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難波 恋の行方編 Happy End

サトコ

「怒ってませんけど‥」

難波

怒ってるって

サトコ

「だ、だって‥!」

もどかしい想いのやり場に困っている私を見て、室長はふっと微笑んだ。

難波

かわいいなあ、お前は

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サトコ

「え‥?」

難波

そんな風に怒ってくれるってことはつまり‥

その、何ていうか‥

今度は室長もちょっと恥ずかしそうに頭をかく。

難波

氷川は、それだけ俺のことが好きってことでいいんだよな?

サトコ

「!」

「そ、それは‥っ!」

室長は真っ赤になった私をもう一度ギュッと抱きしめると、頭にポンポンと手を置いた。

(これって両想いってことでいいんだよね?)

(嬉しいけど‥なんか恥ずかしい‥!)

難波

‥行くぞ

室長は私の手を取ると、車に向けて歩き出す。

繋がれた手から伝わってくる室長の体温が、ますます私の頬を火照らした。

(なんだか夢みたい‥でも、夢じゃないんだよね)

【難波 マンション】

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連れて来られたのは、室長の家。

室長が無造作にワイシャツのボタンを外したことにすら、いちいちドキドキしてしまう。

(こういう時、大人の女性ならさりげなく振る舞えるんだろうけど‥)

この後の展開を想像するだけで、勝手に胸の鼓動が高まった。

(落ち着いて‥落ち着くんだよ、私!)

難波

‥どうした?

室長は緊張で固まる私の顔を覗き込みながら、余裕の表情でソファの隣に座る。

サトコ

「い、いえ、その‥す、ステキなお家だなあって‥」

難波

‥‥

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サトコ

「家族サイズっていうか‥その、すごく広々としてて‥」

(ああ、もう!私、何言ってんだろう‥)

案の定、室長は耐えかねたように吹き出した。

難波

なんだよ、それ。テレビ番組のお宅訪問みたいだな

サトコ

「そ、そうですよね。はは‥」

乾いた笑いを浮かべた瞬間、室長の香りに包まれた。

重なり合った唇の感覚に、思わず呆然となる。

サトコ

「あ‥」

(キス‥されちゃった‥)

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難波

‥なんだよ?

もしかして、もう少し子ども扱いしてた方がよかったか?

サトコ

「そ、それは‥」

(ずっと女扱いされたかったんだから、そりゃ、こっちの方が嬉しいに決まってるけど‥)

(でも、どうしよう‥胸の鼓動、止まんないよ‥!)

室長は軽く微笑むと、優しく頭を撫でた。

難波

よしよし‥

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サトコ

「‥‥‥」

難波

なんだ‥この前は子ども扱いするなって噛み付いたのに、今日は大人しいな

サトコ

「だ、だって‥!」

(どうしたらいいか、分かんないんだもん)

銃を構えた時とはまた別の恐怖心のようなものが、私の身体を取り巻いていた。

そんな私を、室長は優しげな瞳でただじっと見つめている。

難波

‥‥

(もしかして、このままだと拒否したってことになっちゃうのかな‥?)

大切な瞬間を逃したかもしれないという焦りがこみ上げ、ますます頭の中が混乱した。

サトコ

「あ、あの‥!」

「んんっ」

再びキスで塞がれた唇。

さっきよりも長いキスが、不思議と気持ちに落ち着きを与えてくれた。

それを感じ取ったのかのように、室長は私を抱えて立ち上がると、ベッドへ向かう。

(私‥ついに室長のものになるんだ‥)

【寝室】

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甘い予感に酔いしれながら、でもそのどこかで、まだわずかな不安がのぞいていた。

あの時のことが、頭をよぎる。

難波

なんでもできんのか

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それならお前の本気見せてくれよ

ベッドに横たえられ、より近くに室長の体温を感じた、

(あの時のこと、聞きたいけど、聞けない‥)

そっと目を瞑った時‥‥

難波

あの時とは、違うから

サトコ

「え‥?」

(心の中、読まれた?)

難波

あの時は、お前に俺を忘れて欲しくて‥

でもできなかった

嫌がらせなんかで抱けないほど、大事だった‥

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サトコ

「室長‥」

私の心を覆っていた霧が、一気に晴れて行く。

それと同時に、これまで以上に室長を愛おしいと感じた。

サトコ

「嬉しい‥です」

難波

でも、ここまで言った以上は、もう子ども扱いはしないぞ?

室長はニヤリと笑うと、あっという間に私の身体に覆いかぶさり、じっと顔を覗き込んだ。

難波

まだ緊張してんのか?

サトコ

「ちょっと‥」

難波

お前は何も考えなくていいから

ただ、いい子に俺の言うことを聞いてろ

サトコ

「‥はい」

まるで学校の延長のようなやり取りに、どちらからともなく笑みがこぼれた。

室長の大きな手が、柔らかな唇が、私の全身を幸せで満たしていく。

(ずっとこうして欲しかった‥)

(これからもずっと、こんな風に室長の腕の中にいられたら‥)

きっと訓練も今まで以上に頑張れる。

立派な公安刑事にもなれる気がする。

(どこまでも室長について行こう‥)

サトコ

「室長‥」

難波

‥ん?

サトコ

「室長‥大好きです」

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室長は小さく笑うと、私の言葉に応えるように、優しいキスを落とす。

一番笑って欲しい人が、すぐ近くで笑ってくれている幸せ。

次々と湧き上がる喜びに身を任せながら、私は室長と初めての夜を迎えた。

Happy  End

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