キス&Kiss 【1】
「可愛くないキミにキス」
【寮監室】
東雲
「悪くないね、それ」
東雲教官の部屋にお邪魔して、約束のエビフライを作る。
サトコ
「何のことですか?」
東雲
「エプロン」
「意外と似合う」
頬杖をつきながらそういう彼に見つめられて、私は少しだけ居心地悪さを感じていた。
東雲
「‥ねぇ、せっかくオレがいるのに、その態度はよくないんじゃない?」
(う‥)
(だけど、緊張しちゃって‥)
うっかり手元が狂いそうになる。
後ろから人が近づく気配がする。
サトコ
「ひゃっ‥」
背後から抱きしめられた。
東雲
「こういうシチュエーション、結構燃えると思わない?」
「それにエプロンって、何だか脱がしたくなる」
(わー!!なんてことを‥!)
サトコ
「り‥っ」
東雲
「り?」
サトコ
「料理が出来ないので‥っ、離れてくださいっ」
東雲
「‥可愛くない」
東雲教官は不機嫌そうに呟いた後、後ろを強引に向かせて‥
サトコ
「‥っ!?」
私と、東雲教官の唇が重なった。
東雲
「そうそう、オレはキミのそういう顔が見たいんだよ」
きっと、今の私の顔はリンゴのように真っ赤なんだと思う。
けど、東雲教官はそんなことお構いなしで、再び口づけてきた。
東雲
「オレを受け流そうなんて、百年早いよ」
意地悪な言葉と共に、熱いキスが落とされる。
それが数回続く頃には、もう私の頭から料理のことなんて抜けてしまっていた‥
to be continued
キス&Kiss 【2】
「キミから可愛いキス」
東雲
「‥もう、降参?」
何度も熱いキスが繰り返され、私の身体から力が抜けた。
そんな私を東雲教官は、したり顔で見下ろしている。
(‥悔しい)
いつも、私は東雲教官に振り回されてばかり。
(私だって、たまには‥)
サトコ
「‥っと」
東雲
「え?」
サトコ
「もっと、です‥!」
東雲教官のシャツを引っ張り、恥ずかしさを堪えながらキスをするけど‥
ガツッ!
東雲
「痛っ!!」
サトコ
「!!!」
東雲
「‥‥‥‥痛いんだけど」
(や、やっちゃった‥!)
勢いがつきすぎたらしく、お互いの歯がぶつかり合ってしまった。
東雲
「女の子の方からキスなんて、普通は色気があるものだと思ってたけど‥」
「キミに関しては皆無、これがテストだったら0点だね」
サトコ
「うっ‥」
東雲
「‥ま、キミに色気なんて端から期待してないけどね」
歯がぶつかって切れた私の唇を、ペロリ、と舐めながら東雲教官が呟く。
東雲
「どうする?もう少しする?」
東雲教官は自分のおでこと私のおでこをくっつけながら、妖しげに問いかけてくる。
東雲
「選ばせてあげる、オレって優しいし」
至近距離でジッと見つめられ、私は恥ずかしさから視線を泳がせた。
そして‥
サトコ
「‥もう少し、お願いします」
ふっと微笑む顔はいつになく優しい。
東雲
「分かった」
「いいよ、もう少しだけ、キスしてあげる」
東雲教官のいつになく優しい言葉と共に、再び唇に優しい温もりが落ちてきた‥
to be continued
キス&Kiss 【3】
「騙し討ちはキスから」
【バスルーム】
サトコ
「な、なんで教官まで一緒に入ろうとするんですか‥!」
先にお風呂をお借りすることになると、何故かバスルームまで東雲教官がついてきた。
東雲
「いいじゃん、一緒に入れば」
サトコ
「だ、ダメです!」
洗面台と東雲教官に挟まれてしまい、私は脱衣所から逃げることもできない。
東雲教官のことだから、すべて計算したうえでここに追い込んでいるんだろうけど‥
東雲
「何でそんなに嫌がるかな」
東雲教官は私を逃がさないように、両手で行く手を阻む。
鏡越しに東雲教官と視線が絡み、恥ずかしさが増した。
東雲
「鏡越しじゃ、キスも出来ないじゃん」
「‥もしかして、オレを焦らしてるつもり?」
背後から耳元で囁かれ、私はギュッと瞳を閉じる。
(焦らしてるつもりなんてないけど‥)
(し、東雲教官の囁く声、心臓に悪すぎだよ‥っ)
東雲
「うーそ。ちょっとからかいすぎたね」
ぽんぽん、と私の頭を撫でた後、東雲教官が脱衣所を出て行く気配がする。
(で、出て行った‥?)
そっと瞼を開けた瞬間、強く腕を引かれ、壁に押し付けられる。
東雲
「そんなんじゃ、まだまだ気配の読み方が足りないんじゃない?」
東雲教官は意地悪な笑みを浮かべながら、私を見下ろして‥
東雲
「騙され過ぎで、つまんないんだけど」
サトコ
「‥っ」
ゆっくりと触れるだけのキスをしてきた。
東雲
「キミさ、色気は皆無だけど‥」
「そういう仕草が誘ってるように見えるんだって分かってる?」
少しだけ頬を染めた後、東雲教官が再び唇を重ねてくる。
東雲
「‥そういう仕草をするキミ、結構たまんないね」
何度も唇に落ちる柔らかい感触は、いつしか触れるだけじゃなく、熱く激しいものへと変わる。
(‥お風呂に入る前から、のぼせちゃいそう‥)
甘いキスにくらくらとしながら、東雲教官の身体にしがみついていた‥。
Happy End