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クリスマス 颯馬1話

颯馬教官の宛名を見て、私はドキドキしながらメールを開く。

颯馬
パーティーの後、時間はありますか?
どこか行きたいところがあれば、ぜひ

サトコ
「!!」

(これは‥お誘いメール!)
(颯馬教官と、二人で過ごせるんだ!)

教官からのメールに、先程までの不安がどこかに吹き飛ぶ。

(クリスマスの夜に、教官と二人きり‥ふふ、どこがいいかな)

私はウキウキした気分で、どこに行きたいか考える。
スマホで調べてるうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。

翌日。
私はレポートを提出するために、教官室へ向かっていた。

(颯馬教官と行きたいところなんてたくさんあるし、迷うなぁ)

サトコ
「‥ん?」

(なんだか、教官室が騒がしいような‥)

サトコ
「何かあったのかな‥?」

私は首をかしげながらドアをノックし、教官室に入った。

教官室に入ると、教官たちの他に黒澤さんがいた。

黒澤
あっ、サトコさんこんにちは!ちょうどいいところに来ましたね

サトコ
「お疲れ様です。あの、ちょうどいいところって?」

黒澤
クリスマスパーティーの話をしていたんです

東雲
透が張り切ってて、当日はプレゼント交換をしようって言い出したんだよ

加賀
くだらねぇ‥

黒澤
くだらなくなんかないですよ!
クリスマスパーティーといったら、プレゼント交換は鉄板ですよね!ね、サトコさん?

黒澤さんから話題を振られ、教官たちから視線を受ける。

サトコ
「確かに、友達とクリスマスパーティをした時は、プレゼント交換してました」

黒澤
ほらほら、オレの言った通りじゃないですか!

颯馬
プレゼント交換といっても、この面子で‥ですよね?

後藤
ほぼ男しかいないだろ

黒澤
サトコさんと佐々木さんもいます!大丈夫です、絶対に楽しいですから!

石神
‥‥‥

黒澤
って、そんな呆れたような目で見ないでください!

颯馬
まぁ、黒澤は一度言い出したら聞かないですし
ここはプレゼント交換をするということでいいですか?

黒澤
周介さん‥!ありがとうございます!
サトコさんも、気合い入れて選んでくださいね!

サトコ
「わ、わかりました」

(プレゼント交換、か‥)

私はレポートを提出すると、教官室を後にした。

放課後になり、私は鳴子と寮に向かって歩いていた。

鳴子
「へぇ、プレゼント交換ね。なんだか楽しそうじゃない」

サトコ
「こんなの久しぶりだし‥何プレゼントすればいいか‥」

鳴子
「ん~、教官に当たる確率がかなり高いから‥やっぱり無難なものがいいのかなぁ」

サトコ
「無難なものか‥」

鳴子
「それか、面白系で攻めるとか!」

サトコ
「面白系?」

鳴子
「そうそう!いつもは真面目な生徒」
「だけど茶目っ気のあるプレゼントチョイス‥」
「これで教官の心をつかんだも同然よ!」

サトコ
「うーん」

(どうなんだろう?)

鳴子
「だけど、面白系で攻めるにしても、なかなかいいのが思い浮かばないのよねぇ‥」
「サトコは何か、面白系のもの持ってたりしない?」

サトコ
「面白いものかぁ‥」
「そういえばこの前、四文字熟語のトイレットペーパーをお店で見かけたよ」

鳴子
「四文字熟語のトイレットペーパー!?へぇ、そんなのがあるんだ‥」

女性
「ねぇ、ちょっといい?」

校門を出ようとしたところで、少しだけ化粧のキツイ女の人に声を掛けられる。

サトコ
「はい、どうされましたか?」

女性
「周介さんいる?」

鳴子
「周介さん?」

サトコ
「‥颯馬教官のことでしょうか?」

女性
「そうよ。ちょっと、呼び出してもらっていい?」

サトコ
「どういった御用でしょうか?」

女性
「やだ、怖い顔しないでよ」
「近くに来たから、クリスマスのお誘いに寄ったのよ」

(クリスマス?)

女性
「まぁ、会えるのはクリスマスだけじゃないし、いっか」

女性は「じゃあね」と軽く言って、その場を後にした。

鳴子
「協力者の人かな?」

サトコ
「‥たぶん」

鳴子
「‥どうしたの?」

サトコ
「ううん。なんでもないよ」

鳴子
「そう?ならいいんだけど‥」

サトコ
「それよりも、クリスマス会のプレゼント!」
「いつ買いに行く?」

私は心のモヤモヤを悟られないように、笑顔で話し始めた。

翌日。
昼休みになり食堂に行くと、食堂のおばちゃんと話している颯馬教官の姿があった。

おばちゃん
「ねぇ、クリスマスの予定は決まっているの?」

颯馬
はい。教官の皆さんでクリスマスパーティーをする予定なんです

おばちゃん
「へぇ、それはまた豪華なパーティーだねぇ」
「せっかくのクリスマスだし、颯馬ちゃんと過ごせたらと思ってたよ」

颯馬
フフ、ありがとうございます

(しょ、食堂のおばちゃんまで‥!?)

鳴子
「さすが颯馬教官!食堂のおばちゃんからも、クリスマスの予定を聞かれるとはね」

<選択してください>

A: 鳴子も颯馬教官と‥?

サトコ
「あの‥もしかして、鳴子も颯馬教官と‥?」

鳴子
「一緒にクリスマスを過ごせたら最高よね」
「‥もちろん颯馬教官に限らず、どの教官でもそう思うけど!」

サトコ
「なるほど」

B: モテモテだよね

サトコ
「颯馬教官、モテモテだよね」

鳴子
「あのルックスだけじゃなくて、中身も優しくてかっこいいからね」
「おばちゃんも昨日の女の人も、教官を誘うのは当たり前って感じかな」

C: 教官に話しかける

(なんだか、胸がぎゅっとする‥)

私は教官に話しかけようと、口を開く。

サトコ
「あの‥」

颯馬
‥‥‥

一瞬だけ、颯馬教官と目が合い微笑まれる。

サトコ
「‥‥‥」

(‥ううん、やっぱりやめよう。颯馬教官がモテるのは、最初からわかってたことだし‥)

鳴子
「サトコ?どうしたの?」

サトコ
「ううん、なんでもないよ」

サトコ
「颯馬教官って、今までどんなクリスマスデートをしてきたのかな?」

鳴子
「おっ、やっぱりサトコも気になるんだ?」

サトコ
「う、うん‥」

鳴子
「颯馬教官はきっと、大人なデートに連れてってくれるんだろうな‥」
「私も彼氏が出来たら、イルミネーション見に行きたいっ!」
「夜景でもかまわない!」

サトコ
「クリスマスにイルミネーションかぁ‥」

鳴子
「定番って言ったら定番かもしれないけど」
「せっかくのクリスマスなんだしロマンティックなところに行きたいよね」
「あっ、クリスマスに東京タワーでハート型の点灯式があるんだって!」
「そういうところに行ってみたいな~」

(ロマンティック、か‥)
(颯馬教官、これまでどんなクリスマスを過ごしてきたんだろう‥)
(たぶん、っていうか絶対、経験豊富だし、満足させられるのかどうか‥)
(それに、まだクリスマスのプレゼントも決めてないし‥)

サトコ
「はぁ‥」

鳴子
「ん?どうしたの?」

サトコ
「その‥男の人にプレゼントを渡すとしたら、何がいいかなって‥」

鳴子
「えっ!?サトコ、もしかして‥」

サトコ
「違うよ!その、お世話になってる人なんだけど‥」

鳴子
「ふ~ん、そうなんだ‥」

口ではそう言いながらも、鳴子の目は楽しそうに笑っている。

鳴子
「やっぱ、男の人だったら、手作りがいいんじゃないかな」

サトコ
「手作り?」

鳴子
「うん。好きな人が自分のために作ってくれたら、絶対に嬉しいはずだって」

(手作り、か‥)



私は放課後になると、本屋の手作りプレゼントコーナーにやってきた。

(手作りって言っても、何にすればいいんだろう)
(編み物系は、ほとんどやったことないし‥)
(ソーイング‥)
(いや、違う違う。うーん)

いろいろな本を見て回っていると、ある本が目についた。

(『誰でも簡単!手作りマフラー』‥)

パラパラとページをめくると、いかにも簡単!といった風に説明が書いてある。

(‥こ、これなら、私でもできるかもしれない)

気づくと、その本を手にしてレジに並んでいた。



翌日。
講義が終わると、千葉さんに声を掛ける。

サトコ
「あの、千葉さん!ちょっといいかな?」

千葉
「ん?どうしたの?」

サトコ
「ちょっと採寸をさせてほしいんだけど‥」

千葉
「採寸って、オレの?」

サトコ
「うん」

(颯馬さんに贈るから、男の人に合わせた方がいいし‥)

千葉
「う、うん‥別にいいけど‥」

サトコ
「ありがとう!」

私はメジャーを取り出すと、採寸を始める。

(千葉さんのサイズはこれくらいだから‥)

千葉
「‥何か作るの?」

サトコ
「うん。お世話になってる人に、ちょっとね」

千葉
「お世話になってる人‥」

サトコ
「どうかした?」

千葉
「いや、なんでもないよ!」

サトコ
「‥よし、これでいいかな。千葉さん、本当にありがとう」

千葉
「‥どういたしまして」

(千葉さん‥顔が赤いけど、どうしたんだろう?)



私は寮に戻ると、さっそく編み物を始めた。

サトコ
「えっと、まずは作り目を‥」

本を読みながら、少しずつ進めていく。

(うぅ、けっこう難しいかも‥)



数日後。
連日、夜遅くまで編み物をしているせいか、何度も何度もあくびが出た。

サトコ
「ふわぁ‥」

(っ、いけない‥今は加賀教官の講義なんだから、あくびなんかしたら‥)
(眠気覚ましのツボを‥)

サトコ
「えいっ‥えいっ」
「すぅ‥すぅ‥」

スコーン!!

サトコ
「痛っ!?」

額に何かが勢いよく当たり、痛みで目が覚める。

(これ‥ホワイトボードのマーカー‥?)

加賀
‥俺の講義で寝るとは、いい度胸じゃねぇか

サトコ
「か、加賀教官‥」

(ま、まずい!)

加賀
覚悟は出来てんだろうな?

それから講義が終わるまでの間、私は集中的に攻められた。

放課後になると、中庭で編み物の続きを始める。

サトコ
「はぁ、酷い目に遭った‥」

(でも、あと少しでできるし‥頑張らなきゃ!)

颯馬
氷川さん?

サトコ
「そ、颯馬教官!?」

(ど、どうしてこのタイミングで!?)

颯馬教官が通りかかり、私は慌ててマフラーを隠す。

颯馬
何をしていたんですか?

<選択してください>

A: 誤魔化す

サトコ
「い、いえ!何も!!いい天気だなぁって」

颯馬
もう夕方ですが‥

サトコ
「あ、そういえばそうですね」

颯馬
フフ、やはり貴女は面白い方だ
そして、とても素直ですね

B: 正直に言う

サトコ
「え、えっと、これは‥」

(‥ううん、やっぱり渡す時まで秘密にしていたいな)

サトコ
「や、やっぱりなんでもないです!」

颯馬
そうですか‥

C: 沈黙する

(な、なんて言えばいいのかわからないよ‥!)

サトコ
「‥‥‥」

颯馬
隠し事、ですか?

サトコ
「そんな、大袈裟なものじゃ‥」

颯馬
深くは詮索しませんが‥貴女のその態度が気になりますね
もしかして、他の男性のことを考えてたり‥

サトコ
「ち、違います!」

慌てて否定すると、微笑む教官と目が合った。

サトコ
「あ‥」

颯馬
すみません。少しからかってしまいました

教官はそう言いながら、くすっと意味深な笑みを浮かべる。

颯馬
あまり長くここにいては風邪をひいてしまいます
ほどほどにしてくださいね?

サトコ
「は、はい!ありがとうございます」

颯馬教官は笑みを浮かべたまま、去って行った。

サトコ
「ふぅ、危なかった‥」

(でも、教官の言う通り今日は冷え込むし‥後は寮に帰ってやろう)

私は編み途中のマフラーをしまうと、寮へ向かった。

クリスマス前日。
無事に教官のプレゼントを編み終えた私は、鳴子と一緒に食堂にいた。

(無事にマフラーが完成してよかった。颯馬教官、喜んでくれるかな?)

鳴子
「サトコ、何考えてるの?顔が赤いよ」

サトコ
「そ、そう‥?」
「そうだ、明日のクリスマスパーティーのことなんだけど‥」

鳴子
「そのことで、サトコに話があるの」
「あのね、明日のパーティーなんだけど、行けなくなっちゃったんだ」

サトコ
「え、そうなの?」

鳴子
「本当、ごめん!どうしても外せない用が出来ちゃって‥」

サトコ
「そっか‥それなら仕方ないよね」

千葉
「何の話?」

千葉さんは私の隣にトレイを置き、席に座る。

サトコ
「クリスマスの話だよ」

千葉
「あー、そっか。明日はもうクリスマスだっけ」

鳴子
「千葉さんは優しいし、誰かと特別なクリスマス、過ごすんじゃない?」
「毎年、女の人からクリスマスプレゼントをたっくさんもらってたりして」

千葉
「なんだよ、厭味攻撃か?」

(クリスマスプレゼント、か‥)
(そ、そういえば‥教官のプレゼントに頭がいっぱいで)
(クリスマスパーティーのプレゼント、考えてなかった!)

何も思いつかなかったら、鳴子が言ってた面白系の物を買いに行こうと心に決める。

鳴子
「サトコ?どうしたの?」

サトコ
「う、ううん!なんでもないよ!」

私はふとあることを思いつき、千葉さんに聞いてみる。

サトコ
「男の人って、何をもらうとうれしいの?」

千葉
「もらって嬉しいもの?」
「うーん、なんでも嬉しいと思うけど‥」
「手作り系はちょっと重いかな?」

サトコ
「え‥」

千葉
「手編みのマフラーとか」

サトコ
「ええっ!?」

千葉
「どうかした?」

サトコ
「え、いや、何でもないよ。ははは」

(重いって言った?)
(今、重いって言ったよね?)

鳴子
「えー、そういう冷たい男子、イヤだなぁ」

千葉
「なんだよ。でも、佐々木だって面倒だろ?手作りとか」

鳴子
「でも、バレンタインは手作りがいい、とか言うんでしょ?」

千葉
「う‥そ、それはそうだけど」

(も、もっと早くリサーチするべきだった‥!)
(何してたのよ、私‥!!)

千葉
「あ、でも‥氷川からなら何でも嬉しいけど‥」
「って氷川?」

鳴子
「おーい、サトコ?」
「‥ダメだ、考え込んじゃってるみたい」

(て、手編みって思いの‥?ど、どうしよう‥!)
(だけど、もうクリスマスは明日だし‥)

それから私はプレゼントのことばかりに頭が行ってしまい、一日中うわのそらだった。

to be continued

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