カテゴリー

サバゲー 石神 1話


サトコ

「石神教官!」

石神

しっ‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-050

石神さんは私の唇に人差し指を当て、辺りの様子をうかがう。

石神

‥まったく、油断してたらすぐにやられるぞ。本物の現場だと思って挑めと言っただろう

サトコ

「すみません、ペアの人が見つからなくて‥」

石神

俺だ

サトコ

「へ?」

石神

お前のペアは俺だ

サトコ

「本当ですか!?」

石神

‥‥‥

ジロリと鋭い視線を向けられ、慌てて口を塞ぐ。

(い、いけない、嬉しくてつい‥‥)

パンッ!

サトコ

「!」

放たれた弾は私の頭上を通り、後ろの木に着弾する。

石神

油断するなと言ったばかりだろう

サトコ

「は、はい‥」

改めて辺りを見回すと、至るところにBB弾や使い古された銃が落ちている。

(ここは戦場なんだ‥気合を入れ直さなくちゃ!)

石神

‥‥‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-058

石神さんは草むらに隠れたまま、銃を構える。

そして、キラリと眼鏡が光ると‥

パンッ!

男子訓練生A

「うわっ!」

石神

行くぞ!

サトコ

「はい!」

私は石神さんに続いて、草むらを飛び出す!

男子訓練生B

「出て来たぞ!狙い撃ちにしろ!」

男子訓練生C

「ああ!」

(1人、2人、3人‥いや、もっといる!?)

(くっ、人数が多い‥)

パンッ、パンッ!

男子訓練生B

「うおっ!」

石神さんの撃った弾が、次々に訓練生たちを襲う。

石神

こういう時こそ冷静に行くぞ。焦って動いては自殺行為だ

サトコ

「は、はい!」

(落ち着いて、冷静に‥)

(あっ、あそこだ‥!)

狙いを定めてトリガーに手をかけると、迷わずに引く。

パンッ!

男子訓練生C

「くっ‥」

撃った弾が命中し、包囲網に隙ができる。

石神

よしっ、一気に駆け抜けるぞ!

石神さんは銃を撃って威嚇しながら、戦場を後にする。

(撃ちながら走っているのに、速い‥!)

私は置いて行かれないように、石神さんの背中を必死に追いかけた。

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-055

サトコ

「はぁ、はぁ‥」

(なんとか振り切った、かな‥)

肩で息をしながら、汗を拭う。

石神

‥‥‥

(石神さん、汗ひとつかいてない‥あれだけの人数を相手にしたあとなのに、さすがだな)

(私も石神さんに負けてられないよね)

サトコ

「石神教官、この調子でガンガン行きましょう!」

「このまま優勝を目指して‥」

石神

待て。少し休憩を入れる

サトコ

「え?でも‥」

石神

氷川は銃の技術は悪くはない。先ほども、お前のお陰で隙ができたからな

だが、持久力に課題がある。ここは少し状況を見て、体力を温存しよう

サトコ

「!」

石神さんは袖で、私の汗を少しだけ乱暴に拭う。

(さっきは興奮からか、気づかなかったけど‥)

改めて冷静になると、予想以上に体力が消耗していることに気づく。

(石神さんはちゃんと私のことを考えてくれてるんだ)

(頼りになるな‥)

サトコ

「ありがとうございます」

石神

礼を言われるほどのことではない

(相変わらず、ぶっきらぼうな言い方だけど‥)

石神さんの優しさは、ちゃんと伝わっている。

石神

‥ん?水の音がするな

近くに川があるのか‥氷川、川まで行って休憩を‥‥

???

「いいですよね!オレも少し休憩しようかな~」

石神

サトコ

「わっ‥」

石神さんは私を背中に隠し、声のする方に銃を向ける。

黒澤

ま、待ってください!撃たないでください~!

サトコ

「黒澤さん‥」

(いつからいたの!?)

黒澤

警戒しなくて大丈夫です!ほら、銃も持っていませんし!

黒澤さんは両手を上げ、訴えてくる。

黒澤

オレはみなさんの戦いを見ることに、興味があるだけですから

石神

‥‥‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-060

石神さんが銃を下ろすと、黒澤さんはホッと胸を撫で下ろす。

黒澤

分かっていただけてよかったです

いや~、それにしても先ほどはすごかったですね!

開始早々ターゲットにされたにも関わらず、逃げ切るなんて‥

抜群のコンビネーションでした!

(開始早々って‥いつから見てたの!?)

黒澤

あっ、いつから見てたのかって顔してますね?

言ったじゃないですか。『いつでもアナタのそばに‥黒澤透でっす★』って

石神

お前は‥本当に油断も隙もないな。その能力をちょっとは仕事に活かせないのか

黒澤

それはそれ、これはこれですよ!

それでは、オレはこの辺で失礼しますね

サトコさんも頑張ってください!ベストペア賞も用意してますから

黒澤さんは私たちに背を向けると、森の中へ消えて行った。

(ベストペア賞?)

(最初の説明では、そんなの聞かなかったけど‥)

<選択してください>

 

A: それよりも、頑張ろう

(それよりも‥)

サトコ

「石神教官、頑張りましょうね!」

石神

‥そんなにベストペア賞が欲しいのか?

サトコ

「ち、違いますよ。そりゃあ、どんな賞なのか気になりますけど‥」

「とにかく、今日は日頃の訓練の成果を試すチャンスなんです」

「優勝目指して頑張りましょう!」

石神

お前は‥

石神さんはフッと笑みを浮かべ、私の頭をポンッと撫でる。

石神

向上心があるのはいいことだ。この調子でいくぞ

サトコ

「はい!」

B: ベストペア賞を目指す

(どうせ目指すなら‥)

サトコ

「ベストペア賞を目指して、頑張りましょう!」

石神

どんな賞かも分からずに目指すのか?

サトコ

「へ?石神教官、知らないんですか?」

石神

ああ。少なくとも俺は聞いてない

どうせ、黒澤辺りが考えたくだらない賞だろう

サトコ

「そ、そうなんですね‥」

(黒澤さんが考えた賞、か。怖いような、ある意味期待したいような‥)

石神

期待しない方が身のためだぞ

サトコ

「か、考えを読まないでください~!」

C: ベストペアっていうくらいだし‥

(ベストペアっていうくらいだし‥期待してもいいよね?)

私はどんな賞なのか想像‥ではなく、妄想する。

(ベストペアって言ったら、やっぱりふたりで‥)

石神

‥何ニヤけた顔をしている

サトコ

「ハッ!い、いえ、これはですね‥」

石神

どうせくだらないことでも考えていたんだろう

サトコ

「くだらなくなんかありません!石神教官と一緒に‥」

石神

俺と一緒に?

サトコ

「あっ、い、いえ‥やっぱり、なんでもありません」

石神

ったく、お前は‥

石神さんは呆れつつも、優しい眼差しを私に向ける。

石神

‥最近、あまり時間を取れてやれてないしな

サトコ

「え?」

石神

いや‥今のは気にするな

石神さんはわずかに微笑むと、視線を逸らした。

石神

一度、草むらに隠れるぞ

サトコ

「はい」

私たちは身を隠すと、あたりの様子をうかがう。

サトコ

「銃の音、聞こえませんね」

石神

ああ。他の奴らも、様子をうかがっているのかもしれないな

しばらく、ここで待機して‥

サトコ

「石神教官?」

石神

‥室長だ

サトコ

「えっ‥」

石神さんの視線の先を追うと、難波室長と鳴子がいた。

石神

‥‥‥

石神さんは音を立てずに銃を構えると、トリガーに指をかける。

パンッ!

難波

おっと

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-062

(あっ、外れた‥!)

難波

ここにいたか

室長はニヤリと笑み、私たちに視線を向ける。

室長の鋭い視線に射抜かれ、足がすくむ。

石神

‥氷川、一度後退するぞ

サトコ

「は、はい!」

パンッ、パンッ!

難波

っと、危ねぇな

石神

行くぞ!

室長に向かって数発撃ちこむと、隙を狙ってその場を後にする。


%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-064

森を抜けると、川沿いに出た。

石神

警戒を怠るなよ

サトコ

「はい!」

パンッ!

サトコ

「!」

破裂音に、私たちは背中を合わせて周囲を警戒する。

(もしかして、待ち伏せを‥)

男の声

「ヒットー!」

女の声

「やった~!当たったよ!」

サトコ

「え‥?」

聞き覚えのない声に、首を傾げる。

石神

今の声は‥

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-066

私たちは警戒したまま、声のする方へ足を向けると‥

男性A

「今のよく当てられたね。すごいじゃん!」

女性

「ふふ、ありがとう」

男性B

「ほらほら、ヒットした奴はさっさとセーフティーゾーンに行けよな」

男性A

「分かってるって」

石神

なんだ、これは‥

身を隠しながら、目の前の光景に唖然とする。

石神

訓練にしては、緊張感が足りない‥黒澤のトラップか‥?

石神さんは顎に手を当て、思考を巡らせる。

石神

とにかく、気づかれる前に一度ここを離れて‥

???

「た、助けてくれ‥!」

サトコ

「石神教官、あそこ!」

(男の人が溺れてる‥!助けなきゃ!)

石神

あっ、おい‥‥

私は石神さんの制止を聞かず、川に飛び込む。

サトコ

「掴まってください!」

男性C

「あ、ああ‥」

川べりまで移動すると、石神さんの手を借りて男性を引き上げる。

サトコ

「大丈夫ですか?」

男性C

「ああ‥君のおかげで助かったよ。ありがとう」

男性はニッコリと微笑むと、迷彩服の袖を絞る。

男性C

「あ~、このままじゃ動きにくいな。着替えてくるか」

「君も早く着替えた方がいいよ」

サトコ

「あ、はい‥」

男性C

「それじゃ、本当にありがとう。またあとで話しようね」

(え?話って‥)

疑問に思っていると、石神さんの指がそっと私の前髪に触れる。

石神

大丈夫か?

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-068

サトコ

「はい‥」

濡れた前髪を綺麗に分けてくれる石神さんに、胸が高鳴る。

サトコ

「すみません。いつも冷静に行動しろって言われているのに‥」

石神

そうだな。お前は猪突猛進なところがある

実際の現場だと、それが命取りになりかねないと、分かっているな?

サトコ

「はい‥」

石神

‥だが、ひるまず咄嗟に行動に出ることはなかなか出来るものではない

たいしたものだ

サトコ

「え‥?」

(今、褒められた‥?)

<選択してください>

A: ありがとうございます!

サトコ

「ありがとうございます!」

元気よく返事をすると、石神さんは優しい笑みを浮かべる。

石神

とはいえ、慢心するなよ?

お前は一度褒められると、調子に乗る傾向がある

サトコ

「うっ‥」

鋭い指摘に、背筋が伸びる。

サトコ

「は、はい‥」

(言葉は厳しいけど‥それだけ、私のことを見ていてくれてるってことだよね‥?)

(石神さんの期待に応えれるように、もっともっと頑張らなきゃ!)

B: にっこり微笑む

石神さんに褒められ、ひっこり微笑む。

サトコ

「ふふっ、ありがとうございます」

石神

っ‥

サトコ

「石神教官‥?」

石神

いや‥

石神さんはチラリと私を見て、薄らと頬を赤くする。

石神

‥本当、お前には敵わないな

サトコ

「え?敵わないって‥」

石神

‥‥‥

言葉の意味を追及したかったけど‥

頬を赤らめる石神さんがなんだか可愛くって、私は口をつぐんだ。

C: そんな、褒められるようなことは‥

サトコ

「そんな、褒められるようなことは‥」

石神

謙遜するな。ちゃんと自分の実力は認めてやれ

石神さんの優しくも強い眼差しに、胸が熱くなる。

サトコ

「はい‥ありがとうございます」

そして、満面の笑みを浮かべると‥

サトコ

「っ‥」

大きな手が、私の頬に触れる。

サトコ

「石神、教官‥?」

石神

‥‥‥

‥ここは戦場だったな

石神さんは苦笑しながら、頬から手を離した。

石神

しかし、先ほどのあれは‥

(あれって‥黒澤さんのトラップのことだよね?)

(私も疑問に思ってたけど、トラップにしては様子がおかしいような‥)

石神

‥‥‥

サトコ

「石神教官?」

石神さんはおもむろに銃を構えると、草むらに向ける。

石神

そこにいるんだろう?出て来い

サトコ

「え‥?」

???

「‥‥‥」

ガサガサと音がし、草むらから出てきたのは‥

サトコ

「鳴子‥」

鳴子

「‥‥‥」

%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b-069

鳴子が構えている銃は、私に向けられている。

to  be  continued



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする