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難波 恋の行方編 シークレット3

Episode 10.5

「大人のデート、大人のキス」

【街】

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室長の隣を歩きながら、ひざ元で揺れるスカートを何度も見つめる。

(最大限オシャレしてみたけど、これで大丈夫だったかな‥)

(夜景がきれいなレストランだって言ってたから、きっとおしゃれな所だよね)

難波

‥どうした?

サトコ

「あ、いえ‥」

微笑み返しながら、冷えた手に息を吹きかけた。

(緊張と寒さで手がカチンコチン‥)

難波

‥‥

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室長はじっと私の手を見つめた後、無造作にその手を繋ぐと自分のコートのポケットに入れる。

(うわ‥!これは究極の恋人繋ぎ!?)

【レストラン】

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店員

「いらっしゃいませ」

室長が開けてくれたドアを入ると、中は別世界のようだった。

サトコ

「わあ、ステキなお店‥!」

難波

だろ?

室長は軽く微笑むと、エスコートするように腕を差し出す。

難波

ほら

サトコ

「あ、ありがとうございます」

難波

いちいち礼なんか言うな。当然だろ

恋人同士なんだから

サトコ

「!」

夢心地で窓際の席に進むと、室長は絶妙なタイミングで椅子を引いてくれた。

(こんな風にレディ扱いしてくれるなんて‥!)

感激しながら席に着いた私の髪に、室長がそっと触れる。

難波

‥いいね、今日の髪型

サトコ

「そ、そうですか?」

難波

かわいいと思うよ

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サトコ

「ふふっ‥」

(やった、褒められちゃった。頑張ってカーラーで巻いた甲斐があった‥!)

(結構時間かかったし、肩も痛くなったけど‥)

難波

いつもとあまりに違うから、調子狂うな

サトコ

「わ、私も‥」

キラキラと輝く夜景に包まれ、私たちはいつまでも見つめ合う‥‥

【外】

サトコ

「ごちそうさまでした。とっても、とってもおいしかったです!」

難波

気に入ってくれたならよかったよ

この後はどうする?バーでも行く?

サトコ

「バー‥ですか‥」

(それもきっとステキなんだろうけど‥ちょっとステキすぎるというか‥なんというか‥)

サトコ

「気楽にいつもの居酒屋がいいな~なんて」

「今のお店も、ずっと緊張しっぱなしだったし」

難波

‥‥

(いけない‥また子どもだと思われちゃったかな)

サトコ

「も、もちろん、おいしかったしステキだったし嬉しかったんですよ?」

難波

ぷっ‥

サトコ

「し、室長?」

難波

実は‥俺もだ

サトコ

「へ‥?」

難波

頑張って調べてみたけど、緊張で肩凝っちまった

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サトコ

「本当に?」

難波

一応、せっかくのデートだと思ってよ~

(そっか‥室長、私とのデートのために結構張り切ってくれてたんだ!)

難波

なんだ、呆れてんのか?

サトコ

「まさか‥むしろ、嬉しいなと思って‥」

難波

お前、かわいいな

室長は大きな手でそっと私の頭を撫でる。

難波

どうせなら、ウチで一杯やるか

サトコ

「え‥」

(室長の家でってことは‥一杯のその後は‥?)

難波

いいだろ?

室長の顔が近づいてきて、私は思わず目を瞑る‥‥

【寮 自室】

サトコ

「ダメなんて、そんなこと言えるわけないじゃないですか!」

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室長を抱きしめようと伸ばした手が宙を切った。

(あれ?)

ハッとなって目覚めると、そこは寮の私の部屋。

サトコ

「夢‥?ていうか、時間っ!」

始業時間まであと30分。

慌ててベッドから飛び出すと、教場へと走った。

【学校 廊下】

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結局その日は室長と一度も会わないままに訓練が終わった。

今日何度目かのメッセージを確認するが、やはり室長からの連絡はない。

(告白されたとはいえ、あれからあんまり会えてないよなあ‥)

(あんまりマメなタイプじゃなさそうだから、こっちから連絡したいけど)

(あんまりしつこくして重いと思われても嫌だし‥)

サトコ

「あ‥!」

向かいから歩いてくる室長の姿を認め、心が浮きだった。

サトコ

「室長、お疲れ様です!」

難波

おお、お疲れ~

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(あれ?それだけ?)

室長はあまり私の存在を気に留める様子もなく、そのまま歩いて行ってしまう。

(せっかく会ったのに‥誰もいないんだから、せめてもう一言二言くらい‥)

(でも校内でうっかり接触して、2人の関係を詮索されたら大変とか思ってるのかもしれないよね)

(確かにそうなったら、どちらかが学校を出て行かなきゃいけなくなったりしそうだけど‥)

そこまで深刻に考えてから、ふと思った。

(2人の関係って、そもそも‥?)

難波

おじさん重いけど‥平気?

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もう、ただ部下だと思わなくてもいいか?

(あれって、告白なのは間違いないと思うけど‥)

サトコ

「付き合ってくれとか、言われてないかも‥?」

(これってもしかして、まだ付き合ってないってことなの‥?)

(いやいや、まさか‥ね‥)

【教官室】

その夜。

教官室に射撃場のカギを返しに行くと、なんと室長がいた。

サトコ

「わっ、あっ‥室長‥」

難波

おお、お前か~

何だよ、そんな化け物でも見たみたいな顔して

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サトコ

「いえ。ただ、誰もいないと思っていたので、つい‥」

難波

‥挙動不審だな‥‥

いつの間にか傍らに来ていた室長が、怪訝そうに私の顔を覗き込んだ。

と同時に、今朝の夢が蘇り、一瞬で顔が赤くなる。

難波

どうした?熱でもあるんじゃないか?

サトコ

「な、ないです。大丈夫です!」

室長の大きな手で額に触れられ、久しぶりの感触に胸がキュンとなった。

(思い出しちゃうな‥あの夜のこと‥)

(とかいって、あの夜も夢だったなんてことは‥)

思わず、じっと室長を見る。

難波

(それはさすがに、ないか‥)

難波

お前、本当に大丈夫か?

サトコ

「え、何でですか?」

難波

深刻そうな顔したと思ったら、急にニヤけたり‥

サトコ

「そ、そんなことしてました?」

(わ~、私、いちいち全部考えてることが顔に出てるっぽい!)

再び顔が赤くなったのを感じて、目を伏せた。

難波

ったく、変なヤツだな

サトコ

「‥‥」

室長が微笑んだのが分かって、恥らいながら目を上げた。

笑みを浮かべた室長の視線にぶつかり、そのまま息をするのも忘れたように見つめ合う。

難波

‥‥

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サトコ

「!?」

不意に室長のキスが唇に落ちてきた。

(キス‥してくれた‥)

胸の中で渦巻いていた不安な気持ちが、一気にどこかに飛んでいく。

難波

早く帰って、いい子で寝ろよ

サトコ

「は、はい」

難波

じゃあ、おやすみ

室長は私の両肩に手を置き、クルッとドアの方に向き直らせる。

サトコ

「お、おやすみなさい!」

嬉しさと恥ずかしさでいっぱいになりながら、廊下へと駆け出す。

難波

こけんなよ~その辺、目地がいっぱいあんぞ

サトコ

「はい!」

(こんなんじゃ、寮に戻っても興奮してなかなか寝付けないよ‥!)

(でもまた、いい夢見られそう!)

室長に触れられて少し熱をもった唇を感じながら、甘い夢の続きに胸が躍った。

Secret End

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