‥
2人きりのクリスマスを取り戻すように濃密な時間を過ごした。

翌日。
通常通りに戻った校内は、今度は冬季休暇を待ちわびる空気になっていた。

(年末年始は実家で過ごしたいけど、休みとれるかなぁ‥)

千葉
「氷川、おはよう!」

サトコ
「千葉さん!昨日のクリスマス楽しかった?」

千葉
「まあね‥その、氷川はどうだった?」

サトコ
「あ‥昨日は補佐官の仕事でちょっと呼び出されちゃって‥」

千葉
「そうだったんだ‥あのさ、クリスマスプレゼント‥」

サトコ
「そうだ、ちゃんとお礼言ってなかったよね?アドバイスありがとう!」

千葉
「え?あ‥アドバイス‥」
「ははは‥そうだよね‥」

サトコ
「千葉さん?」

千葉
「いや!男だらけのクリスマスも楽しかったよ!」
「じゃ、氷川、よいお年を!」

サトコ
「う、うん‥よいお年を‥」

(まだ寮で顔を合わせると思うけど‥)

首を傾げながら千葉さんの背中を見送ると‥

窓の外から手袋をはめて手を挙げる後藤さんの姿が見えた。

Happy  End

【管理人のつぶやき】

‥‥千葉‥どんまい‥‥

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする