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サバゲー 石神 2話


(こんなところまで追ってくるなんて‥)

さらっと周りに視線を向けるも、難波室長の姿は見えない。

(隠れてる?それとも、鳴子だけしかいないの‥?)

2対1のこの状況は、明らかに私たちにとって有利だ。

(ここは石神さんと協力して‥)

サトコ

「石神教官‥」

石神

‥‥‥」

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サトコ

「えっ!?」

石神さんは銃を下げると、木の陰に身を隠した。

サトコ

「どうして‥」

鳴子

「サトコ!」

サトコ

「!」

パンッ、パンッ!!

鳴子から弾が放たれ、慌てて草むらに隠れる。

(せっかく、有利な状況なのに‥)

アイコンタクトを取ろうと、石神さんに視線を送る。

石神

‥‥‥

石神さんは見守るような眼差しを私に向けていた。

(もしかして、石神さんは‥)

石神さんの真意に触れ、気合を入れ直す。

(自分だけの力で、鳴子を倒す‥!)

銃を構えながら鳴子の様子を窺うと、あちらも物陰に隠れていた。

(こういうときは、勢い任せに突っ込むのはダメだ)

(戦いやすいところに、場所を移動して‥)

サトコ

「鳴子っ!」

パンッ、パンッ!!

鳴子に向けて銃を乱射すると、一気に草むらを駆け抜ける。

鳴子

「っ、待ちなさい!」

(よし、かかった!)

鳴子は銃を撃ちながら私を追いかけるも、走っているせいか狙いは定まっていない。

私はそのままスピードを緩めることなく走った。

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サトコ

「はぁ、はぁ‥」

開けた場所に出て、鳴子と対峙する。

鳴子

「一騎打ち、だね」

サトコ

「うん‥」

(公安学校に女子は私と鳴子のふたりだけ‥)

(不安なこともいっぱいあったけど、鳴子がいてくれたから頑張れることもたくさんあった)

(だからこそ‥)

サトコ

「鳴子には、絶対に負けないよ」

鳴子

「私だって、サトコには負けないんだから」

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私たちの間に、見えない火花が散る。

間合いを取りながら、相手の隙を窺っていると‥

男性A

「あれ~、可愛い子たち発見!」

男性B

「おっ、ホントだ」

サトコ

「へ‥?」

(あっ、この人たちは‥)


男性B

『ほらほら、ヒットした奴はさっさとセーフティーゾーンに行けよな』

男性A

『わかってるって』

(さっきの人たち、だよね?)

男性A

「こんなフィールドの端で何してんの?怖くなって、こっちまで逃げ出してきちゃったとか?」

男性B

「大丈夫、オレたちが守ってあげるから、こっちおいでよ」

(何、この人たち‥)

鳴子

「サトコ‥」

鳴子の瞳が、訝しそうに曇った。

男性B

「‥あれ?キミたちの服‥オレらのと結構違うね」

男性A

「キミたち、合コン参加者じゃないの?」

サトコ

「えっ?合コンって‥」

(そういえば‥この人たち、楽しそうにサバゲーしてたよね?)

(訓練にしては、緊張感のカケラもないし‥)

『合コン』という言葉に、引っ掛かりを覚える。

(もしかして‥サバゲーの合コンが開催されてる、とか?)

(最近はいろんな合コンが流行ってるらしいし‥)

男性A

「まあ、細かいことはどうでもいいか」

男性B

「だな。ねえ、キミたち、疲れたなら休憩する?」

サトコ

「いえ、私たちは‥」

男性A

「いいじゃん、いいじゃん、なんだったら、このあと‥」

男性はニヤリと笑み、私の腕に手を伸ばす。

サトコ

「ちょ、ちょっと‥」

石神

お前たち、何をしている?

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(石神さん‥!)

<選択してください>

A: 様子を見守る

(来てくれたんだ‥)

石神さんの姿を見ただけなのに、ほっと安堵のため息が漏れる。

男性A

「何って‥見ればわかるだろ?」

突然現れた石神さんに、男性はジロリと睨む。

男性B

「アンタ、オレたちの邪魔を‥」

石神

何をしていると聞いているんだ

男性A

「くっ‥」

石神さんの鋭い視線と圧倒的なオーラに、男性たちは怯む。

男性A

「‥おい、行こうぜ」

男性B

「あ、ああ‥」

B: 自力でこの状況を切り抜ける

(石神さんが来てくれたのは嬉しいけど‥)

(いつまでも、頼ってばかりいたらダメだよね)

サトコ

「あの‥」

私は鳴子を背中に隠すように、一歩前に出る。

サトコ

「私たちは、合コンの参加者じゃありません」

「なので‥」

男性A

「ああ?じゃあ、なんでここにいるんだよ」

サトコ

「それは‥」

(公安学校の訓練で‥なんて、言えるわけないし‥)

石神

‥下がっていろ

サトコ

「あっ‥」

男性A

「なんだよ、お前」

石神

用件があるなら、俺が聞こう

男性A

「なっ‥」

石神さんに鋭い視線を向けられ、男性たちはたじろぐ。

男性B

「お、おい‥もう行こうぜ」

男性A

「‥そうだな」

C: 鳴子と協力する

(石神さんは、きっと私たちの戦いを見守っていた)

(だから今回も、自分たちの力でなんとかしなきゃ)

サトコ

「鳴子‥」

鳴子

「うん」

私たちは視線を交わすと、男性たちから一歩退く。

サトコ

「実は私たち、合コン参加者じゃないんです」

鳴子

「サバゲーに興味があって、ね?」

サトコ

「うん。なので、私たちはこの辺で‥」

男性B

「サバゲーに興味があるなら、オレたちがおしえてやるって、なあ?」

男性A

「ああ。もちろん、手取り足取り教えてやるよ」

男性たちはニヤリと笑み、私たちに近付く。

(ど、どうしよう、逆効果だったみたい‥)

石神

はぁ、お前たちは‥

石神さんは短くため息をつくと私たちを背に、男性たちの前に立つ。

石神

こいつらには俺がついてるから、問題ない

男性A

「ああ?なんだよ、お前‥」

石神

‥‥‥

男性A

「くっ‥」

石神さんの鋭い眼光に、男性たちは一歩下がる。

男性B

「お、おい、コイツ絶対ヤバいって、‥行こうぜ」

男性A

「あ、ああ‥」

男性たちは身をひるがえすと、走り去っていった。

鳴子

「わぁ、さすが石神教官!ね、サトコ」

サトコ

「うん、そうだね‥」

「あっ!」

(鳴子と戦闘中だったんだ!)

鳴子も思い出したのか、私たちは慌てて距離を取る。

(こうなったら、先手必勝‥‥)

???

「おーい」

(え?この声って‥)

聞き覚えのある声がし、森の方へ視線を向ける。

難波

ったく、どこまで突っ走ってんだ

訓練ゾーンから出たリタイアだぞ

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サトコ・鳴子

「えっ!?」

私たちは顔を見合わせ、石神さんを見る。

石神

‥ああ。ここは訓練ゾーンの外だ

サトコ

「そんな‥」

(夢中になってて、全然気づかなかった‥)

がくりと項垂れると、ポンッと肩を叩かれる。

鳴子

「残念だけど、勝負はお預けだね」

サトコ

「うん‥。今度は負けないよ」

鳴子

「私だって。それじゃあ、私は室長と先に戻ってるね」

鳴子は室長と一緒に、元にいた場所へと帰っていく。

(こんな形で勝負が終わっちゃうなんて)

(きちんと訓練エリアの確認をしなかった自分がいけないんだけど‥)

リタイアになり、ふと黒澤さんの言葉を思い出す。

黒澤

サトコさんも頑張ってください!ベストペア賞も用意してますから

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(これでベストペア賞もダメかな‥)

石神

‥サトコ

名前を呼ばれ、パッと顔を上げる。

石神

結果だけが全てではない。この経験を次に活かすことが、結果よりも重要だ

サトコ

「石神さん‥」

「ありがとうございます」

石神さんの優しい言葉が、心の内側に広がる。

石神

さて、俺たちも戻るか

サトコ

「はい!」

一歩踏み出すも、そこで足がピタリと止まる。

サトコ

「あの‥帰り道、どっちでしたっけ?」

石神

‥‥‥

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石神さんは、無言でため息をつく。

石神

夢中になるのも構わないが、移動するときはちゃんと周りと確認しろ

サトコ

「すみません‥」

石神

帰り道は、あっち‥

???

「おめでとうございます!!」

サトコ・石神

「!」

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突然、私たちの前に制服を着た男性が現れる。

サトコ

「あの、あなたは‥」

制服の男性

「さあさあ、おふたりともこちらへお越しください!」

サトコ

「ちょ、ちょっと‥」

背中を押されながら、男性が首から下げている名札を見る。

(『合コン実行委員会』‥?サバゲー合コンを運営している人かな?)

(そんな人が、どうして‥)

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制服の男性

「今回の大会のベストカップルに選ばれたのは、こちらのおふたりです!!」

私と石神さんは、無理やり壇上のような場所に上げられていた。

(ど、どうしてこんなことに‥)

数多くの合コンの参加者たちが、壇上の前に集まっている。

制服の男性

「こちらの男性が彼女をナンパから守った姿が高評価を得て、ベストカップルに選ばれました!」

「今の気持ちをどうぞ」

石神

‥‥‥

マイクを向けられるも、石神さんは無言を貫く。

制服の男性

「おやおや、どうやらシャイな方のようですね~」

(なんだろう、このノリ。どこか黒澤さんと被るような‥)

制服の男性

「それでは、気を取り直しまして‥」

「ベストカップルに選ばれたおふたりには、この場でキスをしてもらいます!」

サトコ

「えっ!?」

(ききき、キスって‥こんな大勢の前で!?)

石神

くだらない。行くぞ

制服の男性

「おっと、逃がしませんよ?」

石神

なっ‥

参加者A

「ふふ、ベストカップルに選ばれるなんてうらやましいな」

参加者B

「ほら、早くキスしろよ~」

制服の男性が立ちはだかり、参加者たちからキスコールを受ける。

(キスをしなきゃ、この場は収まりそうにないし‥)

(だけど‥恥ずかしい!)

石神

‥サトコ

サトコ

「え‥?」

石神さんは意を決したような表情で、私の肩に手を添えると‥

サトコ

「!」

頬に唇が当てられた。

参加者B

「えー、ほっぺたかよ」

参加者C

「普通は口にするもんだよな?」

石神

‥もういいだろう。キスはキスだ

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サトコ

「あっ‥」

私の手を取り壇上を後にする石神さんの頬は、ほんのりと赤く染まっていた。

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(頬っぺたとはいえ、あんな人前でキスするなんて‥)

隣を歩く石神さんを、そっと見上げる。

キスをされた箇所に触れると、先ほどの温もりが蘇る。

石神

収拾をつけるためとはいえ、俺は何をしているんだ‥

<選択してください>

A: でも、嬉しかったです

サトコ

「でも、嬉しかったです」

石神

‥‥‥

石神さんはチラリと私を見ると、ため息をつく。

石神

あれくらいで喜ぶな

サトコ

「だ、だって‥」

(あっ‥)

石神さんは私の手を握ると、足を止める。

石神

お前はあんなキスで満足するのか?

サトコ

「それは‥」

戸惑いを見せると、石神さんはフッと笑みを浮かべる。

石神

本当のキスは‥人前では見せたくない

B: やっぱり、嫌でしたか?

サトコ

「やっぱり、嫌でしたか?」

石神

は?

サトコ

「石神さん、さっきからずっと眉間にしわが寄ってるから‥」

「でも、私は‥」

私は石神さんの手をそっと握る。

サトコ

「恥ずかしかったけど‥嬉しかったです」

石神

サトコ‥

石神さんは目を見張ると、足を止めてふっと息を吐く。

石神

‥別に嫌だったわけじゃない。お前にキスしたことに関しては、な

サトコ

「え?」

穏やかな笑みを浮かべると、空いている方の手で私の頬をそっと撫でる。

石神

‥まぁ、訓練は一通り終わったからな

C: すみません‥

サトコ

「こんなことになって、すみません‥」

石神

謝るな。お前が悪いわけじゃない

俺もさすがにあの状況は予測できなかったからな

石神さんは指を絡めるように、私の手を握る。

石神

まさか、訓練場の隣でサバゲー合コンが開催されていたとはな‥

サトコ

「ふふ、ビックリしましたよね」

石神

ああ。あれは黒澤のトラップじゃなかったんだな

(そういえば、最初は黒澤さんのトラップだって疑ってたんだっけ)

ふと、黒澤さんが言っていた『ベストペア賞』を思い出す。

サトコ

「訓練はリタイアしちゃったけど‥私たち、ベストペア賞を貰えたんですよね」

石神

‥不本意だけどな

サトコ

「ふふ、例え不本意でも‥私たちの仲を認めてもらえたようで嬉しかったです」

石神

サトコ‥

サトコ

「あっ‥」

石神さんはふと足を止め、私の背中に腕を回す。

石神

‥すまない

額を合わせ、切なげな声音で呟く。

石神

立場上仕方ないとはいえ、お前には窮屈な思いをさせているな

そして、ゆっくりと顔が近づき‥

サトコ

「ん‥」

唇が、優しく重なった。

触れるだけのキスはすぐに終わりを告げ、繋がれた手に力が込められる。

石神

‥帰るぞ

サトコ

「はい‥」

それから、私たちの間に会話らしい会話はなかったけど‥

繋がれた手からたくさんの愛情を感じて、胸の鼓動はいつまでたってもおさまらなかった。

Happy  End

ジャージの胸に大きく『警察庁』って書いてあるのに‥ね、ナンパくんたち‥



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