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石神 カレ目線 4話

「教官と補佐官」

【資料室】

氷川の予習を見るため、資料室に行くと‥

予習を見てほしいと言ってきた当の本人が机に伏せて寝ていた。

石神

はぁ‥

(こんなところで寝ているとは‥)

サトコ

「石神、教官‥」

氷川は途切れ途切れに、俺の名前を呼ぶ。

石神

‥‥‥

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(いったい、どんな夢を見ているんだ)

(辛そうな顔をしているが‥もしかして、俺に怒られてる夢でも見ているのか?)

石神

おい、氷川

サトコ

「‥‥‥」

石神

起きない、か。仕方ない‥

俺はそうひとりごちながら、プリントを丸めて氷川の頭に振り下ろした。

【カフェ】

潜入捜査のため、俺は氷川を連れてカフェにやってきた。

今回の目的は、麻薬の取引現場を押さえること。

目的の人物が来るまで、待機することになった。

石神

はぁ‥

(なぜ、氷川とカップルの役をすることに‥)

しばらくして、氷川が注文したパンケーキと蜜まめが運ばれる。

サトコ

「あ、このパンケーキ美味しいですよ?」

石神

‥‥‥

氷川からパンケーキを差し出され、眉間にシワが寄る。

サトコ

「あれ‥あんまりお好きではないですか?」

「こっちのフルーツ蜜まめと交換しましょうか?」

(和菓子を見ると、アイツの顔が‥)

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加賀の顔が脳裏を過り、パンケーキを選んだ。

(そろそろ、目的の人物が現れてもいい頃だが‥)

さりげなく店内に視線を巡らせていると、店員がやってきた。

店員

「コーヒーをお持ちしました」

「よろしければ、カップルのお客様にはことらをサービスしております」

サトコ

「あ、ありがとうございます」

カップルに間違われて照れているのか、氷川は少しだけ頬を赤くする。

石神

いいところ保護者だろう

サトコ

「そこまで子どもじゃないです」

口ではそう言いながらも、氷川はどこか嬉しそうだった。

(クッキーをもらえたのがそこまで嬉しかったのか?)

単純な氷川を、微笑ましく感じてしまう。

コーヒーを手に取ると、インカムから後藤の声が聞こえた。

後藤

氷川。今入ってきた黒髪の女だ

黒澤

連れの男は表の車で待機中。一気に行きましょう

サトコ

「はい」

石神

‥‥‥

俺の後ろの席に、黒髪の女が座る。

氷川は下手なポーカーフェイスを装いながらも、合図のタイミングを見計らっている。

【カフェ 外】

氷川の視線を合図と受け取った俺は即座に女の逃げ道を塞ぐ。

そして突然現れた暴力団関係者と思われる仲間を、取り押さえることに成功した。

石神

無事に逮捕できたか‥

伸びていた男に手錠をかけ、無事に逮捕できたことに氷川は嬉しそうにしていた。

(逮捕一つで、ここまで嬉しそうにするとは‥)

後藤

お疲れ様です

石神

ああ

後藤

‥‥‥

石神

どうかしたか?

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後藤

いえ‥

後藤はチラリと氷川を見て、口を開く。

後藤

最近の石神さん、少し変わった気がします

石神

変わった?俺が‥か?

後藤

はい。ハッキリとどう変わったかは言えないんですが‥

石神

‥‥‥

(俺が変わった‥?そんなことはない。俺は今も昔も変わっていない)

【水族館】(現実)

(あの時の俺は、自分は変わっていないと思っていたが‥氷川の影響だったんだろう)

俺はクジラを眺める氷川を見ながら、小さくため息をつく。

(もしや、後藤はあの時から察していたのか‥?)

(俺は自分でも気付かないうちに、氷川に影響されていたんだな‥)

【研究室】(回想)

俺は書類を取りに、木下の研究室にやってきた。

ドアに手を掛けると、中から声が聞こえてくる。

莉子

「やっぱり私、サトコちゃんのこと好きよ!」

「アイツのことそうやって気にかけてくれる女の子なんて、あなたくらいね」

(なんの話をしているんだ‥?)

盛り上がっているのか、外まで声が漏れていた。

サトコ

「え、そうなんですか?」

「教官はキャリアで、仕事もできるしモテそうなのに‥」

莉子

「でもあの冷徹っぷりを見ればだいたいの女の子は逃げるでしょ」

石神

‥‥‥

(もしかして‥俺の話をしているのか?)

完全に中に入るタイミングを逃してしまい、途方に暮れる。

(‥いつまでもこうしているわけにはいかないな)

俺は小さく息を吐き、扉を開けた。

【寮門】

(久しぶりの休日だな‥)

予定していた水族館に行こうと歩いていると、氷川に声を掛けられる。

サトコ

「これからどちらへ?」

石神

‥‥‥

(水族館に行くと、素直に答えるべきか‥)

(‥まぁ、下手に隠しても仕方がない)

石神

‥水族館だ

サトコ

「えぇ!?」

石神

そんなに驚くことか

サトコ

「お、驚きますよ。石神教官の口から、まさかそんな癒しスポットが出てくるとは思いませんし‥」

石神

‥‥‥

サトコ

「冗談です。いいですね、水族館!久しく行ってない気がします」

(前々から思っていたが‥教官に向かって、随分と言うようになってきたな)

(氷川を水族館に誘うのは構わないが‥誰かに見られたりしないだろうか?)

(黒澤や東雲‥颯馬辺りにも知られたら、何かと煩そうだ‥)

石神

‥‥‥

(何の予定もないのだろうか?)

(‥この前の潜入捜査も、こいつのおかげでスムーズに逮捕できたのも確かだしな‥)

石神

お前はどこへ行くんだ?

サトコ

「え?」

石神

久しく行ってないなら一緒に来ても構わないが、出掛ける予定があるんだろう

サトコ

「わ、私も一緒に行っていいんですか!?」

石神

好きにすればいい

そして俺は氷川と二人で、水族館へ行くことになった。

【水族館】(回想)

水族館にやってきた俺たちは、館内を見て回る。

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氷川は楽しそうに、あちこちに視線を泳がせていた。

サトコ

「あ、あれは何て言うんですか?綺麗な黄色ですね」

石神

レモンテトラだ

サトコ

「こっちは‥」

石神

ハセマニア

サトコ

「あの赤いのは‥」

石神

レッドプラティ

氷川は気になる魚の名前を次々と聞いてくる。

(名前を答えているだけなのに、楽しそうというか‥嬉しそうだな)

(表情がコロコロ変わる忙しい奴だと思ってはいたが、こんな笑顔を見るのは初めてだな)

髪を耳に掛けたり、近くを通った子どもが楽しそうにはしゃぐところを微笑ましく見たり‥

氷川はたまに、女らしいしぐさや表情を見せる。

(今までは子どもっぽいと思っていたが‥意外に女らしいところもあるんだな)

かと思えば、子どものような笑顔を浮かべる。

(フッ‥見ていて飽きない)

いつの間にか氷川のこと、目で追っている自分がいた。

【水族館 入口】

(最近、学校付近に痴漢が出ると言っていたな‥)

(いくら公安学校に通っているとはいえ、氷川も女だ)

石神

‥すまない

サトコ

「な、何がですか」

石神

真っ直ぐ帰れ

氷川は不思議そうな顔をしながらも、頷いた。

(出来ることなら氷川を送って行ってやりたいが‥仕方ない)

俺は氷川と別れると、駐車場へ向かった。

to be continued

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