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書き初め 石神1話

私は今日の寮監が誰なのか思い返す。

(確か‥今日の寮監は、石神教官だったよね)
(一緒に過ごす約束もしたいし‥よし!)

私はリンゴを幾つか持つと、軽い足取りで教官宿泊室へ向かった。

コンコン

サトコ
「氷川です」

石神
ああ‥少し待ってくれ‥

ガチャッ

石神
‥どうした?

サトコ
「実家からリンゴが送られてきたんです」
「教官にお裾分けしようと思って持って来ました」

石神
ありがとう
ああ‥せっかくだ。一緒に食べないか?

サトコ
「えっ、いいんですか?」

石神
ああ

サトコ
「ありがとうございます」
「教官、キッチンをお借りしていいですか?」

石神
ああ、頼んだ

(せっかくだし、普通に切るだけじゃなくて、いろいろな切り方をしてみようかな)

私は包丁を持つと、ウサギやチューリップ、ハート型など、色々な形に切っていく。

サトコ
「お待たせしました」

石神教官は私が切ったリンゴを見ると、ほうっと小さく息を漏らす。

石神
‥器用だな

サトコ
「せっかくだから、見た目も楽しい方がいいと思って」

教官は感心したように言い、ウサギのリンゴをつまんで食べ始めた。

石神
‥美味い

サトコ
「ふふ、よかったです」
「私もいただきますね」

私はチューリップ型のリンゴをつまみ、口元へ運ぶ、
リンゴの蜜の甘みが、口の中に広がった。

キャスター
『次のニュースです』

リンゴを食べていると、テレビがCMからニュース番組に変わる。

キャスター
『年末年始は大雪が予想されています。帰省される皆さんは‥』

石神
この予報だと、生徒たちの帰省が早まりそうだな

サトコ
「たしかに」

(大雪だと、交通機関も止まっちゃうだろうし‥)
(鳴子や千葉さんたちの帰省も早まっちゃうのかな‥)

石神
‥寂しそうだな

サトコ
「え?」

石神
そういう顔をしていたが‥違うのか?

<選択してください>

A: 寂しいです‥

サトコ
「はい‥やっぱり、友達がみんな帰省してしまうのは寂しいです」
「寮で1人になることなんて、初めてですし‥」

石神
そうか‥
‥だが、君は1人じゃないだろう?

サトコ
「え‥?」

石神
確かに生徒たちはみんな帰ってしまうが‥
教官は学校に残ることになっているからな
俺もいる

石神教官は少しだけ頬を染めながら、私から視線を逸らした。

B: 私なら大丈夫です

サトコ
「私なら大丈夫です」
「確かに、寮のみんなが帰省してしまうのは寂しいですけど‥」
「い、石神教官もいますから‥」

石神
‥‥‥

教官は私の言葉に少しだけ目を丸くし、顔を赤らめる。

石神
‥君は、いつだって直球だな

サトコ
「す、すみません‥!」

石神
フッ‥謝ることはない
佐々木たちの代わりにならないと思うが‥
なるべく、氷川と一緒にいられたらとは思う

C: 私も帰省したかった

サトコ
「私も帰省したかったです」

(久しぶりに、お母さんや地元の友達とも会いたかったし‥)

石神
寮に生徒が1人残るのは決定事項だからな
当たってしまったなら、仕方ない

サトコ
「そうですよね‥」

石神
‥そんなに落ち込むな

サトコ
「え‥?」

石神
地元に帰る機会ならいくらでもあるだろう。今回だけではないんだ

サトコ
「教官‥」

(これって、なぐさめてくれてるのかな‥?)
(でも‥教官たちもいるし、完全に1人ってわけではないもんね)

サトコ
「石神教官‥ありがとうございます!」

私はお礼を言い、リンゴをもう1つ、つまんだ。

数日後。
鳴子たちが帰省することになり、私はお見送りに来ていた。

サトコ
「鳴子、千葉さん、気を付けてね」

千葉
「ありがとう、氷川」

鳴子
「サトコも1人で寮に残ることになるけど、何かあったらすぐに連絡してね」

サトコ
「うん、ありがとう」

鳴子
「あ、1人というのは少し違うか。教官たちも残るんだもんね」
「教官たちと一緒に年越しか~。うらやましい!」

サトコ
「な、鳴子‥」

千葉
「はは、佐々木は相変わらずだな」

鳴子
「ふふ、ありがとう」
「褒め言葉として受け取っておくわね」
「それじゃあ、サトコ。またね」

千葉
「じゃあな、氷川」

サトコ
「うん!」

(鳴子たち、行っちゃった‥)

鳴子たちの背中が見えなくなると、冷たい風が吹いた。

(うぅ、寒い‥そろそろ、雪が降るって言ってたもんね)
(鳴子たちが家に着くまでは、降らないでほしいなぁ)

私は寮に戻ると、先日送られてきたお母さんからの仕送りの整理をしていた。

(あの後、急にみんなの帰省が決まっていろいろと慌ただしかったから)
(そのままにしちゃってたんだよね‥)

サトコ
「‥ん?これは‥」
「年越しそばセット!」

(お母さん、こんなものまで入れててくれたんだ‥)

サトコ
「せっかくだし、石神教官と一緒に食べたいな‥」
「‥‥」
「‥‥‥」

私は携帯電話を取り出すと、石神教官に電話をかける。

石神
石神です

サトコ
「氷川です。今、少しだけお電話大丈夫ですか?」

石神
どうした?

サトコ
「この前実家から送られてきた仕送りに、年越しそばが入っていたんですけど‥」
「よかったら、一緒に食べませんか?」

石神
年越しそばか‥そういえば、ここ数年は年末も忙しくて食べてなかったな
俺でいいのか?

サトコ
「教官がいいんです!」

電話越しにフッと、聞こえる声が少しくすぐったく感じる。

石神
年末の寮監はちょうど俺だ‥楽しみにしている

サトコ
「本当ですか!?」

それから少しだけ教官と話をし、電話を切った。

(ふふっ、誘ってみてよかった)
(教官と一緒に食べるんだし、美味しい年越しそばを作らなきゃ!)

翌日。

サトコ
「‥寒っ!」

(もう朝‥?布団被ってるのに、こんなに寒いなんて‥)

私は起き上がると、窓際に行きカーテンを開ける。

サトコ
「わぁ‥真っ白!」

(昨夜の夜から雪が降ってたの知ってたけど、こんなに積もるなんて‥)

サトコ
「教官たち、学校にいるよね‥?」

私はそそくさと着替えを済ませると、学校に向かった。

教官室の前に着くと、何やら言い合いをしている声が聞こえてきた。

サトコ
「何かあったのかな‥?」

私はドアをノックし、教官室に入る。

教官室に入ると、石神教官と加賀教官が睨み合いをしていた。

サトコ
「失礼します」

颯馬
おや、サトコさん。おはようございます

サトコ
「おはようございます。あの‥何かあったんですか?」

東雲
雪かきのことで揉めてんの

サトコ
「雪かき?」

後藤
この雪だと、雪かきをしないと危ないからな。だが‥

石神
全員でやるに決まってるだろう?

加賀
めんどくせぇつってんだろ
クソメガネ班だけでやれ

颯馬
‥って、ところなんです

サトコ
「な、なるほど‥」

(確かに、みんなで終わらせた方が早いと思うけど‥相手は加賀教官だしな‥)

黒澤
フッフッフ‥みなさん、お困りのようですね!
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ~ン!みんなが大好き、黒澤透ですよ~!

後藤
呼んでない

黒澤
ぐはっ!まさかの即答‥!
だけど、ここは黒澤透!めげませんよ!

黒澤さんはギュッと力を込め、石神教官たちに声を掛ける。

黒澤
さて、誰が雪かきをするかで揉めているみたいですが‥
ここは平和的に『勝負』で決めましょう!

サトコ
「勝負‥ですか?」

黒澤
そうです!題して『ドキッ☆教官だらけの雪合戦!負けたら雪かきだよ☆』

(ド、ドキッ?)

黒澤
‥ということで、負けた方が雪かきをするってことで、どうでしょう!?

加賀
あぁ?

石神
そこだけは同感だな

黒澤
まぁまぁ、このままでは話が進みませんしね
ほらほら、皆さん!外に行きますよ~!

黒澤さんは有無を言わさず、教官たちを教官室から連れ出した。

黒澤さんから強制的にグラウンドに連れて来られた私たちは、雪合戦をすることになった。

(私も連れて来られたけど‥これって、私も雪合戦に参加するってこと‥?)

黒澤
サトコさんは石神さんの補佐官なので、石神班ってことでお願いします!

サトコ
「は、はい‥」
「あれ?でも、そうしたら石神班の方が人数多いんじゃ‥」

颯馬
私が審判をやりますので

黒澤
勝負には審判が必要ですからね。周介さんにお願いしちゃいました!
それと、オレは人数合わせのために加賀班に行きます。これで3対3になりますね!

石神
‥‥‥

加賀
‥‥‥

(きょ、教官たちが睨み合っている‥)

石神
こうなったら仕方ない‥後藤、気を抜くなよ

後藤
了解です

加賀
おい、歩。やるからには絶対勝つぞ
負けは許さねぇ

東雲
もちろんです。オレも雪かきは勘弁ですからね

(東雲教官が何か取り出して‥)
(って、あれなに!?バズーカ‥!?ものすごく大きいんですけど!)

黒澤
さて、みなさんのボルテージが上がってきたところで、ルールを説明しますね!
戦いの場所はここ、グラウンドと裏庭。校内に隠れるのはダメです
誰かが先頭不能になった時点で、アウト。そのチームの負けが決まります

(先頭不能って‥雪合戦ってそんなルールだったっけ?)

黒澤
あ、あと最後に1つ。サトコさんは女性なので、狙うことは禁止で!
‥って、石神さんが言ってました!

サトコ
「え‥」

石神
黒澤‥

黒澤
きゃっ!そんなに見つめないでください~!

石神
‥こんなことで、生徒に怪我させるわけにはいかないからな

石神教官はバツが悪そうに、そっぽ向く。

(教官‥私の事、心配してくれてたんだ‥)

颯馬
ルールは以上ですね?それでは‥始め!

颯馬教官の合図とともに、みんなが雪玉を作り投げ始める。

石神
氷川は後ろに下がって、雪玉を作っていろ

サトコ
「は、はい‥」

(前に出ることは無理でも、石神教官たちを支援しなきゃ!)

私は雪をすくい、一生懸命雪玉を量産していく。

サトコ
「教官!雪玉です!」

ドサッ!ドサッ!

サトコ
「きゃっ!」

(き、木から雪が落ちてきた‥ど、どうして?)

東雲
雪で埋めてあげよっか

サトコ
「え‥」

(わ、私の近くにある木にバズーカを向けてる‥!)

東雲
要は、直接当てなきゃいいってことでしょ?

加賀
クズ女を戦闘不能にすればいい

黒澤
サトコさん、すみません‥
オレ、加賀さんには逆らえませんので!

後藤
黒澤‥

石神
‥‥‥

黒澤
そんな目で見られても、オレはやりますよ!これは勝負事ですからね!

東雲
一応、女の子だけど‥
手加減の必要なさそうだよね。頑丈そうだし

(ひどい‥!)

東雲教官はそう言って、バズーカを連射した!

サトコ
「わわっ‥!」

(み、みんなが一斉に雪玉を投げてきて‥)

石神
っ、氷川!来い!

サトコ
「あっ‥石神教官!?」

石神教官は私の手を取り、裏庭へ駆け出した。

加賀教官たちから逃げてきた私たちは、裏庭に身を潜める。

<選択してください>

A: お礼を言う

サトコ
「教官‥助けてくれてありがとうございます」

石神
ああ‥あいつらが、一斉にお前を狙っていたからな
さすがに怪我をさせないと思うが‥無事でよかった

B: どうして助けてくれたんですか?

サトコ
「どうして助けてくれたんですか?」

石神
‥助けないわけないだろう

サトコ
「教官‥」

C: 辺りを窺う

(追いかけて来ないよね‥?)

石神
‥しばらくの間は大丈夫だろう
今は後藤が粘ってくれているはずだ。その間に、体勢を整えるぞ

サトコ
「‥くしゅっ」

石神
大丈夫か?

サトコ
「はい‥くしゅっ」

石神
この寒さで、身体が冷えたのか‥

サトコ
「あっ‥」

石神教官は私の手を握り、自身のポケットの中に入れた。

石神
‥‥

サトコ
「ありがとう‥ございます」

身体は冷えていたけど‥
指先に感じる教官の温もりで、心ごとポカポカと温かくなる。

(今は雪合戦中だけど、もう少しこのままでいたいな‥)

石神教官に身を寄せようとした、瞬間‥

石神
っ、氷川!

サトコ
「え‥?」

(ゆ、雪玉が飛んできて‥)

石神教官は瞬時に私を抱き寄せ、その背中で雪玉を受けた。

加賀
‥やっぱりな

石神
加賀‥

加賀
その女を狙えば、お前が盾になると思っていたぜ

石神
‥‥‥

体勢を立て直すと、石神教官は素早く雪玉を作り両手に持つ。

加賀
クソメガネが

石神
受けて立つぞ‥氷川は下がっていろ

サトコ
「は、はい‥」

私が後ろに下がると、教官たちは睨み合う。

そして、2人同時に雪玉を放った!

加賀
くっ‥

石神
っ‥

(す、すごい接戦‥!お互い、一歩も譲らない‥!)

サトコ
「石神教官‥頑張ってください!」

私がエールを送ると、石神教官の動きが早くなっていくように感じた。

加賀
っ‥!

(あと、もう少し‥!)

加賀教官が体勢を崩しそうになった、その瞬間‥‥

颯馬
そこまで!

サトコ
「颯馬教官!」

颯馬
もう勝負はつきましたよ

サトコ
「え‥?」

to be continued

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