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石神 カレ目線 3話

「許せる存在」

【教官室】

教官室には、加賀に後藤、颯馬に東雲と特別教官全員が揃っていた。

そこに黒澤が、首を傾げながらやってくる。

黒澤

お疲れ様です~

東雲

お疲れ。そんな顔して、何かあった?

黒澤

さっきですね、階段でサトコさんと丸岡さんと会ったんですが‥

なんだか様子がおかしかったというか‥

石神

丸岡‥?

黒澤

はい。サトコさんはどこか慌てた様子で‥

後から丸岡さんが来て、サトコさんをどこかに連れてっちゃいました

石神

‥‥‥

(ついに動き出したか‥)

後藤

石神さん?

石神

東雲、氷川の居場所を調べてくれ

東雲

サトコちゃんの居場所、ですか?

石神

ああ‥

説明をしようとした瞬間、けたたましい非常ベルの音が鳴り響く。

後藤

これは‥

それから間もなく、校内に取り付けられたスピーカーから丸岡の声が聞こえてきた。

丸岡

『全校職員、候補生に告ぐ。直ちに全員外へ出ろ』

『ああ、慌てているようだが火事ではない。ただし、言うことを聞かなければこうなる』

その声と同時に、裏庭の方から爆発音が鳴る。

加賀

‥そういうことか

東雲

サトコちゃんの居場所、特定しました!室内プールです!

石神

ああ‥

後藤

石神さん!どこへ行くんですか?

石神

俺は氷川の元へ向かう。お前たちは‥

俺は指示を出し、急いで室内プールへと向かった。

【廊下】

(丸岡‥本名は泉河忠久だったか‥)

室内プールに移動しながら、泉河との過去を振り返る。

(俺はアイツの担当教官になって‥中間考査で脱落させた。そのことをまだ恨んでいるのだろう)

泉河はその後データを偽装、立てこもりや婦女暴行で何度も逮捕されていた。

(顔を整形してまで、ここに入学してくるとはな‥)

データを改ざんして入学してきた泉河に気付いた俺は、密かに調べていた。

(もっと早く手を打つべきだったか‥氷川まで巻き込んで‥)

(‥いや、今は後悔する時間ではない。一刻も早く、氷川のことろに行くのが先決だ)

【室内プール】

室内プールに着き、丸岡の身柄を確保する。

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サトコ

「っ‥」

氷川の元へ行くと、身体がふらついていた。

頭の流血もあるのだろう、よろけていたところを支える。

石神

‥酷い顔だな

サトコ

「‥こんな時くらいそんな言い方しなくても」

石神

‥‥‥

サトコ

「見るに堪えないとか言いたいんでしょうけど、さすがにツッコむ元気がないです」

石神

‥‥‥

(こいつ、こんなに怪我をして‥)

氷川は頭の怪我だけでなく、肩口からも血が流れていた。

石神

何故先に言わない!

サトコ

「え‥?」

石神

撃たれたのなら先に言え

サトコ

「そ、そんなこと言われても‥」

ハンカチを取りだし、氷川の肩口に優しくハンカチをあてる。

サトコ

「ふふっ、ありがとうございます」

石神

‥‥‥

(氷川は泉河のことに気付いていて‥)

(なのに逃げずにこんな怪我をしてまで、一人で対峙して‥)

(他の生徒なら逃げていてもおかしくない状況なのに‥バカな奴だ)

(氷川はいつでも一生懸命なんだな‥)

そんな氷川の無事に安堵すると同時に、一生懸命なその姿に心を打たれている自分がいた。

【寮 入口】

数日後。

黒澤と寮に向かっていると、氷川と千葉の姿が見える。

黒澤

あれ~?あそこにいるのはサトコさんと‥誰でしたっけ?

石神

千葉だ

黒澤

へぇ、千葉さんっていうんですか。なんだか、サトコさんと仲がよさそうですね

石神

‥‥‥

少し聞こえづらいが、氷川たちの会話が耳に入ってくる。

千葉

「査定が終わったら言おうって思ってたんだ」

サトコ

「何を?」

千葉は真剣な表情をし、息を整えるとゆっくり口を開いた。

千葉

「氷川が好きだ」

サトコ

「‥え‥」

千葉

「好きなんだ」

思わぬ千葉の告白に、なぜか黒澤が慌てはじめる。

黒澤

ままま、マジですか!?サトコさんに告白って‥

石神

誰かが通ることもあるだろうに‥こんなところで告白なんて、若いな

黒澤

ちょっと、石神さん!そういう場合じゃないでしょ!?

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石神

‥どういう意味だ?

黒澤

だって、サトコさんが告白されたんですよ!

石神

それがどうした

黒澤

どうしたって‥

石神

氷川が誰から告白されようが、俺には関係ない

黒澤

‥‥‥

黒澤が黙ると、再び二人の会話が聞こえてきた。

千葉

「氷川と居ると刺激になるし、元気になれるんだよ」

「でも、危なっかしいところも気になって仕方がない。オレが、そばにいたい」

サトコ

「千葉さ‥」

氷川は何か言いかけると、パッと振り返る。

驚いた様子の氷川と、目が合った。

石神

‥‥‥

黒澤

お、お邪魔してすみませ~ん

サトコ

「い、いえ‥」

俺たちはそのまま、二人の横を通り抜ける。

黒澤

石神さ‥

石神

俺には関係ない

黒澤

まだ何も言ってないじゃないですか~!

石神

‥‥‥

見てはいけないものを見た‥そう思いながらも、

氷川がどんなふうに返事をするのかと心の片隅で考えている自分がいた。

【個別教官室】

数日後。

氷川がレポートの提出のため、教官室へやってきた。

サトコ

「石神教官。すっかり遅くなっちゃいましたけど」

「パティスリーコヤマのとろけるプリンを持って来ました!」

石神

‥‥‥

サトコ

「?」

石神

‥‥そこに置いておけ

氷川の予習を手伝う際に約束したプリン‥

内心楽しみにしており、ようやく食べれるのかと思うと嬉しくなる。

サトコ

「‥‥‥」

氷川は俺をじっと見て、慌てたように口を開く。

サトコ

「え、えっとあの‥私もプリン好きですし」

「全然恥ずかしいことではないと思います!」

石神

余計なお世話だ

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サトコ

「う‥そんなに怒鳴らなくても」

石神

‥‥‥

(別に、怒鳴るつもりなどなかったのだが‥)

照れ隠しからか、思わず声を上げてしまっていた。

【水族館】

あの時のことを思い返し、眉間にシワが寄る。

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(あの時はプリンが楽しみで、思わず表情に出ていたか‥失態だな)

(もしあの場に加賀がいたら、絶対に何か言ってきただろう)

サトコ

「わぁ、石神さん見てください!クジラがいますよ!」

子どものようにはしゃぎ水槽に駆け寄る氷川に、思わず頬が緩む。

(あの頃からか‥氷川も段々と言うようになったな)

俺は楽しそうな氷川の横顔を見つめながら、再び過去のことを思い返した。

to be continued

【管理人のつぶやき】

クジラって水族館にいたっけ‥‥???

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