カテゴリー

ホワイトデー 石神2話

サトコ
「あ、れ‥?」

(な、なんだか、身体が急にふわっと軽くなって‥)
(意識が、朦朧とする‥)

私はその場に倒れ込んでしまった。

誰かに抱き上げられている感覚がし、うっすらと瞼を開ける。

(この感覚‥もしかして‥)

サトコ
「石神‥さん‥?」

???
「誰と間違えてんだ、クズ」

サトコ
「‥‥?」

(あれ?石神さんって、こんな乱暴なしゃべり方だったかな?)
(誰かと似ているような‥)

私は誰かに抱き上げられたまま、再び意識を手放した。

意識が段々と覚醒していき、ゆっくりと瞼を開く。
そこには、見慣れた天井が広がっていた。

サトコ
「あれ‥?ここって‥私の部屋?」

(どうしてここに!?)
(私は確か、勉強会に向かう途中だったはず‥)

サトコ
「そうだ!勉強会‥!」

???
「安静にしていろ」

サトコ
「っ‥!!」
「い、石神さんっ!?」

慌てて飛び起きると、石神さんに抑えられた。

サトコ
「どうしてここに‥!?そ、それよりも、勉強会は!?」

石神
落ち着け。勉強会なら、もうとっくに終わった

サトコ
「そ、そんな‥」

石神
無理をするなと言っただろう?

石神さんは、厳しい視線を私に向ける。

サトコ
「ご、ごめんなさい‥」

石神
社会人として、体調管理をするのは当たり前のことだ

サトコ
「はい‥」

石神さんからきつく言われ、シュンと身体を縮こまらせる。

サトコ
「ご心配かけてしまって、すみませんでした」

石神
‥ハァ

石神さんは短くため息をつくと、ベッドに軽く腰掛けた。
そして‥

サトコ
「えっ‥」

(い、石神さんの顔が目の前に‥!)
(そんな‥誰か入って来たらどうしよう‥)

サトコ
「っ‥‥」

気持ちは焦りながらも、素直に目を閉じる。
そして私の顔を覗きこみ、石神さんはおでこをくっつける。

石神
‥熱はまだあるようだな

サトコ
「‥へ?」

石神
やはり、あの時池に落ちたのが原因か‥

すると、石神さんはおでこを離し、何か考える素振りを見せる。

(は、恥ずかしい‥)

期待していた自分に恥ずかしくなり、熱くなった顔を隠すように顔を背けた。

石神
ん‥?どうかしたか

サトコ
「い、いえ!なんでもないです!」

石神
ならいいが‥食欲はあるか?

サトコ
「はい‥」

石神
そうか‥少し待っていろ

石神さんは、ベッドからゆっくりと立ち上がる。

サトコ
「石神さん‥?」

石神
すぐに用意をするから、まだ寝ていろ

石神さんがキッチンに立ち、料理をする音が聞こえてくる。

サトコ
「‥いい匂い」

しばらくして、キッチンからいい匂いがして目が覚める。
すると、石神さんがおぼんにおかゆを乗せて戻ってきた。

石神
出来立てで、熱いからな‥

石神さんはレンゲでおかゆをすくい、フーフーと息を吹きかける。

石神
ほら‥

サトコ
「っ‥」

そして私の口元に、レンゲを差し出した。

(こ、これって、もしかしなくても‥)

石神
‥どうした?やはり、食欲がないのか?

サトコ
「い、いえ、その‥いただきます」

おずおずとおかゆを口にすると、程よく塩見が効いた味が口の中に広がった。

サトコ
「美味しいです‥」

石神
そうか‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-028

石神さんは続けてフーフーしておかゆを冷ますと、私の口元に運んでくれる。
少しだけ恥ずかしかったけど‥石神さんの優しさが何よりもうれしかった。
おかゆを食べ終わると、今日の勉強会のことを思い出し、申し訳ない気持ちでいっぱいになった‥

サトコ
「勉強会、せっかく開いてくださったのに‥」

石神
心配するな‥お前の分もやっておいた

サトコ
「え‥?」

そう言いながら、まとめられた資料を私に差し出した。

サトコ
「あ、あの‥これは‥?」

石神
見ればわかるだろう?お前の分の資料だ

サトコ
「石神さん‥」

(こんな大量の資料‥)
(もしかして、この前体調が悪いって言ってた時から用意してくれてたの‥?)

石神さんの優しさを実感し、胸がいっぱいになる。

<選択してください>

A: ありがとうございます

サトコ
「ありがとうございます!すごく嬉しいです‥」

石神
そんなに喜ぶことか?

サトコ
「はい!だって、石神さんの気持ちが嬉しくて‥」

石神
そうか‥

嬉しくて資料を胸に抱く私に、石神さんは優しい眼差しを向けた。

B: 石神の手を握る

サトコ
「石神さん‥」

私は石神さんの手をギュッと握った。

サトコ
「ありがとうございます!」

石神
ああ。お前は努力家だが、頑張りすぎるところがあるからな
勉強するなら、ちゃんと体調が良くなってからにしろよ?

そう言いながら、私の手を優しく握り返してくれた。

C: 石神をじっと見つめる

サトコ
「石神さん‥」

私は石神さんをじっと見つめた。

石神
今回の勉強会は残念だったが‥お前が望むなら、また開いてやる
だから‥今はゆっくり休んで、早く体調を治せ

サトコ
「はい‥」

石神さんは私の前髪を上げ、おでこに軽くチュッと口づけを落とした。

そこにドアを乱暴にノックする音が聞こえ、返事をすると加賀教官が部屋に入ってきた。

加賀
やっと起きやがったかクズが

サトコ
「加賀教官?どうしたんです‥?」

加賀
倒れたテメェをここまで運んでやったのは、誰だと思ってやがる?

サトコ
「えっ!?も、もしかしてあれは‥!」

(私を運んでくれたのは、加賀教官だったんだ!)
(てっきり、石神さんだとばかり‥)
(石神さんが乱暴な口調なのはおかしいって思ったけど、どうりで‥)

加賀
おい、何を考えてやがる

サトコ
「い、いえ!何も!」

加賀
ウソつくんじゃねぇ。クズのウソなんざお見通しなんだよ

サトコ
「そ、それは‥」

加賀教官から疑いの眼差しを受け、私は必死に弁明をするのだった。

翌日。
石神さんのおかげで体調を戻した私は、廊下を歩いていると加賀教官に声を掛けられる。

加賀
おい

サトコ
「加賀教官、おはようございます!昨日はありがとうございました!」

加賀
んなことより、昨日テメェの部屋の前で拾ったんだが、渡すの忘れちまった

サトコ
「わわっ!」

教官からポンッと小さな包みを渡され、キャッチする。

(可愛い包みだな。だけど、これ‥)

サトコ
「教官。これ私のじゃないです‥って、あれ?」

(加賀教官がいない‥どこに行ったんだろう?)

サトコ
「どうしよう、これ‥」

私は渡された包みを持ったまま、途方に暮れた。

休み時間になり息抜きのため屋上にやってくると、加賀教官から渡された小包をじっと見る。

石神
サトコ。こんなところにいたのか

サトコ
「あっ、石神さん」

石神
っ!

石神さんは小さな小包を見ると、驚いたように目を見開いた。

石神
‥それ、どうしたんだ?

サトコ
「今朝、加賀教官から渡されたんです。私の部屋の前に落ちてたみたいで‥」

石神
‥‥‥

(石神さん‥?どうしたんだろう‥)

石神
‥それ、貸してくれないか

サトコ
「え?これですか?」

私は不思議に思いながらも、石神さんに小包を渡す。

石神
本当はもっとちゃんとした形で渡したかったんだが‥

サトコ
「え‥?」

石神さんは少し照れ臭そうに、小包を渡した。

サトコ
「石神さん‥?」

私はわけがわからないまま、小包を受け取る。

石神
昨日はホワイトデーだろ?

サトコ
「あっ‥!」

(そうだった‥すっかり忘れてた!)

最近はテスト勉強のことで頭がいっぱいだったため、ホワイトデーのことを忘れてしまっていた‥

石神
その様子だと、気づいていなかったようだな

サトコ
「は、はい‥」

石神
フッ‥お前らしいな

サトコ
「すみません。あの‥開けてみてもいいですか?」

石神
ああ

丁寧に小包を開ける‥
すると、中には割れてしまったマカロンが入っていた。

石神
‥すまん。割れてしまったな

石神さんは、申し訳なさそうに謝る‥

(それだけ急いで来てくれたんだ‥)

石神さんの想いを受け取り、胸が温かくなる。

サトコ
「ありがとうございます!食べてみてもいいですか?」

石神
当たり前だろう。あぁ、味の保証はしないが‥

サトコ
「えっ、もしかして!手作りなんですか!?」

石神
‥‥‥

石神さんは、無言で視線を逸らす。
その耳は、少しだけ赤く染まっていて‥

石神
まあ、な‥

サトコ
「っ‥」

(うわぁ、どうしよう‥すごく嬉しい!)

サトコ
「それじゃあ‥いただきます」

マカロンを口にすると、優しい味がした。

サトコ
「すごく美味しいです!」

私は満面の笑みを、石神さんに向ける。

石神
フッ、そうか‥ありがとう

サトコ
「ん‥!」

石神さんは優しい笑みを浮かべ、私の頬にキスを落とす。

<選択してください>

A: 石神の頬にキスを返す

サトコ
「ふふっ、お礼を言うのは私の方なのに‥」

私は石神さんの頬に、キスを返した。

石神
サトコ‥

サトコ
「石神さん‥本当にありがとうございます!」
「って、お礼を言ってばかりですね」

石神
フッ‥そうだな

B: キスされた頬に触れる

私は、キスをされた頬に触った。
石神さんのぬくもりを感じ、愛しさが溢れそうになる。

サトコ
「石神さん‥」

石神
‥まだ足りないか?

サトコ
「っ‥」

額、瞼、そしてもう一度額へとキスを落とされる。

C: 石神の胸に飛び込む

サトコ
「っ、石神さん!」

石神
っ‥!

私は嬉しさのあまり、石神さんの胸に飛び込んだ。

サトコ
「すごく嬉しいです!ありがとうございます」

石神
サトコ‥

石神さんの温もりを感じ、ほっと息をつく。
石神さんは私の背中に腕を回し、強く私を抱きしめ返した。

私たちは見つめ合うと、ゆっくりと顔を近づける。
そして、長くて甘い口づけを交わした‥‥

数日後。
鳴子とカフェテラスでお茶をしていると、一柳教官の姿を見つける。

鳴子
「あっ、一柳教官だ!今日も相変わらずかっこいい」


「おっ」

私たちに気づいた一柳教官が、こちらにやってくる。

サトコ
「一柳教官、おはようございます」


「おお。そういえば、お前らに面白いもんを見せてやるよ」

サトコ
「面白いもの、ですか?」

一柳教官はスマホを操作し、一枚の写メを見せてくれる。

(石神さんが料理してる‥!?)
(しかも、エプロン姿っ!)

鳴子
「こ、これは‥すごいレアショットですね!」

千葉
「ん?どうしたの?」

鳴子
「こんなレアショットが見れるなんて!」
「ねぇ、サトコ?」

サトコ
「う、うん‥そうだね」

(‥石神さん、一柳教官から作り方を教わったんだ)

石神
なにを騒いでいる?

鳴子
「ハッ、石神教官‥」

すると、いきなり石神さんが後ろから現れた。

石神
どうかしたか‥?

千葉
「い、いや‥」

石神さんの登場に、みんなは思わず無言になる。
だけど私は、ひとりニコニコと笑みを浮かべていた‥‥

Happy  End

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする