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王子様 加賀 ①

イケメン総選挙2015 七夕 前篇

もしも1年に1度しか

2人が会えなかったら‥!?

???

「クズのくせに‥俺を待たせるとはな」

「わからねぇなら、その身体に躾けてやる」

(お、王子様‥待ってください‥)

(早く起きなきゃ‥じゃないと、あの人に‥)

???

「ねぇ、いつまで寝てるわけ?」

「まぁ、いっそこのまま目覚めないでくれていいけど」

(うう‥あの人に‥あの人に‥)

???

「っていうか、王子ってどんな夢見てるのキミ‥」

(ゆめ‥?夢って‥)

(‥ハッ!?)

【屋根裏部屋】

ソファで目を覚ますと、意地悪な顔をしたお義兄様が立っていた。

義兄(歩)

やっと起きた?早くやることやっちゃってくれないかな

それと‥キミ、よだれついてるけど

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サトコ

「よ、よだれ!?」

(って‥ついてないし!また騙された‥)

(一緒に暮らし始めてからというもの、いつもこうやってからかわれてる気がする‥)

義兄(歩)

なに、その目。なんか文句あるわけ?

サトコ

「い、いえ‥私、掃除がありますので失礼します!」

【台所】

お義兄様から逃げるようにして、キッチンの掃除を始める。

お父様が亡くなってから、お義父様とお義兄様がこの家にやってきた。

それからというものの、私は召使のような生活を送っている‥

(はぁ‥ため息をついたら幸せが逃げる‥)

(わかってるけど、やっぱりつらいよ‥)

窓を開けると、遠くにお城が見えた。

(そうだ‥今日は特別な日なんだから、落ち込んでる場合じゃない!)

(はやく掃除を終らせて、私も舞踏会の準備を‥)

継父(颯馬)

サトコさん?掃除は終わりましたか?

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サトコ

「お、お義父様‥!」

継父(颯馬)

まだホコリがたまっているようですが?

つーっと指で敷居をなぞられて、フッと吹かれる。

サトコ

「‥ハイ」

義兄(歩)

ただでさえ使えないのに、これ以上使えなくなってどうするわけ

(言い返したいけど、この家しか私の居場所はない‥)

(我慢我慢!今日はあの人に会える日なんだから‥!)

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サトコ

「すみません!気合い入れ直して頑張ります!」

継父(颯馬)

それじゃあ、頼みましたよ

義兄(歩)

これが終わったら、買い物行ってきて

サトコ

「はい!」

お義父様とお義兄様が立ち去り、

私は掃除をしながら、あの人と出逢った日のことを思い出す。

【商店街】

それは、去年のある日のこと‥

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サトコ

「はぁ、はぁ‥お義父様とお義兄様、相変わらず人使いが荒いんだから」

「こんなに重いものを一人で買って来い、なんて‥」

「これでも一応、女の子なのに!」

疲れ果てて立ち止まると、そこはちょうど、カフェの前だった。

(あ、あのパンケーキ美味しそう!)

(‥ちょっとくらい休んでもいいよね‥もうくたくただし)

サトコ

「‥よし!お茶して、元気になったらまた頑張ろう!」

【カフェ】

カフェは賑わっていたものの、お店の雰囲気が何やらおかしい。

(奥の席に、女の人が群がっている‥)

(もしかして、お城の王子様がお忍びで来てたりして)

サトコ

「いや、いくらなんでもそれはあり得ないか!」

「とにかく、美味しい紅茶でも飲んで元気を出そう‥」

女性1

「ねぇヒョーゴ王子、今度の舞踏会、私と一緒に踊ってくださらない?」

女性2

「あら、私よ!ヒョーゴ王子と釣り合うのは、私しかいないわ!」

(‥王子!?)

王子(加賀)

「‥‥‥」

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(も、もしかして本当の王子様‥!?すごい、モテモテだ!)

(‥でもなんで、あんな庶民的な格好してるんだろう?)

女性3

「ヒョーゴ様のそのお召し物、海外から特別に輸入されたものなんでしょう?」

女性4

「ヒョーゴ様なら、手に入らないものはありませんものね」

王子(加賀)

‥‥‥

(さっきからずっと、眉間にシワが寄ってるけど‥)

(でも王子様ならやっぱり、かっこいいだけじゃなくてすごく優しい人なんだろうな)

女性5

「ねぇヒョーゴ様、何か仰って?」

王子(加賀)

チッ‥うぜぇ、失せろ

女性1

「えっ?」

王子(加賀)

邪魔だクズ共

色気でしか勝負できねぇヤツはさっさと消えろ

王子の言葉に、カフェがしんと静まり返る。

(今の‥幻聴?私、疲れてるのかな)

(ははっ‥王子があんなこと、言うはずないよね)

王子(加賀)

何してやがる。聞こえなかったのか

言葉もわからねぇとは、クズ以下だな

女性2

「ひ、ひどい!ヒョーゴ様の鬼!」

王子(加賀)

上等だ

(幻聴じゃなかった‥!あの人、本当に王子なの!?)

女性たちはみんな泣きながら、王子の席を離れる。

女性3

「噂には聞いてたけど‥顔はいいのに性格はものすごく怖いって」

女性4

「でも、あの怖さがまたいいのよ。男の魅力って言うか」

(えっ、そうなんだ‥ま、マニアック‥)

(あんな鬼みたいな人が王子なんて‥関わらないようにしよう)

そっとカフェを後にしようとした時、グイッと首根っこを掴まれた。

サトコ

「うぐっ!?」

王子(加賀)

おいクズ

サトコ

「ひっ!?」

(な、なんで王子が私を!?)

王子(加賀)

さっきからジロジロ見やがって

サトコ

「めめめ、滅相もございません‥!」

王子(加賀)

喚くな

言いたいことがあんならハッキリ言え

サトコ

「い、言いたいことなんて‥」

(でも、さっきのはひどすぎるよね‥)

(いくら王子だって、言いたいことと悪いことが)

サトコ

「あ、あの‥さっきのは、ひどいと思います!」

「あの女の人たちがかわいそうです!」

王子(加賀)

あ゛?

サトコ

「な、なんでもないです‥」

(私、弱い‥でもこの王子、本当に怖い‥!)

王子(加賀)

だったら、テメェが愉しませてみろ

サトコ

「たっ、愉しませる!?」

王子が言うと、なぜか妖しい響きに聞こえる。

(‥いやいや、違う!何考えてんの私!!)

王子(加賀)

テメェに色気なんざ期待してねぇ

ちょうど退屈してたところだ。デカい口叩いたんだから、できんだろ?

(そんなこと言われても、どうしたらいいか‥)

(私にできることといえば‥)

【公園】

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そのあと、お気に入りの雑貨屋や公園に王子を連れて行き、

私は、自分にできる精一杯のおもてなしを王子に捧げた。

サトコ

「どうでしたか?たまにはああして、庶民の暮らしを見るのもいいものですよね?」

王子(加賀)

‥クズにしては、上出来だ

(言葉遣いは悪いし、怖いし‥ずっと眉間にシワが寄ってるけど)

(でも、不器用なだけで、本当は悪い人じゃないのかも)

サトコ

「次はどこに行きましょうか!どこにでも案内しますよ」

王子(加賀)

もういい

サトコ

「え‥」

王子の言葉に、思わず肩を落とす。

(じゃあ、これでもうお別れなんだ‥もうちょっと一緒に居たかったけど)

(考えてみれば、身分が違いすぎる‥これ以上、一緒にいられるはずないよね)

王子(加賀)

今度は、テメェの番だ

サトコ

「私の番‥?」

【部屋】

連れて来られたのは、なんと王子の部屋だった。

サトコ

「あ、あの‥私、恐れ多いです!そろそろ帰ります!」

王子(加賀)

帰すわけねぇだろ

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聞き返す前に、大きなベッドに押し倒された。

王子(加賀)

まさか、俺に逆らうつもりじゃねぇだろうな

サトコ

「お、王子‥!」

王子(加賀)

大人しくしろ。そうすれば‥これ以上ねぇほど、愉しませてやる

サトコ

「っ‥!」

結局、王子に逆らえるはずもなく‥

私はそのまま、王子と一夜を共にしてしまったのだった。

(‥朝起きると、シャワーの音がバスルームから聞こえた‥)

夜のことを思い出すと居たたまれなくなった私は、

王子の顔を見ることなく、逃げ出すように帰ってきてしまった。

【自宅 キッチン】

(あの日から、1年か‥)

今日は、お城で舞踏会が開催される日だった。

(招待状がなくても、ドレスさえ着れば誰でも参加できる‥)

(もしかしたらこれが、王子に会える最初で最後のチャンスかもしれない!)

(‥早く掃除を終らせて、舞踏会に行く準備しなきゃ!)

【自室】

掃除を終らせると、もう夜になってしまっていた。

継父(颯馬)

サトコさん、掃除は終わったのですか?

私たちは、これから舞踏会へ行ってきます

義兄(歩)

キミはまだやることあるみたいだし、留守番よろしく

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サトコ

「ま、待ってください、私も‥」

義兄(歩)

キミみたいなみすぼらしい子を連れて行けるわけないでしょ

うちの名が廃れる。それに‥また朝帰りでもするつもり?

サトコ

「っ!?」

反論する暇もなく、部屋に閉じ込められ鍵を掛けられてしまった。

(そんな‥やっと、王子に会えると思ったのに)

(1年我慢したのに‥)

普段は、身分が違うから城にも行けず、窓から王子の姿を見ることしかできない。

今日は年に一度だけ、王子に会えるチャンスが巡ってくるはずだった。

(準備していたドレスもどこかへ隠されてる‥)

(お義兄様‥私が舞踏会に行きたかったこと、知ってたんだ)

サトコ

「まさか、ここまで酷い事するなんて‥」

「監禁されて、ドレスもない‥やっぱり、ヒョーゴ王子には会えないのかな」

???

「ハーイ、アナタの悩み、パパッと解決します!」

魔法使いA

魔法使いの黒澤でーす☆

サトコ

「!!!」

魔法使いA

いいですねーその表情!

困ってるアナタを、黒澤がお助けしましょう☆

???

「おい、勝手に話を進めるな」

ゴン!

黒澤と名乗る魔法使いさんに、後ろからもう一人やってきた魔法使いさんが鉄拳を食らわせた。

魔法使いA(黒澤)

ご、後藤さん、痛いです‥でも愛を感じます!

魔法使いB(後藤)

気持ち悪い

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サトコ

「あの‥あ、あなたたちは!」

魔法使いA(黒澤)

サトコさんは、王子に会いたかったんですよね?

魔法使いB(後藤)

日付が変わるまでに必ず帰ってくると約束できるのなら、願いを叶えてやる

サトコ

「ほ、ほんとですか‥!?」

(でも、ちょっと待って‥さすがにこれは怪しすぎるよね)

(だいたい、鍵が掛かってるのにどうやって入って来たの?)

(不法侵入‥不審者‥逆に、訴えた方がいいんじゃ‥)

魔法使いA(黒澤)

ハーイ、心の中がだだ漏れですよ~。余計なことは考えないで!

チチンプイプイアブラカタブラテクマク‥

魔法使いB(後藤)

長い

ゴン!

魔法使いA(黒澤)

ちょっ、後藤さん!今まさに魔法かけようとしてたのに

魔法使いB(後藤)

やるならさっさとやれ

口数少ない方の魔法使いさんが手を振り上げると、私の粗末な服がドレスに変わった。

サトコ

「えっ‥!?」

魔法使いB(後藤)

早く行って来い

サトコ

「は、はい!‥ありがとうございます。魔法使いさん!」

魔法使いA(黒澤)

また後でお会いしましょう。サトコさん

後でオレも合流しますから~♪

(‥オレも合流する?舞踏会に?)

(って、今はそれより‥)

サトコ

「早く!ヒョーゴ王子の元に‥!」

外に用意されていた馬車に乗り込み、緊張の中お城に向かった。

後編へ続く。

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