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櫻 颯馬1話

(颯馬さんと過ごせたらなぁ‥)

(難波室長はああ言ってるけど、颯馬さんは有休取るのかな‥?)

チラリと颯馬さんが座ってる方を見ながら心の中で呟く。

(休みが合うなら、一緒に過ごしたいけど‥)

颯馬

フフッ‥

すると、颯馬さんと視線が合って、

私は他の人に気づかれないように、慌てて視線を逸らした。

(もしかして、考えていることがバレちゃった?ううん、まさかね‥)

(‥それに颯馬さんは忙しいんだし、一緒に過ごしたいとかわがまま言っちゃダメだ!)

颯馬

ちょっと失礼します

黒澤

あ、トイレですか!?

オレでよかったら付き合いますよ~

颯馬

黒澤がどうしても来たいと言うのなら止めませんよ?

黒澤

じょ、冗談ですよ!本当に行くはずないじゃないですか!

黒澤さんをからかい遠ざかっていく颯馬さんを目で追っていると‥

黒澤

そういえば、サトコさんはどこかに出かける予定はないんですか?

サトコ

「今のところはありませんね」

東雲

ふ~ん?颯馬さんも休みを取ると思うけど?

サトコ

「‥なっ、なんでそこで颯馬教官が出て来るんですか‥!」

黒澤

おやおや!何か焦ってますね?

怪しい臭いがプンプンします‥

サトコ

「なっ‥!怪しくなんてないです!」

(黒澤さん‥侮れないなぁ‥)

黒澤さんにこれ以上突っ込まれないよう冷や冷やしていると、隣にいた東雲教官が割って入る。

東雲

キミさ、もっと積極的になってみたら?

黒澤

そうですよ!積極的な女性の方が、男は好きなんですよ!

東雲

透は特にそんな感じがするよね。オレはどっちでもいいけど

黒澤

えっ、そこは同意するところじゃないんですか!

東雲

まあ、マンネリ化しないためにも色々試してみるべきかもね

(‥積極的に、か)

(たまには私からデートに誘ってみてもいいのかな‥?)

(黒澤さんと東雲教官の言葉を鵜呑みにしたわけではないけど‥)

(いつもデートに誘ってくれるのは颯馬さんからだから、たまには私から誘ってみよう!)

(でも、わがままだと思われちゃうかな?颯馬さんはどんな反応を見せるんだろう‥)

そんなことを思いながら、どうやって颯馬さんを誘おうか考えていた。

翌日の放課後。

私は教官室の前に立っていた。

(‥室長が仰っていた有休の件なんですけど、颯馬さんは有休取られるんですか?)

(颯馬さんと一緒に過ごしたいです!)

サトコ

「ん~‥」

一晩中、誘い言葉を考えたけど結局決められなかった。

聞きたいことと言いたいことを簡潔に纏め、自分なりに上手く誘える言葉にすればいいんだよね!

でも、いざ誘うとなると緊張してしまい、足が進まない‥

(どうしよう、やっぱり出直そうかな‥)

そんなことを考えていると、突然目の前のドアが開いた。

サトコ

「そ、颯馬さん‥!」

颯馬

氷川さん、どうしたんですか?

人影が見えたのですが、中々入ってこないから心配しましたよ

こちらへどうぞ

颯馬さんは優しげな笑みを浮かべながら、個別教官室へと案内してくれた。

颯馬

コーヒーでいいですか?

サトコ

「は、はい‥!」

個別教官室に通され、ソファに腰を掛ける。

颯馬さんがコーヒーの入ったカップを差し出した。

颯馬

なにか悩み事ですか?

サトコ

「ど、どうしてですか‥?」

颯馬

教官室の前で唸っていたでしょう?部屋の中まで聞こえていましたよ

サトコ

「まさか口に出てたなんて‥」

颯馬

それで、何に悩んでいるんですか?

サトコ

「えっ‥」

颯馬さんは優しい笑みを浮かべながら、私を見つめている。

(颯馬さんは、きっと気づいているんだ‥)

黒澤

そうですよ!積極的な女性の方が、男は好きなんですよ!

東雲

まあ、マンネリ化しないためにも色々試してみるべきかもね

(‥黒澤さんや東雲教官もああ言ってたし)

(私も、たまには積極的になってみよう!)

心の中で決心をして、私はグッと強く手を握りしめた。

サトコ

「‥あの、難波室長が仰っていた有休の件なんですけど」

颯馬

有休?

あぁ、お花見の時に言っていた件ですね

サトコ

「颯馬さんが迷惑じゃなければ、一緒に過ごしたくて‥」

颯馬

‥‥‥

私の言葉に、颯馬さんは一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに優しく微笑む。

サトコ

「あの、颯馬さん?」

颯馬

あ、いえ‥私からお誘いしようと思っていたので‥

貴女からお誘いを受けて、少しだけ驚いたんですよ

サトコ

「‥ダメ、ですか?」

颯馬

ダメなんて、とんでもない。むしろ光栄です

それに、私と過ごしてもらわなくては困ってしまいます

サトコ

「え?」

颯馬

フフッ、実はもう貴女の休みに合わせて有休を取っているんですよ

サトコ

「えっ。そ、そうだったんですか!?」

颯馬

ええ

颯馬さんは、悪戯に成功した時のような、そんな笑顔を浮かべながら言う。

(そうだったんだ、嬉しいな‥)

颯馬

休暇は来週からですが、今週末もふたりで出かけませんか?

サトコ

「いいんですか?」

颯馬

おかしなことを聞きますね。良くなければ私は誘ってなんかいませんよ

サトコ

「はい‥!」

「‥あの、デートプランは私に任せてくれませんか?」

颯馬

え?

サトコ

「いつも颯馬さんが考えてくれていますし、今回は私に任せてください!」

颯馬

フフッ、それでは、楽しみにしています

サトコ

「はい!」

サトコ

「うーん‥」

部屋に戻った後、私は颯馬さんとのデートプランを考え始める。

けれど、これといったプランを思いつかず、私はさっきから唸りっ放しだった。

サトコ

「今まで颯馬さんと一緒に行って楽しかった場所はたくさんあるんだけど‥」

「せっかくだし、まだ一緒に行ったことがないところがいいよね‥!」

「‥颯馬さんが好きそうな場所って、何かないかな?」

私はスマホを取り出し、颯馬さんの好きそうなものを打ち込んで、検索をかける。

すると、思った以上にヒットし、更に迷ってしまう‥

(どこにしよう‥)

(誰かに聞いてみようかな‥?)

電話を取り出して、詳しそうな鳴子に電話をかけてみる。

鳴子

『もしもし?』

サトコ

「鳴子?ちょっと相談なんだけど‥」

鳴子

『なにっ?もしかして、恋のお悩み!?』

サトコ

「ち、ちがうよ!!」

鳴子

『えー、なんだ~‥』

(恋のお悩みって言ったら、そうなんだけど‥)

鳴子に心の中で申し訳ないと思いつつ、おすすめスポットについて聞いてみる。

サトコ

「実は‥今度、地元から友達が遊びに来るんだけど、どこかお勧めのスポットとか知らない?」

鳴子

『お勧めスポットかぁ‥』

サトコ

「その人、盆栽とか好きなんだけど‥」

鳴子

『盆栽!?‥ずいぶん、渋い趣味してるんだね』

サトコ

「う、うん‥そうなんだよね」

鳴子

『あっ‥!そういえば、この前テレビでお勧めの盆栽スポットを特集で取り上げてたよ!』

サトコ

「え、本当っ!?」

鳴子の言葉を聞き、私は目を丸くする。

サトコ

「鳴子っ!それ、どこ!?」

鳴子

『えーっと‥確かメモしたはずだから、後でLIDEで地図送るね』

サトコ

「ありがとう!鳴子!」

鳴子

『まぁ、そのお友達と楽しんできなよ』

サトコ

「う、うん」

鳴子

『じゃあ、またね』

サトコ

「またね」

電話を切ると、すぐに鳴子から地図が送られてくる。

そうして、私は颯馬さんが喜んでくれる場所を、偶然にも知ることができた。

(これなら、きっと颯馬さんも喜んでくれる!)

そしてやってきた週末。

私たちは駅前で待ち合わせをしていた。

(こうやって颯馬さんを待ってる時間って好きなんだよね)

颯馬

フフ、やけに楽しそうですけど‥どうしたんですか?

サトコ

「わっ‥」

いつの間にか目の前に颯馬さんが立っていて、私は驚きの声を上げた。

颯馬

すみません。驚かせてしまいましたか?

サトコ

「いえ、私も考え事をしていたので‥」

颯馬

考え事、ですか?

サトコ

「はい。颯馬さんを待ってる間の時間は楽しいなって」

颯馬

‥‥‥

颯馬さんはポカンとした表情で私を見つめた。

サトコ

「そ、颯馬さん?」

颯馬

‥まったく、貴女という人は‥

(あ、呆れられちゃった‥!?)

颯馬

ここが外でなければ、きっと襲っていますよ?

サトコ

「おそっ‥!?」

突然の言葉に、私が顔を真っ赤にする。

サトコ

「あの、冗談ですよね‥?」

颯馬

フフッ、さぁ、どうでしょう?

(わ、分からない‥!)

感情の読めない笑顔に、私は曖昧に笑うことしかできなかった。

颯馬

それより、今日はどこに連れて行ってくれるんですか?

サトコ

「そうでした‥!今日は颯馬さんが喜んでくれそうなところにお連れしますね!」

颯馬

フフッ、楽しみです

颯馬さんはそう言って、さりげなく私の手を繋いできた。

サトコ

「‥っ」

私が驚いていると、颯馬さんはにっこりと微笑んで‥

颯馬

デート‥ですよね?

サトコ

「は、はい、そうです‥!デート、です‥!」

颯馬

そう。それなら手を繋ぐのも不自然じゃないでしょう

そう言って、颯馬さんは歩き始める。

(‥手を繋ぐとか、初めてじゃないのに、ドキドキする)

(うぅ、どうしよう、顔が熱い‥赤くなってるのバレちゃうよ‥)

治まれ、と思う心に反して私の頬はどんどん熱を帯びていった。

颯馬

ここは‥

颯馬さんを連れてきた場所、そこは盆栽カフェだった。

(颯馬さんは盆栽が好きだし、きっと喜んでくれるはず‥!)

颯馬

「盆栽カフェ、ですか‥

サトコがこういう場所を知っていたなんて、少し驚きました

サトコ

「偶然知ったんですけど‥」

「颯馬さんは盆栽がお好きですし、きっとここも気に入ってくれるんじゃないかなと思って‥」

颯馬

‥‥‥

サトコ

「颯馬さん?」

颯馬

なんでもありませんよ。ありがとうございます

颯馬さんは少し照れたように微笑む。

(颯馬さんが喜んでくれてよかった‥!)

(‥私も盆栽カフェなんて初めてだけど、きっとふたりなら楽しいよね!)

女性店員

「いらっしゃいませ」

「当店は初め‥って、あら!お久しぶりですね」

私たちを案内するべく近寄ってきた店員さんが、にっこりと微笑みながら話しかけてきた。

もちろん私は初めて訪れる場所だから、私に言った言葉じゃないのは分かる。

女性店員

「以前は足しげく通ってくださっていたのに、最近は見かけないから心配していたんですよ」

颯馬

お気遣い、ありがとうございます

女性店員

「新しい盆栽もありますので、ゆっくり楽しんでいってくださいね」

「では、ごゆっくりどうぞ」

(‥も、もしかしてここに来るのって初めてじゃないのかな?)

店員さんとの会話を聞く限り、結構このお店に慣れている感じがする。

颯馬

サトコは飲み物、何にしますか?

サトコ

「‥颯馬さん、このお店は初めてじゃなかったんですね」

颯馬

‥ええ、以前に何度か来たことがあるんです

サトコ

「ごめんなさい。颯馬さんが喜ぶところに連れて行くって約束したのに‥」

颯馬

サトコ‥

ある程度、颯馬さんにリサーチしてから行く場所を選ぶべきだったのかもしれない。

そうすれば、颯馬さんの行き慣れたお店を選ぶこともなかったのに、と後悔する。

サトコ

「えっと‥」

颯馬さんに何て言いか分からない。

颯馬

‥まったく、貴女という人は

颯馬さんは深いため息をつく。

彼の表情を見るのが怖くて、私は俯いたままになっていた。

颯馬

つまり、貴女は私がここに連れて来てもらって喜んでないと思っている‥

そう言いたいんですよね?

サトコ

「‥はい」

颯馬さんの表情を見るのが怖くて、私は俯いたまま頷いた。

颯馬

貴女のそういうところは長所でもありますが、短所でもあるんですよ?

サトコ

「え?」

颯馬

サトコが私の事を考えて連れて来てくれた場所‥

それをどうして私が喜ばないなんて考えるんですか

貴女が私の好きな物を知っていてくれただけで嬉しいんです

私の頭を優しく撫でながら、颯馬さんが言葉を投げかけてくる。

心に沁みる優しさに、私は少しだけ泣きそうになってしまった。

颯馬

せっかくですから楽しみましょう

きっとサトコも気に入ってくれるはずですから

サトコ

「‥はい!」

差し出された手に、自分の手を重ねて席へと向かった。

to be continud

【管理人の疑問】

あれ?選択肢が‥‥ないぞ‥‥?

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