カテゴリー

体育祭 プロローグ1

パン!パン!

ピストルの音が鳴り響き、晴天の空に消えていく‥

(ついに始まった、公安学校体育祭‥)

(紅組、白組に分かれて普段の訓練の成果を発揮しつつ、正々堂々と楽しみましょう‥)

サトコ

「‥っていうコンセプトだったはずだけど」

東雲

なにそれ?心のポエム?

サトコ

「わっ!?東雲教官、いつからそこに!?」

東雲

『ついに始まった公安学校体育祭。紅組、白組に分かれて‥』って

キミが一人で物思いにふけってるところ辺りから

サトコ

「ま、待ってください!その辺、言葉に出してませんでしたよね‥!?」

東雲

キミってほんとにわかりやすからね

(そこまで、考えがダダ漏れってこと‥!?)

その時、グラウンドの前方に設置されたステージに、石神教官が立った。

サトコ

「石神教官は、白組の代表ですよね」

「紅組は加賀教官でしたよね‥一緒に選手宣誓するんですか?」

東雲

兵吾さん、いないね。逃げたのかも

黒澤

大丈夫です!もうすぐ後藤さんと周さんが連れてきますから

サトコ

「わっ!?黒澤さんもいつの間に‥」

(なんでこの人たちって、神出鬼没なんだろう‥)

一向に始まらない選手宣誓に会場がざわめき始めた時、

グラウンドの奥から後藤教官と颯馬教官が加賀教官を連れてやってきた。

後藤

加賀さん、いい加減に観念してください

加賀

テメェら、黒澤の差し金か

颯馬

黒澤の言いなりになったわけじゃありませんよ

ただ、選手宣誓をしていただかないと、体育祭が進みませんから

石神

おい加賀、早くしろ

加賀

こんなくだらねぇこと、テメェ一人で充分だろうがクソメガネ

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-003

石神

学校の行事で私情を挟むな。こちらだってお前と宣誓など本来ならごめんだ

加賀

だったら最初から断りやがれ、プリン野郎

石神

私情を挟むなと何度言えばわかる?柔らか求肥男

(ああ‥教官たちの声がマイクを通して筒抜け‥)

(しかも石神教官、前は『柔らか和菓子男』だったのに、さらに具体的になってる‥)

難波

おい、お前ら早くやれー。タイムスケジュールが押すぞ

難波室長の声で、ようやく加賀教官がステージに上がる。

石神

宣誓。我々公安一同は、日ごろの訓練の成果を発揮し

加賀

‥‥‥

石神

おい、次はお前だろう

加賀

こんなもん、いちいち覚えてねぇ

石神

‥どうしようもないな

安全、確実、冷静に競技することを誓います

白組代表、石神秀樹

加賀

‥‥‥

石神

『おい!』

加賀

チッ

‥紅組、加賀兵吾

パン!パン!とピストルが鳴り響き、ようやく宣誓が終わる。

鳴子

『いや~、長い選手宣誓でしたね!』

『でも、教官たちの選手宣誓なんて新鮮でとても楽しかったです!』

千葉

『佐々木、あんまり調子に乗ると後で怒られるよ』

鳴子

『千葉さんこそ、もう司会は始まってるんだから、マイク通して喋らないでよ』

千葉

『あっ、ごめん』

『‥コホン、さて、ついにやってきました、公安体育祭!』

『晴天の中行われますので、みなさん水分補給はしっかりと‥』

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-004

鳴子

『イケメンたちの汗かく姿!争う様子!ぶつかりあう身体!』

『これは楽しみです!目の保養です!誰か写真撮ったら後で売ってください!!!』

千葉

『おい、佐々木‥』

鳴子

『おーっと、紹介が遅れました!』

『本日の体育祭、司会進行を務めますのは私、佐々木鳴子と‥』

千葉

『千葉大輔です。よろしくお願いします』

千葉さんと鳴子の声が、マイクを通して会場に響き渡る。

(大丈夫かな‥夫婦漫才みたいになってるけど)

(まぁ。笑は取れてるみたい‥)

ルール説明が終わり、みんなそれぞれの応援席に戻る。

東雲

はぁ‥怠

サトコ

「東雲教官、こういうのめんどくさがりそうですもんね」

東雲

めんどくさがりそう、じゃなくて、本当にめんどくさい

誰だよ。こんなイベント考えたの

黒澤

はいは~い!!!

元気よく手を挙げる黒澤さんに、じりじりと東雲教官がにじりよる。

東雲

そうだろうとは思ったけど、ほんとに余計なことするよね。透って

黒澤

だって、学校の言えば体育祭じゃないですか!

颯馬

そうですよ歩。たまには私たちも青春を謳歌しないと

振り返ると、颯馬教官たちがやってきたところだった。

<選択してください>

A: 楽しみなんですか?

サトコ

「教官たちも、やっぱり楽しみなんですか?」

東雲

そんなわけないじゃん

黒澤

いや、楽しみましょうよ!

後藤

‥そうだな

(後藤教官、ちょっとウキウキしてる‥?)

B: なんの競技に出るの?

サトコ

「教官たちは、なんの競技に出るんですか?」

颯馬

応援に来てくれるんですか?

サトコ

「もちろんです!全力で応援しますよ!」

東雲

へぇ?それって紅組?それとも白組?

サトコ

「えっ?いや、それは‥」

(そういえば、どっちを応援すればいいんだろう‥?)

C: サボっちゃダメですよ

サトコ

「教官たち、面倒でもサボっちゃダメですよ」

颯馬

まさか。学生たちの手本となるべき存在ですからね

黒澤

そうですよ、歩さん!サボっちゃダメですよ!

東雲

こんなイベント、真面目にやる方がおかしいだろ

石神

みんな揃ってるな

応援席にいる私たちのところへ、石神教官と加賀教官が戻ってきた。

サトコ

「お疲れ様でした!選手宣誓、素敵でした!」

加賀

ああ゛?

サトコ

「ひっ‥!」

(いつにも増して、ご機嫌が最悪だ‥)

(選手宣誓、かなり嫌だったんだろうな‥)

石神

氷川に当たるな。カルシウムが足りていないんじゃないか?

加賀

うるせぇ。テメェは頭ん中がカラメルソースまみれだろうが

石神

お前こそ、柔らかいものばかり食べていて脳が衰えたんじゃないか?

加賀

テメェ‥ここで決着つけてやろうか

石神

望むところだ

サトコ

「お、お二人とも‥!」

難波

まあまあ、そう熱くなるな

のんびりと、難波室長が歩いて来る。

難波

決着なら競技でつければいいだろ

加賀

チッ‥くだらねぇ

石神

加賀!

難波

今回のイベントは、ただ楽しむためのものじゃない

チームの統率力を高める訓練でもあるからな。訓練生たちに威厳を示せよ

東雲

威厳ねぇ‥

加賀

んなもん、普段からやってる

(確かに‥威厳という名の脅迫を‥)

石神

どちらにせよ、勝負はこれからだ

加賀

めんどくせぇ

後藤

紅組には負けません

颯馬

ふふ‥後藤、気合いが入っていますね

東雲

ハァ‥どのタイミングで抜け出そう

黒澤

さっ、歩さん。最初の競技は綱引きですよー!

嫌がる東雲教官を、黒澤さんが引っ張って行ってしまった。

難波

黒澤がいれば、だいたいはどうにかなるな

サトコ

「そうですね‥でも紅組と白組のやる気は、雲泥の差ですけど」

難波

石神チームは、後藤がいるからな。颯馬もなんだかんだ言ってこういうのが好きだしな

まぁ、アイツらのやる気を出させる、とっておきの秘策があるから大丈夫だ

サトコ

「秘策ですか‥?」

私の問いに難波室長は何も答えず、その場を立ち去る。

(秘策って、いったいなんだったんだろう‥?)

鳴子

『最初の競技は綱引きです!』

千葉

『各チーム、教官たちの指示に従って整列してください』

グラウンドを見ると、みんな顔つきが違って見える。

(今回、私もいくつかの競技に出場することになっている)

(でも、ほとんど応援する側なんだけど‥)

石神

いいか。気合いを入れていくぞ

男子訓練生

「おお!」

鳴子

『さすが、石神教官率いる白組は足並みが揃ってます!』

加賀

おいクズ共。負けたらどうなるかわかってるだろうな?

男子訓練生

「えっ‥」

東雲

グラウンド30周ですか?

加賀

生ぬるいな。50周だ

男子訓練生

「‥‥!」

加賀

返事はどうした

男子訓練生

「お、おお!」

千葉

『さすが加賀教官、容赦ないですね‥』

(うーん、どっちのチームも、教官たちの特徴が出てると言うか)

サトコ

「ハッ!そうだ、私も応援しなきゃ!」

「頑張ってください!!!」

私の声が届いたのか、教官たちがこちらを見る。

千葉

『それでは!綱引き、スタート!』

パン!とピストルの音で、両チームが一斉に綱を引く!

石神

バラバラに引っ張っても意味がない!後藤の掛け声に合わせろ!

後藤

俺ですか‥

行くぞ!一気に引っ張れ!

男子訓練生

「うおおおお!」

千葉

『これはすごい!息ピッタリです!』

接戦の末、勝利したのは‥石神教官率いる白組だった。

サトコ

「おめでとうございます!」

石神

俺たちの団結力を持ってすれば、この程度は楽勝だ

後藤

そうですね。次も必ず勝ちます

颯馬

フフ、私たちなら大丈夫ですよ

勝利に沸く白組の隣で、紅組は意気消沈している。

加賀

くだらねぇ‥

東雲

はぁ、かったるい

黒澤

ぐぬぬ‥!これは負けていられませんね!

次は玉入れですよ!みんな、頑張りましょう!

(黒澤さんだけ張り切ってる‥)

(‥っていうか黒澤さんって、教官じゃないのになんで体育祭に参加してるんだろう?)

鳴子

『さて、次は玉入れです!両チーム、頑張ってください!』

加賀

テメェら、次あのメガネチームに負けたら、グラウンド100周だ

男子訓練生A

「ええ!?」

男子訓練生B

「お、オレ‥石神教官のチームの方が良かったかも」

男子訓練生C

「しっ!そんなこと言ったら、あと50周追加されるぞ!」

東雲

キミたち、兵吾さんがそんなに甘いわけないでしょ

100周追加で合計200周ってことかな‥

男子訓練生A

「東雲教官!死んじゃいますから!」

千葉

『紅組、終わった後は何人生き残っていられるのか!?』

鳴子

『それでは玉入れ、スタートです!』

パン!とピストルの音が鳴り響くと、みんなが必死に玉をカゴに入れていく。

すると、遠くから白組の後藤教官めがけて玉が飛んできた!

後藤

な‥!?

黒澤

フフフ‥後藤さん!今日は敵ですからね!

歩さん!オレが食い止めてる間に早く入れてください!

東雲

透、なに熱くなってんの

黒澤

あれーーー!?なんですかこの温度差!

大騒ぎする黒澤さんに向けて、赤い玉が飛んでいく!

黒澤

わっ、うわっ!周さん、ストップ!ちょっ‥やめてください!

颯馬

フフ‥後藤を狙うなら、こちらも容赦しませんよ

鳴子

『おーっと、本来の玉入れとは違う勝負になっています!』

千葉

『両チームの間を別の色の玉が飛び交う、異例の展開!』

東雲

はぁ‥怠‥

(みんながわけわかんなくなっちゃってるうちに、東雲教官が淡々と玉を入れてる‥)

男子訓練生A

「なぁ‥教官たち、なんか普段と違わないか?」

男子訓練生B

「ああ‥加賀教官と石神教官はいつも通りだけどな」

(確かに、みんないつもよりちょっとはしゃいでるかも)

(それにしても‥これ、もう玉入れじゃないよ)

ピピー!と笛が鳴り響き、結局玉入れは無効に終わった。

(これはこれで楽しいけど、日ごろの訓練の成果を発揮してるとはとても思えない‥)

難波

氷川、ちょっと来い

名前を呼ばれて振り向くと、応援席で難波室長が手招きしている。

サトコ

「室長?どうしたんですか?」

難波

つかぬ事を聞くけどな

お前、どんな男が好きだ?

サトコ

「はい?」

難波

いや、それだとちょっと違うか‥

男の、どんな姿に惹かれる?

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-006

(なんでそんなこと聞かれるんだろう‥?)

(もしかして、これも何かの訓練とか?)

サトコ

「そ、そうですね‥」

<選択してください>

A: 男らしいところ

サトコ

『やっぱり、男らしいところですかね』

難波

たとえば、体育祭でひたむきに頑張ってる姿、ってとこか

サトコ

『そ、そうですね‥なんかすごく具体的ですけど』

後藤

‥‥‥

B: 頼りになる姿

サトコ

『やっぱり、頼りになる姿に魅力を感じますけど』

難波

具体的には?

サトコ

『うーん‥たとえば、部下をグイグイ引っ張っていく姿、みたいな‥』

石神

‥‥‥

C: 楽しそうな顔

サトコ

『やっぱり、なんでも楽しんじゃう姿勢っていうのは素晴らしいと思います』

黒澤

はーい!なんでも楽しんじゃうアナタの黒澤がやってまいりましたよ!

難波

お前は呼んでない

黒澤

難波さん、ヒドイ!

難波

要するに、頑張ってる姿が好きってことだな

サトコ

『そうですね。それはすごく素敵だと思います』

(って‥あれ!いつの間にか私たちの前にマイクが!?)

サトコ

『難波室長!これ、どういうことですか!?』

難波

そういうわけだ。やっぱり頑張ってる姿が魅力的らしいぞ

教官たち

「‥‥‥!」

(な、なんで教官たちがみんなこっちを見てるの!?)

(っていうか、マイク‥!一体いつから!?)

慌てる私をよそに、なぜか教官たちはその後、俄然やる気を出し始めたのだった‥

to be continued


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする