カテゴリー

書き初め 颯馬1話

私は颯馬教官にリンゴをお裾分けするために、教官宿泊室にやってきた。

(颯馬教官‥いるかな‥?)

サトコ
「颯馬教官、氷川です」

ドアをノックしながら声を掛けるも、返事がない。

サトコ
「あれ‥?ここにはいないのかな‥」

(どこ行ったんだろう‥学校に行ってみようかな)
(それなら、食べやすいようにカットして行った方がいいよね)

サトコ
「失礼します」

黒澤
あ、サトコさん!お疲れ様です!

サトコ
「お疲れ様です。颯馬教官はいらっしゃいますか?」

黒澤
周介さんなら見てないですよ

サトコ
「そうですか‥」

(颯馬教官、どこにいるんだろう‥?)

黒澤
っていうか、そのリンゴ‥どうしたんですか?

サトコ
「実家から送られてきたんです。颯馬教官にお裾分けしようと思って‥」

黒澤
なるほど、それで周介さんを捜していたというわけですね!
てっきり、逢引きでもするのかと思ってましたよ!

サトコ
「あ、逢引き‥!?」

黒澤
だって、サトコさんと周介さんって仲良いじゃないですか~
だから、逢引きなのかと思いまして!
あっ、このリンゴ1つもらいますね!

黒澤さんはカラカラと笑いながら、リンゴを1切れかじる。

サトコ
「く、黒澤さん!私たちは、その‥」

黒澤
もちろん、冗談に決まってるじゃないですか~
そんなに慌ててると、怪しく見えちゃいますよ?

サトコ
「あ、ありがとうございました!別の場所を捜してみます!!」

私は黒澤さんに軽く会釈をしてお礼を言い、教官室を後にした。

(颯馬教官、どこにいるんだろう。教官室にもいないとなると‥)

サトコ
「あっ、もしかして‥!」

私はとある場所を思いつき、足を向けた。

道場に行くと、袴姿で竹刀を振っている颯馬教官の姿があった。

(いた‥)

竹刀を構える凛とした姿が美しくて、見惚れてしまう。

颯馬
‥おや?サトコさん?

サトコ
「すみません、お邪魔してしまって」

颯馬
声を掛けてくれればよかったのに
どうかしましたか?

サトコ
「実家からリンゴが送られてきたので」
「お裾分けをしようと思って持って来ました」

颯馬
道場で、ですか?

サトコ
「あ‥一応、剥いてきたので」

教官がガタッと、竹刀を壁に立てかける。

颯馬
わざわざありがとうございます。それでは、少し休憩にしましょうか

颯馬教官はタオルで汗を拭くと、ひょいっとリンゴを1つ取る。

颯馬
いただきますね
美味しいですね

サトコ
「本当ですか?よかったです」

(ふふ、差し入れてよかった)

颯馬
サトコさん、もう1ついただいてもいいですか?

サトコ
「はい!たくさんあるので、どうぞ!」

颯馬
ありがとうございます。では‥あーん

サトコ
「えっ‥?」

颯馬教官はリンゴを私の口元に差し出してくる。

颯馬
美味しいですので、サトコさんもぜひ食べてみてください

サトコ
「え、えーと‥」

颯馬
ほら‥あーん

サトコ
「あ、あーん」

口元に差し出されたリンゴを、ぱくりと口にする。

颯馬
ほら、美味しいでしょう?

サトコ
「は、はい‥」

颯馬
ふふ、それならよかった

教官は笑みを浮かべると、もう1つリンゴをつまみ、口にした。

颯馬
‥ごちそうさまでした
サトコさん、よかったら、貴女も少し稽古していきませんか?

サトコ
「いいんですか?ぜひ、お願いします!」

私は剣道着に着替え、竹刀を持って颯馬教官の前で構える。

颯馬
それでは、行きますよ‥‥始め!

サトコ
「やあっ!」

教官に向かって竹刀を振り下ろすも、なんなくかわされてしまう。

颯馬
踏み込みが甘い!

サトコ
「っ」

体勢を立て直そうとした、瞬間‥

パシンッ!

颯馬
一本です

サトコ
「‥まだまだです。もう一本、お願いします!」

私は竹刀を構え直すと、颯馬教官の前に立つ。

颯馬
いいでしょう。何度でも、かかってきてください

サトコ
「やあっ‥‥!」

それから私たちは何度も何度も打ち合いをし‥

サトコ
「はぁ、はぁ‥ありがとうございました」

颯馬
お疲れ様です

あれだけ動いたのにもかかわらず、教官はいつもの様子で立っていた。

(さすが教官だな。私も、もっともっと精進しないと‥)

颯馬
前よりも上達してますよ

サトコ
「本当ですか?」

颯馬
ええ。まぁ、まだまだ課題はありますが

サトコ
「来年はもっと上達するように頑張ります!」

颯馬
フフ、サトコさんはいつも目標を持って行動をしていますね
そうだ‥
来年からは毎朝、剣道の稽古をしませんか?

サトコ
「えっ、いいんですか?」

颯馬
もちろんです

サトコ
「よろしくお願いします!」

颯馬
フフ、いい返事ですね

颯馬教官は私の耳元に顔を近づけると、そっと囁く。

颯馬
「‥これで毎朝、サトコと一緒にいられるね

サトコ
「っ!?」

(裏教官!)

颯馬
さて、そろそろ戻りましょうか

クスクスと笑いながら、颯馬教官は私の頭をポンッと撫でた。

練習が終わると、私は教官宿泊室のシャワーを借りる。

サトコ
「教官、シャワーありがとうございます」

颯馬
どうしたしまして
‥ああ、サトコさん。髪の毛が濡れたままですよ

教官はタオルを取ると、私の頭を軽くふき始めた。

<選択してください>

A: 拭いてもらう

(そ、颯馬教官が髪の毛を拭いてくれるなんて)
(このまま拭いてもらっちゃっても、いいかな‥)

颯馬
じっとしててくださいね

サトコ
「は、はい‥」

B: 自分で拭く

サトコ
「きょ、教官!自分でできますから!」

颯馬
たまには、こういうもいいじゃないですか。私にやらせてください
それとも‥オレにこういうことをされるのは、イヤ?

(ま、また裏教官!?)

颯馬
させてください

にっこりと微笑む教官を前に、私は口をつぐんだ。

C: 慌てる

サトコ
「ななな、何をしているんですか!?」

颯馬
何って、髪の毛を拭いているんですよ?
この後、ドライヤーで乾かしますから

サトコ
「で、でも‥」

颯馬
だから、じっとしててくださいね?

サトコ
「は、はい‥」

教官は軽く髪の毛を拭くと、ドライヤーで私の髪の毛を乾かし始めた。

サトコ
「すみません、教官に乾かしていただいて‥」

颯馬
私がやりたかっただけなので、気にしないでください
サトコさんの髪は、サラサラですね

サトコ
「っ!?」

教官は私の髪の毛をすくい、キスをした。

サトコ
「きょ、教官!?い、今のは‥」

颯馬
サトコさんの髪の毛があまりにも綺麗でしたから、つい

サトコ
「そ、そんな‥綺麗だなんて‥」

颯馬
フフ、サトコさんは本当に照れ屋さんですね
‥はい、終わりましたよ

サトコ
「あ、ありがとうございます‥あの、今度は私が教官の髪を乾かしていいですか?」

颯馬
私の髪を‥?
ええ、それではお願いします

私はドライヤーを受け取ると、教官の髪の毛を乾かし始める。

(わぁ‥教官の髪の毛、柔らかい‥それに、いい匂いがするな‥)

サトコ
「私‥教官の綺麗な長い髪好きです」

颯馬
そうですか?ありがとうございます

教官の髪の毛を乾かし終えると、私たちは寄り添い合うように座りながらテレビを見る。

キャスター
『初詣はスリが多発します。初詣に行く際は、スリにご注意ください』

サトコ
「新年早々スリだなんて‥許せないです!」
「犯人を捕まえたいです!」

颯馬
サトコさんは勇ましいですね
ですが、張り込むわけにもいかないでしょう?

サトコ
「そうですけど‥」

颯馬
サトコさん‥年越しは2人で過ごしませんか?
もちろん、他の教官たちにはナイショで

可愛らしい仕草のはずなのに‥唇に指を当てる颯馬教官の姿は妖艶だ。

サトコ
「っ、はい!」

(大晦日は教官と2人で過ごせる‥!)

そして、大晦日。
部屋でくつろいでいると、颯馬教官からメールが入る。

颯馬
『後で部屋に迎えに行きますね』

(この後は、教官と年越しそばを食べてから初詣‥ふふ、楽しみっ!)

それからしばらくすると、ドアをノックする音が聞こえた。

(颯馬教官かな?)

私は軽い足取りで入口に行き、ドアを開ける。

サトコ
「颯馬きょうか‥」

黒澤
どうも、こんばんは~!アナタの黒澤透です!

サトコ
「く、黒澤さん!?」

(な、なんで黒澤さんがここに‥!?)

サトコ
「どうしたんですか?」

黒澤
実は‥サトコさんを忘年会のお誘いに来たんです!
サトコさんも大晦日に1人じゃ寂しいですよね?さぁ、行きましょう!

<選択してください>

A: 行く

(教官と約束しているのに、どうしよう‥でも、ここで断ったら変に思われるよね)
(少しだけ顔を出して、すぐ戻ってくれば大丈夫かな)

サトコ
「‥わかりました」

(教官にはメールを送っておこう)

B: 行かない

サトコ
「すみません。私、ちょっと予定がありまして‥」

黒澤
これからですか?
もしかして~

(なんかイヤな予感が‥)

黒澤
周介さんと一緒に過ごす約束を~

(なんでわかったのー!!!)

サトコ
「し、してません!ちょっと、見たいテレビがあって‥」

黒澤
ああ、特番の歌番組とかバラエティー番組とかいろいろやってますもんね
どうしてもと言うなら無理にとは言いませんが‥
な~んて、オレが言うと思いますか?

サトコ
「えっ‥?」

黒澤
テレビは録画しておけばOKです!なので、みんなで忘年会をしましょう!
それに‥忘年会に来れば、きっといいことがありますよ?

C: 迷う

(教官と約束してるけど、ここで行かないと怪しまれそうだし‥)
(うぅ‥どうすればいいんだろう‥)

黒澤
もしかして、迷ってます?

サトコ
「は、はい‥」

黒澤
迷ってるんなら、オレたちと一緒に忘年会をしましょう!絶対に楽しいですから!
それに‥女の子のいない忘年会は、寂しいですからね

黒澤
それじゃあ、忘年会会場へ出発~!
あ、暖かい恰好をしてくださいね!

私はダウンコートを羽織ると、黒澤さんに連れ出された。

黒澤さんに連れて来られたのは屋上だった。
冷たい風が吹き、身震いする。

サトコ
「こんなに寒いのに、屋上でやるんですか!?」

黒澤
そうでーす!
ほら、みなさん揃ってますよ

加賀
クズが。遅ぇんだよ

(か、加賀教官が鍋ラーメンをすすってる)

難波
やっと来たのか。こっちはもうやってるぞ

石神
‥‥‥

難波室長は熱燗を片手に七輪でエイヒレを焼き、その横で石神教官がうちわで炭を仰いでいた。

(なんというか‥これまたシュールな‥)

東雲
兵吾さん、肉はオレのなんで全部食べないでくださいよ

加賀
うるせーな。とっときゃいいんだろ

後藤
石神さん、代わりますよ

石神
‥ああ

(教官たち、本当にここで忘年会をしてるんだ‥)

颯馬
‥‥‥

サトコ
「あっ‥」

私と視線が合い、颯馬教官は苦笑いをする。

(颯馬教官もここにいたんだ!)

難波
エイヒレが焼けたぞ

黒澤
ささ、サトコさんも一杯やりましょう!

サトコ
「は、はい‥」

私はお猪口をもらうと、お酒をグイッと煽る。

難波
へぇ、良い飲みっぷりだな

黒澤
それじゃあ、もう一杯どうぞ

サトコ
「ありがとうございます‥」

(なんで、こんなことに‥)

それから、なかなか颯馬教官に声をかけるチャンスはこなくて‥

黒澤
あっ、みなさん!そろそろカウントダウンの時間ですよ!

石神
もうそんな時間になるのか

黒澤
あと10秒です!8,7‥

黒澤さんは時計を見ながら、秒読みを始める。

黒澤< 3,2,1‥
あけましておめでとうございます!

颯馬
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします

東雲
ていうか、寒すぎ

それぞれが『あけましておめでとう』と口にする。
そしてみんなは再びお酒を飲み始め、話に花を咲かせ始めた。

颯馬
‥サトコさん

(?颯馬教官が手招きをしてる‥)

私はそっと席を立つと、颯馬教官の隣に座った。

颯馬
2人で過ごすはずが、すみません。黒澤に捕まってしまって‥

サトコ
「そんなことないです。これはこれで楽しいですし!」

颯馬
そう言っていただけるなら、助かります
ですが‥私としては、やはり貴女と2人で過ごしたかったです
サトコさんは、どうですか?

サトコ
「颯馬教官‥私も、教官と2人きりで過ごしたいです」

颯馬
フフ、よくできました

教官は他のみんなの意識がこちらに向いていないことを確認すると、
私にこっそり耳打ちしてくる。

颯馬
サトコさん。明日、一緒に‥

サトコ
「きゃっ!」

(教官の口が耳に当たって‥くすぐったい!)

颯馬
サトコ?どうしたの、可愛い声なんか出して

サトコ
「きょ、教官!ダメです、みんながいるのに‥!」

颯馬
知ってる‥でも、先に反応したのは貴女だ
このまま、キスまでしてみようか?

周りはわいわいと盛り上がっていて、こちらに気づく様子はない。

颯馬
ね?サトコ

ゆっくりと颯馬教官の顔が近づいてきた。

to be continued

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする