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サバゲー 東雲 1話


誰かに手を引かれて、私は草むらに転がり込んだ。

(痛たた‥)

(いったい誰が‥)

東雲

13分45秒

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(えっ、教官!?)

東雲

合流遅すぎ。マイナス5点

サトコ

「!!」

「まさか、教官が私の!?」

(ええっ、ほんとに!?)

東雲

‥なに、その顔

言えば?言いたいことがあるなら

サトコ

「え、ええと‥」

<選択してください>

A: 嬉しいです!

サトコ

「嬉しいです!」

「すっごく嬉しいです!」

東雲

あっそう

オレは鳴子ちゃん希望だったけど

(ええっ!)

サトコ

「ひどっ、浮気‥」

東雲

違う。合理的判断

そもそもいらないから。始まって早々狙われる相棒なんて

(うっ、痛いところを‥)

B: お手柔らかに‥

サトコ

「お手柔らかに‥」

東雲

こちらこそ

って言いたいところだけど

これ、訓練だから

出来の悪い相棒はいらないから

(うう、やっぱり容赦ない‥)

C: よろしく相棒!

サトコ

「よろしく、相棒!」

東雲

‥‥

‥なに、その横ピース

透のモノマネ?

サトコ

「違いますよ!」

「黒澤さんの場合、横ピースにウインクをつけて‥」

「『よろしくっ、相棒☆』‥」

「ひどっ、無視しないで‥」

???

「うわああっ!」

(え‥なに、今の悲鳴‥)

???

「何だよ、このトラップ!タチ悪すぎるだろ」

???

「バカ、早く上がって来いって!見つかったらやられ‥」

パァンッ!

???

「うわああっ!」

(あ、1チーム脱落したっぽい‥)

サトコ

「トラップまであるんですね」

東雲

しょぼいけどね。透が遊び半分で作ったヤツだから

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サトコ

「そうですか」

(だったら安心‥)

東雲

でもまぁ、引っかかるみたいだね

『バカ』な人間ほど

サトコ

「は、はぁ‥」

(今『バカ』って強調してたよね)

(これは気を付けないと‥)

サトコ

「それで、これからどうしますか?」

東雲

べつに。どうもしないけど

サトコ

「えっ、でも普通戦ったりするんじゃ‥」

東雲

ふわぁぁ‥

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サトコ

「ちょ‥なんで座り込んじゃうんですか!」

東雲

怠いし

日焼けもしたくないし

サトコ

「あ、確かに‥」

「5月は紫外線が強いですもんね」

(‥じゃなくて!)

サトコ

「教官、訓練!今は訓練中ですよ!」

東雲

あっそう

じゃあ、腕立て100回

(ええっ!?)

東雲

はい、いーち‥

サトコ

「ちょ、教官‥っ」

東雲

いーち‥

(くっ‥)

なんだか釈然としないまま、私は両手を地面についた。

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サトコ

「いーち‥っ」

「にー‥っ、さーんっ‥」

(違う‥なんか違う‥)

(サバゲー中に筋トレとか‥)

しかも、教官はさっきからずっとスマホをいじっている。

というか、スマホしか見ていない。

(なんか‥いろいろ‥)

(納得いかないんですけどーっ!)

サトコ

「はぁ‥はぁ‥」

(なんで‥こんな‥)

(気がついたら、腹筋100回と背筋100回追加になってるし‥)

ぐぅぅぅぅ‥

(うわっ‥)

東雲

‥なに、今の音

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サトコ

「え、ええと‥たぶんその辺にいる虫が鳴いて‥」

ぐぅぅ‥

ぐぅぅぅぅ‥っ

(あああっ!)

(静まれ!静まれ、私のお腹‥)

東雲

食べれば?携帯食

サトコ

「え‥」

東雲

持ってきてるよね。こういうブロックタイプの

(あれは‥『1本満足メイト』のピーチネクター味!)

(ていうか携帯食の持ち込みって‥)

東雲

‥まさか持ってきてないの?

そんなわけないよね?

(うっ‥)

東雲

あり得ないんだけど

半日かかる訓練に食料を持ち込まないとか

サトコ

「で、でも要項には何も書いてなくて‥」

東雲

当然。書くはずないじゃん

こんな常識レベルのこと

教官は冷ややかな目で私を見ると、携帯食をかじり始める。

桃の甘い香りが漂ってきて、正直かなり美味しそうだ。

(うう、こうなったら‥)

<選択してください>

A: 上目遣いでおねだりする

(よし、ここは必殺「上目遣い攻撃」で‥)

サトコ

「あのぉ‥教官‥」

「それ、1口味見したいなぁ‥なんて‥」

東雲

‥‥‥

サトコ

「東雲きょうかぁん‥」

東雲

‥‥‥‥マイナス40点

サトコ

「嘘です!顔赤いです!」

東雲

べつに日焼けのせい‥

サトコ

「その言い訳、前にも聞いて‥」

B: 50円で買い取る

(こうなったら、もう‥)

東雲

‥なに、この50円玉

サトコ

「半分でいいです。買い取らせてください」

東雲

安っ!

サトコ

「安くないです。適正価格です!」

「『1本満足メイト』は税込110円だから、その半分だと‥」

東雲

時価だから。オレが売る場合は

よって5000円

サトコ

「高っ!」

「いくらなんでも高すぎます!それじゃ、ぼったくり‥」

C: 自力で食料を探す

(こうなったら、自力で食料を探すしかないよね)

(食べられそうな木の実とか山菜とか、あと‥)

サトコ

「キノコ‥」

東雲

‥なに?

サトコ

「い、いえっ!あの‥」

「キノコ、美味しそうだなぁって‥」

東雲

え、下ネタ?

サトコ

「違っ‥」

「普通のです!普通のキノ‥」

サトコ

「ふぐ‥っ」

いきなり、口の中に携帯食を突っ込まれた。

(これ‥『1本満足メイト』‥)

東雲

食べれば

もう飽きたし

(教官‥)

ネクター味の生地に練り込まれた桃の果肉が、口いっぱいにひろがる。

空腹な上、疲れていた身体には、たまらない甘さだ。

(しかも、これ‥教官の食べかけだったよね)

(つまり‥)

サトコ

「キス‥」

東雲

は?

サトコ

「間接キッス、しちゃいましたね」

東雲

‥‥‥

‥バカなの、キミ

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サトコ

「ふふっ」

東雲

キモ‥

ほんとにキモ‥

サトコ

「あっ、待って‥」

「どこに行くんですか!」

東雲

‥‥‥

サトコ

「ていうか、教官さっきからスマホを見過ぎ‥」

東雲

48%

サトコ

「はい?」

東雲

グーチームのペア生存率

ようやく50%を切ったところ

サトコ

「えっ、どうしてそんなことが‥」

東雲

ほら

(これ‥スマホの地図アプリ?)

(でも、そのわりには、さっきからたくさんの〇印が動いて‥)

サトコ

「!!」

「まさか、これ‥参加者の‥」

東雲

居場所を管理してるシステム

これさえあれば、参加者の居場所はもちろん、誰が生き残ってるのかも分かるってわけ

(ええっ)

サトコ

「ズルいです!教官たちだけ、そんなのを見られるなんて‥」

東雲

は?見られるわけないじゃん

サトコ

「えっ、でもそれ‥」

東雲

決まってるじゃん

本部限定の情報を傍受してんの

ま、多少のタイムラグはあるけどね

サトコ

「そ、そういうこと‥」

(怖っ、訓練でも情報傍受とか‥)

(でも、ある意味、教官らしいというかなんというか‥)

東雲

じゃあ、あとはよろしく

サトコ

「はい?」

東雲

キミ、囮役だから

逃げ切って。敵は残り半分なわけだし

(えっ、ちょ‥)

サトコ

「待ってください。いったいどういう‥」

東雲

10時の方向

サトコ

「え‥」

パァンッ!

サトコ

「うわっ!」

男子訓練生A

「‥やったか!?」

男子訓練生B

「いや、失敗した」

男子訓練生A

「じゃあ、今度は俺が‥」

(待って!待って、待って‥)

パァンッ!

パァンッ!パァンッ!!

サトコ

「ああ、もうっ!」

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サトコ

「はぁ‥はぁ‥」

パァンッ!パァンッ!!

サトコ

「うわ‥っ」

(なんで私が囮なんて‥)

すると、イヤモニから教官の声が聞こえた。

東雲

2時の方向に1組

サトコ

「2時!?」

パァンッ!

サトコ

「ぎゃっ」

(危な‥っ)

(今の、ほんとまずかったってば!)

サトコ

「教官、どこですか!」

東雲

‥‥‥

サトコ

「教官ーっ、返事をしてくださーいっ!」


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サトコ

「はぁ‥はぁ‥」

(く、苦しい‥)

(さすがに心臓が破裂しそう‥)

ガサガサッ!

(誰っ!?)

千葉

「ま、待って!」

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サトコ

「え‥千葉さん!?」

千葉

「あの‥パートナー見つかった?」

サトコ

「う、うん‥いちおう。千葉さんは?」

千葉

「それがまだなんだ」

「探しても探しても見つからなくて‥」

「俺の他に、単独行動してたヤツ、知らない?」

サトコ

「ええと‥」

パァンッ!

千葉

「うわっ!」

いきなり飛んできたペイント弾が、千葉さんの真横の木を青く濡らした。

サトコ

「だ、誰‥っ」

東雲

マイナス30点

キミたち、ずいぶん悠長だね。敵同士で雑談なんて

千葉

「東雲教か‥」

パァンッ!パァンッ!!

千葉

「‥っ」

教官の放ったペイント弾が、次々と千葉さんの足元に着弾する。

千葉さんもまた応戦するように、容赦なく引き金を引いてきた。

千葉

「氷川、ごめんっ」

パァンッ!パァンッ!

サトコ

「ちょ‥っ」

「わっ」

(なんで私!?)

東雲

へぇ、賢いじゃん。彼女を狙うなんて

千葉

「だって教官でしょう!氷川のパートナーって‥」

東雲

ご名答

パァンッ!

パァンッ!パァンッ!!

千葉

「く‥っ」

パァンッ!

パァンッパァンッパァンッ!

(ダメだ、ここは何としても逃げ切らないと‥)

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サトコ

「はぁ‥はぁ‥」

(やった‥)

(千葉さん、追ってきてないよね‥)

サトコ

「はぁぁ‥しんどすぎ‥」

(そもそも教官も外し過ぎだよ‥)

(あんなに撃ってるのに、1発も千葉さんに当たらないなんて‥)

サトコ

「‥ん?」

(そういえば、以前2人でガン・シューティング対決をした時も‥)

【ゲームセンター】

サトコ

「やったー!」

東雲

‥なに喜んでるの

たかだかゲームくらいで

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サトコ

「ゲームでもなんでもいいんです」

「教官に勝てる機会なんて、今後あるか分からな‥」

「ちょ、待ってください!」

「教官‥っ」

(‥そうだよ、あのときも私が全戦全勝して‥)

東雲

なに、これ

トドの置物?

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サトコ

「違っ‥ちょっと休憩してただけです!」

「それより千葉さんは‥」

東雲

逃げられた

(‥それって、銃弾が1発も当たらなかったってことだよね?)

(あんなにパンパン撃ってたのに)

私の中に、ある疑惑が生まれた。

(‥もしかして、教官って射撃が苦手?)

(そういえば、現場で銃を撃ってるの、ほとんど見たことがないよね)

(だとしたら、ここは補佐官として‥)

強い決意を胸に、私は教官に向き直った。

サトコ

「教官、任せてください」

東雲

は?

サトコ

「氷川サトコ、今日は教官を守ります」

「教官の手足となって、最後まで教官を守り抜きます!」

to  be  continued



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