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ホワイトデー 颯馬1話

サトコ
「‥ん?」

部屋から出ると、ヒラリと何かが足元に落ちた。

サトコ
「‥なんだろう?」

どうやらドアの間に挟まれていたらしく、私が開けたから落ちてしまったのだろう。
私は不思議に思いながら紙を拾ってみる。

(手紙‥かな?)

しかし、差出人の名前は書いていなかった。

サトコ
「‥うーん、誰だろう?名前を書き忘れちゃったのかな‥」
「でも、もしかしたら何かの連絡かもしれないし‥」

私は恐る恐る手紙の封を切って、中の便箋を見てみる。

サトコ
「えーと‥親愛なる氷川サトコ様」
「3月14日の13時に駅前の広場にてお待ちしております」
「愛する貴女に最高のおもてなしを‥」

サトコ
「あ、愛する貴女にって‥ラブレターっ!?」

鳴子
「え~、それ絶対ラブレターだよ!!」

千葉
「ホワイトデーを指定してきてるからね。可能性はあるかもしれない」

昼休み、鳴子と千葉さんに手紙のことを相談してみる。
すると、2人の推理が始まった‥

千葉
「いや、待てよ‥新手の詐欺って可能性もあるんじゃないか?」
「最近の詐欺手段って、なりふり構わずにやってる感じがあるからさ」

鳴子
「千葉さん、夢がなさすぎ‥」

千葉
「そ、そう言っても俺は可能性の話をしているだけで‥」

呆れたように言う鳴子に、千葉さんが少し焦ったように言葉を返している。

(相談してみたのはいいけど‥)
(なんだか余計に悩むことになっちゃったなぁ‥)

サトコ
「あっ」

その時、ふと時計が視界に入り、先ほど颯馬さんから呼ばれていたことを思い出す。

鳴子
「どうしたの?」

サトコ
「颯馬教官に手伝いを頼まれてるから、そろそろ行くね」

鳴子
「わかった、食器は片付けといてあげるから急ぎなよ」

サトコ
「ありがとう!」

鳴子に感謝しながら、私は教官室へと急いだ。

(‥いったい、あの手紙の差出人はだれなんだろう?)

教官室で、颯馬さんに頼まれた資料の整理をする。
しかし、頭の中は手紙のことでいっぱいだった‥

颯馬
サトコさん、どうかしました‥?

サトコ
「え?」

颯馬
先ほどからため息ばかりついているみたいですから

サトコ
「えっ、す、すみません‥!」

颯馬
体調でも悪いんですか?

サトコ
「いえ!大丈夫です!」

加賀
クズは風邪引かねぇって言うからな

東雲
兵吾さん、それってクズとバカは紙一重ってことですね

サトコ
「‥‥東雲教官、ヒドイです」

東雲
本当のことなんだから、ヒドくないでしょ?

サトコ
「‥‥‥」

東雲
ほら、否定できない

(な、なんか好き勝手に言われているような‥)

颯馬
歩、あまり私の補佐官さんを苛めないでください

にこりと笑った颯馬さんが、ポンッと私の肩に触れる。

東雲
はぁ‥わかりましたよ

颯馬
それより、何かあったのなら話してください

サトコ
「実は‥今朝、差出人不明の手紙がドアに挟まっていたんです」

石神
差出人不明‥?

サトコ
「はい‥3月14日にここに来るよう、時間と場所が書いてあったんです」

石神
‥‥事件か?

キラリ、と石神教官のメガネが輝く。

東雲
ちょっとそれ見せて

サトコ
「あっ‥」

手に持っていた手紙を、東雲教官がヒョイと取り上げる。
そして、手紙を見ると東雲教官の眉間にシワが寄った‥

東雲
キミさ、本当にわからないの?

<選択してください>

A: 「‥え?」

サトコ
「え‥?」

東雲教官がハァと深いため息をつく。

(あれ‥?なんか、呆れられてる?)

東雲
キミって本当にニブイよね‥

サトコ
「なっ‥」

A: 「どういうこと?」

サトコ
「え‥どういうことですか?」

東雲
さあね。よ~く考えれば、分かると思うけど
まぁ、クズとバカの紙一重さんにはわからないか

サトコ
「うっ‥」

(ひ、ヒドイ!そんな意地悪言わなくても‥)

東雲
キミなりに、じっくり考えてみなよ

C: 「教官は知ってる?」

(えっ!?その言い方って‥)

サトコ
「東雲教官は誰か知ってるんですか!?」

東雲
オレだけじゃなくって、よく考えればわかると思うけど

サトコ
「えっ‥」

(そ、そうなの!?いったいどういうこと!?)

東雲
まぁ、キミにはまだ早いかもね

東雲教官が呆れながら話しかけてくる。

(はぁ‥いったい誰なんだろう?)

東雲教官の言葉に、ますます悩んでしまった。

黒澤
この名探偵黒澤的には‥!

その時、バーン!とドアを勢いよく開けながら黒澤さんが入ってきた。

(今、ドアがバキッて音がしたような‥?)

加賀
おい、静かに入って来れねぇのか

颯馬
彼に静かさを求めるのは、少々無理そうですからね

黒澤
ヒドイです‥
でもオレが来たからにはもう安心!すべての謎は解決だ!

(‥黒澤さんって、いつも元気だなぁ)

黒澤
教えてしんぜよう!ずばり、それは‥!
ぐふっ!

黒澤さんが言いかけた時、なぜかその言葉は止まってしまった。

(黒澤さん、脇腹を押さえてどうしたんだろう?)

颯馬
大丈夫ですか‥?

顔面蒼白になっている黒澤さんに、颯馬教官が言葉を投げかける。

黒澤
しゅ、周介さん‥

颯馬
クスッ。少々はしゃぎすぎですよ?黒澤

(颯馬さんと黒澤さん、何を話してるんだろう?)
(それに颯馬さんの顔色がどんどん悪くなって行ってるような‥?)

黒澤
ち、ちょっと用事を思い出しました!帰ります!

黒澤さんは引きつった笑顔のまま、教官室から出て行った。

(いったい、何しに来てるんだろう‥?)

加賀
フッ‥クズには一生わからねぇだろうな

サトコ
「うっ‥‥」

後藤
それにしても、差出人不明とは怪しいな。何か心当たりは?

サトコ
「いえ、まったく‥」

後藤
‥そうか
もしかしたら、何かの取引を暗示する手紙かもしれないな‥

石神
いや、そんな大事な取引ならば手紙でやり取りはしないだろう

後藤
そうですね、他人に見られる可能性もありますから‥

石神教官と後藤教官が親身になって考えてくれる。
なんだか、時間を割いてくれるのが申し訳ない気がしてきた‥

サトコ
「もう少し、自分で考えてみます‥」

(‥颯馬さんはどう思ってるのかな?)

その夜、私は颯馬さんのいる教官宿泊室を訪ねていた。

サトコ
「こんな遅くに訪ねてきてすみません‥」

颯馬
フフッ、貴女なら大歓迎ですよ
それより、どうしたんですか‥?

サトコ
「昼間に話した手紙のことなんですけど‥」

あれからも色々と考えたけど、こうすればいいという結論が出てこなかった。

(手紙のせいで講義に集中できなかった部分もあったし‥)
(って、私の集中力の問題だから手紙のせいにしちゃいけないんだけど)

颯馬
そうですね‥
そんなに気になるなら、行ってみてはどうですか?

考え込んでいると、颯馬さんがニコリと言葉を返してきた。

サトコ
「え?」

颯馬
本当は心配なので、ひとりでは行かせたくないのですが‥
その日はどうしても外せない仕事がありまして‥

(3月14日、颯馬さんは仕事なんだ‥)
(‥危ない感じはしないし、ひとりでも大丈夫だよね‥!)

颯馬
サトコ、大丈夫ですか?

<選択してください>

A: 「‥たぶん大丈夫」

サトコ
「はい‥たぶん大丈夫です」

颯馬
たぶん‥ですか?

颯馬さんがしかめた顔をした。

颯馬
たぶんなんて気持ちで行動するのは、公安として失格ですよ

サトコ
「うっ‥」

(そうだよね‥。颯馬さんの言う通りだ)
(それに、颯馬さんにも心配かけたくないし‥)

B: やっぱり一緒に‥

(やっぱり、颯馬さんにも一緒に来てほしいな‥)
(でも、お仕事なのに迷惑かけちゃダメだよね!)

C: 「大丈夫です!」

サトコ
「はい!大丈夫です!」

颯馬
クスッ、随分張り切っていますね

サトコ
「そ、そんなことは‥」

本当は、一緒に来てほしいけど‥

(颯馬さんには迷惑かけたくない‥)
(心配かけないように、しなくちゃ!)

颯馬
‥サトコ?

俯いたままでいると、颯馬さんが心配そうに顔を覗きこんでくる。

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颯馬
やっぱり心配ですね‥

サトコ
「だ、大丈夫です‥!」
「こういう手紙をもらって、私もちょっと気になっていますし‥」

颯馬
くれぐれも無理だけはしないでくださいね?

そう呟きながら、颯馬さんが私のおでこにキスをしてきた。
僅かに感じた優しい温もりに、私の心臓はドキドキと高鳴っていく。

サトコ
「そ、颯馬さん‥!?」

颯馬
サトコが危ない目に遭わないよう、おまじないですよ

サトコ
「‥はい!ありがとうございます!」

颯馬
フフ、どういたしまして

颯馬さんから背中を押されたこともあり、私は指定の場所に向かっていた。

(3月14日って、世間的にはホワイトデーだよね‥)
(ってことは、やっぱり告白とか!?)

サトコ
「‥ダメダメ!油断は禁物!」
「それに、私には素敵な彼氏がいるじゃない!」

百面相をしながら独り言をいう私は、他の人から見たらかなり怪しい奴だろう。

サトコ
「‥それらしい人はいないよね」

待ち合わせ場所に到着したけど、それらしい人の姿はない。

(しばらく待ってみようかな?)
(‥遅れるってこともあるだろうし)

差出人不明のせいか、どうしても周りが気になってしまう‥

(あ、あの人かな?‥って、違うか)

サトコ
「‥そっか、今日はホワイトデーだし待ち合わせしている人が多いんだ」

幸せそうに彼氏と出かける女性の姿を見ると、少しだけ寂しくなった。

(この待ち合わせの相手が颯馬さんだったら、良かったな‥)

小さくため息をついた時、目の前に一台の高級外車が止まった。

サトコ
「‥え?」

(も、もしかして‥!?)
(この車に乗っている人が手紙の差出人‥!?)

私が呆気にとられていると、背後から急に身体を抑え込まれてしまう。

サトコ
「えっ!?」
「ちょ、ちょっと‥!!」

そのまま目隠しをされてしまい、車内に引きずり込まれた。

(ゆ、誘拐!?)
(私、誘拐されるためにわざわざここに来たってこと!?)

突然の出来事で頭が上手く働いてくれない。
私は出来る限りの抵抗をして逃げようと試みるが、
強い力で押さえつけられているため、身動きすら出来ない状態だった。

???
「落ち着いてください、サトコさん」

(あれ、この声は‥)

目隠しをされていても分かる優しくて穏やかな声。
驚いてピタリと動きが止まる。すると、ゆっくりと目隠しが取られた。

颯馬
フフッ、大丈夫ですか?

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サトコ
「そ、颯馬さん!?」

(颯馬さんがいて良かった‥)
(って、いやいや違うよね!!!?)
(安心している場合じゃないっ!!)

サトコ
「あの、一体どういうことですか!?」

颯馬
貴女に最高のおもてなしを受けてもらいます

サトコ
「さ、最高のおもてなし‥?」

口の前で人差し指を立て、颯馬さんはニッコリと微笑んだ‥
颯馬さんの言葉が分からず、私は首を傾げることしかできない。

サトコ
「あの、一体何が起こっているんでしょうか‥」

颯馬
まだ秘密です‥

状況が呑み込めず、颯馬さんに問いかけるけれど‥
颯馬さんはニッコリと微笑むだけで、何も教えてくれない。

(あれ、車が動いてる‥)
(どこに行くんだろう‥?)
(颯馬さんが一緒だから、怪しい場所じゃないとは思うけど‥)

颯馬
手荒な真似をしてしまったことは謝ります。すみません‥

サトコ
「は、はい‥いったい、どこに向かっているんでしょうか?」

颯馬
貴女をもてなしたいと言ったでしょう?

サトコ
「え‥?」

(もてなしたいって‥?)
(あの手紙は颯馬さんからだったんだ‥!?)

颯馬
そんな私が貴女を悲しませたり、怖がらせたりするようなことはしませんよ
まぁ‥怯えている貴女の姿を見ているのも、なかなか悪くはありませんけどね

颯馬さんが呟いた時、車が止まった。

颯馬
着いたようですね

颯馬さんが先に出て、エスコートしてれる。

サトコ
「えっ!?ここって‥?」

車から降り、目にした場所は‥?

to be continued

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