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櫻 後藤1話

私はみんなに気づかれないよう、後藤さんをチラリと見る。

(後藤さんと一緒に過ごしたいなぁ‥)

鳴子
「千葉さんは何か予定とかないの?デートとか」

千葉
「で、デートって‥」
「俺は別に‥」

サトコ
「?」

千葉さんと視線が合い、私は首を傾げる。

鳴子
「ふーん?」

千葉
「なんだよ‥そういう佐々木は?」

鳴子
「うーん、そうだなぁ‥せっかくだし‥」

後藤
‥氷川

鳴子と千葉さんが話に花を咲かせていると、後藤さんが私の隣にやってきた。

サトコ
「どうしたんですか?」

後藤
‥‥‥

後藤さんは周りを確認し、私の耳元に顔を寄せる。

後藤
‥今夜、電話する

サトコ
「え‥?」

後藤
‥‥‥

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驚いて後藤さんを見ると、周りに気づかれないように後藤さんは微笑んだ。
そして、すぐに私から距離を取る。

(耳、赤くなってたらどうしよう‥)

耳元に後藤さんの吐息を感じ、ドキドキと胸が高鳴っていた。

黒澤
フッフッフッ‥サトコさん、耳が赤いですよ?

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サトコ
「く、黒澤さん!?」

黒澤さんは気配を殺していたのか、いつの間にか私の背後にいた。

黒澤
教官と耳打ちだなんて‥なーんか、意味深ですね?

サトコ
「こ、これは‥その‥」

東雲
動揺しすぎでしょ

颯馬
おふたりは、仲がいいですからね
もちろん、教官と補佐官としての意味で、ね?

加賀
くだらねぇ

鳴子
「へぇ、教官とナイショ話ね‥で、何を話してたの?」

サトコ
「し、仕事の話だよ!」

黒澤
だったら、なんでそんなに慌ててるんですか?

東雲
余計に怪しいと思うけど

サトコ
「あ、怪しくなんてないです!」

石神
お前たち、その辺にしておけ

黒澤
こんな面白そうなこと、黙って‥
いえ、お仕事のお話であればオレも手伝えるかもしれませんし!

後藤
はぁ‥

皆さんの反応に、後藤さんは深いため息をつく。

後藤
黒澤、いい加減にしろ

黒澤
またオレだけですか!?
他のみなさんだって‥

後藤
‥‥‥

黒澤
ひいっ!
ご、後藤さんがオレに冷たいです!

颯馬
フフ、後藤が言うなら、今回はそういうことにしておきましょう

東雲
それにしても‥キミ、公安刑事になりたいんでしょ?

サトコ
「は、はい‥」

東雲
ちょっと突っ込まれただけでそんなに慌てるなんて
もっと落ち着きを持った方がいいと思うけど

サトコ
「うっ‥」

(い、痛いところをつかれた‥!)

鳴子
「あ~、サトコはそういうところありますよね」
「反応が素直すぎると言いますか、何を考えているのか分かりやすいといいますか‥」

千葉
「でも、それが氷川のいいところなんじゃないか?」

東雲
へぇ、いいところね‥

千葉
「な、なんですか?」

東雲
別に。ただ、彼女みたいな落ち着きがない子が彼女だと大変だろうなって思って
癒し系とは程遠いし、一緒にいて疲れそうだし

サトコ
「そこまで言いますか!?」

東雲
だって、事実でしょ?

サトコ
「それは‥」

(確かに、落ち着きないもんな‥)

思い当たる節が多々あり、何も言い返すことが出来ない。

(後藤さんはどう思ってるんだろう?)

チラリと後藤さんを見る。
後藤さんは黒澤さんの相手で、手一杯のようだった。

(だけど、私は私だし‥自分にできることを精一杯やっていこう!)

お花見が終わり、寮の自室に戻る。
お風呂に入って一段落していると、携帯が着信を告げた。

(後藤さんからだ!)

ディスプレイを見て、パッと顔を輝かせる。
私は意気揚々と、電話に出た。

サトコ
「もしもし」

後藤
俺だ。‥今、大丈夫か?

サトコ
「はい、大丈夫ですよ」

<選択してください>

A: 今日のお花見、楽しかったですね

サトコ
「今日のお花見、楽しかったですね」

後藤
‥‥‥

サトコ
「後藤さん‥?」

後藤
いや‥悪かったな。あいつらに、からかわれただろう?

(後藤さん、気にしてくれていたんだ‥)

サトコ
「ふふっ、大丈夫ですよ。私が慌ててしまったのもいけませんし‥」
「今度は、気をつけますね!」

後藤
そうだな‥

電話の向こうで、後藤さんがフッと微笑むのがわかった。

B: 電話してくれて、うれしいです!

(後藤さんとこうしてゆっくり話せる時間は、あるようでないし‥)

サトコ
「電話してくれて、うれしいです!」

後藤
そうか‥

後藤さんは少しだけ間を空けて、優しい声音で続ける。

後藤
俺も‥アンタとこうして話している時間が、好きだ

サトコ
「後藤さん‥」

後藤さんの言葉に、胸がじんわりと温かくなった。

C: ‥電話、待ってました

サトコ
「‥後藤さんからの電話、待っていました」
「今日はなんだかんだ言って、あまりお話ができませんでしたし‥」

後藤
そうだな。アイツらが揃うと、騒々しくてかなわない
アンタの作ったおはぎも、食べられなかったしな

少しだけ拗ねているような言い方に、頬が緩むのを感じる。

サトコ
「ふふっ、今度、後藤さんのために作りますね」

後藤
ああ‥楽しみにしている

耳元から聞こえてくる愛しい人の声に、幸せを感じる。

後藤
なぁ、サトコ‥今度の連休、一緒に過ごさないか?

サトコ
「え?」

後藤
アンタの休みに合わせて、有休を申請した

サトコ
「後藤さん‥」

思いもよらない誘いに、胸が詰まる。

(普段忙しい後藤さんを癒すチャンスだよね!)

サトコ
「はいっ!」

後藤
フッ‥元気だな

サトコ
「あっ、すみません‥うれしくて、つい‥」

後藤
サトコはどこか行きたいところはあるか?

サトコ
「そうですね‥せっかくだから、遠出するのはどうですか?」

後藤
遠出か‥

サトコ
「はい。海‥は、この時期はまだ寒いですし‥」

私はふと、今日行ったお花見を思い返す。

サトコ
「桜‥」

後藤
ん?

サトコ
「あ、いえ‥地元の桜を思い出したんです」
「私の地元は田舎なんですけど、毎年綺麗な桜が咲いていて‥」

後藤
‥俺の地元の山桜も、綺麗だったな

サトコ
「後藤さんの地元‥山口ですよね?」

後藤
ああ。仕事の兼ね合いで、中々帰省することが出来ないが‥
いつか、アンタにもあの光景を見せたいと思っている

サトコ
「後藤さん‥」

私は後藤さんの地元の風景を思い出す。

(桜が咲いたら、どれだけ綺麗な光景になるんだろう‥)

サトコ
「はい‥私もいつか、見てみたいです」

私は遠い後藤さんの地元に、思いを馳せた。

翌日。
放課後になり、私は鳴子と千葉さんと一緒にカフェテラスでお茶をしていた。

サトコ
「ふわぁ‥」

(後藤さんといろいろ話したけど‥結局、どこに行くか決まらなかったんだよなぁ‥)

鳴子
「眠そうだね」

サトコ
「遅くまで調べものをしてて‥」

千葉
「調べもの?」

サトコ
「うん、ちょっとね‥」

電話が終わった後にいろいろ調べたが、なかなかいいところが見つからなかった。

(後藤さんを癒すと言っても、何をすればいいんだろう‥?)

私は、昨日の電話を思い返す。

サトコ
「後藤さんは、どこか行きたいところはありますか?」

後藤
そうだな‥

しばらくすると、電話口からぼそりと後藤さんの声が聞こえてくる。

後藤
アンタと一緒なら‥どこでもいい

サトコ
「っ‥」

(そんなこと言うなんて、ズルいよ‥)

サトコ
「‥‥‥」

鳴子
「サトコ?おーい、サトコ?」

サトコ

「‥はっ!」

千葉
「どうしたんだ?なんだか、固まってたみたいだけど‥」

鳴子
「しかも、ニヤニヤしてね」

サトコ
「えっ、私そんな顔してた!?」

鳴子
「ふふっ、冗談だよ。ニヤニヤっていうか、幸せそうな顔はしてたけどね」

サトコ
「そ、そっか‥」

(鳴子は勘がいいから、気をつけなくちゃ‥)

私は誤魔化すように、コーヒーカップを口につける。

(あ、そうだ。鳴子たちにも、それとなく聞いてみようかな?)

サトコ
「ねぇ、今度の休みにどこかゆっくりできるところに行こうと思うんだけど‥」
「どこか、いいところないかな?」

千葉
「ゆっくりできるところ?」

サトコ
「うん。日頃の疲れを癒せるようなところがいいかなって」

鳴子
「疲れを癒すと言ったら、やっぱり‥温泉じゃない?」

千葉
「そうだな。ゆったりと温泉に浸かるのって気持ちいいし」

サトコ
「温泉‥」

(それいいかも!早速、後藤さんに提案してみなくちゃ)
(それに、どうせなら泊りで行くのもいいよね)

鳴子
「‥サトコが、またニヤけてる」

千葉
「そんなに温泉が好きなのかな?」

2人がそんなことを話しているとは、つゆ知らず。
私はお礼を言うと、教官室へ向かった。

個別教官室へやってきた私は、後藤さんに連休のことを話す。

サトコ
「後藤さん、温泉に行きませんか?」

後藤
温泉‥?

サトコ
「はい!今度の連休にどうかなって思って」

後藤
フッ‥

サトコ
「後藤さん‥?」

後藤
いや‥アンタがあまりにも笑顔で言うからな

サトコ
「あっ‥」

後藤さんは笑みを浮かべると、私の頭をポンポンと撫でる。

後藤
サトコがそんなに行きたいなら、温泉にするか

サトコ
「は、はい‥ありがとうございます」

(頭、撫でられちゃった‥)

サトコ
「後藤さん、連休を取ったんですよね?」

後藤
ああ。さすがに3日は取れなかったから、2日だけどな

サトコ
「それじゃあ、一泊二日で行きませんか?」

後藤
は‥?

サトコ
「泊りの方がゆっくりできるかと思ったんですが‥」

後藤
‥‥‥

(あ、あれ‥?後藤さんが黙っちゃった‥)

<選択してください>

A: 顔を覗きこむ

サトコ
「あの‥後藤さん?どうしたんですか?」

後藤
い、いや‥

顔を覗き込み首を傾げると、後藤さんはほのかに頬を赤くした。

後藤
‥アンタって、そういうところがあるよな

サトコ
「え?」

後藤
自覚なし、か‥なんでもない

B: 深い意味はないです

(も、もしかして‥私、大胆なこと言っちゃったのかも‥!)

サトコ
「そ、その!深い意味はなくて、ですね‥」

後藤
分かってる。少し、驚いただけだ

サトコ
「‥‥‥」

後藤
‥‥‥

私たちの間に、微妙な空気が流れる。

(うぅ‥さすがに泊りは言い過ぎだったのかな‥?)

C: 後藤さんの袖を引っ張る

サトコ
「後藤さん?」

私は後藤さんを見上げながら、袖を引っ張った。

後藤
‥‥‥

サトコ
「あの‥?」

後藤
‥それ、わざとやってるのか?

サトコ
「え?」

後藤
‥‥‥

サトコ
「きゃっ‥」

後藤さんは私の腕を引き、ギュッと抱きしめる。

後藤
‥あまり、可愛いことをするな

耳元でそうつぶやくと、私を解放する。

(ご、後藤さん‥どうしたんだろう‥)

突然の後藤さんの行為に、心臓が早鐘を打った。

サトコ
「えっと‥泊りはダメですか?」

後藤
‥いいだろう

サトコ
「本当ですか!?ありがとうございます!」

(ふふっ、後藤さんと泊りで温泉旅行‥楽しみだなぁ)

デート当日。
私は後藤さんと駅前で待ち合わせをしていた。

サトコ
「あ、後藤さん!」

後藤
待たせたな

サトコ
「私も今来たばかりです!今日は晴れて良かったですね」

後藤
ああ

サトコ
「今日のデートプランは完璧なんですよ!」

私は、先日の出来事を思い返す。

私は温泉のパンフレットをぼんやりと見ながら、廊下を歩いていた。

(温泉に行くって決めたけど、場所はどこがいいかなぁ)

難波
氷川、雑誌に夢中で壁にぶつかるなよ~

サトコ
「あっ、難波室長!す、すみません‥」

難波
んで、何を見てたんだ?‥温泉?

サトコ
「はい。今度の連休で行こうと思ってて」

難波
温泉か‥この時期だと、花見をしながら露天風呂ってのもいいよな

(花見‥そういえば、前に後藤さんと山桜の話をしてたっけ)

難波
この近くだと、鬼怒川あたりか?箱根は多少時期がずれるだろうしな

サトコ
「鬼怒川‥」

(山桜も見れて温泉も入れるなんて、最高だよね)
(それに、鬼怒川だったら電車で行けるからゆっくりしてもらえるだろうし‥)

サトコ
「難波室長、ありがとうございます!」

難波
ん‥?よく分からんが、どういたしまして

あれからたくさん下調べをし、完璧なデートプランを組んでいた。

後藤
そうか‥それは楽しみだな

サトコ
「はい!あ、何か軽食を買って行きませんか?」

後藤
ああ

私たちは軽食を購入すると、電車に乗った。

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車窓に目を向けると、都会の喧騒からゆったりとした田舎の景色へ変わっていく。

サトコ
「のどかですね」

後藤
ああ。たまにはこういうのもいいな

後藤さんは景色を見ながら、くつろいでいるようだった。

(今回は後藤さんをしっかり癒さなきゃ!)

意気込んでいると、お腹に違和感が走った。

サトコ
「‥ん?」

後藤
どうした?

サトコ
「い、いえ‥」

(な、なんだかお腹が痛い‥?)
(‥すぐによくなるよね)

そう思ったのも、つかの間。

(ど、どうしよう‥我慢できなくなってきたかも‥)

トイレに行こうにも、鈍行列車のため車内にはトイレがない。

後藤
‥サトコ。顔色が悪い気がするが‥

サトコ
「そ、そんなことないですよ?」

後藤
はぁ‥ウソをつくなら、もっと上手くつけ。どこか痛いのか?

真剣な表情の後藤さんに、これ以上ウソはつけない。

サトコ
「実は、お腹が痛くて‥」

後藤
それならそうと、早く言え。もうすぐ、次の駅に着くな‥

後藤さんは荷物をまとめ、立ち上がる。

後藤
サトコ、次の駅で降りるぞ

サトコ
「はい‥」

スピーカーから、次の駅に着いたことが告げられる。

(せっかく、ここまで順調だったのにな‥)

私は少しだけ肩を落としながら、電車を降りた。

トイレを済ませた私は、後藤さんの元に戻る。

サトコ
「お待たせしました」

後藤
大丈夫か?

サトコ
「はい。ご心配をおかけして、すみません」
「えっと、次の電車は‥えっ!?」

私は時刻表を確認し、思わず声をあげてしまう。

後藤
どうした?

サトコ
「あ、あの‥後藤さん」

私はすがるような目で後藤さんを見て、口を開いた‥‥

to be continued

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