カテゴリー

研修 後藤 1話

後藤

はい

東雲

せっかくなんだし、良いリゾート地にしてよ

黒澤

いいですね~リゾート研修!

加賀

リゾートなんざ、どこでも一緒だろ

石神

あくまで研修だということを忘れるな

東雲

はいはい‥温泉じゃないからってオレに当たらないでください

颯馬

フフ、負け惜しみですね

石神

何か言ったか?颯馬‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-025

颯馬

いいえ、何でもありません

(うわぁ‥私が青のボールを引いちゃったからだ‥)

サトコ

「そ、それでは私はお先に失礼します!」

難波

おお、それじゃ頼んだぞ。氷川

サトコ

「はい‥!」

(はぁ‥気まずかった)

私は逃げるようにして、教官室から出た。

【寮 自室】

その夜、リゾートを調べていると電話がかかってきた。

(後藤さんからだ!)

私は逸る気持ちを抑えながら、電話に出る。

サトコ

「はい!もしもし?」

後藤

フッ‥アンタ、電話でも元気なんだな

電話の向こうで、後藤さんが微かに笑っているように感じた。

サトコ

「元気だけが取り柄ですから」

後藤

そうか‥

少しだけ間が空くと、申し訳なさそうな声が聞こえてくる。

後藤

‥幹事に巻き込んで、すまない

サトコ

「そんな!こちらこそ、手伝ってくださってありがとうございます!」

「良い研修にしましょうね!」

後藤

良い研修旅行、か‥そうだな

研修だとは分かっているが‥アンタと過ごせるの、楽しみにしている

サトコ

「後藤さん‥」

(後藤さんも、私と同じ気持ちだったのかな‥)

サトコ

「はい!私も楽しみにしています」

後藤

ああ

それから私たちは少しだけ話をして、電話を切る。

後藤

アンタと過ごせるの、楽しみにしている

後藤さんの言葉を、頭の中で反芻する。

それだけで、温かい気持ちが胸の中に広がっていくのを感じた。

サトコ

「‥よーし!」

(まずは、幹事の仕事をきっちりこなそう!)

私はパソコンを立ち上げると、研修旅行の段取りを始めた。

【学校 廊下】

翌日。

講義が終わりジャージに着替えると、鳴子と一緒に次の訓練に向かっていた。

サトコ

「ふぅ、今日も暑いね」

太陽がジリジリと照りつけ、額に浮かび上がる汗を拭う。

サトコ

「炎天下で訓練とか、考えただけでも地獄だよね‥」

鳴子

「ここ最近、猛暑続きだしね。今日も35度を超えるって言ってたっけ」

サトコ

「35度!?そんなに高くなるんだ‥」

私は少しでも涼しくなるように、ジャージを脱いで腕まくりをした。

鳴子

「あれ?サトコ‥」

鳴子が私の腕を、じっと見つめる。

鳴子

「いつの間にこんなに筋肉がついたの?すごいムキムキ!」

サトコ

「そ、そうかな?」

鳴子

「うん!サトコは訓練だけじゃなくて、自主練も頑張っているからね」

「その成果が、ちゃんとこうして出てるってことだよ」

サトコ

「ふふっ、ありが‥‥‥」

???

「そこ、喜ぶとこなんだ」

サトコ

「へっ?」

声がした方に振り返ると、東雲教官と加賀教官の姿があった。

東雲

ムキムキになって嬉しそうとか、女じゃないよね

加賀

抱く気も起きねぇな

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-026

サトコ

「なっ‥!」

(いきなり現れて、何て言い草を‥!)

(でも、男の人って‥筋肉質な女の人とか嫌なのかな?)

(たしかにあんなりモテそうではないけど‥)

ふと、後藤さんのことが頭を過る。

東雲

そんなにムキムキだと、彼氏もできないんじゃない?

自分より逞しい彼女とか、あり得ない

<選択してください>

A: 自分よりムキムキの彼氏を見つける

サトコ

「そ、それなら‥自分よりムキムキな彼氏を見つければいいんです!」

(後藤さんだって、服を着てると分かりにくいけど‥)

(結構がっしりしているし、私よりかなり筋肉があるんだから!)

後藤さんの身体つきを思い出そうと、記憶を呼び起こす。

後藤さんの服がはだけ、身体があらわになり‥

(だ、ダメだ!なんだか、恥ずかしくなってきた‥!)

東雲

何、一人で百面相してるの

サトコ

「‥っ!」

東雲

いきなり頬を染めて‥なにを想像してたのかは知らないけど

サトコちゃんって、本当にエッチだよね

ニヤリと笑みを浮かべる東雲教官に、慌てて否定する。

サトコ

「な、何も想像していません!」

B: ムキムキとか、関係ないです

サトコ

「ムキムキとか、関係ないです」

(後藤さんは優しい人だから、そういうところで判断しない‥はず!)

東雲

自分はそう思ってても、相手はどう思っているか分からないんじゃない?

サトコ

「そんなことは‥」

加賀

そもそもこんなクズ女好きになる奴、そういねぇだろ

サトコ

「うっ‥。で、でも‥これは、訓練のたまものなんです!」

「こうして訓練の結果が目に見えて現れるなんて、素晴らしいことじゃないですか!」

私は自分自身に言い聞かせるように、言葉にした。

C: 少しだけ筋肉を落とした方がいいのかも‥

(後藤さんも口に出さないだけで、気にしてたりするのかな?)

(少しだけ筋肉を落とした方がいいのかも‥)

東雲教官たちの言い分に、そんなことを考えてしまう。

(でも、せっかくここまで筋肉をつけたのに‥本当に落としちゃっていいのかな?)

これまでの訓練を振り返る。

男性だらけの中、必死に食らいついてきた毎日。

(いくらムキムキと言われようとも、これだってれっきとした成長の証だよね‥)

サトコ

「‥私は、ムキムキのままでいいです!」

東雲

それ、胸を張って言うようなこと?

サトコ

「はい!」

「ムキムキなのは、私が今まで頑張ってきた証拠ですから」

東雲

ムキムキ、ムキムキって‥女の子が連発するような言葉じゃないよね

加賀

チッ‥くだらねぇ

東雲

まぁ、何を言おうとサトコちゃんがムキムキなのは変わらないしね

サトコ

「うっ‥!」

東雲教官たちは私にとどめを刺し、その場から去って行った。

鳴子

「あー‥サトコ、大丈夫?」

サトコ

「う、うん‥」

(ムキムキな女の子って、そんなにダメなのかな‥?)

鳴子

「まぁ、あそこまで言われて気にするなって方が無理だよね」

「でも‥人間、外見よりも内面の方が大事なんだから。サトコはそのままで大丈夫だって!」

サトコ

「鳴子‥ありがとう」

鳴子の優しい言葉に。少しだけ心が軽くなる。

鳴子

「‥あっ、予鈴が鳴った!」

「次の訓練は、石神教官だったよね?急ごう!」

私たちは、慌てて訓練所に向かった。

【研修室】

研修旅行、前日。

サトコ

「えっと、初日はプールを使うから‥」

私は過去に行われた研修を参考に、最終チェックを行っていた。

後藤

‥こんなところにいたのか

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-027

サトコ

「あっ、後藤教官!お疲れさまです」

後藤

ああ

後藤さんは、私の手元にある資料を手に取る。

後藤

こんなことまで任せて、悪いな

サトコ

「気にしないでください。もうすぐ終わりますから」

後藤

そうか‥

フッと笑みを浮かべながら、後藤さんは私の向かい側に座った。

サトコ

「あの‥?」

後藤

俺も手伝う

サトコ

「そんな、私一人で大丈夫ですよ」

後藤

ふたりでやった方が早いだろう?遠慮するな

ほら、そこにある資料を貸せ

サトコ

「は、はい‥」

後藤さんは資料を受け取ると、目を通していく。

しばらくの間、私たちの間に沈黙が降りた。

後藤

‥この前の訓練、成田教官を一発で取り押さえたそうだな

サトコ

「え‥?」

顔を上げると、後藤さんが柔らかい笑みを浮かべている。

後藤

石神さんから聞いた。以前、苦戦していた訓練なのに‥着実に成果が出ているな

後藤さんは私の頭を、ポンポンッと優しく撫でた。

手のひらから伝わる温もりが、『よくやった』と褒めてくれるように感じる。

(やっぱり、日々の筋トレは間違っていなかったんだ)

いつも以上に、前向きな気持ちになれた。

後藤

この調子で、頑張れよ

サトコ

「はいっ!ありがとうございます!」

(後藤さんの期待に応えられるように、もっともっと頑張らなきゃ!)

【合宿所 プール】

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-028

研修旅行、当日。

ホテルに到着して荷物を置くと、訓練生たちが訓練所のプールに集まる。

サトコ

「はぁ、はぁ‥」

競泳用の水着に着替えた私たちは、かなりの時間泳ぎ続けていた。

サトコ

「ぷはっ!」

水から顔を上げ、プールから上がる。

連続して泳ぎ続けていたせいか、身体が重く感じた。

(泳ぐのって、かなり体力を消耗するよね‥)

だからこそ、体力作りにはうってつけなのだろう。

サトコ

「時間はまだあるし‥もう一本行ってこようかな」

私は水分補給をすると、プールに入って泳ぎ始めた。

プールの後も、過酷な訓練は続いていく。

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-029

颯馬

そこまで!この後は、30分の休憩になります

皆さん、この間に身体を休めてくださいね

颯馬教官の号令に、張りつめていた空気が緩んだ。

サトコ

「この後、東雲教官の座学があるから‥」

軽く休憩しながら段取りの確認をしていると、後藤さんの姿が目に入った。

(あっ‥後藤さんだ)

今日は訓練と幹事の仕事があるため、朝から後藤さんとは全く話せていない。

(休憩時間だし、少しくらいいいのかな?)

サトコ

「あの、後藤教官‥」

加賀

おい、幹事

後藤さんに話しかけようとすると、加賀教官に呼び止められた。

加賀

飲み物が足りねぇ

サトコ

「え?飲み物なら、たくさん用意してありますよ?」

加賀

この暑さで、消費量が半端ねぇんだ。少し考えりゃ分かんだろ

土に埋められたくなきゃ、黙ってさっさと行けグズ

サトコ

「は、はい!」

鋭い視線を向けられ、私は慌てて飲み物を買いに走った。

東雲教官の座学が終わると、再び訓練所に戻ってくる。

サトコ

「はぁ‥」

(せっかく、一緒に夏休みを過ごせると思ったんだけどな)

買い物から戻ると、ちょうど休憩時間が終わってしまい、

その後もタイミングが掴めず、後藤さんとは話せずじまいだった‥

(でも、研修はまだ始まったばかりなんだよね。次は、後藤さんの訓練だし‥)

サトコ

「話すチャンスは、まだあるよね!」

(それに‥)

後藤

石神さんから聞いた。以前、苦戦していた訓練なのに‥着実に成果が出ているな

この調子で、頑張れよ

私は昨日のことを思い返し、両頬をパンッと叩いて気持ちを切り替える。

(落ち込んでいる暇があるなら、頑張ろう)

(もっともっと成長して、いつか後藤さんの隣に立てるようになるんだ!)

訓練生が集まると、今日の訓練の成果を見るために、体力測定が行われた。

まず初めに行われるのは、腕立て伏せ。

サトコ

「101、102、103‥」

(うぅ、100回超えるとさすがにキツイな‥)

男子訓練生A

「俺、もう無理‥」

男子訓練生B

「お、俺も‥」

1人、2人と脱落していく中、私は懸命に腕を動かしていく。

そして‥

鳴子

「すごいよ、サトコ!120回超えるなんて!」

サトコ

「そ、そう、かな‥」

肩で大きく息をしている私に、鳴子が声を上げた。

男子訓練生A

「まさか、氷川に負けるなんて‥」

男子訓練生C

「お前、本当に女子なのか?」

サトコ

「失礼な!これでも立派な女子です」

男子訓練生A

「ははっ、氷川はガッツがすごいからな。つい、女ってことを忘れそうになるよ」

男子訓練生B

「だな。でも、次は絶対に負けないからな!」

サトコ

「私だって、負けないよ」

その後も訓練は続き、限界まで体力が削られていく。

サトコ

「はぁ、はぁ‥」

最後の走り込みを終えると、膝に手をつき大きく息をした。

男子訓練生A

「今日の訓練は、これで終わり‥だよな?」

男子訓練生B

「ああ‥これが明日以降も続くなんて、考えたくない‥」

他の訓練生たちも、今日一日で体力のほとんどを奪われていた。

???

「皆さん、お疲れさまでーす!」

その場に似合わない元気な声に、思わず顔を上げる。

黒澤

研修を頑張る皆さんに、ささやかながら差し入れです☆

黒澤透お墨付きの、スポーツドリンクですよ~!

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-031

男子訓練生A

「ありがとうございます!もう、喉がカラッカラで‥」

男子訓練生B

「俺も頂きますね」

訓練生たちは我先にと言わんばかりに、スポーツドリンクに手を伸ばす。

黒澤

それでは、オレは一足お先にホテルに戻ってますね!

黒澤さんはその場を後にし、訓練生たちだけが残される。

(私もドリンク貰おうかな‥)

疲れ切った足取りで、みんなの元へと向かうが‥

サトコ

「あ、あれ?ドリンクが‥ない!」

(あんなにたくさんあったのに‥!)

それだけ、みんなも飲み物を欲していたのだろう。

私はその場に、がくりと項垂れる。

男子訓練生A

「早くホテルに戻ろうぜ」

男子訓練生B

「だな」

訓練生たちはホテルに足を向け、訓練所には私一人が残った。

サトコ

「はぁ‥」

(張り切り過ぎて疲れちゃったし‥少し休んでから帰ろうかな)

???

「お疲れ。よく頑張ったな」

サトコ

「ひゃあっ!」

頬に冷たい感触がし、変な声が出てしまう。

後藤

フッ‥そんなに驚いたか?

サトコ

「ご、後藤さん‥」

後藤

ほら

後藤さんはひんやりと冷えたドリンクを、私に差し出してくる。

サトコ

「あ、ありがとうございます‥」

私はおずおずと受け取ると、ドリンクを口にした。

サトコ

「はぁ‥美味しいです!」

後藤

それは良かった

後藤さんは笑みを浮かべると、私の手を引き起き上がらせてくれる。

後藤

体力測定の結果、良かったぞ

<選択してください>

A: 後藤にいいところを見せたかった

サトコ

「後藤さんにいいところを見せたかったから‥頑張りました」

後藤

そうか‥

後藤さんは柔らかく微笑み、私の頬にそっと指を這わせる。

後藤

アンタのこと、ずっと見てた

訓練だけじゃない。幹事の仕事も手を抜かないで‥頑張ってたな

サトコ

「ん‥」

頬に触れていた指を額に移動させ、滲んでいた汗を拭ってくれた。

後藤

お疲れ

後藤さんの優しい声音が降り注ぎ、慈しむように瞳を細める。

それだけのことなのに、疲れがどこかに吹き飛んでいくように感じた。

B: 私なんて、まだまだです

サトコ

「私なんて、まだまだです」

「教官たちみたいになるには、もっともっと努力をしなきゃっていつも思っています」

後藤

そういうひた向きなところは、アンタの長所だと思うが‥少し、頑張り過ぎだ

サトコ

「あっ‥」

後藤さんは私の腕を引くと、そっと抱きしめる。

後藤

休むことも、大事な訓練の一環だ

張り合うのもいいが‥自分のペースを崩さず、少しずつ成長していけばいい

サトコ

「後藤さん‥」

優しく背中を撫でられ、ほうっと息をつく。

後藤さんの優しさが、沁み渡っていくように感じた。

サトコ

「はい‥ありがとうございます」

C: もっと褒めてほしいな‥

(もっと、褒めてほしいな‥)

努力を認められたようで、そんなことを想ってしまう。

後藤

ん?どうかしたか?

サトコ

「そ、その‥」

頬に熱が上がるのを感じながら、見上げるように後藤さんと視線を絡める。

サトコ

「後藤さんに褒められるとパワーが湧くので‥」

「‥もっと褒めてもらえたらなって」

後藤

っ‥

サトコ

「あ、あつかましくてすみません!?」

後藤

‥そんな顔して、言うな

後藤さんは頬を染め、私から僅かに視線を逸らす。

後藤

教官って立場、忘れそうになるだろう‥

サトコ

「ん‥」

切なげにつぶやくと、後藤さんは私の唇に小さなキスを落とした。

後藤

‥サトコ

後藤さんは、私の耳元に唇を寄せる。

後藤

今夜23時に‥中庭で待ってる

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-033

サトコ

「‥!」

耳元に甘い吐息が掛かり、心臓が大きく高鳴った。

後藤

そろそろ、ホテルに戻るぞ

サトコ

「は、はい」

私たちは少しだけ距離を開け、歩き始める。

それは教官と生徒という、私たちの距離感を表しているようだった。

(私たちの関係は、誰にも秘密‥だから、この距離をもどかしく感じることもあるけど‥)

それでも、後藤さんの優しさを感じることが出来る。

いつもはもどかしいこの距離感すら、今は愛しかった。

【ホテル】

(約束の23時までは、まだ時間があるけど‥)

後藤さんに会いたい気持ちが逸った私は、早めに待ち合わせ場所に向かうことにした。

ドアを開け、廊下に出た瞬間‥

???

「っ!?」

サトコ

「きゃっ!」

男の人にぶつかられ、その場にしりもちをついてしまう。

サトコ

「いたた‥」

???

「っ‥」

男の人は煩わそうに舌打ちすると、そのまま走り去っていった。

サトコ

「今の人は‥」

(慌ててる様子だったけど‥どうしたのかな?)

(それに、今は夏なのにマスクをしていたような‥)

立ち上がりながら、男の人に視線を向ける。

サトコ

「えっ‥!?」

(あの人‥なんで下着を握りしめてるの?)

(もしかして、下着泥棒!?)

サトコ

「っ、待ちなさい!」

男の後を追いかけようと一歩踏み出した、その瞬間

???

「キャーッ!!」

隣の部屋から、叫び声が聞こえた。

(この声は‥鳴子!)

親しい友人の叫び声に、冷や汗が流れる。

私は慌てて、鳴子の部屋に向かった‥‥‥

to be continued

2話へ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする