キス&Kiss 【1】
「泣きっ面にキス」
【屋上】
サトコ
「‥私、バカだ」
涙で滲む夕日を見つめながら、私はポツリと言葉を零す。
今日、私は些細なミスで颯馬さんに迷惑をかけてしまった。
サトコ
「‥書類の不備だなんて、いつもは絶対しないのに」
ミスをしてしまったことも悲しいけど、それは確認を怠ってしまった私が悪い。
自分のミスは受け止めるつもりだけど、一番つらいのは‥
(颯馬さんに、迷惑かけてしまったこと‥)
颯馬
「見つけましたよ」
ぐす、と鼻を鳴らしていると聞き慣れた柔らかい声が聞こえる。
思わず不安を顔に残したまま振り向いてしまい、颯馬さんが困ったように微笑んだ。
颯馬
「私の前では気丈に振る舞っていましたけど‥」
「そういう顔こそ、ちゃんと私の前でしてもらわないと困ります」
優しい声に堪えていた涙が、ぽろり、と零れ落ちる。
颯馬
「涙を拭くのも、私の役目にして頂かないと‥」
サトコ
「つ、次は‥っ、もう絶対‥」
颯馬
「大丈夫ですから、泣かないでください」
私の涙を親指で拭った後、額にキスが落とされる。
そして、瞼、頬、と唇が降りてきて‥
颯馬
「辛い時は我慢しないで、ちゃんと私を頼ってください」
そう呟いた後、私の唇を塞いだ。
サトコ
「!」
颯馬
「ふふっ!涙が止まりましたね」
サトコ
「あ‥」
颯馬
「肝心な時に頼ってもらえないと、私が不安になってしまいます」
「‥私は、貴女の恋人でしょう?楽しいも悲しいも、共有したいんですよ」
サトコ
「‥っ」
そっと頭を撫でられ、昂っていた感情が冷静さを取り戻していくのを感じていた。
to be continued
キス&Kiss 【2】
「濡れたまぶたに慰めのキス」
【個別教官室】
私は個別教官室に連れて行かれ、颯馬さんの作ってくれたココアを飲んでいた。
颯馬
「ミスはしましたが、貴女はちゃんとフォローもしてくれていましたよ」
「そのフォローがあって、今はもうしっかり収拾がつきましたし」
颯馬さんから資料を見せられ、解決したことにホッと胸を撫で下ろす。
颯馬
「大事なのは悔やみ続けることではなく、同じミスをしないこと」
「分かりましたか?」
颯馬さんは私のまぶたにゆっくりと口づけながら、諭すように優しく呟く。
(‥これからは、颯馬さんに迷惑をかけないようにしなきゃ)
まぶたに口づけられる心地よさに目を閉じていると、柔らかな笑い声が聞こえた。
颯馬
「ふふ、少し塩辛いですね」
サトコ
「‥っ!」
私を優しく、だけど強く抱きしめながら颯馬さんが耳元で囁いた。
その時、廊下を慌ただしく走る足音が聞こえ、身体を離そうとしたけど‥
颯馬
「だめですよ。私から離れるなんて」
サトコ
「で、でも、もし他の人に私たちの関係がバレたら‥」
私はもちろん、颯馬さんだって何らかの処罰を受ける可能性がある。
それだけはどうしても避けたかった。
颯馬
「バレることより‥今の貴女を離すことの方が耐えがたい」
私を抱きしめる腕に力がこもる。
颯馬
「俺に、どうしてほしい?」
私の唇を指でなぞりながら、颯馬さんが妖しく問いかけてくる。
サトコ
「‥キス、してほしいです」
恥ずかしさを堪えながら答えると、颯馬さんが優しく微笑み‥
颯馬
「よくできました」
その言葉と同時に、熱いキスを落としてきた‥
to be continued
キス&Kiss 【3】
「どんなお菓子よりも甘いキス」
【寮監室】
サトコ
「あ、あの、どうしてここに‥?」
私は教官宿泊室に案内され、ベッドの上に座らされていた。
颯馬
「言ったでしょう?今の貴女を離すことの方が耐えがたい、と」
「それに‥」
クイッと顎を持ち上げられて、熱を帯びた瞳に見つめられる。
颯馬
「あんなキスをしといて、俺が我慢出来るとでも?」
「‥ダメだよ、誘ってきたのはサトコなんだから」
さっきまでの優しい雰囲気が一変して、私の唇を塞ぐ。
豹変した態度とは裏腹に、触れる唇はこれ以上ないくらい優しい。
サトコ
「‥っ」
ちゅ、と室内に響くリップ音に恥ずかしさが増していく。
颯馬
「たったこれだけで顔を真っ赤にして‥」
「本当にサトコは可愛いね」
サトコ
「そ、颯馬さん‥っ」
颯馬
「‥このまま、すべて食べてしまえたらいいのに」
「そうすれば、サトコを俺だけのものに出来るのに」
独占欲に満ちた視線を向けられ、私はドキドキしすぎて視線を逸らす。
けど、すぐに颯馬さんの方に顔を向かされ、お仕置きといわんばかりの激しいキス。
(‥激しいのに、優しくて甘い)
颯馬
「本当にカワイイ‥」
「ねぇ、やっぱり俺に食べられてみる?」
サトコ
「なっ、そ、そんな‥っ」
颯馬
「今さら照れてもダメだよ」
「言っただろ?誘ったのはサトコの方だって‥」
瞳を妖しく光らせながら、私の唇を塞ぐ。
角度を変え、何度も優しいキスを繰り返され、私の思考はどんどん溶かされていった‥
Happy End