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温泉 颯馬 2話

【部屋】

私は、びしょ濡れで現れた半裸の室長に、部屋の中に連れ込まれてしまった。

難波

いやぁ、悪いね~突然、忙しい時に

サトコ

「い、いえ‥」

(どうして室長は私を部屋に‥?)

(ま、まさか‥そ、そういうこと!?)

(いやでも室長指輪してるし、そんなことは‥!)

難波

‥なぁ

ふいに、また室長が手を伸ばしてくる。

(‥襲われる!?)

(こうなったら、授業で教わった護身術で‥!)

サトコ

「‥たー!」

難波

おっと

どうした?いきなりパンチ繰り出してきて

(くっ、あっさり逃げられた!)

(さすがは室長‥でも、ここで引くわけにもいかない!)

サトコ

「わ、私には心に決めた人がいるんです!それ以上近づくと、容赦しませんよ!?」

難波

‥なに言ってんだ?

サトコ

「‥へっ?」

(な、なに?その反応‥)

難波

よく分かんねーけど‥

俺の用はこっちだ

サトコ

「えっ‥?」

わけが分からないままも、後について行くと‥

【風呂】

シャアアアア‥

難波

‥てな感じで、シャワーが止まらなくなっちまってよ

どうにかしてくれねーか?

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サトコ

「シャワーって‥」

ついた先は、部屋付きの浴室だった。

そこでは、シャワーが流れ続けている。

(よ、用事ってこのことだったの!?)

(なんだぁ‥)

安心し、ドッと脱力してしまう。

(室長、だからびしょ濡れだったのね‥)

(私ってば、てっきり‥)

自分の早とちりに恥ずかしくなりながら、壊れたシャワーをみていく。

サトコ

「蛇口は閉めたんですよね?」

難波

ああ。でも、止まらなくてな

サトコ

「ちょっと失礼しますね‥」

「わっぷ!」

すると手元が狂い、思いっきりお湯をかぶってしまった。

難波

大丈夫か!?

サトコ

「は、はい‥」

(ああ、私までビショビショ‥)

(どうしよう‥)

颯馬

失礼します

サトコ

「えっ?」

颯馬

‥サトコさん?

その時、なぜか颯馬さんがやって来た。

(ど、どうして颯馬さんがここに‥!?)

颯馬

‥‥‥

濡れた私を見て、無言で颯馬さんは肩にバスタオルをかけてくれる。

颯馬

‥この状況はどういうことです?

サトコ

「あ、あの‥」

(あ、颯馬さん、怒ってる!?)

難波

おう、颯馬。いいところに来たな

さっきからシャワーが止まらなくて、見てもらってたんだが‥

颯馬

シャワーが?

でしたら‥

従業員

「‥これで止まりました」

「ちょっと蛇口が詰まってたようですね。ご迷惑をおかけいたしました」

颯馬

いえ、ありがとうございます

シャワーを直し、従業員さんは帰っていく。

(そっか、旅館の人を呼べばよかったのか。気付かなかった‥)

難波

いやー。助かった助かった

悪いな、颯馬。ありがとう

颯馬

礼には及びませんよ

しかし、難波さん、今後こういったことがあったら

サトコさんではなく、旅館の人を呼んでください

さすがのサトコさんでも、シャワーは直せませんから

難波

『サトコ』?

きょとんとした目で室長が私を見つめてくる。

難波

おー!お前だったのか、氷川!

俺はてっきり仲居さんかと‥

サトコ

「え‥ええ!?」

颯馬

‥難波さん、酔っ払いすぎです

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【部屋】

難波

いやー、本当に悪かったな

浴衣を着た室長がドアまで送ってくれる。

颯馬

いえ。シャワー、直ってよかったです

では、風邪を引くといけないので、私はサトコさんを送って行きますね

サトコ

「失礼します」

挨拶をし、部屋を出ようとする。

すると‥

難波

そうだ、氷川

サトコ

「えっ?」

室長に呼ばれ、振り返る。

バサッ!とタオルが投げられた。

サトコ

「わっ‥!」

難波

髪、ちゃんと拭いとけよ?

再度、ガシガシと頭をかき混ぜられてしまう。

サトコ

「ちょ、ちょっと、止めてください!」

難波

はははっ!

(室長、また子ども扱いして‥!)

難波

‥なぁ

しかし、ポツリと低い声で室長が囁いてきた。

難波

‥酒飲み過ぎたからって、あんま他の男に油断すんなよ?ひよっこ

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(‥えっ?)

颯馬

‥難波さん、それじゃあ、おやすみなさい

難波

おお

パッと室長が私から手を離す。

難波

じゃあな、氷川

サトコ

「は、はい‥」

(今のって‥)

(もしかして、室長、私だと分かっててわざと部屋に呼んだの‥?)

【廊下】

室長の部屋を出て、廊下を歩いていく。

颯馬さんは私よりも先を歩いていた。

颯馬

‥‥‥

(颯馬さん、さっきからなにもしゃべらない‥)

<選択してください>

A: シャワーのお礼を言う

サトコ

「あの、さっきはありがとうございました」

「私、旅館の人を呼ぶって思いつかなくて‥」

颯馬

‥普通、初めに思いつくと思うのですが?

サトコ

「‥はい」

颯馬

ですが‥あそこで自分でなんとかしてしまおうとするところが、貴女らしいのかもしれませんね

サトコ

「颯馬さん‥」

B: 宴会の話をする

サトコ

「そういえば、さっきは驚きましたよね」

「宴会場に仲居さんがいっぱいいて。室長、いつの間にあんなに‥」

「まさに酒池肉林だなーって」

颯馬

酒池肉林?

‥フフ、確かに

(よかった‥笑ってくれた!)

C: 手を繋ぐ

(今はふたりだし、いいかな‥?)

思いきって颯馬さんの手を握ってみる。

颯馬

‥どうしたんです?

サトコ

「え、ええと‥」

(勇気を出してみたものの、この先どうしていいのか分からない‥)

颯馬

‥フフ

すると、優しく笑って、颯馬さんは握り返してくれた。

颯馬

‥先ほどのシャワーのことですが

難波さん‥少し、おいたがすぎますね

サトコ

「おいた?」

スタスタと早足で歩きながら、そう颯馬さんがつぶやく。

サトコ

「あの、どこに行くんですか?そっちは宴会場じゃ‥」

颯馬

さっき言いましたよね?

『あとで』‥と

サトコ

「えっ?」

ふいに颯馬さんが立ち止まる。

そこは個室の前だった。

サトコ

「ここは‥」

颯馬

私の部屋です

‥さ、サトコさん。どうぞ

【颯馬の部屋】

部屋に入ったとたん、ドアに優しく押しつけられ、たくさんのキスが降ってきた。

優しい手つきとは裏腹に、その表情には焦りを感じる。

サトコ

「っ‥!」

颯馬

‥‥‥

戸惑う私の唇を奪いながら、ガチャリと颯馬さんは鍵を閉めた。

サトコ

「そ、颯馬さ‥!」

颯馬

逃げないで

もっと‥俺を受け入れて?

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颯馬さんの熱が入って来て、私は一気に力が抜けてしまう。

(今日の颯馬さん、どうしたの‥?)

(いつもより激しいっていうか、余裕がないっていうか‥)

颯馬

‥先ほど、『ここには貴女を女扱いしない人たちしかいない』と言いましたが‥

それはまったくのウソでした

サトコ

「えっ‥?」

颯馬

‥おいたがすぎるのは、難波さんだけじゃないんですよ?

言っている意味が分からず、キスで濡れた目で見上げる。

すると、クスリと颯馬さんが苦笑いした。

颯馬

まったく、貴女って人はいったいどこでそんな技を‥

それでは、煽っているようにしか見えません」

この間の授業でハニートラップを練習しすぎましたか?

そっと親指で下唇を撫でられる。

颯馬

‥そんな顔、絶対に俺以外には見せないで

サトコ

「っ‥」

そう囁かれ、もう一度キスをされる。

帯を解かれ、濡れた浴衣を脱がされそうになった。

サトコ

「ま、待ってください!こんなところで‥!」

颯馬

待てません

サトコ

「でも‥!」

颯馬

本当、貴女は手のかかる補佐官です

‥宴会でも、みなさんにニコニコと愛想を振りまいて

‥ちゃんと、貴女が誰のものなのか、わからせる必要がありますね

サトコ

「わっ‥!」

颯馬さんが私を抱き上げる。

いわゆる、お姫様抱っこだ。

颯馬

言ったでしょう?『くれぐれも油断はしないで』‥と

布団へ移動し私を下ろすと、チュッ‥と鎖骨へ口づける。

(颯馬さん‥!)

そうして‥私は、いつもより性急な颯馬さんの腕に溺れていった。

サトコ

「‥ん?」

颯馬

起きましたか?

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頭を撫でられる感覚で目が覚める。

裸の颯馬さんが愛おしそうに見つめていた。

(颯馬さんが撫でててくれたんだ‥)

濡れていた身体や髪はいつの間にか乾いている。

(‥これも、颯馬さんがやってくれたのかな)

颯馬

大丈夫ですか?少し無理をさせてしまいましたから‥

サトコ

「平気です」

「あの、ひとつ聞きたいんですけど‥」

「颯馬さん、どうしてあの時、室長の部屋に来たんですか?」

颯馬

え?

ああ‥

貴女が席を立った後、私も廊下に出たのです

貴女と2人きりになりたくて‥

そうしたら、貴女の声が聞こえて来て‥

『私には心に決めた人がいるんです』‥と

サトコ

「えっ‥!」

(ウソ‥あれ、聞かれてたの!?)

颯馬

フフ、真っ赤ですよ?

サトコ

「だ、だって‥」

(まさか聞かれてるとは思わなくて‥)

(うう、恥ずかしくて消えたい‥!)

コンコン

黒澤

周介さーん!飲み直しますよ~!

サトコ

「!」

その時、ドアの外から黒澤さんの声がした。

どうやら相当酔っているらしい。

颯馬

分かりました。すぐに行きます

‥2人きりの時間は終わりですね

私は先に出ますので、頃合いを見て、貴女も後で来てください

サトコ

「はい‥」

(せっかくの旅行なのに、もう恋人同士の時間は終わりなんだ‥)

(ちょっと寂しいな‥)

颯馬

‥サトコさん

サトコ

「えっ?あっ‥!」

そう思っていると、布団から出る直前、颯馬さんがキスをしてくれた‥

【温泉街】

翌日。

難波

うーん、いい天気だ

旅館をチェックアウトし、私たちは温泉街へ観光に来ていた。

黒澤

今日のお昼は、有名な小料理屋を予約してありますよ~!

難波

おっ、でかした黒澤!

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楽しみだな?氷川

サトコ

「は、はい」

(室長、昨日のことなんか全然気にしてないみたい‥)

(いやでも、今日は油断しないようにしよう!)

東雲

へぇ、人力車があるんだ

黒澤

いいですね!これでお店まで移動しましょうよ

東雲

でもこれ、2人乗りでしょ?

石神

冗談言うな、黒澤

加賀

乗りたきゃテメェひとりで乗れ

後藤

人力車を引くのは、いい筋トレになりそうだな‥

東雲

うわ‥絶対に嫌だ‥

教官たちはありえないと口をそろえる。

すると、颯馬さんが私の背中に触れ‥

颯馬

サトコさん、レディファーストです。お先にどうぞ

サトコ

「え‥?あ、ありがとうございます」

颯馬さんに促され、人力車に乗る。

颯馬

では、私も

そして、当たり前のように隣に颯馬さんが座ってきた。

(えっ‥いいの!?)

颯馬

それでは、私たちは一足先に行っていますので

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出発してください

運転手

「はいよ!」

サトコ

「あ、あの‥!」

止める間もなく、人力車は走り出してしまう。

サトコ

「いいんですか‥?」

颯馬

みんな、いい大人です。自力で来れるでしょう

サトコ

「いえ、そうじゃなくて‥」

(2人で乗ったら、私たちの関係がバレちゃうんじゃ‥)

そう不安になっている私をよそに、颯馬さんは人力車の運転手さんと楽しそうに会話をしていく。

運転手

「今日は観光ですか?」

颯馬

ええ。昨日、旅館に泊まって今日は観光です

運転手

「いいですねぇ~」

「2人は恋人同士なんですか?」

サトコ

「えっ?」

(恋人同士って‥)

<選択してください>

A: 肯定する

(今は2人きりだし‥)

サトコ

「は、はい‥」

照れ臭くなり、小声で答える。

すると、クスクスと颯馬さんが笑った。

颯馬

ええ。可愛い自慢の彼女です

サトコ

「!」

(そ、颯馬さん!?)

(「可愛い」って、恥ずかしすぎる‥)

(でも、他の人からはカップルに見えるんだ‥嬉しいな)

B: 否定する

サトコ

「ち、違います!私たちは上司と部下のようなもので‥!」

颯馬

ええ、恋人同士です

サトコ

「なっ‥!」

(颯馬さん!?)

運転手

「はっはっは!そうですか」

(うう、恥ずかしすぎる‥!)

C: なにも言わないでおく

(そうだけど、一応、外では隠してるし‥)

颯馬

ええ、私たちは恋人同士です

(って、サラッと言った!?)

颯馬

なにか問題でも?

サトコ

「‥い、いえ」

(はぁ、顔が熱い‥)

【小料理屋】

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そのあと、小料理屋へ着く。

座敷に通されると、窓から庭が一望できた。

サトコ

「わぁっ、素敵‥!」

黒澤

凄いですよね!なかなか予約が取れなくて大変だったんですよ

石神

お前にしてはいいチョイスだ

東雲

透もたまには、人の役に立つことがあるんだね

黒澤

皆さん‥当たりが強いです

難波

注文するから、お前らさっさと座れ

(私はどこに座ろうかな‥)

颯馬

サトコさん、ここなら庭を一望できますよ?

すると、颯馬さんが私を手招きしていた。

(そこは、思いっきり颯馬さんの隣‥)

東雲

‥さっきの人力車でも思ったんですけど、颯馬さんって‥

後藤

周さんは、意外と子どもっぽいところがあるからな‥

颯馬

なにか言いましたか?2人とも

後藤・東雲

「イイエ、ナニモ」

颯馬

さ、サトコさん。こちらへどうぞ

無理やり颯馬さんの隣へ座らされる。

颯馬

料理、楽しみですね

サトコ

「そうですね‥!」

不意に見せる、颯馬さんの嬉しそうに笑う顔に自然と笑みが零れる。

こうして、みんなでの温泉旅行は、

いろいろハプニングがありつつも、とても楽しい思い出になったのだった。

Happy  End

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