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サバゲー 後藤 2話

サトコ

「っ‥‥」

傾斜から落ち、衝撃に備えてギュッと目を瞑る。

(あ、あれ‥落ちたはずなのに、痛くない‥?)

後藤

くっ‥

サトコ

「あ‥ご、後藤さん!?」

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瞼を開けると、目の前には後藤さんの顔があって‥

(後藤さんが、私を抱きかかえて守ってくれたんだ!)

サトコ

「大丈夫ですか!?」

後藤

ああ‥傾斜も低かったからな。これくらい、大したことない

後藤さんは身体を起こし、服についた土を払う。

サトコ

「でも‥」

後藤

‥言っただろ?アンタは俺が守るって

アンタに怪我がなくて、よかった

サトコ

「っ‥」

優しい言葉が胸に広がり、じんわりと目元に熱いものが込み上げる。

(しっかり後藤さんのアシストをしなくちゃいけないのに‥)

(私、足を引っ張ってばかりだ‥)

後藤

ほら、立てるか?

サトコ

「はい‥」

後藤さんの手を借りて、立ち上がる。

後藤

低いとはいえ、この傾斜を登るのは時間がかかるだろう

別の道を探して‥

カチッ

サトコ

「えっ、カチッて‥」

嫌な予感に、辺りを見回すと‥

サトコ

「きゃあああっ!!」

大量のカエルにトカゲ、それにヘビが頭上から降ってきた。

後藤

サトコ、落ち着け

サトコ

「お、落ち着けって言われても‥!」

「‥って、あれ?」

下に落ちたカエルやトカゲたちは、ピクリとも動かない。

サトコ

「これ‥」

後藤

おもちゃだろう。こんなイタズラじみたトラップを仕掛けるのは、黒澤以外考えられないな

後藤さんはおもちゃのトカゲを拾うと、呆れたようにため息をつく。

後藤

さっきアンタの足元で何か弾けたのも、黒澤の仕業だろう

この先にも、トラップが仕掛けられているかもしれない‥注意していくぞ

サトコ

「はい!」

(あれからだいぶ進んだけど‥)

道なりに進むも、次第に険しい道のりになる。

(ほかの訓練生たちとも、全然遭遇しないし‥)

息もかなり上がってきて、不安が顔を覗かせる。

サトコ

「きゃっ」

足を滑らせ、とっさに後藤さんが支えてくれる。

後藤

大丈夫か?

サトコ

「は、はい‥ありがとうございます」

後藤

この辺りは道がぬかるんでいるからな

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サトコ

「あっ‥」

後藤さんは銃を持ち直し、空いた方の手で私の手を握ってくれる。

後藤

‥ん?水の音が聞こえるな

もう少し歩けるか?

サトコ

「はい‥」

小さく頷くと、繋がれた手に力が込められる。

後藤

行くぞ

【河原】

後藤

‥誰もいないな

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河原にたどり着き、辺りを警戒しながら誰もいないことを確認する。

後藤

少し休んでいくか

サトコ

「そうですね」

近くにある岩の上に座り、一息つく。

(疲れた‥)

ホッと息をつきながら、後藤さんをチラリと見る。

後藤

‥‥‥

(さすが後藤さん、息ひとつ乱れてないな)

(いくら体力差があるとはいえ、私ももっともっと頑張らないと‥)

そう思うものの、失敗ばかりが脳裏を過る。

(落ち込んでる暇があるなら、自分にできることを考えなきゃいけないのに)

ぶんぶんと頭を振り、雑念を追い払う。

後藤

サトコ

後藤さんは川の水でジャージの袖を濡らすと、こちらへやってくる。

後藤

ちょっと冷たいけど、我慢してくれ

サトコ

「っ‥」

頬にひやりとした感触がして、思わず目を瞑る。

(あれだけ動いたし、汚れてたのかな)

(冷たくて気持ちいいな‥)

頬を撫でるように拭かれ、心地よさを感じていると‥

サトコ

「!」

唇に柔らかくて温かい感触がした。

(い、今のって、もしかしてキス‥!)

後藤

‥よし、取れたな

(あれ‥?)

パッと目を開けるも、平然としている後藤さんに首を傾げる。

(勘違いだったのかな‥?)

(気になるけど、聞くのもヘンだし‥気にしなくてもいいかな)

後藤

フッ‥

サトコ

「後藤さん‥?」

後藤

いや‥コロコロ表情が変わるなと思ったんだ

‥やっといつものサトコに戻ったな

サトコ

「え‥?」

後藤

アンタ、ずっと気を張ってたり、元気がなかっただろ?

サトコ

「!」

(後藤さん、気づいてたんだ‥)

後藤

アンタの長所は、いつでも前向きに頑張っているところだろう?

‥大丈夫だ。アンタはひとりじゃない

アンタの隣には、俺がいるんだからな

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サトコ

「後藤さん‥」

私は頬にあてがわれた手に、そっと触れる。

サトコ

「ありがとうございます」

後藤

ああ

後藤さんはフッと笑みを浮かべると、私の耳元に顔を寄せる。

後藤

‥続きは、無事にゴール出来たらだな

サトコ

「続きって‥」

<選択してください>

A: 今じゃダメですか?

サトコ

「今じゃダメですか?」

後藤

それだとご褒美にならないだろう?

サトコ

「っ‥」

ニヤリと笑む後藤さんに、ドキッと心臓が高鳴る。

後藤

顔、赤くなってるぞ

サトコ

「こ、これはその‥」

隠すように、頬に手を添える。

(うぅ‥後藤さん、いじわるだ‥)

後藤

サトコ

サトコ

「あっ‥」

手を掴まれ、後藤さんと視線が絡み合う。

B: 続きって、なんですか?

サトコ

「続きって、なんですか?」

後藤

アンタな‥

まあ、そういう鈍感なところもアンタらしい、か‥

後藤さんは苦笑しながら、私の唇を優しくなぞる。

後藤

ゴールできた時を、楽しみにしてろよ?

サトコ

「っ‥」

優しく微笑まれ、胸の奥が甘く疼く。

C: さっきのは、やっぱり‥!

(さっきのは、やっぱり‥!)

唇の感触を思い出し、顔が赤くなるのが自分でもわかった。

後藤

フッ‥

サトコ

「な、なんで笑うんですか」

後藤

いや‥やっぱり、アンタは見ていて飽きないなと思ったんだ

コロコロ表情が変わって、ずっと見ていたくなる

後藤さんの指が、私の頬を優しくなでる。

後藤

‥やっぱり、アンタと一緒にいると落ち着くな

サトコ

「後藤さん‥」

後藤

‥‥‥

見つめ合い、私たちの間に優しい空気が流れ始めると‥

ガサガサッ

サトコ・後藤

「!」

突然の物音に、私たちは咄嗟に銃を掴む。

(石神教官たちはリタイアしたし、どのチームだろう‥?)

先ほどの白熱したバトルを思い出し、鼓動が逸る。

後藤

‥サトコ

サトコ

「はい!」

私たちは背中合わせになり、すぐに対応出来るように銃を構える。

ガサガサ‥ガサッ!

サトコ

「後藤さん!あっちから‥‥」

???

「プギー!」

サトコ

「へ‥?」

後藤

あれは‥ウリボーか?

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ウリボー

「プギー」

ウリボーは川べりに行くと、水を飲み始める。

サトコ

「なんだ‥ビックリした‥」

後藤

ああ

ウリボー

「プギー?」

ウリボーは私たちに気づくと、じーっとこちらを見て首を傾げた。

(うぅ‥可愛い‥!!)

後藤

‥‥‥

後藤さんは心なしかソワソワしながら、ウリボーに近づく。

後藤

お前、こんなところにひとりでどうした?

ウリボー

「プギッ」

(頭、撫でてる。ウリボーも気持ちよさそうだし‥)

(ふふっ、ブサ猫も好きだし、後藤さんこういう癒し系が好きなんだろうな)

ウリボー

「プギー‥」

ウリボーは後藤さんから離れると、辺りをキョロキョロと見回して悲しげな鳴き声を上げ始めた。

サトコ

「もしかして、迷子でしょうか?」

後藤

みたいだな」

ウリボー

「プギー‥」

後藤

放っておくわけにはいかない、か‥

仕方ない。親元に連れて行くか

サトコ

「ウリボーの親って、猪ですよね?危険じゃないですか‥?」

後藤

まあ、なんとかなるだろう

後藤さんはウリボーに近づき、そっと抱き上げる。

後藤

俺たちが親の所に連れてってやるからな

ウリボー

「プギー!」

嬉しそうに声を上げるウリボーに、後藤さんは目を細める。

(後藤さん、優しいな‥)

(よーし!私も頑張ってこの子の親を探さなきゃ!)

そして‥

気合を入れて探し始めたのはいいものの。

サトコ

「見つかりませんね」

後藤

ああ

サトコ

「ねぇ、キミはどこから来たの?」

ウリボー

「プギー?」

サトコ

「って、分からないよね‥」

(もう少し、奥の方かな‥)

さらに先に進もうとすると‥

後藤

待て、罠がある

後藤さんに制され、ピタリと足を止める。

サトコ

「罠、ですか?」

後藤

ああ。この場所だけ、土の色がおかしいだろう?

サトコ

「本当だ‥」

後藤

きっと、黒澤が仕掛けた落とし穴だろう。回り道して行くぞ

サトコ

「はい!」

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後藤

くそっ、こんな簡単なトラップに引っかかるなんて‥

ウリボー

「プギーッ!」

(うぅ‥狭い‥)

私たちは網ネットのトラップに引っかかり、宙吊りになっていた。

(まきびしのようなものが撒かれていたり、ベトベトしたものが仕掛けられてたり‥)

あれから先に進んでいくと、いくつものトラップが仕掛けられていた。

(ビックリ箱のトラップに驚いたウリボーが、このトラップに引っかかっちゃったんだよね‥)

後藤

ったく‥

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後藤さんは舌打ちすると、サバイバルナイフを取り出して網を切る。

サトコ

「きゃっ!いたた」

後藤

大丈夫か?

後藤さんに手を差し伸べられ、起き上がる。

サトコ

「はい‥ありがとうございます」

(ウリボーの親は見つからないうえに、この先もいろいろなトラップが待ち受けてるのかな‥)

不安がよぎり、後藤さんの手をギュッと握る。

後藤

不安なのか?

サトコ

「い、いえ、そんなことは‥」

後藤

大丈夫って顔、してないぞ

サトコ

「すみませ‥」

後藤

謝らなくていい

後藤さんは私を安心させるように、大きな手で私の頭を撫でる。

後藤

大丈夫だ、アンタには俺がついてる。安心しろ

サトコ

「はい‥」

後藤さんの言葉に、不安な気持ちが霧散していく。

(‥あれ?)

(今、何か光ったような‥それに、シャッターを切るような音も‥)

後藤

どうした?

サトコ

「いえ‥」

(後藤さん、気づいていないみたいだし‥気のせいかな?)

ウリボー

「プギッ、プギー!」

突然鳴き声を上げたかと思うと、ウリボーは身をよじって暴れだす。

サトコ

「ど、どうしたの?」

ウリボー

「プギーッ!」

サトコ

「あっ‥!」

ウリボーは後藤さんの腕の中から抜け出すと、草むらに向かって一直線に走りだし‥

「プギーッ」

ウリボー

「プギッ!」

ウリボーは、草むらから出てきた猪にすり寄った。

サトコ

「親でしょうか‥?」

後藤

みたいだな

サトコ

「ふふ、無事に見つかってよかったです」

後藤

ああ

微笑む後藤さんに、笑みを返していると‥

ウリボー

「プギー!」

サトコ

「わわっ、何‥?」

「プギッ!」

ウリボーは私たちの後ろを交互に押し、猪がついて来いと言わんばかりに背中を向ける。

サトコ

「ご、後藤さん。どうしましょう‥?」

後藤

訓練中だが‥

ウリボー

「プギッ、プギー!」

「プギッ」

後藤

‥仕方ない、ついていくか

ウリボー

「プギー!」

そして、意気揚々と歩くウリボーたちの後ろをついて行った先には‥

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サトコ

「わぁ、足湯だ‥!」

(こんなところに足湯があるなんて‥)

後藤

‥まさか、礼のつもりか?

ウリボー

「プギ!」

「プギーッ」

ウリボーたちはお礼を言うように私たちの足元にすり寄ると、そのまま森の奥へ駆けて行った。

後藤

律儀な奴らだな

サトコ

「ふふ、そうですね」

(気持ちよさそうだけど‥)

サトコ

「まだ訓練中、ですもんね」

後藤

ああ、ゴールもしてないのに寛ぐわけにはいかないからな

また後で‥

サトコ

「あっ、後藤さん!」

足湯近くの木に『ゴール』と書かれた張り紙を見つけ、思わず声を上げる。

後藤

ゴールって、ここがか?

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『お疲れ様です!アナタの癒し、黒澤透です☆』

『ここがゴールになりますので、ゆっくり疲れを取ってくださいね』

張り紙に書かれている言葉に、目を丸くする。

サトコ

「これって、もしかしなくても‥私たちが優勝、ってことですか?」

後藤

みたいだな

私たちは顔を見合わせ、フッと笑みを浮かべる。

後藤

せっかくだから、このまま足湯に浸かってくか

サトコ

「そうですね‥」

(‥あれ?張り紙の後ろに何かついてる‥?)

張り紙を剥がすと、裏面に茶色い封筒がくっついていた。

(なんだろう‥?)

不思議に思いながら、封筒を開けると‥

(これは‥!)

後藤さんが銃を撃つ姿や、汗を拭っている姿、それに私と後藤さんが微笑み合う写真が入っていた。

(こ、これは今回の訓練中の‥!?いつの間にこんな写真を‥!)

(そういえば、途中でシャッター音が聞こえたような‥)

こんなことを思い返しながら、封筒の裏を見ると‥

『これも今回のお宝です☆』

(黒澤さん‥こんな素敵なものを、ありがとうございます!)

後藤

何をニヤついてるんだ?

サトコ

「‥ハッ!い、いえ、これは‥」

後藤

‥‥‥

後藤さんは私の手元を覗き込むと、眉にシワを寄せる。

後藤

アイツ‥

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(後藤さん、すごく嫌そう‥)

(でも‥)

サトコ

「あの‥返さなきゃダメ、ですか?」

後藤

‥はぁ

後藤さんは苦笑しながら、深いため息をつく。

後藤

今回だけだからな

‥ほら、早く来い

サトコ

「っ、はい!」

後藤さんに促され、私は彼の隣に座る。

足をお湯に浸けると、じんわりと疲れが取れて行くように感じた。

サトコ

「はぁ、気持ちいいですね‥」

後藤

そうだな

私の手に、後藤さんの手が重ねられる。

後藤

今日はよく頑張ったな

サトコ

「ふふ、後藤さんのおかげですよ」

「くじけそうになることもあったけど‥後藤さんが一緒だったから、最後まで頑張れました」

後藤

そうか‥

後藤さんは柔らかい笑みを浮かべると、ゆっくりと顔を近づけ‥

サトコ

「ん‥」

優しく唇が塞がれた。

<選択してください>

A: 自分からキスをする

触れるだけのキスは、すぐに終わりを見せる。

(誰か来るかもしれないけど‥もう一度、キスしたいな‥)

サトコ

「後藤さん‥」

後藤

思い切ってキスをすると、後藤さんは目を見張った。

後藤

サトコ‥

サトコ

「っ‥」

自分からしたことなのに‥優しい声音で名前を呼ばれ、ハッと我に返る。

サトコ

「え、えっと、今のは、ですね‥」

恥ずかしさのあまり、後藤さんから顔をそむける。

後藤

‥‥‥

後藤さんは、そんな私の肩を抱き寄せた。

B: こ、こんなところでダメです!

サトコ

「こ、こんなところでダメです!」

後藤

大丈夫だ

サトコ

「あっ‥」

後藤さんは微笑み、私の腰に腕を回す。

後藤

今は誰も来ない

優勝したのは、俺たちだからな

サトコ

「ん‥」

後藤さんはもう一度唇にキスを落とすと、コツンと額をくっつける。

後藤

勝ったペアの、特権だろう?

C: 後藤を見つめる

離れていく唇が名残惜しくて‥後藤さんをじっと見つめる。

後藤

そんな顔するな

サトコ

「っ‥」

後藤さんは私の背中に腕を回し、抱き寄せる。

後藤

‥我慢、できなくなる

サトコ

「ん‥」

耳元に唇があてがわれ、声が漏れてしまう。

それから後藤さんは私の反応を楽しむように、耳や首筋‥様々な箇所に唇を落とした。

サトコ

「後藤、さん‥」

私はおずおずと、後藤さんの背中に腕を回す。

後藤

頑張ったご褒美だ

サトコ

「ん‥」

再び唇が重なると、先ほどよりも深く繋がりあう。

愛情を刻まれるようなキスに、眩暈を覚えた。

(後藤さん‥)

愛しい名前を心の中で呼び、彼からの愛情に必死に応える。

綺麗な夕焼けの中、私たちは何度も甘いキスを繰り返した。

Happy  End

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