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クリスマス 加賀2話



教官への尾行があっさりとバレた25日、クリスマス。

(教官がゾッコンの『ハナさん』がどんな人なのか、知りたかったのに‥)

はな
「ひょうご、ひょうご!あのね、サンタさんってしってる!?」

加賀
知らねぇな

はな
「しらないの!?ひょうご、コドモなんだからー」

加賀
‥そういうの、どこで覚えてくんだ

なぜか私は、3歳の『はなちゃん』と一緒に、見知らぬお宅にいた。

サトコ
「えっと‥それで、これはいったい‥」

加賀
花は、姉貴の子だ

サトコ
「えっ?」

加賀
夫婦してホテル経営してるから、この時期は毎年忙しい
花が生まれてからは、毎年俺が世話してる

サトコ
「そうだったんですか‥」

(ってことは私、東雲教官と莉子さんにからかわれたんだな‥)
(もしかしてそうなんじゃないかなって、思ってはいたけど)

ホッと胸を撫で下ろすと同時に、チラリと教官を見る。

サトコ
「教官が、叔父さん‥」

加賀
あぁ?

サトコ
「な、なんでもないです」


「ねぇひょうご、チュリー!チュリー!」

加賀
ああ、ツリーな


「てっぺんのおほちしゃま、はながかじゃる!」

加賀
お星さま、な

(花ちゃん、まだ舌足らずなのがかわいい‥)
(でも、それをちゃんと教官が理解してあげてるのもまた‥)

サトコ
「これが萌えとかいうアレ‥?」

加賀
くだらねぇこと言ってねぇで、そのダンボールから飾りとれ

サトコ
「あ、はい!この星ですか?」

加賀
クズが。お星さまは最後だって言っただろうが

(今、ごく自然に『お星さま』って言ったよね‥)

教官は気づいてないのか、花ちゃんと一緒に飾り付けを選んでいる。


「どれにちようかなー」

サトコ
「どれも綺麗だねー」

加賀
「‥ガキは平気なのか

サトコ
「はい、好きですよ。弟もいますから」
「でも、どうして花ちゃんのこと内緒にしてたんですか?」

加賀
そういうわけじゃねぇ
‥コブつきじゃ、お前が嫌がると思っ‥

サトコ
「言ってくれればよかったのに」

思わず口にした言葉が、教官の声と重なる。

加賀
‥何?

サトコ
「って、すみません‥図々しいですよね」
「教官と花ちゃんの水入らずの時間に、無理矢理割り込んだ感じなのに‥」

加賀
‥‥‥
‥めんどくせぇと思わねぇのか

サトコ
「何がですか?」

加賀
こんなガキが一緒で

<選択してください>

A: 花ちゃんかわいいです

サトコ
「花ちゃん、すっごくかわいいですよ。仲良くなれそうな気がします」

加賀
‥‥‥

私の言葉に、教官が軽く目をみはる。

サトコ
「うちの弟、最近生意気でほんとにかわいくなくて‥」
「花ちゃんを見てると、かわいかった頃の弟を思い出すというか」

B: 教官かわいいです

サトコ
「花ちゃんと遊んでる教官、かわいいですよ」

加賀
誰が今そんな話をした?

一瞬で凶悪なオーラを醸し出され、慌てて首を振る。

サトコ

「も、もちろん誰にも言いませんから!」

加賀
黙れ

C: いつか私たちの間にも‥

サトコ
「そんなことないですよ。いつか私たちの間にも、こんなかわいい子どもが‥」

危うく妄想してしまいそうになって慌てて首を振ったけど、教官はニヤニヤ笑うばかりだった。

加賀
なるほどな
俺に頑張れってことか

(何を考えてたか、バレてる‥!)


「ねーねー、このやあらかいの、なに?」

サトコ
「それは綿だよ。こうやってツリーに飾ったら、雪みたいに見えるでしょ?」


「えー、見えない!」

サトコ
「見えないか‥」
「じゃあ花ちゃん、この鈴、飾らない?」


「かじゃるー!」

花ちゃんと一緒に飾り付けをする私を、教官が後ろから見つめている。

サトコ
「どうしたんですか?」

加賀
‥いや
精神年齢が同じだと、仲良くなれるもんだな

サトコ
「それは暗に、私が子どもっぽいと‥」

いじける私の頭をポンッと撫でて、教官が花ちゃんの方に行く。

加賀
お星さま飾るか


「はながやる!はながやる!」

加賀
届かねぇだろ

教官がしゃがみこむと、花ちゃんは当然のようにその肩に乗った。

サトコ
「わあ‥肩車!」


「たかーい!」

加賀
暴れんじゃねぇぞ
おい、お星さま取れ

サトコ
「はいはい、お星さまですね」

笑ながら手渡すと、ジロリと睨まれた。

(でも、花ちゃんを肩車してる姿で凄まれても、あんまり怖くない‥)

ツリーのてっぺんに星を飾ると、花ちゃんはご機嫌だった。


「ひょうご、じんぐるべーるじんぐるべーるってうた、しってる?」

加賀
お前、それ去年は歌えなかったな


「あのねー、ほいくえんんでせんせいがおしえてくれたの」
「じんぐるべーるじんぐるべーる♪すっずっがーなる~ぅ」
「ひょうごも、さんはい!」

加賀
‥あぁ?

サトコ
「教官!3歳の子にそんな言い方しちゃダメですよ!」


「サトコもうたおう!じんぐるべーるじんぐるべーる」

サトコ
「鈴が~鳴る~」

歌いながら2人で教官を見ると、教官が渋々歌い出す。

加賀
今日は~楽しい~クリスマス~


「へい!」

サトコ
「花ちゃん、ノリノリだね~」


「あのねー、はなねー、そうげんのおうじょさまのせっとをねー、いいこにしてたらねー」

加賀
お前の話は脈略がなくて長い

サトコ
「3歳の子に、そんな無茶な‥」

加賀
草原じゃなくて、雪原の女王だろ

さっき買ってきたプレゼントを見せると、花ちゃんが目を輝かせた。


「ひょうご、ありがと!いっしょにあそぼ!」

加賀
ああ、ほら開けてみろ

(教官、プリンセスセットで遊んであげるんだ‥)

後ろで思わずニヤニヤすると、私に背を向けたままの教官の声が聞こえた。

加賀
‥あとで覚えてろよ

サトコ
「!?」

(この、地の底から響くような声‥お、怒ってる!?)


「ひょうご、よそみしなーい」

加賀
はいはい


「サトコ、みてー!かわいい!」

サトコ
「わあ‥アニメと同じドレスだね!」

加賀
それはこっちだろ


「ダメ!これでいいの!」

(教官、意外と面倒見がいいんだな‥)
(こんな姿、普段は絶対に見れないよね)

食事を済ませてケーキを食べると、遊び疲れてしまったのか、花ちゃんがうとうとし始めた。

サトコ
「教官、もう寝かせた方がいいですか?」


「まだあそぶぅ‥」

加賀
ちょっと待ってろ

奥の部屋から花ちゃん用のお昼寝布団を持ってくると、教官がそこに花ちゃんを寝かせる。


「サトコ、て‥」

サトコ
「手?」

差し出すと、私の手を握ったまま、花ちゃんが眠ってしまった。

加賀
‥よく懐いたな

サトコ
「子どもって、一緒に遊んでくれる人が好きですからね」

花ちゃんが熟睡するまで、しばらくそのままでいた。

加賀
‥つき合わせて悪かった

サトコ
「え?」

加賀
クリスマスにガキのお守りなんざ、ありえねぇだろ

サトコ
「でも教官は、毎年このために仕事を前倒ししてるんですよね?」

加賀
‥莉子か

サトコ
「莉子さんにも東雲教官にも、からかわれたような気がしますけど‥」
「でも、教官の新しい一面が見れて嬉しかったです」

そっと花ちゃんの手を離すと、バッグの中からプレゼントの包みを取り出す。

サトコ
「それで‥あの、これ、よかったら使ってください」

加賀
‥会えねぇって言ったのに、用意してたのか

サトコ
「もし一緒に過ごせなくても、プレゼントだけでも渡せたらと思ってたんです」

包みを受け取ると、教官が中から取り出したキーケースを見て、真剣な顔になる。

(も、もしかして持ってた‥!?失敗した‥!)

サトコ
「あのっ‥」

何か言おうとしたとき、肩を抱き寄せられ、そのまま押し倒された。

サトコ
「え‥」

加賀
‥バカが

言葉とは裏腹の甘い声のあと、キスで口を塞がれる。

サトコ
「ちょ、教官!!」
「は、花ちゃんの前っ‥」

加賀
知らねぇな

サトコ
「教官‥だ、ダメっ‥」

必死に首を振る私の舌を絡め取り、教官が意地悪に笑った。

加賀
見られてる方が嬉しいんだろ?

サトコ
「!」

加賀
声、出すなよ

サトコ
「っ‥‥」

逃げ出そうにも、手を押さえつけられてどうしようもない。

(それに、こんなキス‥されたら‥)

教官しか感じられなくなりかけた時、スパーン!と誰かが教官の頭を叩いた。

加賀

???
「アンタ、人んちで何してんのよ!」

加賀
げ‥姉貴‥

サトコ
「!?」

(おおお、お姉さん!?)
(こんなところ見られるなんて‥!恥ずかしすぎる!)

慌てて起き上がると、その場に正座して身を正した。

サトコ
「あのっ‥すすす、すみません!氷川サトコと申します!」
「加賀教官には、いつも色々と教えていただいて‥」

美優紀
「そんなにかしこまらなくてもいいのよ。どうせコイツが無理矢理連れ込んだんでしょ?」

加賀
このクズが勝手についてきたんだ

サトコ
「え!?そ、そうでしたっけ?」

加賀
下手な尾行でな

(それを言われると、何も言い返せない‥)

美優紀
「改めまして、兵吾の姉の美優紀です。あなたがサトコさんなのね」
「兵吾が歩くん以外の話するのは珍しいから、よく覚えてるのよ」

サトコ
「えっ?」

加賀
余計なこと言ってんじゃねぇ

美優紀
「何?今なんつった?」

加賀
‥‥‥

(教官、もしかしてお姉さんに弱い‥?)

美優紀
「口は悪いは乱暴だわ、最悪でしょ?この弟」

サトコ
「えっと‥」

(そうですね、とは言えない‥)
(でも、そこが好きなんです、なんて言ったら絶対あとでお仕置きされそうだし)

答えに困っている間に、お姉さんは眠ってしまった花ちゃんを撫でる。

美優紀
「花の面倒見てくれたのね。ありがとう」

サトコ
「いえ、すごくかわいくて、楽しかったです」

美優紀
「よかったらこれ、持って行って。うちのホテルの余りもので悪いんだけど」
「夜はサトコさんと過ごすんだろうと思ってたから、兵吾に渡そうとおもってたのよね」

お姉さんが差し出したのは、有名ホテルのロゴが入ったクリスマスケーキの箱だった。

(これ‥あ、あの一流ホテルの!?)
(じゃあ、夫婦でホテル経営って‥もしかして、このホテル!?)

美優紀
「こんな愚弟でも、かわいい弟だから」

加賀
‥チッ

美優紀
「これからも、兵吾のことをよろしくね」

サトコ
「は、はい!」

加賀
うるせぇ

サトコ
「えっ」

加賀
「花が起きるだろ」


「ん~‥じんぐるべる‥」

慌てて口を押えながらも、教官に怒られてしょんぼりしてしまう。

(花ちゃんに向ける優しさの半分‥いや、4分の1くらい、私に向けてくれても‥)

そのあと、花ちゃんが起きる前に家を出た。



教官のマンションに戻ってくると、2人で誰もいないエレベーターに乗り込む。
その瞬間、壁に背中を押しつけられて強引に唇を重ねられた。

サトコ
「教官っ‥」

加賀
もう限界だろ

サトコ
「な、何が‥」

加賀
さっきの続き、ここでしちまうか

サトコ
「だ、ダメです!」
「それに、いつ誰が乗ってくるか‥」

加賀
スリルがある方がいいだろ?

サトコ
「私、そんなこと言いましたっけ‥!?」

慌てる私を教官が笑った時、教官の部屋のフロアでエレベーターが止まった。

部屋に帰ると、そのままバスルームに連行され‥
お風呂からあがる頃には身体に力が入らず、教官にベッドまで運ばれた。

加賀
風呂は声がよく響くな

サトコ
「‥‥‥」

加賀
ずいぶん恨みがましい顔してるじゃねぇか

<選択してください>

A: ひどすぎる

サトコ
「ひどすぎますよ‥お風呂で、あんな‥」

加賀
そのわりには、ずいぶん喜んでたみてぇだが

サトコ
「そ、そんなことは‥」

加賀
自分の声に煽られたか?

サトコ
「そ、それ以上はもう勘弁してください‥!」

B: 今日くらい優しくして

サトコ
「クリスマスですよ‥今日くらい優しくしてくれても‥」

加賀
してやってんだろ
普段なら、俺を尾行した仕置きはあんなもんじゃねぇ

(そうだ‥それを忘れていた‥)

C: 花ちゃんとどっちが大事?

サトコ
「私と花ちゃん、どっちが大事なんですか!?」

加賀

サトコ
「!!!」

加賀
冗談だ

サトコ
「冗談なんですか!?」

加賀
さあな

(結局、どっちなんだろう‥)

加賀
ほら

ベッドでぐったりする私に、教官が綺麗にラッピングされた包みをくれる。

サトコ
「もしかして、クリスマスプレゼント‥?」

加賀
他に何がある

サトコ
「ありがとうございます!」

早速開けてみると、中には直視できないほど大胆な、真っ赤な下着が入っていた。

サトコ
「なっ‥」

加賀
着替えろ

サトコ
「これに!?でも、ぬ、布地が少ない‥どうやって身体を隠すんですか!?」

加賀
隠すようなもんでもねぇだろ

サトコ
「ひどい‥!」

加賀
メリークリスマス、だな

(もしかして、これでサンタになれと‥!?)

性癖を疑って焦る私を、教官はいとも簡単にベッドに押し倒す。
少し苦笑いをしながら、その逞しい身体に、すべてを委ねた。

まどろみながら目を覚ますと、教官が私の顔を見つめていた。

サトコ
「お、おはようございます‥」

加賀
まだ夜中だ
バカ面して寝てたな

サトコ
「だって、教官があんなに‥」

加賀
あんなに?

意地悪に問い返され、何も言えなくなる。

腕を伸ばすと、教官がサイドテーブルから何かを取り上げ、私の口元へと持ってくる。

(口紅‥有名なブランドのだ。かわいいピンク‥)

サトコ
「どうして‥」

加賀
今のお前にはこのくらいの色で充分だ

教官が軽く、唇をついばむ。

加賀
もっと濃い色が似合う、いい女になれ

サトコ
「なれるでしょうか‥」

加賀
テメェ次第だ
何もつけてない唇もいいけどな

もう一度、教官がキスをくれる。
そのまま、顎に、首筋に、肩に‥と、柔らかい唇が下りてきた。

サトコ
「今日は、これ以上は無理です‥」

加賀
軟弱だな

サトコ
「教官が意地悪しすぎなんですよ‥」

ふてくされる私を笑うと、今までで一番、優しく唇が重なった。

加賀
で?

サトコ
「はい‥?」

加賀
いつまで、2人きりの時も『部下』でいるつもりだ

その言葉の意味がわからず教官を見つめると、フッと口の端を持ち上げる。

加賀
教官、じゃねぇ
2人の時は、ただの男だ

サトコ
「あ‥」

(それって‥名前で呼んでいいってこと?でも‥な、なんて?)

サトコ
「‥‥‥」

加賀
‥‥‥

サトコ
「ひょ‥」

加賀
‥‥‥

サトコ
「ひょ、ひょひょひょ‥」

加賀
気持ち悪ぃ

サトコ
「すみません‥」
「‥加賀、さん」

小さく呼ぶと、教官が少し呆れたように笑う。

加賀
テメェなら、そんなとこか
メリークリスマス‥サトコ

サトコ
「メリークリスマス‥」

結局そのまま、教官と一緒にベッドに沈み込んだ私だった‥

Happy  End

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