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ホワイトデー 石神1話

休日になり、休みが被った石神さんと久しぶりのデートをしていた。
ランチを取ると、街中をブラブラ歩く。

サトコ
「先ほどのお店のランチ、美味しかったですね」

石神
ああ、悪くない味だった

サトコ
「ふふっ、今度鳴子と一緒に来ようかな」

石神
遊ぶのも構わないが、テストも近いからな、ちゃんと対策をしておくように

(そういえば‥もうすぐテストなんだった!)

私はふと、この前鳴子たちが話していることを思い返す。

(確か、今回のテストの補習は加賀教官が担当って言ってたような‥)

考えただけで背筋が凍る。

サトコ
「石神さん、テストのことでお願いがあるんですが‥」

石神
なんだ?

サトコ
「週末、有志を募って勉強会をしてもらえませんか?」
「この前、鳴子たちと話をしていたんです。もっと教官たちからいろいろ学びたいって」
「教官が忙しいのは分かってはいるんですが‥お願いできませんか?」

石神
いいだろう。勉強熱心なのは感心だからな

サトコ
「本当ですか?ありがとうございます!」

石神
その代り、いつも以上に厳しくいくからな。覚悟しておけよ

石神さんは指でメガネを押し上げながら、笑みを浮かべる。

サトコ
「もちろんです。頑張ってついていきますね!」

石神
フッ、やる気があるのは何よりだ

(せっかく教官がOKしてくれたんだから、いつも以上にいい点が取れるように頑張らないと‥!)

女性
「きゃあっ!」

意気込んでいると、私たちの後方から悲鳴が上がる。
私たちの横を、女性物の鞄を持った男の人が走り去っていった。

女性
「わ、私の鞄が‥!」

サトコ
「もしかして‥ひったくり!?」
「待ちなさい!」

石神
おい!待て、サトコ!

サトコ
「教官、ここは私に任せてください!」

私は石神さんの制止を振り切り、ひったくり犯を追いかける。

サトコ
「待ちなさい!」

ひったくり犯
「待てと言われて、待つやつがいるわけねーだろ!」

サトコ
「くっ‥!」

(足が速い‥とにかく、後を追わないと!)

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私はそのまま公園まで、犯人を追いかける。
そして池の前まで追い詰めると、じりじりと犯人と対峙する。

サトコ
「観念しなさい!」

ひったくり犯
「くそっ‥」

強引に逃げようとするも、私は犯人に飛びかかった。

サトコ
「逃がさないんだから!」

ひったくり犯
「うぐっ!」

掴みかかった勢いで、犯人の腕を拘束するも‥

サトコ
「きゃあっ!」

ひったくり犯
「うわあっ!」

バッシャーン!

勢い余って、犯人ともども目の前の池に落ちてしまった。

サトコ
「ぷはっ!」

ひったくり犯
「うぅ‥」

池に落ちたものの、犯人の拘束が解けないように細心の注意を払う。

石神
「サトコ‥!?」

私は後を追ってきた石神さんに、声を掛ける。

サトコ
「石神さん!犯人を!」

石神
ああ‥

石神さんの手を借りて、池から引き上げる。
無事に犯人を捕まえ、到着した警察に引き渡した。

(鞄も持ち主の元へ戻ったし、犯人を捕らえられてよかった‥)

犯人を逮捕できたことに、満足感で心がいっぱいになる。

サトコ
「石神さん、この後のことなんですが‥」

石神
早く帰って服を乾かすぞ。その格好のままで、出歩くわけにもいかないからな

サトコ
「あっ、そうですよね」

石神さんは私に背中を向けると、歩き出す。
私は慌てて石神さんの背中を追いかけた。

公園を出ると特に会話があるわけでもなく、私たちは黙々と歩いていた。

(公園を出てから、なんだか石神さんの様子がおかしい‥)
(どうしちゃったんだろう‥?)

<選択してください>

A: お礼を言う

(そういえば、さっきのお礼を言えてなかったよね‥)

サトコ
「石神さん、先ほどはありがとうございました」

石神
‥‥‥

サトコ
「‥?」

石神さんは私を見ることなく、歩き続ける。

B: どうしたのか聞いてみる

(わからないことは、聞いてみた方がいいよね)

サトコ
「あの、石神さん。どうかしたんですか?」

石神
何がだ?

サトコ
「先ほどから、石神さんの様子がおかしいなって思って‥」

石神
‥‥‥

石神さんはチラリと私を見ると、小さくため息をつく。

(あっ、そういえば‥まださっきのお礼を言えてなかった‥)

サトコ
「石神さん。先ほどは手を貸していただいて、ありがとうございました」

石神
ああ‥

こちらを見ることなく、石神さんは短く返事をした。

C: 謝る

(私が迷惑かけちゃったのかな‥?)

サトコ
「石神さん、ごめんなさい‥」

石神
‥何で謝る

サトコ
「えっ‥」

石神
理由もなく謝るのか?

あきれたように言う石神さんに、なんだか罪悪感が押し寄せる。

(石神さんは、理由もなく怒る人なんかじゃない‥)

石神さんは返事をすることなく、歩き続けた。

石神さんの様子がおかしくなったのは、公園で犯人を確保してからだった。

(‥もしかして)
(私が犯人を追いかけた時、石神さんの制止を聞かなかったから‥)

サトコ
「石神さん‥」

石神
‥なんだ?

サトコ
「先ほどは軽率な行動をとってしまい、申し訳ありませんでした」

石神
‥‥‥

真っ直ぐ瞳を見つめて言うと、石神さんは厳しい視線を私に向ける。

石神
犯人を許せないという気持ちは分かる
だが、公安として目立つ行動は控えろといつも言っているはずだ

サトコ
「‥はい。本当にすみませんでした」

それから私たちは黙々と歩き続け、寮の近くまでやってくる。

石神
今日は、早く休むように

サトコ
「はい」

返事をすると、石神さんはその場から去って行った。
背中を見送りながら、改めて石神さんの厳しさを実感する。

(私は犯人を確保できたことに満足していたけど、それじゃダメなんだ)
(もっと公安としての行動を培わないと‥)

私はもっともっと頑張ろうと、改めて決意した。

翌日。
朝から喉に違和感があり、時折、せき込んでいた。

サトコ
「ゲホッ、ゲホッ‥」

(昨日、犯人を追いかけて、大声出したからかな‥)

鳴子
「大丈夫?なんだか、顔が赤いけど‥」

サトコ
「平気、平気!私、元気が取り柄だからね」

鳴子
「サトコがそう言うなら、いいけど‥」
「無理はしないでよね?」

鳴子は心配そうに、私の顔を見る。

サトコ
「うん。ありがとう‥」

(そんなに顔が赤いのかな?)
(ちょっと咳は出るけど‥)

サトコ
「あ、東雲教官の講義遅れちゃう!」

放課後になり、私は石神さんがいる個別教官室にやってきた。

サトコ
「あ、あの‥石神教官‥」

石神さんに昨日のことを謝ろうと切り出す。
すると、石神さんの優しい声に遮られた。

石神
もういい。犯人を捕らえられたのは大したものだった。よくやった

サトコ
「はい‥!」

(やった!石神さんから褒められた‥)

反省すべき点は多くあるけど、石神さんからのひと言に心が熱くなる。

石神
‥何を、ニヤニヤしている

<選択してください>

A: してません!

サトコ
「に、ニヤニヤなんて‥してません!」

石神
思いっきり顔が緩んでいるぞ?

サトコ
「っ‥」

石神さんに指摘され、頬に手を当てる。

(うれしくて、つい顔に出ちゃった‥)

石神
お前は公安を目指しているんだろう?あまり顔に出すな
‥まぁ、俺の前でなら素直なままでいいけどな

サトコ
「えっ、教官‥?」

石神
フッ、なんでもない

B: 嬉しいんです‥

サトコ
「だって、嬉しいんです‥」

石神
‥そんなニヤつくほどのことか?

サトコ
「はい!」
「やっぱり、石神さんから褒められるのは特別嬉しいです」

石神
っ‥そうか

石神さんは少し照れたように目を逸らす。
そして、フッと笑みを浮かべ、私の頭にポンっと手を乗せた。

C: もっと頑張ります!

サトコ
「もっと、石神さんに認めてもらえるよう頑張ります!」

石神
じゃあ、次回のテストの結果、期待していいんだな

石神さんが意地悪にニヤリとする。

サトコ
「っ‥!頑張ります!」

石神
フッ‥あまり頑張りすぎるなよ

石神さんは優しい笑みを浮かべていた。

石神
ん‥?

サトコ
「あ、あの‥石神さん?」

(なんだか、石神さんに見つめられてるような‥)

石神さんからの熱い視線に、思わずドキドキしてしまう。

石神
体調が悪いのか?

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サトコ
「っ!」

私の顔を覗きこむと、石神さんは私のおでこに触れる。

石神
もしかして、昨日池に落ちたのが原因か‥?

すると、途端に険しい表情になる。

石神
仕方ない‥週末の勉強会は、中止にする

サトコ
「そ、そんな‥!」

(石神さんは私の事を考えて言ってくれているんだろうけど‥)

サトコ
「みんな、石神さんとの勉強会を楽しみにしているんです!」

石神
しかし‥

サトコ
「私なら大丈夫です!だから、お願いします!」
「みんなのためにも、中止にはしないでください」

石神
‥分かった。だが、参加するなら必ず体調を治せよ

サトコ
「はい、ありがとうございます!」

(週末までまだ時間があるし、絶対に体調を治さなきゃ!)

勉強会当日。

サトコ
「‥くしゅん!」

私はくしゃみをして、目を覚ます。

サトコ
「うぅ‥なんだか、肌寒いような‥」

起き上がろうとすると、身体が重く感じた。

(うっ‥まさか、体調が悪化したのかな‥?いやいや、そんなまさか‥)

サトコ
「‥って、いけない!もうこんな時間!」

時計を確認すると、勉強会の時間が迫っていた。

(自分から言い出したことだし、せっかく石神さんが教えてくれるんだもん)
(なんとしてでも行かなきゃ‥!)

なんとか準備を終えると、勉強会の場所である教場へ向かう。

サトコ
「待っててください、石神教官‥!」

重い身体を引きずるように、前へ前へと進む。

だけど‥

サトコ
「あ、れ‥?」

(な、なんだか、身体が急にふわっと軽くなって‥)

(意識が、朦朧とする‥)

to be continued

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