石神
「氷川サトコ、お前はパーチームだ」
サトコ
「は、はい!」
(パーチーム‥ってことは、カレと一緒だよね‥)
(よし!足を引っ張らないように、気合入れて頑張らなきゃ!)
東雲
「怠‥どこかの誰かサンは、気合入りすぎだし」
サトコ
「!」
東雲
「それだけ気合が入ってるってことは、どんなにいびられても大丈夫なんだよね?」
「オレのペア、キミにしてもらおうかな。楽しそうだし」
(東雲教官‥!あ、相変わらず意地悪‥)
颯馬
「こらこら、歩。訓練生を怯えさせるのはよくありませんよ」
神様のような笑みを浮かべて、颯馬教官が東雲教官をたしなめてくれる。
サトコ
「そ、颯馬教官‥」
颯馬
「サトコさんには、私の厳しい指導で動いてもらいますから」
(あれ‥!?なんか意地悪な笑顔!?)
(さっきの慈悲深い笑みはどこへ!?)
ふたりに挟まれていると、後ろから肩を叩かれた。
千葉
「氷川もパーチームだったんだ」
サトコ
「千葉さん!地獄に仏とはこのこと!」
千葉
「え?」
東雲
「へえ、地獄ねえ」
颯馬
「そうですか‥彼が、貴女にとっての仏、と‥」
サトコ
「あの、違うんです!そういう意味じゃなくて‥!」
千葉
「よくわからないけど、お互い頑張ろうな」
(ああ、今は千葉さんの優しさが身に染みる‥)
(千葉さんなら優しそうだし、ペアを組んだら助け合えて楽しいかも)
東雲
「安易な考えだね」
サトコ
「!?」
東雲教官の笑みに、冷や汗が背中を伝った。
(考え、読まれてる‥!?このチーム、怖い!)
石神
「では、これより、ペアを決めるクジ引きを行う」
「誰に狙われているか分からない、本当の現場だと思って訓練に挑め」
訓練生たち
「はい!」
石神教官の言葉に、その場の雰囲気が引き締まる。
でもその隣で、黒澤さんはいつもの笑みを浮かべていた。
黒澤
「くぅ~、ゾクゾクしますね!」
東雲
「別に‥」
「透の変態さには、ホントに呆れる‥」
石神
「東雲、黒澤は放っておけ。オマケみたいなものだ」
黒澤
「オマケ!?石神さん、ひどいですよ!」
石神
「そっちから順に、くじを引きに来い」
黒澤さんのことは無視して、石神さんがみんなにくじを引かせる。
私も引いてみると、紙には “★” と書いてあった。
(てっきり、番号が書いてあるんだと思ったけど‥ “★” ってなんだろう?)
千葉
「氷川、クジ引いた?何番だった?」
サトコ
「それが、番号ですらないんだけど‥ “★” だって」
千葉
「 “★” ‥?どっちにしても、俺の番号とは違うな」
(とりあえず、“★” の人を探さないと)
千葉さんから離れて訓練生に聞いて回ったけど、同じ人が誰もいない。
(もしかして、教官の誰かとか?)
黒澤さんに聞きに行こうとした時、始まりの合図である笛の音が響き渡った。
石神
「それでは、訓練始め」
その瞬間、みんなの顔つきが一斉に変化した。
銃を構えたり草むらに身を潜めたりしながら、攻撃のチャンスを窺い始める。
(ま、まずい‥出遅れた!)
慌てて物陰に隠れると、銃を乱射する音が聞こえて来た。
加賀
「おら、クズ共、待ちやがれ」
「テメェらが何人まとめてかかって来ても、俺は殺れねぇ」
(ひぃぃ‥言ってることが刑事のものとは思えない)
(加賀教官、刑事っていうかヤクザ‥)
加賀
「おい、ボサッとしてんじゃねぇ」
「木に吊るされたくなきゃ、使えるように動け」
男子訓練生A
「は、はい‥!」
(あの人が加賀教官とペアなんだ‥ご愁傷様‥)
心の中で合掌した時、向こうで銃を構える難波室長と鳴子の姿が見えた。
難波
「氷川、そんなボケッとしてたら、すぐ撃たれちまうぞ?」
鳴子
「サトコ、ごめん!あんたの首はもらう!」
サトコ
「えええ!?」
慌てて逃げ出したとき、グイッと誰かに腕を引かれて草むらに引きずり込まれた。
サトコ
「!!!」
???
「静かに」
私を助けてくれた、その人は‥
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