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石神 続編エピ 1話

【雑貨屋】

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サトコ

「わぁ!この置物、教官たちに似ていますね!」

石神

そうか‥?

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サトコ

「はい!」

石神さんがお仕事に復帰してから、一か月。

私たちは山のようにあった仕事を終わらせて、久しぶりにデートに出かけていた。

サトコ

「怒っている顔が加賀教官で、ニコニコしているのが颯馬教官」

「いじわるそうな顔をしてるのが東雲教官で、どこか無表情なのが後藤教官」

「それで、この優しい表情をしているのが‥」

???

「このストラップ、すごく可愛い~!」

甘ったるい声音が聞こえ、振り返る。

女性

「ねぇ、たっくん。お揃いにしようよぉ~」

男性

「もちろん。オレも言おうと思ってたんだ」

女性

「ホントにっ!?嬉しい、ありがとう!」

(あんなに堂々と人前で抱きつけるなんて、若いな‥大学生くらいかな?)

大学生カップルは、抱き合うようにしながらストラップを選んでいた。

(そういえば、今まで石神さんとお揃いってなかったかも)

(たまにはお揃いのモノとか欲しいな‥)

石神

‥くだらないな

サトコ

「えっ?」

石神

お揃いにして何が嬉しいんだ‥

まったく、若い奴らの気持ちが分からないな

サトコ

「そ、そうですよね!私もそう思います」

(危なかった‥石神さんは、お揃いとか苦手そうだもんね)

石神

そもそも、恋をするなとは言わないが‥学生の本分を忘れてはいけない

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石神さんの眼鏡が、キラーンと光る。

石神

恋にうつつを抜かしている暇があるなら、学業に専念すべきだ

サトコ

「‥‥」

(石神さんらしいな‥私もお揃いが欲しいとか言ってる場合じゃないよね)

石神

‥サトコ?

サトコ

「あっ、いえ‥なんでもありません」

(石神さんに呆れられないように、私ももっと頑張ろう!)

【科捜研】

数日後。

サトコ

「失礼します」

莉子

「あら、サトコちゃんじゃない!」

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サトコ

「莉子さん、こんにちは。石神教官に頼まれて、書類を届けに来ました」

莉子

「ありがとう。来てすぐに帰るのもなんだし‥よかったら、お茶でも飲んで行って」

サトコ

「でも‥いいんですか?」

莉子

「どうせ、今日は暇だから大丈夫よ。それに久しぶりにサトコちゃんと話したかったし」

サトコ

「それじゃあ、お言葉に甘えて‥」

莉子さんに促され、ソファに座る。

莉子

「‥秀っち、大変だったみたいね。入院するほどの怪我をするなんて」

サトコ

「はい‥」

莉子

「サイボーグって言われるほどの仕事人間だものね」

「たまには入院でもして、強制的に休ませなきゃダメよ」

サトコ

「ふふっ、入院中も早く退院したいって言ってましたよ」

莉子

「秀っちらしいわね」

莉子さんは呆れながら言うと、ふわりと優しい香りがする紅茶をテーブルに置いた。

莉子

「はい、どうぞ」

「それと‥これも良かったら食べて」

サトコ

「わぁ、美味しそうなプリンですね!ありがとうございます」

プリンを口に運ぶと、濃厚な甘みが広がる。

サトコ

「‥ん、美味しい!」

莉子

「でしょう?秀っちお墨付きのプリンよ。このプリン、学生時代からよく食べていたわ」

サトコ

「そうなんですね」

(いいこと聞いたな。覚えておかなきゃ!)

莉子

「ふふ‥秀っちったら、あまりにも美味しそうに食べるんだもの」

「なんだか、懐かしいわ」

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(学生時代の石神さん、か‥)

(莉子さんは、私が知らない石神さんをたくさん知ってるんだよね)

莉子

「‥気になる?」

サトコ

「へ?」

莉子

「秀っちの過去の話よ」

<選択してください>

A: 教えてください!

(これは‥石神さんのことを知るチャンス!)

サトコ

「教えてください!」

莉子

「そんなに前のめりになるなんて‥」

「サトコちゃんは、秀っちに興味津々ね」

サトコ

「い、いえ!決して、そういうわけでは‥」

莉子

「いいのよ。彼氏の過去を気にするのは当然でしょ?」

莉子さんはウインクをして、楽しそうな笑みを浮かべた。

B: 勝手に聞いてもいいのかな‥

莉子

「ふふふ‥本当は知りたいのに、良心との間で迷ってるってトコかしら?」

サトコ

「えっ!?」

(考えてることを当てられるなんて‥)

莉子

「サトコちゃんのことならな~んでも分かるわよ?」

「恋する乙女のことですもん」

サトコ

「あ、改めて言われると照れます‥」

莉子

「ふふっ、本当にサトコちゃんは可愛いわね」

C: だ、大丈夫です!

サトコ

「うっ‥」

(本当は‥すごく知りたい!)

(学生時代の石神さんのことを知るチャンスなんて、滅多にないだろうし‥)

莉子

「今なら、秀っちのあ~んなことや、こ~んなエピソードまで‥」

サトコ

「し、知りたいです!教えてください!」

莉子

「ふふっ、サトコちゃんったら相変わらず可愛いんだから」

莉子

「秀っちはね、優等生で天才って言われていたけど‥毎日、図書館で勉強をしていたのよ」

「私も何度か、苦手科目を教えてもらったことがあったわ」

「真面目で仏頂面で‥近寄りがたい雰囲気があったけど、根が優しいのよね」

「兵ちゃんから都合よく使われていた私を、助けてくれたこともあるの」

莉子さんは目を細め、過去の記憶に想いを馳せているようだった。

莉子

「それに、秀っちと兵ちゃんって見た目はいいじゃない?」

「密かにファンだった子も多くて、バレンタインはかなりチョコを貰ってたのよ」

(そんなことがあったなんて、知らなかったな‥)

サトコ

「莉子さんはなんでも知っているんですね。すごいです!」

莉子

「これくらい序の口よ?」

「他にも色々とエピソードはあるけど‥ここから先は、タダで教えられないわ」

「‥サトコちゃん」

莉子さんはスッと顔を出し、口元に笑みを浮かべる。

莉子

「最近はどうなの?秀っちと‥」

サトコ

「えっ!?」

莉子

「2人は‥どこまで進んでるの?」

サトコ

「えっ‥!?ど、どこまでってそんな‥!」

莉子

「ふふ、女同士なんだからそんなにためらわなくたっていいじゃない」

「前にも言ったけど、私はサトコちゃんを応援してるんだから」

(いくら莉子さんでも、石神さんの同期なわけだし‥)

莉子

「大丈夫よ。私、口は堅いから」

「何かあったら、相談に乗ってあげることもできるわよ?」

(そ、そういう問題では‥!)

サトコ

「と、とにかく!私と石神教官のことは置いといて‥」

「それよりも、莉子さんの恋愛について聞きたいです」

莉子

「私の?」

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サトコ

「は、はい!莉子さんはとても綺麗でモテるだろうし‥」

「今までどんな恋愛をしてきたのか興味あります」

莉子

「あら、サトコちゃんから興味を持ってもらえるなんて嬉しいわ」

(良かった‥なんとか、話を誤魔化せたみたい‥)

???

「‥失礼する」

サトコ

「っ!?」

ホッとしたのもつかの間、ドアをノックして研究室にやってきたのは‥‥

莉子

「あら、秀っちじゃない。どうしたの?」

「もしかして‥サトコちゃんを迎えに来た‥とか?」

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石神

‥‥‥

意味ありげに微笑む莉子さんに、石神さんは僅かに視線を逸らす。

石神

‥補佐官の仕事を確認するのは、当たり前のことだ

(私のこと、気にかけてくれたんだ‥)

サトコ

「‥ありがとうございます」

石神さんの優しさを感じ、笑みがこぼれた。

石神

氷川‥帰るぞ

サトコ

「はい!」

ソファから立ち上がると、莉子さんに振り返る。

サトコ

「莉子さん。お茶、ご馳走様で‥‥」

莉子

「丁度よかったわ!ねぇ、これから3人で飲みに行かない?」

石神

‥‥

莉子

「いいじゃない久しぶりで。ね、サトコちゃん?」

(そういえば、付き合いたてのころ莉子さんと一緒に飲んだな‥)

サトコ

「いいですね!ぜひ、ご一緒させてください」

莉子

「決定ね。ちょっと待ってて」

莉子さんは軽い足取りで、支度を始めた。

(3人で飲みだなんて、楽しみだな)

【バー】

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莉子

「秀っちと兵ちゃんは、学生時代から全っ然ウマが合わなかったのよね」

ほろ酔いなのか、莉子さんは薄らと頬を染めていた。

莉子

「そもそも、秀っちは情報派で兵ちゃんは行動派じゃない?」

「2人が同じチームで捜査実習をしたことがあったんだけど」

「方針の違いで殴り合いのケンカをしてたこともあったわ」

サトコ

「えぇっ!?殴り合いですか?」

石神

おい、その話は‥

莉子

「これくらい、いいじゃない。サトコちゃんも気になるわよね?」

サトコ

「はい!」

石神

はぁ‥

石神さんはため息をつきながら、グラスを傾ける。

莉子

「それで、2人が殴り合いをしたんだけど‥最終的には、助け合って事件を解決したのよね」

「あれだけのケンカしておいてよ?周りの人たちは、そりゃもう驚いていたわ」

「結局、なんだかんだいって2人はいいライバルってことね」

サトコ

「ふふっ、なんだか分かる気がします」

莉子

「そう?」

サトコ

「はい。教官たちは犬猿の中って感じですが‥根本的な所は一緒だと思うんです」

「どんな事件でも信念を曲げずに真っ直ぐ向き合って‥そんな教官たちのこと、尊敬してます」

莉子

「ですって、秀っち」

石神

‥あんな奴と一緒にするな

莉子

「嬉しいくせに、そんな言い方しちゃって‥本当、素直じゃないんだから」

「そういうトコ、直した方がいいわよ?じゃないと、可愛い彼女に飽きられちゃうから」

石神

お前には関係ない

莉子

「はいはい」

莉子さんは私に向き直り、わざとらしく肩をすくめてみせる。

そんなやり取りだけで、2人の中の良さがうかがえた。

(私ももっと、石神さんのことを知りたいな‥)

莉子

「ねぇ、秀っち‥」

石神

‥‥

莉子

「あら?」

莉子さんはグラスを置くと、石神さんの顔をジッと見る。

莉子

「もしかして‥疲れてる?」

石神

別に‥

莉子

「ほら、ね?いつもなら、そこで嫌味の一つでも言うじゃない」

「さっきから、返しにキレがないわよ?」

石神

‥‥

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石神さんはため息をつきながら、眼鏡の縁をクイッと上げた。

石神

‥大丈夫だと言っている

莉子

「絶っ対に嘘でしょ。すぐそうやって、無理するんだから」

「っていうか、疲れてるなら疲れてるってちゃんと言いなさい」

石神

また小言が始まったな

莉子

「その小言を言わせているのは、秀っちでしょう?本当、昔っから変わらないんだから」

「明日も講義があるんでしょう?今日はもうお開きにしましょうか」

【外】

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莉子

「付き合わせちゃってごめんなさいね。サトコちゃん、秀っちのことよろしくね」

サトコ

「はい!任せてください」

莉子

「ふふっ、頼もしい彼女がいてよかったわね。それじゃあ、またね」

莉子さんと別れると、私たちは帰路につく。

私たちは特に会話をするでもなく、黙々と歩いていた。

(石神さん、ここ数日は特に忙しそうだったもんね‥)

(一番近くにいるつもりなのに、疲れていたことに気づけないなんて‥)

(私にも、何か石神さんに出来ることってないのかな)

石神

‥心配するな

サトコ

「っ‥」

優しい声音が降ってきたかと思うと、手が繋がれる。

<選択してください>

A: 石神を見つめる

サトコ

「石神さん‥」

名前を呼びながら、石神さんを見つめる。

石神

お前は‥こうして一緒にいてくれるだけで、充分だ

サトコ

「‥一緒にいるだけだなんて、嫌です」

「私は石神さんの隣に立って‥支えたいって思っています」

石神

そうだな‥お前はそういう奴だったな

石神さんは、温かい眼差しで私に返した。

B: 手を離す

(もし、誰かに見られたら‥!)

サトコ

「あっ‥」

咄嗟に手を離そうとすると、繋がれた手に力が込められる。

サトコ

「石神、さん‥?」

石神

今はお前とこうしていたい。‥嫌か?

サトコ

「そんな言い方、ズルいです‥」

フッと笑みを浮かべる石神さんに、頬が熱くなるのを感じた。

C: 石神に寄り添う

手のひらから、石神さんの体温が伝わってくる。

もっと彼の温もりを感じたくて‥私は石神さんに寄り添った。

石神

サトコ‥

(外でこんなことしたら、ダメなんだろうけど‥)

サトコ

「‥少しだけ、いいですか?」

石神

ああ‥

繋いだ手が解かれ、腰に腕を回される。

お互いの息遣いが聞こえそうな距離に、トクンと胸が高鳴った。

【教官室】

翌日。

教官室に行くと石神さんの姿はなく、代わりに黒澤さんがいた。

黒澤

あっ、サトコさん。こんにちは!

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サトコ

「こんにちは。あの、石神教官は‥?」

颯馬

石神さんなら、任務に出ていますよ

サトコ

「そうですか‥」

(それなら、石神さんが戻ってくるまでに書類の整理でもしていようかな)

個別教官室に向かおうとした時、黒澤さんが「あっ!」と声を上げた。

黒澤

サトコさん、昨日の夜は莉子さんと石神さんと3人で飲みに行ったんですよね?

サトコ

「えっ?」

(な、なんでそれを知ってるの!?誰にも話していないのに‥)

(恐るべし、公安の情報網!)

東雲

あの2人ってさ‥なーんか怪しいよね

サトコ

「怪しいって‥」

黒澤

オレも聞いたことがあります!後藤さんも知ってますよね?

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後藤

‥なんのことだ?

後藤教官はこちらの様子をうかがいながら、言葉を濁す。

黒澤

とぼけないでくださいよ~

ここまで言って分からないなんて言わせませんよ!

颯馬

確かに、いくら同期とはいえ、お2人は仲が良いですからね

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(え?えっ‥?)

(きょ、教官たちが言ってることって、もしかしなくても‥)

加賀

‥そういや

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サトコ

「!?」

それまで沈黙を守り続けていた加賀教官が、ニヤリと笑みを浮かべた‥

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