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クリスマス 颯馬2話



パーティー会場である居酒屋に、教官が勢ぞろいしていた。

黒澤
皆さん、揃いましたね。それでは、難波さん、どうぞ!

難波
あー、細かいことはおいといて‥
適当に楽しめよ。乾杯

全員
「かんぱーい!」

颯馬
フフ、こうしてみんなで飲むのはいつ以来でしょうか」

東雲
はぁ‥オレはさっさと帰りたいですけどね

加賀
同感だな

黒澤
えー、そんなこと言わないでくださいよ~!ね、サトコさん

サトコ
「は、はい‥私は皆さんとパーティーが出来てうれしいです」

東雲
へぇ、皆さんと‥ね

東雲教官は、怪しい笑みを浮かべる。

サトコ
「た、確かに‥鳴子は来れなかったですけど‥」

東雲
ふーん
あ、エビフライ食べよ

(もう興味なくしてるし!)

黒澤
後藤さんもほら、じゃんじゃん飲んでください!

後藤
ちょっ、気をつけろ。こぼれるだろ

難波
加賀もだが‥石神まで参加するとは思わなかったな

石神
室長が参加されるなら、私も参加しないわけにもいきませんので

難波
ったく‥相変わらず固い奴だな

黒澤
ささ、サトコさんもどうぞどうぞ!今日は無礼講ですから

サトコ
「あ、ありがとうございます!」

黒澤さんがグラスにビールを注いでくれる。

颯馬
サトコさん、黒澤はああ言ってますが
飲みすぎないように気を付けてくださいね?

教官はニッコリと笑みを浮かべると、私だけに聞こえるように囁く。

颯馬
この後のクリスマスデートが楽しめなくなってしまいますから

サトコ
「!」

颯馬
顔を赤くしたら、バレてしまいますよ

サトコ
「‥颯馬教官、意地悪しないでくださいっ」

颯馬
フフ、なんのことでしょうか

笑みを浮かべたまま、教官はお酒を口にする。
それからなんだかんだ言いつつもパーティーは盛り上がりをみせ、
頃合いを見計らって、黒澤さんが声を上げた。

黒澤
皆さん、注目~!これからプレゼント交換を行います!

後藤
本当にやるんだな

黒澤
後藤さん、そんなこと言ってますけど‥
結構真面目にプレゼントを選んだこと、知ってるんですよ?

後藤

黒澤
パーティーが始まる前に、プレゼントは集めました
それぞれに番号を付けたので、皆さんはこのくじを引いてください
当たった番号のものが、プレゼントになりますよ~!

颯馬
フフ、どれが当たるか楽しみですね

サトコ
「そ、そうですね‥」

(私のプレゼント、結局間に合わなくて四文字熟語のトイレットペーパーなんだよね‥)

皆がくじを引くと、それぞれにプレゼントが行き渡る。

黒澤
それでは、プレゼントオープン!

黒澤さんの合図で、みんながプレゼントを開けていく。

(私はプレゼントは‥あっ、ルービックキューブ‥)
(‥‥‥バラバラに崩してあるけど)

東雲
それ、キミになかなかお似合いのプレゼントじゃない?

サトコ
「これ、東雲教官ですか?」

東雲
なんだ、バレたの?つまんない
で?早く揃えてよ
制限時間5分ね

サトコ
「無茶言わないでください!」
「‥東雲教官はなんでした?」

東雲
オレはタンブラー
バッグの中で、濡れたら困るんだよね

(そうそう‥って、共感するようなこと言わないでよ!女子か!)

颯馬
私はウイスキーでした。しかも、かなりいいものですね

サトコ
「教官、ウイスキーお飲みになるんですか?」

颯馬
そんなにつよくありませんから、たしなむ程度です

(颯馬教官が酔っ払うところなんて、みたことないけど‥見てみたい)

颯馬
室長は何が当たりました?

難波
俺はこれだ

サトコ
「わぁ、オシャレなアロマチャームですね!」

難波
まさか、こんなものが当たるとはなぁ
おっさんが持ってても仕方ないし‥氷川、いるか?

サトコ
「ええ!?せっかく当たったんですから、室長が使ってください」

難波
‥俺が臭いってことか?

サトコ
「深読みしすぎです」

難波
ハハッ!そうか。それならよかった‥
ん?後藤は何が当たったんだ?

後藤
持ち歩き湯たんぽです。使い勝手はよさそうですね

難波
ハハ、よかったな

石神
‥‥‥

加賀
‥‥‥

サトコ
「あの‥教官たちは、何故黙っているのでしょうか‥?」

東雲
それぞれのプレゼント、見てみなよ

サトコ
「え‥?」

(石神教官が持っているのはイモ羊羹で、加賀教官が持っているのは抹茶プリン‥)

颯馬
お互いのものが当たったんでしょうね
だけど、食べ物だから粗末にできない、と

難波
ったく、変なところが真面目だな

東雲
ところで‥一番騒ぎそうな透がさっきから黙ってるのが気になるんだけど

サトコ
「‥‥‥」

(皆さんのプレゼントは私が用意したものじゃないから、もしかして‥)

私は黒澤さんをチラリと見る。

(や、やっぱり四文字熟語のトイレットペーパーはダメだったかな‥)

黒澤
‥た

サトコ
「あ、あの‥黒澤さ‥」

黒澤
やったー!見てください、これ!手編みのマフラーですよ!

サトコ
「え‥!?」

黒澤さんの手元には、私が颯馬教官のために編んだマフラーがあった。

(な、なんであのマフラーがここに!?)

黒澤
周さん、見てください!手編みのマフラーですよ!

颯馬
そう‥よかったね

黒澤
はい!

黒澤さんはよほどうれしかったのか、颯馬教官に見せびらかせている。

(ど、どうしよう‥あのマフラーは、颯馬教官のために編んだのに‥)

<選択してください>

A: 黒澤さんに言う

サトコ
「あ、あの‥黒澤さん。実は、それ‥」

黒澤
あ、サトコさん!見てください!手編みのマフラーですよ!

サトコ
「は、はい。そのマフラーなんですが‥」

黒澤
オレ、ちょうどマフラーがほしいって思ってたんですよ。うれしいな~

(ダメだ‥こんなに喜ばれたら言いづらい‥!!)

B: 颯馬教官に言う

サトコ
「あの、颯馬教官。あのマフラーなんですが‥」

颯馬
ええ、手作りだそうですよ。黒澤、すごく喜んでいますね

サトコ
「そ、そうですね‥」

ニコニコと笑みを浮かべている教官の周りに、なぜかどす黒いオーラを感じる。

(な、なんだか怒ってらっしゃる‥)

C: 黙って見ている

(黒澤さんに言えばいいのかな?でも、あそこまで喜んでいるし‥)
(颯馬教官に相談しようにも、他の教官たちに私たちの関係がバレる可能性が‥)

そんなことが頭の中をぐるぐる回り、結局何も言い出せなかった。

黒澤
わ~、あったかいなぁ~

黒澤さんはマフラーを巻き、ニコニコしている。

東雲
サトコちゃん、あのマフラーなんだけど‥
どうして『Z』って模様なんだろうね?

サトコ
「えっ‥!?」

(あっ!!)

『S』にしたつもりのイニシャルが、ひっくり返って『Z』になっていた。

(な‥なんたる、凡ミス‥っ!)

東雲
‥やっぱり、アレってキミのでしょ?

サトコ
「ななな、何を言ってるんですか?わ、私は別に‥」

東雲
ふーん、手編みのマフラーを作ったものの、間違えちゃったってわけか

サトコ
「だ、だから、それは‥」

颯馬
‥歩、このお酒、難波さんのお勧めだそうですよ。すごくいいお酒なんだそうです

東雲
‥本当だ。いい香りですね

颯馬
黒澤も、一杯どうですか?

黒澤
はい、いただきます!

東雲教官の意識がお酒に向かったことを確認すると、私はトイレに行こうとこっそり席を立った。



(はぁ、せっかく颯馬教官のために作ったんだけどな‥)

トイレから出てきてため息をついていると、颯馬教官の姿があった。

颯馬
サトコさん、少しいいですか?

サトコ
「颯馬教官‥」

颯馬
単刀直入に聞きます。あのマフラー、もしかして私のために編んでくれたんですか?

サトコ
「!?」

ニッコリと笑み浮かべる颯馬教官に、私は観念して本当のことを言う。

サトコ
「はい、そうです‥」
「だけど、何をどうしたのか‥間違えてしまったみたいで‥」
「初めて編み物をしたんです。颯馬教官のことを想って、頑張って‥」

颯馬
‥サトコさん

サトコ
「!」

颯馬教官の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
唇が触れそうになった瞬間、教官はフッと微笑んで顔を離した。

颯馬
‥ここでは誰かに見られてしまう可能性がありますね
早く、貴女にキスがしたいです

サトコ
「きょ、教官‥」

颯馬
‥さて、みんなのところに戻りましょうか

サトコ

「はい‥」

私たちは、みんながいる個室へと戻った。

みんなのところに戻ると、酔いつぶれて眠っている黒澤さんがいた。

サトコ
「く、黒澤さん?」

後藤
ったく、黒澤も歩も飲み過ぎだ

サトコ
「え?東雲教官も?」

東雲
ひょーごさ~ん、もーのめないよ~

サトコ
「し、東雲教官!?」

(東雲教官がここまで酔いつぶれるなんて‥どれだけ飲んだの!?)

加賀
チッ、なんで俺がこんなことを‥

颯馬
よほど、楽しかったんでしょうね

加賀
どっかの誰かのせいだろうが‥よっ!

加賀教官は舌打ちしながら、東雲教官をおんぶしている。
そんな二人を見ながら、颯馬教官は黒い笑みを浮かべていた。

石神
そろそろ、お開きにしましょう

難波
だな

石神教官が、黒澤さんの襟首を乱暴に掴んで引きずる。

颯馬
サトコさんは私が送っていきますね

後藤
いや、周さんもお疲れですよね?俺が送っていきます

サトコ
「!」

後藤
いいだろ、氷川

サトコ
「いえ、あの‥その!」

颯馬
大丈夫です。寮の方へ行く途中で寄りたい場所がありますし
空気を読んでください、後藤

後藤
え?

(そ、颯馬教官っ!?)

颯馬
ということで
私が送っていきますよ。サトコさん、行きましょう

サトコ
「は、はい‥」

私は颯馬教官に促され、居酒屋を後にした。

私たちは東京タワーが見える公園へやってきた。

サトコ
「あっ‥点灯式、終わってる‥」

東京タワーはいつも通りのネオンで光っていた。

(ハートの点灯、鳴子から聞いてみてみたいって思ってたんだけどな‥)

颯馬
すみません、時間を確認しておくべきでしたね

サトコ
「いえ、クリスマスパーティーの時間も押してましたから」

颯馬
黒澤たちがかなりはしゃいでましたからね
‥後でよく言っておきましょう

(きょ、教官からまた黒いオーラが出てる‥)

颯馬
サトコさん、話は変わりますが‥貴女にお願いがあります

サトコ
「なんですか?」

颯馬
これを‥

サトコ
「これは‥黒澤さんに渡ったはずのマフラー‥!?」
「どうしたんですか、これ!?」

颯馬
フフッ‥少し、ね?

(な、何を、どう少しっ‥!?)

颯馬
これを貴女から、ちゃんと渡してほしいんです

私は千葉さんが言っていたことを思い返す。

千葉
『手作り系はちょっと重いかな?』
『手編みのマフラーとか』

サトコ
「‥‥‥」

颯馬
サトコさん?どうしたんですか?

<選択してください>

A: 聞いてみる

サトコ
「颯馬教官、手編みのマフラーって‥」

(‥どうしよう、やっぱり聞けないよ)
(もし、重いって言われたら‥)

颯馬
どうかしましたか?

サトコ
「‥‥‥」

颯馬
サトコさん‥

B: 黙り込む

(聞きたいけど‥重いって言われたらと思うと、怖くて言えないよ‥)

私は颯馬教官を前に、黙り込んだ。

颯馬
サトコさん、話してくれないんですか?

サトコ
「すみません、私‥」

颯馬
‥‥‥

C: はぐらかす

サトコ
「あ、あの‥そのマフラーなんですが、本当は‥」

颯馬
「私のために編んでくれたんですよね?

サトコ
「そ、そうじゃなくて、実は‥」

颯馬
違うんですか?

(うっ‥そんな寂しそうな顔されると、何も言えないよ‥)

サトコ
「その‥手編みのプレゼントなんて、重たくないですか?」
「私、こういうこと、初めてなので‥」
「つい、気合いが入っちゃったんですけど」
「あとで千葉さんに伺ったら、ちょっと嫌そうだったというか‥」

颯馬
‥サトコさんは、千葉くんへのプレゼントを作っていたのですか?

サトコ
「ち、違います!颯馬教官のために‥」

颯馬
それなら、そんなことを気にする必要はありません
私は、貴女からのプレゼントだから、嬉しいんです

サトコ
「教官‥」

私はおずおずと、教官にマフラーを渡す。

サトコ
「これ‥教官のために編んだんです。受け取ってください」

颯馬教官は微笑みながら受け取ると、首にマフラーを巻く。

颯馬
ありがとうございます

綺麗な笑顔を浮かべた後、ゆっくりと私の唇に甘いキスを落とした。
名残惜しそうに唇が離れると、教官の後ろに東京タワーが見える。

サトコ
「またきっと、ハートの点灯式やりますよね‥」

(‥やっぱり、教官と一緒にハートのイルミネーション見たかったなぁ)

颯馬
サトコさん‥顔を上げてください

サトコ
「え‥?」

すると、颯馬教官は少しだけ照れくさそうに微笑み、顔の横に手を掲げた。

颯馬
貴女だけのハートを用意しました

その手には、ハート型のチャームがついたネックレスを持っていて‥。

サトコ
「これ‥!」

颯馬
本当は点灯式と一緒にお渡ししたかんたんですが‥
タイミングがズレてしまいましたね
これで今は、我慢していただけますか?

サトコ
「もらっても‥いいんですか?」

颯馬
フフ。貴女以外に差し上げるつもりはありませんよ

薄暗い公園に、ネックレスだけが輝いて見えた。

颯馬
ちょっとクサい台詞を言ってもいいですか?

颯馬教官は顔を赤らめながら、ゆっくりと口を開く。

颯馬
このハートは‥いえ、このハートも、私のハートも貴女のものです
ですからサトコのハートを、私にください

サトコ
「!」

颯馬
「‥‥‥」
「‥お、お返事いただいてもいいですか?
思ったより、恥ずかしい‥ですね‥

サトコ
「フフっ‥」
「あげます!全部、全部もらってください!」

颯馬教官は、真っ赤なまま笑顔になって頷いた。

颯馬
少し、動かないでくださいね?

颯馬教官は、私の首にネックレスをつけてくれる。

颯馬
うん、よく似合ってます

サトコ
「ありがとうございます」

私はそう言いながら、胸元にあるネックレスにそっと手を当てた。

それから私たちは、颯馬教官の家にやってきた。

颯馬
あ、そうだ。プレゼント交換で当たったウイスキーがあるんでした
よかったら、ご一緒にいかがでしょう?

サトコ
「ウイスキーはすぐ酔っちゃうので、苦手なんです‥」

颯馬
そうなんですか?それでは‥

颯馬教官はグラスを一つ取り出すと、ウイスキーを注ぐ。

颯馬
酔ったサトコも可愛いから‥
俺の前だけでは‥飲んでもらおうかな

そして口にウイスキーを含むと、私の顎を軽く持ち上げた。
颯馬教官は、口移しでウイスキーを飲ませてくる。
教官のキスの感触と、ウイスキーの苦い味が口の中に広がった。

サトコ
「きょ、教官‥」

颯馬
足りない?それじゃあ‥

今度はウイスキーを口に含まず、再び私の唇を塞ぐ。
最初は苦かったけど、次第に口づけは甘いものへと変わっていった。
度数の強いアルコールのせいで、唇にピリッとした刺激が走る。
敏感になった唇は重ねられたそれを、いつもよりもはっきりと印象づけていく。

サトコ
「まって‥っ」

颯馬
‥サトコ、メリークリスマス

そして私の耳元で甘く囁くように言うと、教官は私の身体をソファに押し倒す。
ウイスキーを飲んだせいか、キスのせいか‥頭がしびれていく感覚がした。

サトコ
「教官‥」

颯馬
サトコ‥名前で呼んで‥?

サトコ
「周介、さん‥」

颯馬
クスッ‥よくできました

颯馬教官‥周介さんはニッコリと微笑むと、私の身体をきつく抱きしめる。
そして私たちは、お互いを深く求め合って行った‥‥。

サトコ
「ん‥」

颯馬
おはようございます、サトコさん

サトコ
「周介、さん‥」

颯馬
フフ、名前で呼んでくれるのですね
昨日は、あんなにたくさん私の名前を呼んでもらいましたしね

周介さんは、チュッと軽くおはようのキスをすると、
私の胸元にあるハートのネックレスを触った。

サトコ
「そういえば‥黒澤さんには悪いことをしてしまいました」

颯馬
黒澤‥ああ、プレゼントのことですね
本当は何を用意していたんですか?

サトコ
「それが、用意するのを忘れていて‥」
「家にあった、四文字熟語のトイレットペーパーを‥」

颯馬
フフ、それはいいですね。黒澤なら、喜びそうです

サトコ
「そうでしょうか‥?」

颯馬
試しに渡してみますか?黒澤は今日、学校に来るはずですから

颯馬教官と教官室へやってくると、そこには黒澤さんがいた。
私はおずおずと、黒澤さんにトイレットーペーパーを渡す。

黒澤
こんな珍しいもの、本当にいいんですか?

サトコ
「は、はい‥よかったら、受け取ってください」

黒澤
わー、ありがとうございます!

(ほ、本当に喜んでる‥)

颯馬
ね、言ったでしょう?

サトコ
「は、はい!」

黒澤
これは使うの勿体ないですね~

東雲
うるさい、透
うー‥頭ガンガンする‥

黒澤
歩さん、見てください!このトイレットペーパー、すごくないですか!

東雲
だから、静かにしろって言ってるだろ

颯馬
フフ、相変わらずですね

サトコ
「そ、そうですね‥」

苦笑いしながらそう返す私の胸元には、ハートのネックレスが揺れていた‥‥。

Happy  End

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