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王子様 加賀 ②

イケメン選挙2015 後篇

もしも1年に1度しか

2人が会えなかったら‥!?

【お城】

お城のダンスホールに到着すると、会場はキラキラと眩しいくらいに煌びやかだった。

(す、すごい‥!これがお城の舞踏会‥!?)

(いつもの暮らしとは、別世界かも‥)

サトコ

「って、感動してる場合じゃない‥王子を探さないと」

「!?‥あ、あれはもしかして‥」

(お、お義兄様だっ!?)

(マズイ‥!)

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正面から見覚えのある顔が歩いて来る‥

(ここで見つかったら、また嫌味を言われるに決まってる!)

(どうにか気付かれないようにしないと‥)

(いや、でもドレス着てるし、私だってバレないよね‥!?)

義兄(歩)

‥‥‥

気付かれないように軽く会釈をして下を向き、通り過ぎる。

(よかった‥気付かれなかったみたい)

目を合わせずにやり過ごそうとした時、背後から声が追いかけて来た。

義兄(歩)

無駄だと思うけど、一応忠告してあげる

そのドレス、全くキミに似合ってないよ

サトコ

「えっ!?」

義兄(歩)

色気が足りなすぎ。幼稚なおままごとレベル

(うっ‥いつも以上に、お義兄様の嫌味な言葉が胸に突き刺さる‥)

(っていうかお義兄様、やっぱり私に気付いてる‥!?)

引き留められる前に、慌ててその場から逃げだした。

ドン!

(いっ‥!?)

サトコ

「す、すみません!急いでて‥」

王子(加賀)

前見て歩けねぇのか、グズが

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サトコ

「あ‥!」

(ヒョーゴ王子!やっと会えた‥!)

(相変わらず眉間のシワは深くて、声もドスが効いてるけど‥会いたかった!)

サトコ

「あの、わ、私っ‥!」

「いっいたたた‥」

女性1

「ヒョーゴ様ぁ!私と踊ってくださる約束ですよ」

女性2

「いえ、私とですよね!?」

王子を囲んだ綺麗な女性たちに、あっさり弾き出されてしまう。

サトコ

「お、王子‥!」

王子(加賀)

邪魔だ。話しかけんじゃねぇ

サトコ

「え‥」

不機嫌オーラを漂わせながら、女性たちすらも蹴散らして、王子が私の前を通り過ぎていく。

(私のこと、覚えてない‥?)

(いや‥よく考えたら当たり前か‥)

たった1日一緒に過ごしただけで、覚えているはずないよね‥

執事(石神)

おい待て、どこへ行く

サトコ

「?」

執事らしき人が、王子を追いかけてくるのが見えた。

執事(石神)

勝手に動き回るな。俺の許可を取ってからにしろ

王子(加賀)

いちいちテメェの許可なんざ取ってられっか

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執事(石神)

お前の行動が、この国の命運を握っているんだ

王子(加賀)

興味ねぇな。クソメガネが口出ししてんじゃねぇ

執事(石神)

好きでお前の執事をやっているわけではない

設定上、しょうがなくだ‥

王子の傍で2人のやり取りを聞いていると、執事さんが私に気付いた。

執事(石神)

ん?なんだ、この娘は

王子(加賀)

‥‥‥

(も、もしかして私のこと、少しでも思い出してくれたとか‥?)

王子(加賀)

‥知らねぇな

その言葉に、胸が冷えていくような気がした。

(やっぱり‥そりゃそうだよね‥)

(王子が、私みたいな貧しい家の娘を覚えてるはずない‥)

いたたまれなくなって、逃げるようにその場を後にした。

【バルコニー】

サトコ

「はぁ‥」

(バカだな‥どうしてヒョーゴ王子が私を覚えてるなんて思ったんだろう‥)

(でもあの日は、私にとって宝物みたいな特別な1日だったから‥)

女性1

「もう、ヒョーゴ王子ったら。そんなつれないこと言わないでください」

女性2

「ふふ、照れ隠しなんでしょう?」

中からは、女性たちの楽しそうな声が聞こえてくる。

(王子も綺麗な人に囲まれて、きっと楽しいだろうし‥)

(‥私も、このまま忘れた方がいいのかもしれない)

サトコ

「帰ろう‥」

???

「おーっと!」

サトコ

「えっ!?魔法使いの黒澤さん、どうしてここに?」

王子黒澤

いいえ、今のオレは魔法使いじゃありません

アナタの心の傷を癒す、王子黒澤です☆

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サトコ

「いや‥どう見ても黒澤さんですよね?さっき、『後から合流する』って言ってたし」

王子黒澤

細かいことは気にせず!この黒澤がアナタを慰めてあげましょう!

さぁ、ダンスタイムですよ!

サトコ

「お、落ち着いてください!」

「またあの魔法使いさんにゲンコツされますよ!」

王子黒澤

ハッとしたように、黒澤さんが辺りをキョロキョロと見回す。

王子黒澤

‥後藤さん、いませんよね?

サトコ

「さ、さぁ‥」

王子黒澤

とにかく、オレと踊りましょう。遠慮せず、この手を取ってください!

サトコ

「いえ‥私は、ダンスはちょっと」

王子黒澤

ご安心あれ!この黒澤がリードさせて頂きます☆

(ダメだ、ものすごくグイグイ来る‥!)

その時、王子黒澤さんの後頭部を誰かがガッと掴んだ。

黒澤

ぎゃー!に、握り潰される!

???

「邪魔だ」

サトコ

「ヒ、ヒョーゴ王子!?」

王子(加賀)

失せろ。成金野郎

黒澤さんを投げ捨てるのと同時に、ヒョーゴ王子が私の腰を抱き寄せた。

(な、ななな‥なぜ!?)

王子(加賀)

おい

サトコ

「は、はい!」

王子(加賀)

来い

返事をする間もなく、王子は強引に私の手を引いて歩き出した。

【庭園】

そのまま、ひと気のない庭園まで連れて来られた。

サトコ

「は、離してください!痛いです‥!」

王子(加賀)

黙れ

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振り払おうとした手を逆に引き寄せられて、強引に唇が重なる。

口を塞ぐようなキスに必死に首を振ったけど、王子は離してくれない。

(く、苦しっ‥)

思わず、王子の胸を押し戻した。

サトコ

「な、何するんですか‥!」

王子(加賀)

こっちのセリフだ、クズ

サトコ

「え‥?」

王子(加賀)

勝手に帰るなんざ、どういうつもりだ

誰の許可を取った?

サトコ

「はい‥?」

王子(加賀)

俺がいつ、帰っていいって言った

(ど、どういうこと‥?)

サトコ

「だって‥私なんかがここに居ても仕方ないから、帰ろうかと‥」

王子(加賀)

帰すわけねぇだろ

その響きには、聞き覚えがあった。

(あ‥1年前、王子と一晩過ぎした時‥)

あの時も、同じ言葉を言われたことを思い出す。

王子(加賀)

クズのくせに、生意気に放置プレイか

サトコ

「ほ、放置プレイ‥!?」

王子(加賀)

俺を愉しませるって約束、忘れたとは言わせねぇ

サトコ

「私のこと、覚えてたんですか‥!?」

王子(加賀)

忘れるわけねぇだろ

サトコ

「だってさっき、『知らない』って‥」

王子(加賀)

ああ゛?

フッ‥あん時のテメェの顔は見物だったな

王子がニヤリと満足そうに笑う。

(こ、心の底から楽しそう‥)

(もしかして私、からかわれたの!?)

その時‥

ゴーン、ゴーンと0時を告げる鐘の音が鳴り始めた。

サトコ

「マズイ‥!日付が変わる前に帰ってこいって、魔法使いさんが‥」

王子(加賀)

魔法使い?テメェは頭もおかしくなったか

サトコ

「いや、その‥何と説明したらいいのやら‥」

「ヒョーゴ王子、ごめんなさい‥私もう行かなきゃ!」

王子(加賀)

また逃げんのか?

踵を返した私を、王子が後ろから抱きすくめる。

サトコ

「王子‥」

王子(加賀)

行くな

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その声は驚くほど弱々しく、まるですがるような響きを含んでいるようだった。

(私だって、行きたくない‥)

(だけどこれ以上、ヒョーゴ王子に嘘はつけない‥!)

サトコ

「ごめんなさい‥私、こんなにキレイなドレスを着れるような身分じゃないんです」

「ただの町娘で‥家では召使みたいな扱いで」

王子(加賀)

それがどうした

サトコ

「えっ?」

王子(加賀)

だからクズだって言ってんだ

テメェの身分になんざ興味ねぇ

サトコ

「で、でも‥」

王子(加賀)

黙って俺の傍にいりゃいい

‥二度と、俺から離れることは許さねぇ

サトコ

「ヒョーゴ王子‥」

王子(加賀)

俺を愉しませられるのは、他の誰でもねぇ

(本当に‥?私、これからも王子のそばにいていいの‥?)

ヒョーゴ王子は私の顎を持ち上げる。

サトコ

「王子‥私‥」

王子(加賀)

黙れ

‥いいから、あの夜みたいに俺の下で啼いてろ

サトコ

「あ、あの夜って‥」

王子(加賀)

あの瞬間から、テメェは俺の駄犬だ

この先も、ずっとな

ゆっくりとヒョーゴ王子の顔が近づき、そのまま唇が触れ合う‥

【加賀の部屋】

サトコ

「王子‥そ、それ以上はダメです‥!」

「‥‥‥」

「‥えっ!?」

ガバッと起き上がると、そこは見慣れた部屋だった。

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(か、加賀さんの部屋‥?あれ!?じゃあ今の‥夢!?)

(1年に1度しか会えなかったら‥なんて考えてたから、あんな夢みたのかな‥)

加賀

うるせぇ

サトコ

「ひいっ」

加賀

いきなり起き上がんじゃねぇ

サトコ

「ヒ、ヒョーゴ王子‥!」

「いや、あの‥加賀さん」

加賀

‥王子?

(き、聞かれてた‥!)

逃げられず、さっき見た夢の話をするしかなかった。

サトコ

「‥というわけでして、なんか役者勢ぞろいで‥」

加賀

クソメガネが執事ってのが気に食わねぇ

サトコ

「すみません‥配役までは、私の範疇外というか」

加賀

「まぁ、悪くねぇ夢だな」

サトコ

「でも、加賀さんと1年に1度しか会えなかったんですよ」

口を尖らせて文句を言う私を、加賀さんがベッドに押し倒す。

加賀

身分がなんざ、くだらねぇ

夢の中まで、テメェはクズだな

サトコ

「夢の中でも、散々『クズ』って言われました‥」

加賀

なら、そのクズに伝えておけ

加賀さんの手が、シーツの中に潜り込んでくる。

加賀

俺を1年待たせるとは、いい度胸だ

会いてぇなら、テメェから会いに来い

サトコ

「はい‥」

言葉とは裏腹に、肌を滑る加賀さんの手は優しい。

(1年に1度しか加賀さんに会えないなんて‥やっぱり、私には無理かも)

(毎日だって足りない‥どんなにいじめられても、けなされても、なじられても)

それでも、加賀さんがいないと生きていけない。

組み敷かれて強引に揺さぶられながら、改めてそう感じた夜だった。

End

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