カテゴリー

加賀 続エピ 2話

【個別教官室】

加賀さんとのデートを、同期の訓練生に見られてしまった。

(今までも、気を付けてたのに‥万が一見られても、捜査中だって誤魔化せるように)

でも昨日のデートでオシャレしてた上に、見つかった場所が‥

男子訓練生

『氷川‥と、加賀教官‥!?』

(ど、どうしよう‥!まさかこんなところで同期と鉢合わせするなんて)

(な、なんとか誤魔化さないと‥でも!)

ホテル街という場所で会ってしまったせいか、頭が真っ白になってうまく言い訳できない。

男子訓練生

「か、加賀教官‥お疲れさまです!」

加賀

ああ

男子訓練生

「氷川も‥お、お疲れ」

サトコ

「あ、あの‥こ、これはね!」

男子訓練生

「‥休みの日に会ってるなんて‥ま、まさか‥」

サトコ

「違うの‥!私と加賀教官は、その‥」

加賀

‥‥‥

(加賀さん、なんでそんなに落ち着いてるの!?)

(私たちの関係がバレたら、大変なことになるのに!)

加賀

おい、行くぞ

サトコ

「あ‥教官!待ってください!」

同期の視線を感じつつ、慌てて加賀さんを追いかけた。

(まずいよ‥!なんとか弁解しないと!)

(もし私たちが付き合ってることがバレたら‥どうするの!?)

【個別教官室】

(あれから、あの同期には会ってないけど‥)

(もし、私と加賀さんがデートしてたって言いふらされたら‥?)

加賀

おい

(教官と訓練生の恋愛は、当然ご法度だよね‥)

(バレたら、どんな処分になるんだろう‥?)

加賀

‥飼い主の言葉も上の空とは、いい度胸だな

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-008

サトコ

「えっ?あっ‥」

(そうだった、加賀さんに呼ばれて教官室に来たところだった‥)

サトコ

「すみません‥昨日のことが心配で」

「加賀さん、どうして昨日、何も言わずに帰ってきたんですか?」

加賀

なんの話だ

サトコ

「あんなところを、同期に見られて‥誤解されたら大変なのに」

加賀

くだらねぇ

サトコ

「でも!」

加賀

そんなに暇なら、仕事くれてやる

立ち上がると、加賀さんは個別教官室を出て行った。

【教官室】

追いかけると、加賀さんが私の前にドサッと大量の資料を置く。

加賀

今日中に全部片付けろ

サトコ

「全部!?」

加賀

ボケッとしてる暇があんだから、できるよな?

サトコ

「ハイ‥」

(この量を、今日中か‥いや、やってできないことないけど)

それにしても、気になる‥今日の講義や訓練では、みんなからは何も言われなかった。

鳴子にそれとなく聞いてみたけど、不思議そうな顔をされるばかりだったし‥

(鳴子が知らないってことは、まだ噂は広まってないのかな?)

(それに、他の教官たちはいつも通りだし)

もしかすると、同期の彼が自分の心の中だけにとどめておいてくれてるのかもしれない。

(でも‥もしかしたら、何かあった時に脅しのネタとして取って置いてるのかも‥!?)

(‥いやいや!同期をそんな風に疑うなんて、よくないよね)

颯馬

サトコさん、さっきから全然手が動いていませんが、大丈夫ですか?

サトコ

「え?」

東雲

それを今日中に終わらせるなら、死に物狂いでやらないと無理じゃない?

ただでさえ使えないのに、さらに使えないポンコツに成り下がりたいとはね‥

サトコ

「ポンコツ‥」

石神

仕事に一生懸命なところ『だけ』が、お前の取り柄だろう

後藤

‥腹でも減っているのか?

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-009

東雲

ああ、確かにお腹空いてると動きが鈍くなるよね、サトコちゃん。動物並みに

颯馬

石神さん、冷蔵庫にストックしてあるプリンをサトコさんに差し上げては?

石神

何!?

っ‥‥‥

‥仕方ない。氷川、そんなに腹が減ってるなら食べてもいい

サトコ

「い、いえ‥大丈夫です。別にお腹が空いてるわけじゃないので」

(石神教官、今ものすごく葛藤してたよね‥そんなに大事なプリンをいただくわけには)

東雲

じゃあ、元気ないのがデフォルトになったとか?

元気で図々しいくらいにめげないところ『だけ』が、取り柄だったのに

颯馬

確かに、あの加賀さんについていけるくらいですからね‥

相当な図太さがなければやっていけないですよ

サトコ

「ひどい言われよう‥」

東雲

まぁ、透の騒がしさよりはマシだけど‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-011

後藤

むしろ、アイツの騒がしさのほうをなくしたいもんだな

(教官たちの辛辣な言葉すら、今は耐えられる‥)

(なぜなら、もっと心配なことがあるから‥)

サトコ

「はぁ‥」

加賀

‥‥‥

サトコ

「この書類、保管庫に運んできます‥」

席を立つと、教官たちのヒソヒソ声が聞こえてきた。

颯馬

なんだか、サトコさんらしくありませんね‥

東雲

どうせ、そのうち尻尾振って嬉しそうに兵吾さんの後をくっついてるでしょ

ね、兵吾さん?

加賀

‥知らねぇ

後藤

確かに、想像つくな‥

石神

まあ、氷川が落ち込むときは、たいていお前が関わっているからな

加賀

ああ゛?ケンカ売ってんのかクズメガネ

石神

あまり補佐官を振り回すな

加賀

テメェに関係ねぇだろうが

チッ‥くだらねぇことで悩みやがって

東雲

ふーん‥やっぱり何か知ってるんじゃないですか

加賀

‥知らねぇって言ってんだろ

教官たちの声を背に、私は教官室を出た。

【廊下】

(こうやって悩んでても仕方ないし‥)

(こうなったらいっそのこと、同期のあの彼に直接‥)

男子訓練生A

「付き合ってるって、本当かよ!?」

ビクッと身体が震えて、思わず近くの物陰に身を隠した。

男子訓練生B

「それってさ‥マズイだろ」

男子訓練生C

「でも、決定的なところを見た奴がいるって」

「ふたりで、ホテルに入って行ったらしいぜ!」

(ま、まさかっ‥!)

男子訓練生A

「確か、訓練生と付き合ったら‥教官はクビだよな?」

男子訓練生B

「ああ‥しかも、刑事の階級も落とされるって聞いたぜ?」

「そんな危険を冒してまで付き合うって、すごいよな」

(や、やっぱり昨日のことだ‥!)

(付き合ってるのがバレたら、教官はクビ‥刑事の階級も落とされる‥)

(私よりも、加賀さんに迷惑がかかるんだ‥)

(加賀さんが教官を辞めさせられちゃうなんて、そんな‥!)

【教場】

それから、数日が経った。

(あれから、特に私たちの噂が広がった様子はない‥)

(もしまだ大丈夫なら、これから気を付ければ加賀さんの迷惑になることもないはず)

コーン!と、飛んできたマーカーが私のおでこにヒットした。

サトコ

「痛っ!」

加賀

俺の講義中に考え事とは‥奴隷がいい度胸だな

サトコ

「す、すみません!」

私たちが会話すると、なぜか教場がざわざわし始めた気がする。

(もしかして、実はみんな私たちのこと知ってる‥!?)

(でも知らないフリしてるとか‥成り行きを見守ってるとか‥?)

鳴子

「サトコ‥」

サトコ

「な、鳴子‥」

鳴子

「‥どんな時でも、私はサトコの味方だからね」

千葉

「俺も‥色々複雑ではあるけど、氷川がそれでいいなら、応援するよ」

サトコ

「千葉さん‥」

(ふたりとも、なんでこんな切ない目してるの‥!?)

(やっぱり、私と加賀さんのこと、知ってるんだ‥!)

【廊下】

廊下を歩いていても、みんなの様子が気になってしまう。

(疑心暗鬼‥?でも、鳴子たちの態度もなんかおかしかった)

(これ以上変な噂が立つと、加賀さんに迷惑が掛かっちゃう‥)

加賀

おい

振り返ると、加賀さんが歩いて来るところだった。

サトコ

「は、はい。なんでしょう加賀教官」

加賀

‥なんだその妙な態度は

今は、俺とテメェしかいねぇ

サトコ

「でも‥」

(この状況で、誰かに見られたら‥?)

(今まで、ふたりきりの時は油断してたけど、この前みたいなことになったら‥)

サトコ

「そ、それで‥何のご用でしょう?」

加賀

‥‥‥

私の側を通りすぎる時、加賀さんが耳元でささやく。

加賀

夜、家に来い

サトコ

「え?」

加賀

この間の休みは、ロクにゆっくりできなかったからな

あん時の分も、かわいがってやる

サトコ

「この間って‥」

(ほ、ホテルであんなに色々されたのに!?)

(っていうか‥)

『訓練生と付き合ったら‥教官はクビだよな』

『しかも、刑事の階級も落とされるはずだよ』

(きっと私も、訓練生ではいられなくなる‥)

(でも、それよりも‥)

サトコ

「‥行けません」

加賀

あ?

サトコ

「しばらく‥個人的に会うのはやめた方がいいかなって」

「学校でも、できるだけ関わらないようにしますから」

加賀

主人の命令が聞けねぇのか

サトコ

「でも、このままだと加賀さんに迷惑がかかっちゃいます」

「大事になる前に、しばらく距離を置いた方が‥」

加賀

‥‥‥

何のためだ

サトコ

「え?」

加賀

その判断は、何のためだ?

(なんの‥?)

サトコ

「加賀さんのため、です」

加賀

なら、間違ってんな

サトコ

「え‥」

加賀

‥好きにしろ

私の横をすり抜けて、加賀さんが廊下を歩いていく。

その背中を振り返ることもできず、ただ立ち尽くしていた。

【街】

その日の放課後。

私は、学校が終わった鳴子と街に出かけていた。

鳴子

「いやー、放課後街に出かけるなんて、久しぶりだね」

サトコ

「うん‥」

鳴子

「でも、早く終わった日はたまにこういうことして気分転換しないと」

「特にサトコは、毎日加賀教官に仕事押し付けられてるんだし」

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-014

サトコ

「うん‥ごめんね。急に誘って‥」

鳴子

「全然。私もゆっくり、サトコと話したかったし」

「ねぇ、サトコ‥加賀教官のことだけど」

ビクッと震えた私を見て、鳴子が慌てたように首を振る。

鳴子

「ご、ごめん!サトコが納得してるなら何も言わないから、ねっ?」

サトコ

「うん‥ねぇ鳴子、やっぱり私と加賀教官のこと、噂になってるの?」

鳴子

「噂っていうか‥」

「でもほら、ふたりの関係は他の人にはわからないものだし」

「加賀教官も、サトコだからこそなのかもしれないし‥」

サトコ

「だけど、このままじゃ加賀教官に迷惑かけちゃうよ‥どうしよう」

鳴子

「うーん、でも加賀教官の悪評は今に始まったことじゃないよね」

サトコ

「ま、まあそうなんだけど」

ふと、通りかかったお店のショーウインドーに飾られているアクセサリーに視線が行く。

それは、パワーストーンのお店だった。

(そういえば、まだ加賀さんへのプレゼントも選べてない‥)

鳴子

「何か気になるのあった?入ってみる?」

サトコ

「うん、いい?」

鳴子

「私も見たいし!入ろう入ろう」

鳴子に手を引かれて、パワーストーンのお店に足を踏み入れた。

【店】

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-015

鳴子

「へぇ~いろんなのがあるんだね。あ、これ可愛い!」

「石を選んでアクセサリーを作ってくれるんだって」

サトコ

「‥うん」

(加賀さんにプレゼントするなら、危険から身を守ってくれる石‥かな)

(それから安全祈願の石に、仕事運アップの石‥あとは)

サトコ

『加賀さんのため、です』

加賀

なら、間違ってんな

‥好きにしろ

(‥間違ってる、ってどういう意味だろう)

(加賀さんのために、少しの間、プライベートで会うのはやめようって思ったけど)

私一人で決めるよりも、もっとちゃんと加賀さんに相談すべきだったのかもしれない。

鳴子

「サトコ、見て見て。素直な気持ちを伝えたい人にオススメ、だって!」

「可愛いピンクの石だね。愛が深まるって言われてるらしいよ」

サトコ

「素直な気持ち‥愛が深まる‥かぁ」

鳴子

「私も早く好きな人作って、こういうのに願掛けしたいな」

(私の素直な気持ちは‥加賀さんと一緒にいたい)

(でも、加賀さんに迷惑かけたくないのも本当だし)

そのパワーストーンを手に取ると、ブレスレットを作ってもらうためにレジへ向かう。

(これを渡して、ちゃんと自分の気持ちを言おう)

(何よりも嫌なのは、加賀さんが教官をクビになって、降格されることなんだって)

【廊下】

鳴子と出かけた翌日、無事にブレスレットができたと連絡がきた。

(学校が終わったら取りに行って、そのまま加賀さんに渡しに行こう)

(今日は宿直じゃないはずだから、マンションまで行って‥)

難波

おお、氷川‥ここにいたのか

サトコ

「室長、お疲れさまです」

難波

ああ。悪いが、ちょっと来てくれないか

サトコ

「え?」

難波

お前に話がある

(話‥?室長が、私に?)

室長についていきながら、ハッとなる。

(まさか、加賀さんのこと‥!?)

(室長にバレたら、もう終わりだ‥!)

to be continued

3話へ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする