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お返し 石神1話

【寮 自室】

サトコ

「えっ、旅行ですか‥!?」

石神

ああ

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石神さんは突然私の部屋を訪ねてきたかと思うと、航空券を差し出してきた。

航空券には『3月14日 与論島』と書かれている。

サトコ

「でも、なんでいきなり旅行に‥?」

石神

‥日付を見て、気付かないか?

サトコ

「あっ‥」

(3月14日‥もしかして、ホワイトデー!?)

石神

あんなにいいものをもらったんだ。お礼はしなくちゃな

サトコ

「石神さん‥」

【学校 廊下】

(石神さん、この時間なら教官室にいるよね?)

バレンタイン当日になり、私は軽い足取りで教官室に向かっていた。

(ふふ、喜んでくれるといいな‥)

【教官室】

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サトコ

「失礼しま‥」

加賀

‥チッ

サトコ

「ひいっ‥!」

開口一番、加賀教官に舌打ちされ身がすくむ。

(加賀教官、いつもより機嫌が悪い‥?)

(それに、他の教官たちもすごく忙しそうだし‥)

邪魔にならないように、私は静かに石神さんの個別教官室に向かった。

【個別教官室】

サトコ

「失礼します」

石神

‥ん?サトコか

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石神さんは手を止め、顔を上げる。

デスクには、大量の書類が積まれていた。

サトコ

「その書類は‥」

石神

明日までに処理する案件だ

サトコ

「えっ、この量をですか!?」

石神

そうだ。今夜は徹夜になりそうだな

サトコ

「‥‥‥」

(いくら石神さんでも、この量をひとりでなんて大変だよね‥)

サトコ

「石神さん、よければ手伝わせてください」

石神

何時までかかるかわからない‥いいのか?

サトコ

「もちろんです。どーんと任せてください!」

石神

フッ‥頼もしいな

では、捜査のまとめを頼む

サトコ

「はい!」

(あっ‥)

ふと、用意していたチョコプリンアラモードを思い出す。

(今逃すと、渡せなさそうだし‥)

サトコ

「あの、石神さん。今日、バレンタインなので‥」

そっと差し出すと、石神さんは驚きを見せながら受け取ってくれる。

石神

バレンタイン‥ああ、そういえば今日だったか

サトコ

「ふふ、忘れてたんですか?」

石神

まあ、な。ここ最近、特に予定が詰まっていたからな

‥手作りか?

サトコ

「はい!」

石神

そうか‥ちょうどいい。休憩にするか

石神さんは嬉しそうに目を細め、スプーンを手に取る。

石神

いただきます

チョコプリンをスプーンですくい、口元に運ぶと‥

石神

‥ん、美味い

サトコ

「本当ですか!?」

石神

ああ

(ふふ、頑張ったかいがあったな)

口元が緩むのを感じながら、美味しそうに食べる石神さんを見る。

石神

‥見られていると、食べにくい

サトコ

「す、すみません。つい気になっちゃって‥」

石神

‥お前も食べるか?

サトコ

「え?」

石神

ほら

石神さんは、チョコプリンを乗せたスプーンを差し出してくる。

(こ、これはもしや‥)

石神

食べないのか?

サトコ

「い、いえ!いただきます!」

「あーん‥」

プリンを口にすると、チョコとプリンの優しい味が広がった。

(石神さんから『あーん』だなんて‥)

【石神 マンション】

石神

‥今日はバレンタインだからな

サトコ

「え‥?」

石神

特別、だからな‥

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サトコ‥あーん

【教官室】

石神

去年と一緒だな

サトコ

「あ‥」

石神

なんだ?

サトコ

「私も今、同じこと考えてました」

それがなんだか嬉しくて‥顔がほころんだ。

【寮 自室】

(それで、あのあと石神さんと‥)

石神

‥顔が緩んでいる

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サトコ

「す、すみません」

石神

それで、予定は‥

サトコ

「もちろん、空いてます!」

石神

そうか

間髪入れず返答する私に、石神さんはフッと笑みを浮かべる。

サトコ

「あ、でも‥お仕事は大丈夫ですか?」

石神

ああ。たまにはのんびりしよう

サトコ

「はい!楽しみにしてますね」

石神

っ!

思わず抱きつくと、石神さんは目を丸くする。

<選択してください>

A: 慌てて離れる

(ハッ!私ったら、なんてことを‥!)

サトコ

「す、すみません!つい‥」

石神

‥‥‥

サトコ

「あっ‥」

慌てて離れようとすると、石神さんは私の背中に腕を回す。

石神

‥もう少しだけ、いいか?

サトコ

「はい‥」

B: ギュッと抱きしめる

サトコ

「石神さん‥」

石神さんを抱きしめたまま、ギュッと力を込める。

サトコ

「いきなりすみません。でも本当に嬉しくて‥」

石神

そうか‥

石神さんは優しい手つきで、私の背中を撫でる。

石神

‥お前には我慢させてしまうことが多いからな

甘えたいときは、いつでも甘えて欲しい‥そう、思ってる

C: 石神の反応を待つ

(ど、どうしよう、嬉しさのあまり、つい‥)

(いきなり抱きつかれるなんて、石神さんも驚くよね)

(でも‥)

石神さんの温もりを感じ、離れ難くなってしまう。

サトコ

「石神さん‥」

チラリと顔を上げ、石神さんの様子をうかがうと‥

石神

サトコ‥

サトコ

「!」

唇に、触れるだけのキスが落ちてきた。

石神

俺も‥楽しみにしてる

優しく微笑む石神さんに、私は満面の笑みを返した。

【ホテル】

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サトコ

「わぁ‥!」

ホワイトデー当日。

ヴィラホテルに到着して客室に案内されると、感嘆の声が漏れる。

石神

「気に入ったか?

サトコ

「はい!こんなオシャレで素敵なホテル、初めてきました!」

窓辺に行き外を見ると、綺麗な青空と海が広がっていた。

サトコ

「綺麗‥」

(これがバレンタインのお返しだなんて‥)

サトコ

「‥こんな贅沢なものをもらって、いいのかな」

石神

当たり前だろう?

窓に添えた手に、そっと大きな手が重なる。

石神

俺が、サトコの喜ぶ顔が見たかったんだ

だからお前が楽しんでくれなきゃ、意味がない

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サトコ

「っ‥」

サングラスを外した石神さんはわずかに身を屈めて、私の額にキスをする。

サトコ

「石神さん‥」

いつもより大胆な石神さんに、頬に熱が上がる。

石神

今日はサトコの恋人として‥堂々とできるからな

サトコ

「あっ‥」

添えられた手を取られ、指が絡み合う。

石神

夕食まで時間があるな。散歩にでも行くか

サトコ

「はい‥」

(石神さんの手、大きいな‥)

今まで何度も手を繋いだのに‥改めてそう感じ、ドキッと胸が高鳴る。

(まだ来たばかりなのに‥今からこんなにドキドキして、心臓持つかな‥)

【バスルーム】

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サトコ

「明日はどうしますか?」

オシャレなレストランで食事を済ませると、石神さんとお風呂に入る。

石神

そうだな‥お前は行きたいところあるのか?

サトコ

「海に行きたいです!」

「海に入れるかもって聞いたので、楽しみにしてたんです」

(今回のために、新しい水着買ったんだよね)

(石神さんはどんな水着が好みなのか分からなくて、すごく悩んだけど‥)

石神

‥ん?どうした?

サトコ

「い、いえ‥なんでもないです」

石神

‥俺には言えないことか?

サトコ

「あっ‥」

腰に腕を回され、後ろから抱きしめられる。

サトコ

「そういうわけじゃ‥」

石神

なら、話せるだろう?

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サトコ

「っ‥」

吐息が耳に掛かり、ピクリと肩が反応する。

サトコ

「ほ、本当にたいしたことじゃないんです」

「ただ水着を買ったってだけで‥」

石神

水着‥?

サトコ

「はい。せっかくの旅行だし、海に入るなら‥」

石神

海開きはまだだったはずだが‥

サトコ

「えっ‥!?」

「で、でも、3月3日は海開きだってガイドブックに載ってましたよ?」

石神

3月3日とは、旧暦のことだろう。だから海開きはまだ先になるな

サトコ

「そんなぁ‥」

(せっかく張り切ってたのに‥)

石神

‥そう落ち込むな

サトコ

「ん‥」

首筋に、石神さんの唇があてがわれる。

石神

今回はダメでも、次があるだろう?

サトコ

「っ‥」

唇が肌を滑り、声が漏れそうになる。

サトコ

「い、石神さ‥」

石神

‥‥‥

石神さんは腕の力を緩め、私を正面から抱きしめ直すと‥

サトコ

「ん‥」

唇が塞がれ、深く繋がった。

角度を変えては繰り返されるキスに、頭がくらくらする。

サトコ

「‥はぁ」

名残惜しそうに唇が離れると、私たちの間に透明な糸が伝った。

<選択してください>

A: 自分からキスをする

石神

‥‥‥

熱い眼差しを向けられ、胸の奥が疼く。

私は石神さんの肩に手を置き、ゆっくりと顔を近付ける。

サトコ

「ん‥」

石神

石神さんは一瞬目を大きく開くも、私を抱く力を強める。

B: 石神を見つめる

サトコ

「石神さん‥」

濡れそぼった唇がどことなく官能的で‥私は石神さんから目が逸らせなかった。

石神

顔、赤くなってる

サトコ

「そ、それは石神さんが‥」

石神

俺が?

サトコ

「‥石神さんのせいです」

石神

そうか‥

石神さんはいたずらな笑みを浮かべ、私の頭の後ろに手を添えると‥

サトコ

「ん‥」

再び唇が重なり、先ほどよりも強く求められる。

C: どうしたんですか‥?

サトコ

「どうしたんですか‥?」

石神

俺がこんなことしたら、おかしいか?

サトコ

「おかしいというか、いつもと違うというか‥」

石神

言っただろ?『サトコの恋人として‥堂々とできる』って

サトコ

「っ‥」

石神さんの指が肌を滑り、思わず彼に抱きついた。

石神

どうした?

私の反応に、石神さんはいたずらっ子のように笑む。

サトコ

「い、石神さ‥んっ」

呼吸さえも奪われるかのようなキスに、眩暈を覚える。

石神

‥このままだと、のぼせてしまいそうだな

石神さんは私を抱き上げると、浴槽を後にする。

【ベッドルーム】

サトコ

「あっ‥」

ベッドに優しく降ろされ、石神さんが覆いかぶさるように私の顔の横に腕をつく。

サトコ

「い、石神さん。明日に備えて、早く休んだ方がいいんじゃ‥」

石神

‥嫌か?

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サトコ

「っ‥!」

熱のこもった眼差しに囚われる。

サトコ

「嫌じゃない、です。私も石神さんと‥」

「んっ‥」

言葉を遮るように、口づけが交わされる。

先ほどとは違い、甘くとろけそうなキス。

いつも以上に求められ、少しだけ戸惑うこともあるけど‥

(幸せ、だな‥)

想いを伝えるように、石神さんの首に腕を回す。

肌を重ねる度、愛しい彼と一緒にいられる幸せを心から感じていた。

to be continued

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