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ホワイトデー 後藤1話

容疑者を任意同行させるため、私は後藤さんと現場にやってきた。

容疑者
「くっ‥!」

後藤
落ち着いてくれ。俺たちは、あなたと争おうとは思っていない

容疑者
「ウソだ!はなっから俺のこと疑っているんだろう!?」
「お前警察のことなんか、信用できるか!」

サトコ
「っ‥」

容疑者からの圧を感じ、思わず怯みそうになる。

(ここで怯んでちゃダメ‥大丈夫、私は一人じゃないんだから!)

サトコ
「お願いします!事件解決には、あなたの任意同行が不可欠なんです」

容疑者
「そんなこと言って、そのままロクに取り調べもせずに俺のことを逮捕するつもりなんだろ?」

後藤
そんなことない。我々はきちんと捜査して、その上で逮捕状を出す
だから、あなたの任意同行をお願いしたからと言って、手荒な扱いは決してしない

容疑者
「‥‥‥」

凄味を利かせる容疑者に、後藤さんは声のトーンを落とす。

後藤
それに‥事を荒立てれば、どうなるかくらいわかるだろう

容疑者
「くっ‥!分かったよ‥行けばいいんだろ、行けば!」

サトコ
「ありがとうございます!」

私たちは任意同行に応じた容疑者を、取り調べ担当の石神教官へ引き渡した。

数日後。

颯馬
サトコさんたちのおかげで、事件の早期解決へと繋がりました
後藤と息の合ったコンビネーションだったと聞いていますよ

サトコ
「そんな‥私はただ、後藤教官と一緒に現場に向かっただけで‥」

颯馬
フフ、サトコさんは謙虚なんですね。ですが、自分の功績は認めてあげてください
石神さんもたいしたものだと言っていましたよ

サトコ
「えっ、石神教官がですか‥?」

颯馬
ええ。後藤も貴女と組んでから、いろいろと動きが良くなりましたし‥
案外、いいコンビなのかもしれませんね

颯馬教官から褒められ、後藤さんとの関係がより密になっていることを実感する。

颯馬
それでは、サトコさん。これからも頑張ってくださいね

サトコ
「はいっ、ありがとうございます!」

私は背を向ける颯馬教官に、頭を下げた。

放課後になると補佐官の手伝いのため、後藤さんの個別教官室へやってきた。

サトコ
「後藤さん、資料の整理終わりました」

後藤
ああ。今日はもう上がっていいぞ

サトコ
「はい。お疲れ様でした」

帰る準備をして教官室のドアに手をかけると、後藤さんに声を掛けられる。

後藤
‥なぁ、サトコ。ちょっといいか?

サトコ
「どうしたんですか?」

後藤
プラネタリウムのチケットをもらったんだが‥良ければ、ふたりで行かないか?
ホワイトデーに

サトコ
「ホワイトデー‥」

(まさか、後藤さんから誘ってもらえるなんて‥!)
(ちゃんと考えてくれてたんだ!)

後藤
既に予定が入っているなら、無理にとは言わないが‥

サトコ
「いえ、予定なら空いてます。楽しみにしていますね!」

後藤
ああ

私の返事に後藤さんはほっと息をつき、笑みを浮かべる。

(ふふ、久々にデート出来るだけでも嬉しいのに、ホワイトデーにデートができるなんて‥)
(早く、14日にならないかなぁ)

ホワイトデー当日。
私は朝早く起きて、デートの支度をしていた。

サトコ
「ふふっ、どの服がいいかな?」

(いつものワンピースじゃ味気ないから、可愛い服を選んで‥)

服を変えては鏡の前に立ち、選んでいく。

サトコ
「うん、これにしよう!」

服を選び終わり、出かける準備をしていると、携帯が着信を告げた。

(あっ、後藤さんからだ!)

私は意気揚々と電話に出る。

後藤
サトコ、今大丈夫か?

サトコ
「はい、どうしたんですか?」

後藤
‥悪い。仕事が入った

サトコ
「えっ‥お仕事、ですか‥?」

後藤
ああ。俺から誘ったのに、本当にすまない

サトコ
「私なら大丈夫です!お仕事頑張ってください!」

後藤
サトコ‥

後藤さんの申し訳なさそうな声に、後ろ髪を引かれる。

(少しだけ、甘えたことを言ってもいいかな?)

<選択してください>

A: 少しだけ、寂しいです

サトコ
「本当は‥少しだけ、寂しいです」

後藤
‥お前には悪いことをしたと思ってる

サトコ
「‥なんて、冗談です!」
「お仕事が忙しいことくらい、ちゃんと分かっていますから」

後藤
サトコ‥

サトコ
「お仕事、頑張ってくださいね!」

後藤
ああ‥ありがとう

B: 埋め合わせ、してくださいね

サトコ
「それじゃあ今度、埋め合わせしてください!」

私は務めて明るい声で言う。

後藤
ああ、もちろんそのつもりだ

サトコ
「ふふっ、ありがとうございます。だけど、無理はしないでくださいね?」
「私はいくらでも待てますから、お仕事頑張ってくださいね」

後藤
ありがとう‥サトコ

C: 後藤さんを送り出す

(ううん、やっぱりわがままは言いたくない!)
(そんなわがまま言ったら、きっと後藤さんも困っちゃうだろうし‥)

サトコ
「後藤さん‥私は大丈夫です!」

後藤
‥すまない

サトコ
「私は、仕事している後藤さんも好きなんですから!」
「だから‥お仕事、頑張ってください」

後藤
ああ‥ありがとう

サトコ
「それでは、また‥」

電話を切ると、ほうっと息をつく。

(せっかくのホワイトデーデートだったけど‥)
(‥お仕事だから、仕方ないよね。今回の楽しみは、次にとっておこう!)

翌週の日曜日。
私は課題をしたり、部屋の片づけや洗濯などをしていた。

サトコ
「ふぅ、大分綺麗になったな」

(やっぱり、部屋が綺麗になると気持ちいいよね!)

時計を見ると、針は昼過ぎを指していた。

サトコ
「あっ、もうこんな時間なんだ‥」

(危ない、危ない。この後は鳴子と約束をしていたんだよね)

慌てて出かける準備をしていると、電話がかかってきた。

(あっ、鳴子からだ。どうしたんだろう?)

サトコ
「もしもし、鳴子?」

鳴子
『あっ、サトコ?急にごめんね!』

サトコ
「大丈夫だけど‥どうしたの?」

鳴子
『実は、お母さんに呼び出されちゃって‥今日の約束、キャンセルしてもいいかな?』

サトコ
「えっ、大丈夫なの‥?」

鳴子
『うん、すぐに帰ってくるよう言われちゃって‥本当にゴメン!』

サトコ
「ううん、それなら仕方ないよ!私の事なら大丈夫だから、気にしないで」

鳴子
『本当にゴメンね!また今度埋め合わせしよう!』

サトコ
「うん!楽しみにしてるね」

通話を切ると、ため息をつく。

サトコ
「そっかぁ‥」

(鳴子との約束もナシになっちゃうとは‥うぅ、今週はドタキャン週間だな‥)
(でも、落ち込んでいても仕方ないよね!)

サトコ
「よし、気分転換に出かけよう!」

私は出かける準備を終えると、街へ向かった。

街に出かけた私は、本屋や雑貨屋を巡っていく。

女性
「ねぇ、あっくん、これから映画を観に行こうよ~」

男性
「いいよ。そういえば、観たい映画があるって言ってたね」

女性
「うん!あのね、恋愛映画なんだけど‥」

サトコ
「‥‥‥」

仲睦まじそうなカップルが近くを通り、思わず目で追ってしまう。

(デート、か‥羨ましいなぁ‥)
(後藤さんとの次のデート、どこに行こう?あのカフェとかいいかも!)

いろいろなお店を回っていると、いつの間にか夕暮れになっていた。

(後藤さんの任務、無事に終わったかな?後で連絡してみよう)

チラリと時計を確認し、そろそろ帰ろうかと思い始めていると‥

(あれ?メールだ‥誰からだろう?)

メールの受信ボックスを開こうとすると‥


「ん?お前は‥」

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サトコ
「あ、一柳教官。こんにちは」


「ああ、こんなとこで会うなんて奇遇だな。‥デートか?」

一柳教官は、ニヤリと笑みを浮かべる。

<選択してください>

A: そう見えますか?

サトコ
「そう見えますか?」


「まあ、一人でいるところを見ると、明らかに違うな」

サトコ
「もう、分かってて聞くなんて、ヒドイですよ」


「ははっ。悪い、悪い」
「‥まぁ、アイツは任務だしな」

サトコ
「え‥?」


「なんでもねーよ」

B: ち、違います!

サトコ
「ち、違います!その、友達とさっきまで一緒にいて‥」


「なんだよ。そんなに慌てることねーだろ?」

サトコ
「慌ててなんかいません!」


「明らかに慌ててるっつーの」

サトコ
「痛っ!」

一柳教官は、私にデコピンをする。


「そんな寂しそうなツラしてんじゃねーよ」

サトコ
「え‥?」


「なんでもねーよ」

C: デートだったらよかったんですけど‥

サトコ
「デートだったらよかったんですけど‥」

先ほどのカップルを思い出し、少しだけ声のトーンが落ちる。


「そもそも、お前に男なんているのかよ?」

サトコ
「なっ‥!それはさすがに言い過ぎですよ!」


「そうか?お前はアイツの補佐官に課題にいろいろ忙しそうだからな」

サトコ
「そ、それはそうですけど‥」


「‥アイツも大変だな」

サトコ
「え‥?」


「なんでもねーよ」


「‥なぁ、お前今ヒマなんだろ?だったら、俺に付き合え」

サトコ
「あっ、一柳教官!?」


「ほら、さっさと来い」

サトコ
「ちょ、ちょっと待ってくださいー!」

私は慌てて、一柳教官の背中を追いかけた。

そして、一柳教官に連れて来られたのは‥

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サトコ
「あ、あの‥一柳教官?」


「なんだ?」

サトコ
「その、なんと言いますか‥」

(まさか、一柳教官にこんなカフェに連れて来られるなんて‥!)

店内の装飾は凝っており、とてもファンシーだった。


「?‥おかしなやつだな‥」
「で、お前は決まったのか?」
「おすすめは、『くまさんのあったかパンケーキ』と」
「『はちみつた~っぷり、ホッとティー』だな」

サトコ
「えっと‥それじゃあ、それでお願いします」


「ああ、分かった」

一柳教官は店員を呼ぶと、慣れたように注文をしていく。

(おすすめがあるって‥)
(もしかして、一柳教官ってこのお店の常連!?)

注文をしてしばらくすると、一柳教官おすすめのパンケーキと紅茶が運ばれてきた。
甘くて優しい香りが漂ってくる。

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サトコ
「いただきます」

教茶を口にすると、柔らかい甘みとまろやかな口当たりだった。

サトコ
「ん、美味しいですね!」


「だろ?注文して正解だったな」

サトコ
「はい!」

(今度、後藤さんと一緒に来たいな‥)

もう一口食べようと口を大きく開けた、その時‥

パシャッ!

サトコ
「へ‥?」

一柳教官が携帯のカメラを私に向けていた。

サトコ
「な、何をしているんですか?」


「美味そうに大口開けて、パンケーキを食ってっから面白くて」

サトコ
「ひ、ヒドイです一柳教官!」


「まあまあ、いいじゃねぇか‥」
「送信、と‥」

(え?‥送信って、誰かに送ったの!?)

一柳教官は、悪びれる様子もなくニヤリと笑った。

to be continued

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