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クリスマス 石神2話

石神教官が出張に行ってから、数日後。
期末考査の結果が、廊下に貼り出された。

鳴子
「考査の結果を廊下に貼り出すなんて、見せしめもいいところよね」
「平均以上はとれているはず‥と、信じたいわ‥」

サトコ
「はは‥」

(私も平均以上、とれてますように‥!)

私たちは貼り出された結果に、目を通していく。

サトコ
「あ‥!」

上から8番目のところに『氷川サトコ』と名前が書かれていた。

鳴子
「やったじゃん、サトコ!8位なんてすごいよ!」

サトコ
「うん、ありがとう!鳴子はどうだった?」

鳴子
「私は‥真ん中よりちょっと上くらいかな?思っていたよりはできてたみたい」

サトコ
「ふふ、よかったね!」

鳴子
「サトコと勉強したおかげだよ~。わからないところ、教えてくれたもんね」

サトコ
「そんな、大袈裟だよ。私も‥その、教えてもらうことが多かったし」

鳴子
「教えてもらうって‥石神教官から?」

サトコ
「うん。教官の時間がある時に、教えてもらったんだ」

鳴子
「いいなぁ~。補佐官の特権ってやつ?」
「私も教官たちと二人きりで勉強を教えてもらいたい~!」

サトコ
「な、鳴子‥」

鳴子
「サトコも早く石神教官に伝えたいんじゃない?あ、今は出張中だっけ」

サトコ
「うん。今回の出張は、結構長引きそうなんだって」

(私も早く教官に結果を伝えたいな‥)
(連絡したいけど‥任務中だから、迷惑になっちゃうよね‥)

そんなことを考えていると、ポケットに入っている携帯が着信を告げた。

(あっ、メール‥石神教官からだ!)

私は慌てて受信ボックスを開き、メールを確認する。

サトコ
「『26日には戻る』‥?」

鳴子
「うん?どうしたの?」

サトコ
「あ、石神教官からの連絡」
「予定より早く任務が終わりそうだって」

(26日には教官と会えるんだ‥!)
(クリスマスを一緒に過ごせないのは残念だけど‥)
(でも、早く頑張って勉強した結果を報告したいな)

鳴子
「ふっふっふ‥サトコさん、うれしそうですね?」

サトコ
「え‥?」

鳴子
「顔がニヤついてるわよ」

サトコ
「そ、そんなことは‥」

鳴子
「大丈夫よ。ちゃ~んとわかってるから」

(な、鳴子が怪しい笑みを浮かべている‥!)

サトコ
「そ、その!私は別に‥」
「そう!思ったより早く、教官に報告できるのがうれしくて!」

鳴子
「はいはい、わかってるって言ってるでしょ?」

サトコ
「うう‥」

鳴子
「あ、そういえば私、課題の提出があるんだった。先に戻ってるね」

サトコ
「う、うん‥」

(鳴子は勘が鋭いからな‥ボロを出さないようにしないと‥)

鳴子の背中が見えなくなり、私は視線を携帯に戻す。

(教官とメールするの、一週間ぶりだっけ)
(任務で忙しいはずなのに、少しでも私のこと気にかけてくれてうれしいな‥)
(まだ任務で忙しいだろうけど‥思い切ってメールしてみよう!)

私は期末考査の結果も含めて、簡潔にメールをする。

(こういうときは、長々とメールするよう簡潔に書いた方がいいよね)

それからしばらくの間待つも、教官からメールの返信はなかった。

(任務中だったし‥仕事だから、戻り時間の連絡だったのかな‥)

仕方がないと思いつつ、私は少しだけ肩を落とした。

クリスマス会当日。

黒澤
みなさん、グラスは持ちましたね?それでは‥今日は思いっきり楽しみましょう!乾杯!

全員
「かんぱ~い!」

黒澤さんの音頭で乾杯をし、パーティーが始まった。

黒澤
いや~、それにしても来れない方がいて残念ですね

颯馬
石神さんだけじゃなく、難波さんも加賀さんも急に仕事が入ってしまいましたからね

サトコ
「鳴子もダメになっちゃいましたし‥」

東雲
あーあ、オレも仕事入れればよかった

黒澤
も~、何言ってるんですか!
難波さんも加賀さんも、そしてそして石神さんもいないということは
ハメを外し放題ということですよ!?

後藤
黒澤‥

黒澤
!?
まさかの後藤さんがお目付け役!?

後藤
石神さんからはしっかりお前の監督をするように言われているからな

黒澤
わ~ん、サトコさん!後藤さんが怖いです!

サトコ
「く、黒澤さん‥」

(私じゃどうしようもないです‥!)

東雲
あ、サトコちゃんが『私じゃどうしようもない』って言ってるよ

サトコ
「し、東雲教官!心を読まないでください!」

東雲
サトコちゃんはわかりやすいからね
向いてないんじゃない?この仕事

サトコ
「う‥」

東雲
あ、分かりやすさで言ったら、後藤さんも同じか
後藤さん、何気に今日のパーティー楽しみにしていましたよね?

後藤
別に‥

黒澤
おおっ、本当ですか!?それは発案者としては嬉しい限りです!
ささ、今日は無礼講ということで!

時間が経つにつれ、パーティーは盛り上がりを見せる。

黒澤
せっかくですし、みなさんで写真を撮りませんか?

颯馬
たまにはこういうのもいいでしょう

黒澤さんがスマホを構え、全員で写メを撮る。

黒澤
皆さんにも送っておきますね

サトコ
「ありがとうございます」

東雲
‥ねぇ、キミってメール送らないの?

サトコ
「送るって‥誰にですか?」

東雲
そんなの決まってるじゃん、石神さんに、だよ

<選択してください>

A: 送る

(石神さんにメールを‥?)

サトコ
「送りたい、ですけど‥」

東雲
じゃあ、今すぐ送ろうよ

サトコ
「でも、任務中だったら迷惑になるんじゃ‥」
「って、東雲教官‥?どうして、私が石神教官にメールを‥」

B: 送らない

(送りたいとは思うけど、教官は任務中だし‥)

サトコ
「送るのは止めておきます」

東雲
なんで?石神さんが任務中だから?
それとも、カレを応援してる私ってばしおらしい‥って感じ?

サトコ
「‥あの、仰ってる意味がよくわからないです」

(ん?そういえば、なんで石神教官にメールを送るの勧めて来るの‥?)

再び心を読んだかのように、東雲教官はニヤリと意味深な笑みを浮かべる。

C: 迷う

(石神教官に、メール‥送ってもいいのかな?)
(送りたいとは思うけど、任務中だし‥う~ん‥)

サトコ
「って、どうして私が石神教官に‥」

東雲
迷うくらいなら、オレが送ろうか?
石神さんだって、クリスマスパーティー楽しみにしてたかもよ

(あ、そっち‥)

黒澤
ナイスアイディアです!
さ、サトコさん!送っちゃいましょう!ちゃちゃっと

サトコ
「ちょ、送るなんて私、言ってな‥」

黒澤
大事な補佐官からのメールですよ?
うれしくないわけないじゃないですか!そうですよね、後藤さん?

後藤
‥まぁ、別に

颯馬
フフ‥そうですね。石神さんの喜ぶ姿が目に浮かびます

サトコ
「そ、颯馬教官まで‥それに任務中に贈られても迷惑なんじゃ‥」

黒澤
そんな細かいこと気にしてたらダメです!ほら、オレも石神さんたちに送りますから!

黒澤さんはそう言って、さっきの写メを欠席しているメンバーに送った。

黒澤
ほら、オレも送ったんですからいけますよ!

サトコ
「そ、そういう問題じゃありません!」

(な、なんでみんな、ここまでして‥)
(ま、まさか、私たちのことに気づいて‥)

サトコ
「な、なんでそこまで、石神教官に‥?」

黒澤
教官と補佐官は仲良しな方がいいですからね!ね、歩さん?

東雲
使えないヤツはいらないけどね

(うぅ‥二人とも‥すごく楽しそう‥)

でも、結局‥メールは送れないままで‥



それからパーティーは進み、解散の時間となる。

(教官、仕事終わったかな?)

チラリと手に持ったスマホを覗くが‥特に着信はない。

居酒屋からでたところで、後藤教官から声を掛けられた。

後藤
氷川、寮まで送っていく

サトコ
「え?」

後藤
‥石神さんに頼まれてる

(石神教官‥忙しいのに‥)

あの万年筆で‥教官は満足してくれただろうか。
もっと他にできることがあれば‥

サトコ
「あ‥」

後藤
なんだ?忘れものか?

サトコ
「いえ、そうじゃなくて‥」
「後藤教官、先にお帰りください」

後藤
は?

サトコ
「私、行きたい場所があるんです」

後藤
こんな時間にか?

サトコ
「はい‥どうしても、今日じゃないとダメなんです」

後藤
まぁ‥それなら‥気をつけろよ

サトコ
「はい、ありがとうございます」

私は後藤教官にお礼を言って、居酒屋をあとにした。



みんなと別れた後、私は石神教官と来たいと思っていたクリスマスツリーの前にやってきた。

サトコ
「綺麗‥」

(教官と二人で見に来たかったなぁ‥)

私はツリーの写メを撮ると、メール画面を開き添付する。

(‥もう、終わってるかな?)
(メール、してみてもいいかな‥)

居酒屋で後押しされたことを思い出す。
時折吹く冷たい風は、いつもは肌が痛いのに、今日だけは背中を押してくれるようだった。
少しでも、教官と一緒に‥

サトコ
「『メリークリスマス!一緒に見れましたね』」
「送信、っと」

(教官、見てくれるといいな)

今までのことを思い返すだけで、心が温まっていくように感じる。

サトコ
「あっ‥」

思い出にひたっていると、クリスマスツリーが消灯した。
辺りは真っ暗になって、ツリーを見ていたカップルたちが、徐々に帰り始める。

(終わっちゃった‥)

震えないスマホに連絡がないことがわかっていても、液晶画面をチラチラと覗いてしまう。
迷惑だった?そうじゃなかった?
きっと、明日になればどうでもいいことのはずなのに、
今はそれだけが‥
それだけのことが、頭を占めていた。

サトコ
「私も帰ろうかな‥」

???
「‥悪い、遅くなった」

ふわりと後ろから抱きしめられ、愛おしい人の声がした。

サトコ
「どうして‥」

教官の温もりを感じながら、ポツリと漏らす。

石神
明日帰る予定を繰り上げて、戻ってきた
黒澤から厭味な連絡がきたし‥
そうしたら、お前からもメールがきたからな

振り返ると、少しだけ顔色の悪い教官の顔があった。

サトコ
「おつかれさまでした」
「すみません、私が呼んじゃったみたいで‥」

石神
‥氷川に会うためなら、これくらいどうってことない
メリークリスマス‥って、遅くなってしまったが

微笑む教官の顔が、徐々にぼやける。

サトコ
「教官っ‥!」
「本当は会いたいって‥一緒にいたいって思ってました」

石神
すまない‥寂しい思いをさせた

サトコ
「違うんです!」
「いえ、そうなんですけど‥」
「違‥」

石神
ああ、わかってるから‥落ち着け

苦笑いをしながら、教官は私と向き合い、そして再び抱きしめてくれた。

サトコ
「こうして会いに来てくれて‥本当にうれしいです」

石神
俺も‥嬉しいよ、お前と会えた

教官は、いつもは見せない穏やかな笑みを浮かべ、私の頭を優しくなでる。

石神
氷川‥これを受け取ってもらえるか?

差し出されたのは、大きくて真っ赤なバラの花束。

サトコ
「これ‥」

石神
用意しようと思ったんだが‥間に合わなくてな
花屋ぐらいしかやってなかった

<選択してください>

A: うれしいです

サトコ
「こんなに綺麗な花束‥すごく、うれしいです」

石神
そうか‥喜んでもらえたならよかった

教官は私の言葉に、ほっと息をつく。

サトコ
「だけど、私‥」

B: 無理しないでください

サトコ
「ありがとうございます」
「でも‥あまり、無理はしないでください」

石神
これくらい、どうってことない

サトコ
「でも‥無理をして倒れたらと思うと‥」

石神
俺の心配をしてくれてるんだな‥ありがとう

サトコ
「教官、私‥」

C: 石神教官を見つめる

サトコ
「教官‥」

(どうしよう‥うれしくて、言葉が出ないよ‥)

私は石神教官をじっと見つめた。

石神
‥‥‥

教官はそんな私を、優しい眼差しで見つめ返す。

サトコ
「教官‥私‥」

サトコ
「‥プレゼントよりも、こうして教官が来てくれたことが一番うれしいです」
「こうして会えただけで、胸がいっぱいで‥」

会えてうれしいことと、今まで会えなくて寂しかったという想いが混ざり合い、涙が頬を伝う。
教官は、私の頬に流れる涙を優しく指で拭った。

石神
こんなに冷えて‥

そして教官は、私の頬を両手で包み込む。

サトコ
「ふふ、温かい‥」

教官から伝わってくる温もりに、ほうっと息をついた。
その瞬間、再びクリスマスツリーが点灯する。

サトコ
「石神教官‥おかえりなさい」

ひゅっ、と息を飲む音が聞こえたと思ったら‥
気づいた時には、奪うように唇を重ねられていた。
人目もはばからない熱いキスに、私の心は囚われていく。

頬を大きく温かい手に包まれながら、教官と額を突き合わせる。

石神
なんで、お前はそういう可愛いことを‥
‥たまらなくなるだろう

私たちは綺麗なイルミネーションの中、何度も何度もキスを繰り返した。



私たちは石神教官の家にやってくると、寄り添い合うようにソファに座る。

石神
期末考査、よく頑張ったな

サトコ
「はい‥あの、任務中にメールを送ってご迷惑ではなかったですか?」

石神
任務中に見るわけないだろう

サトコ
「た、確かにそうですよね」

(なんだ‥変なこと、気にしちゃった)

石神
ただ‥
戻ってきたときに、お前からのメールがあるのは嬉しいな

サトコ
「!」
「ふふ、それならよかったです」

教官は私の頬を撫でると、優しく唇を塞いだ。
熱い吐息が絡み合い、深くなっていくキスに息が絶え絶えになる。

サトコ
「教官‥」

石神
期末考査で、結果を出したご褒美だ

サトコ
「きゃっ‥」

教官は微笑みながら、私の身体をゆっくりソファに押し倒す。
そして私の身体を強く抱きしめ、キスを落としていく。

サトコ
「っ‥」

教官の唇が触れる度、私の身体は熱を持っていく。
そしてもう一度唇が触れ合うと、私たちの甘い夜が幕を開けた‥

サトコ
「う、ん‥」

石神
‥起きたか?

(あ、ここ‥ベッド‥?そうか、私たちは昨日‥)

昨日の夜のことを思い返し、頬に熱が上がる。

石神
‥今更、そんな恥ずかしがることもないだろう

サトコ
「だ、だって‥」

石神
だから、そんな反応をされると‥可愛すぎて困るんだ

サトコ
「ん‥」

教官は苦笑いしながら、私の唇に触れるだけのキスをした。

石神
今日は休みだろう?俺もオフだから‥
氷川のプレゼントを買いに行こう

サトコ
「え?プレゼントなら、もうもらいましたよ?」

石神
俺の気がすまない
せっかく用意していたレストランもダメになったしな

サトコ
「ふふ、教官、食いしん坊ですね」

石神
そうかもな
それに‥今日はお前を甘やかしたいんだ

サトコ
「!」

石神
いいだろう?

私の身体に腕を回し、教官の顔がゆっくりと近づいてくる。
そしてお互いの顔がゆっくりと近づき、私たちは少しだけ長いキスをした‥

Happy  End

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