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バレンタイン 石神1話

私は講義が終わると補佐官の仕事のため、石神教官の個別教官室へ向かっていた。

サトコ
「石神教官に、どんなチョコ渡そうかなぁ」

(でも、教官は忙しそうだし‥バレンタイン当日はきっと仕事だよね)
(もし仕事だとしても、チョコだけでも渡したいなぁ)

個別教官室を訪れると、黙々と仕事をこなしていく。

(あとはここにある書類を整理して‥)

サトコ
「あ、もうこんな時間なんだ‥」

作業が一段落し時計を見ると、かなりの時間が過ぎていた。

石神
氷川、そっちの作業は終わったか?

サトコ
「はい。まとめた資料はここに置いてあります」

石神
そうか

教官は短く言うと、冷蔵庫からプリンを取り出し、私に差し出す。

石神
少し休憩だ
まだ作業は残っているからな

サトコ
「はい、ありがとうございます」

(教官って普段は厳しいけど、こういうところ優しいなぁ)

プリンを受け取ると、ふたを開ける。

石神
これは最近人気のプリンらしい

サトコ
「へぇ、そうなんですね」

プリンを口にすると、濃厚な甘みが口の中に広がった。

サトコ
「ん~、美味しいです!」

石神
フッ‥そうか

教官は笑みを浮かべながら、プリンを口にする。
可愛い、なんて言ったら怒られるかもしれない。
でも、この石神教官の可愛い一面を知っている人は数少ない。

(ちょっと優越感、とか‥嫌な子かな)

サトコ
「あの、教官。14日は何か予定ありますか?」

石神
14日?その日は警察庁会合の予定だ
難波室長の代わりに出席する予定だ

サトコ
「なるほど‥」

(大きい仕事入ってるから‥やっぱり一緒に過ごすのは難しそうかも)

石神
どうした?

サトコ
「いえ、なんでもありません」
「残りのお仕事、片付けますね」

石神
ああ‥

私はそう誤魔化して、残りの作業に取り掛かった。

寮に戻ると、雑誌を広げる。
雑誌にはバレンタイン特集が組まれており、いろいろな情報が載っていた。

サトコ
「う~ん、何チョコにしようかな~」

一緒にいられない分、特別なチョコを用意したい。
私はその想いで、ページをめくっていく。

サトコ
「あっ‥」

とあるページに辿り着くと、手が止まる。

サトコ
「チョコプリン‥」

雑誌には、とてもおいしそうなチョコプリンが載っていた。

(教官はプリンが好きだし、これがいいかも!)
(明日の講義のあとは、特に予定ないし‥早速買いに行ってみようかな)

サトコ
「えっ‥売り切れ、ですか?」

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翌日。
講義が終わると、巷で評判のショコラティエにチョコプリンを買いに行く。

店員
「すみません。チョコプリンは午前中で完売いたしました」

サトコ
「そ、そうですか‥」

(どうしよう‥!まさか、売り切れるなんて思わなかった‥)

ショコラティエをあとにした私は、チョコレート売り場へ行く。

(チョコプリンが売り切れ、ってなると‥どうしようかな)
(お酒が入ってる大人っぽいチョコ、とか?)

可愛らしいチョコレートたちを前に、考え込む。

(こういうチョコを買うのが一番手っ取り早いんだろうけど)
(やっぱり、教官にはチョコプリンを渡したいなぁ‥)

迷いに迷った挙句、近くにいる店員に声を掛ける。

サトコ
「すみません。ちょっとお聞きしたいことがあるんですが‥」

店員
「はい、なんですか?」

私はチョコプリンについて尋ねた。

店員
「それでしたら、チョコリキュールからお作りになれますよ」

サトコ
「本当ですか!?」

店員
「はい。作業工程もそこまで難しくありませんし」

(チョコリキュールを使ったプリンか‥いいかも!)

私は店員に案内してもらい、チョコリキュールを購入した。

私は寮に戻ると、早速プリンの試作を開始する。

サトコ
「まずは、牛乳をお鍋に入れて‥」

レシピを確認しながら、手順を進めていく。
そして‥

サトコ
「‥よし、出来た!」

(初めてにしては、上出来だよね♪)
(味見もしてみたけど‥他の人の意見も聞いてみたいな‥)

<選択してください>

A: 後藤教官

サトコ
「後藤教官にお願いしてみようかな‥」

後藤教官に試食をお願いした時のことを想像してみる。

後藤
ああ‥まぁ、美味いんじゃないか?

サトコ
「‥‥‥」

(後藤教官って優しいところがあるし)
(たとえ味が微妙でも、気を遣って美味しいって言ってくれそうだよね‥)

B: 颯馬教官

サトコ
「颯馬教官だったら、ちゃんとアドバイスをくれそうだな」

(だけど、颯馬教官って勘が鋭いというか‥)
(下手したら、石神教官と付き合っていることがばれるかもしれないよね)

サトコ
「万が一バレたら大変だし‥」

C: 加賀教官

サトコ
「加賀教官か‥」

(加賀教官はハッキリしているし)

(美味しかったりマズかったりしたらちゃんと言ってくれそうだな)
サトコ
「あっ、でも‥」

(加賀教官って、確か和菓子派だったような‥)
(お願いする前に、断られそう‥)

サトコ
「それか、東雲教官かぁ‥」

(東雲教官は、こういうのバカにしてきそうだし‥)

東雲教官に試食をお願いした時のことを想像し、思いっきり首を振る。

サトコ
「教官たちにお願いするのはナシ!」

(鳴子にお願いしたら、誰に渡すのか突っ込まれそうだし‥)
(あと、試食をしてくれそうな人といえば‥)

私はできたばかりのプリンを持って、談話室へ行く。

千葉
「ああ、氷川も談話室に来たんだ」

サトコ
「あっ、千葉さん!ちょうどよかった」

千葉
「え?ちょうどよかったって‥」

サトコ
「これ、作ってみたんだけど‥」

チョコプリンを差し出すと、千葉さんは嬉しそうに目を輝かせる。

千葉
「これを、オレに?」

サトコ
「うん」

千葉
「ありがとう‥ありがとう、氷川!!」

サトコ
「う、うん?」

両手を握られ、ブンブンと上下に振られる。

(い、痛い‥)
(千葉さん、そんなにチョコプリンが好きなのかな?)

千葉
「それじゃあ、いただきます!」

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千葉さんがチョコプリンを食べると、私はドキドキしながら感想を待つ。

サトコ
「ど、どうかな‥?」

千葉
「うん、とても美味しいよ!」

サトコ
「本当に!?よかった」
「試作でも、千葉さんに美味しいって言ってもらえてよかった」

千葉
「へ?試作‥?」

サトコ
「うん、そうだけど‥?」

千葉
「そっか、試作か‥そうだよな‥」

サトコ
「ち、千葉さん‥?」

(あ、あれ?今度は落ち込んでる‥?)

千葉
「‥ううん、なんでもない」
「これだけ美味しいなら、自信を持っていいと思うよ」

サトコ
「うんっ、ありがとう!」

(千葉さんから太鼓判を押されたし‥きっと、教官も喜んでくれるよね!)

バレンタイン前日。
講義の合間にレポートを提出するため、教官室へ向かう。

(クラス全員分となると、結構量があるなぁ)

教官室を訪れると、東雲教官と黒澤さんの姿があった。

サトコ
「失礼します」

黒澤
あっ、サトコさん。こんにちは!

東雲
ていうか、透。さっさと帰りなよ。こんなところで油売ってないで

黒澤
えー!聞きました?サトコさん!この愛のムチ、ひどすぎやしませんか!

東雲
愛もムチも打った覚えないから

サトコ
「あはは‥あの、石神教官にレポートを提出に来たんですけど‥」

東雲
石神さん、ね‥

東雲教官は、ニヤリと笑みを浮かべる。

東雲
サトコちゃんも大変だね

サトコ
「え?大変って‥」

東雲
レポートはそこに置いて、ちょとおいでよ

サトコ
「はぁ‥?」

私は言われた通りレポートを置くと、東雲教官の元へ行く。

サトコ
「あの‥ここは石神教官の個別教官室なんじゃ‥」

東雲
いいから、見てみなって

東雲教官に言われて視線を向けると、扉が少しだけ開かれていた。

(石神教官と‥あれ?誰かいる‥お客さんかな?)

サトコ
「えっ‥」

華奢な女性の腕が見えたかと思うと、チョコを受け取っている石神教官の姿が目に入った。
その手がそのまま、教官の腕に伸ばされて‥‥

<選択してください>

A: 中に入る

(う、ウソ!教官が女の人からチョコをもらってるなんて‥)
(いや、でも‥教官はモテるだろうし、チョコの一個や二個くらい‥って、そうじゃなくて!)

突然見せつけられた光景に、頭が混乱する。

(と、とにかく、真相を確かめて‥)

黒澤
って、サトコさん!何、中に入ろうとしてるんですか!?

東雲
今いいところなんだから、邪魔しちゃダメでしょ

B: 中の様子を窺う

(ど、どういうことなの!?)
(だ、ダメよ、サトコ。落ち着かなくちゃ。教官に限ってそんなこと‥)
(とにかく、まずは様子を見て‥)

黒澤
‥歩さん。サトコさんがものすごい形相で中を覗いています

東雲
ここまで必死になれるのも、ある意味すごいよね

C: 石神教官に声を掛ける

(これって‥どういうことなんだろう?)
(変に疑うのもよくないし、聞いてみるのが一番いいよね?)

私は石神教官に声を掛けようと、口を開く。

サトコ
「石神きょ‥むぐっ」

言葉の途中で、東雲教官に口を塞がれてしまった。

東雲
しー!今いいところなんだから、邪魔しちゃダメでしょ

黒澤
そうですよ。ここは大人しく見守りましょう

黒澤
‥やや!あれは有名なゴレィバのチョコ!

東雲
へぇ、やっぱり石神さん相手だと、高価なチョコの方がいいのかな?

(え?ゴレィバ?それに高価なチョコって‥って、そんなことよりも、相手は誰なの!?)

中の様子を窺い、女の人の顔が見えそうになった瞬間‥

サトコ
「!!」

(チャイム!?このタイミングで!?)

東雲
ほら、サトコちゃん。予鈴が鳴ったよ

黒澤
それは大変ですね!急がないと!

サトコ
「で、でも‥」

東雲
次の講義は、兵吾さんじゃなかったっけ?

サトコ
「ああっ!?そうでした!」

私は慌てて教官室を後にすると、先ほどの光景が目に焼き付いて離れそうになかった。

to be continued

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