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St.Valentine -今夜は愛を叫びたい- プロローグ

私は石神教官に頼まれて、クラス全員分のノートを集めていた。

サトコ
「よっと‥」

(うっ‥ちょっとだけ、重いかも‥)

石神
ひとりで持てるか?

サトコ
「はい。これくらいなら大丈夫です」

(少し重いくらいの方が、ちょっとした訓練にもなるだろうし‥)

男子訓練生A
「おっ、氷川、重そうだな」

サトコ
「うん。クラス全員分あるからね」

男子訓練生A
「それじゃあ、俺が持ってやるよ」

サトコ
「え?でも‥」

男子訓練生A
「いいから、いいから!」

サトコ
「あっ‥」

男子訓練生は有無を言わさず、私から半分より多くノートを持ってくれる。

サトコ
「あ、ありがとう‥」

(あれ?いつもこんなに優しかったっけ‥?)

石神
珍しいな‥

石神教官も不思議に思ったのか、首を傾げながら呟いた。

男子訓練生の行動を不思議に思いながら、教官室に入る。

後藤
お疲れ‥どうかしたのか?

サトコ
「同期が一緒にノートを運んでくれたんです」
「今までこんなことなかったんですけど‥」
「そういえば、最近男子訓練生の態度がおかしいかもしれません」

後藤
おかしい?

サトコ
「なんていうか、妙に優しいというか‥気にかけてくれているというか‥」

石神
言われてみれば、そうだな‥

石神教官も思い当たる節があるのか、考え込む。

石神
今日の講義中も、妙に氷川や佐々木を気にしているようだったな

サトコ
「私たちをですか?」

後藤
そうですね。俺の講義の時もそうでした。何か身に覚えはないのか?

サトコ
「い、いえ!そんなの、全然ありません」

教官たちの言葉に、ますます気になってしまう。

(う~ん、鳴子にも聞いてみようかな‥)

お昼休みになり、私は鳴子に石神教官と後藤教官の会話について話した。

鳴子
「そうそう!私もなんだよね」
「なんだか妙に優しいというか‥ずっとおかしいなって思ってたんだ」

サトコ
「やっぱり‥」

鳴子
「ここまでおかしいんだもん。絶対、何かあるよ」

サトコ
「でも、素直に教えてもらえるかな?」

鳴子
「ん~、こういう時は千葉さんに聞いてみるのが一番じゃない?」

千葉
「ん?オレのこと呼んだ?」

たまたま近くを通りかかった千葉さんが、足を止める。

鳴子
「千葉くん!ちょうどいいところに!」

千葉
「えっ、何?うお、ちょっと引っ張るなって!」

サトコ
「千葉さんに聞きたいことがあるんだけど‥」

私たちは、最近の男子訓練生たちの行動について説明する。

千葉
「あー、それか‥」

サトコ
「もしかして、心当たりがあるの?」

千葉
「えっと‥」

鳴子
「千・葉・く~ん!」
「大人しく、吐きなさい!」

千葉
「わ、分かった!分かったから、そんなに詰め寄るなって!」
「みんな、バレンタインが近いから意識してるんじゃない?」

サトコ
「バレンタイン?」

千葉
「ほら、ここで女子っていったら氷川たちしかいないし」
「みんなチョコをもらうために、必死なんだと思うよ」

鳴子
「な~んだ、納得!」

颯馬
フフ、可愛らしいじゃないですか

後藤
‥くだらない

サトコ
「そ、颯馬教官!?それに後藤教官も‥」

颯馬
きっとみなさん、純粋にチョコが欲しいんでしょうね

後藤
だからって、その時だけ親切にしても逆効果じゃないですか

颯馬
まぁ、それが正論ですけどね
それはそうと、千葉くん。先ほどお願いしていたレポートは?

千葉
「あっ、すみません!今から出します!」

颯馬
分かりました。お待ちしていますよ

千葉さんと教官たちは、この場から立ち去って行った。

鳴子
「あ~、教官たちかっこいいなぁ」

サトコ
「鳴子、ここに入った当初からずっと言ってるよね」

鳴子
「だって、本当にかっこいいんだから仕方ないじゃない!」
「教官たちはみんなかっこいいし、バレンタインチョコたくさんもらうんだろうな」
「ねぇ、サトコはバレンタイン誰かに渡したりしないの?」

サトコ
「へっ?」

鳴子
「って、なにその顔。もしかして‥バレンタインのこと、忘れてたとか?」

サトコ
「あ、はは‥」

(ここのところ忙しくて、完全に忘れてた‥)
(ど、どうしよう‥やっぱり、渡した方がいいのかな?)
(でも、今から用意して間に合うかどうか‥)

サトコ
「はぁ‥」

自分の女子力のなさに、深いため息をついた。

放課後。
レポートを提出し教官室に行くと、にぎやかな声が聞こえてきた。
教官室では、石神教官と後藤教官以外の教官たちが話をしている。

黒澤
もうすぐバレンタインですね。あー、楽しみだなぁ

東雲
透は婦警狙いでしょ?

黒澤
狙うなんて人聞きの悪い!みなさんから好意をいただいてるんです!

加賀
くだらねぇ

東雲
たしかに、ああいう行事ってあまり好きじゃないんですよね

黒澤
もう、そんなこと言っちゃって!
どうせ婦警さんや協力者の方から、毎年いっぱいもらえるんだからいいじゃないですか

黒澤さんはそう言って、私に視線を向ける。

黒澤
というわけで、サトコさん!この黒澤にチョコをください!

サトコ
「え、えっと‥」

颯馬
透。サトコさんが困ってるじゃないですか

黒澤
いいじゃないですか、おねだりくらい~
ってことで、楽しみにしていますね!

東雲
それとも‥誰か本命をあげたい人がいるとか?

サトコ
「えっ!?」

東雲
その反応、いますって言ってるようなもんだよ

東雲教官は楽しそうに、ニヤリと笑みを浮かべる。

石神
何の話をしているんだ

後藤
氷川がどうかしたのか?

(なんていうタイミングで本命の教官が入って来ちゃうの‥!)

サトコ
「あっ、いえ、その‥」

教官たちと目が合って恥ずかしくなり、私は視線を逸らした。

サトコ
「そ、それではレポート、ここに置いていきますね!」

私はレポートを置くと、慌てて教官室を後にした。

教官室を出た私は、とぼとぼと廊下を歩いていた。

サトコ
「はぁ‥」

(やっぱり、チョコを渡した方がいいのかな‥?)

数日後。
石神教官に用事を頼まれた私は、莉子さんの研究所へと来ていた。

莉子
「ありがとう。悪いわね、わざわざきてもらちゃって」

サトコ
「大丈夫です!私も莉子さんにお会いしたかったですし」

莉子
「ふふっ、サトコちゃんは本当にいい子ね」
「バレンタインも近いし、男の子たちからたくさんアピールされてるんじゃない?」

サトコ
「そ、それは‥」

莉子
「あら、やっぱりそうだったのね!モテモテじゃない」
「私も昔はバレンタインに一喜一憂していたっけ」

サトコ
「莉子さんのバレンタイン話ですか?聞いてみたいです!」

莉子
「ふふ、いいわよ。特別に話してあげる」

それから私たちはガールズトークで盛り上がる。

サトコ
「いけない、すっかり話し込んじゃった」

(教官のお遣いだったのに‥)

サトコ
「‥‥‥」

(教官、チョコ渡したら、喜んでくれるかな‥?)

私は、チョコを渡したい相手を思い浮かべる。

<選択してください>

A: 後藤教官

B: 石神教官

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