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サバゲー 颯馬 2話


【洞窟】

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サトコ

「こんな所があったなんて‥」

お姫様抱っこされたまま敵から逃れ、連れて来られたのは森の中の洞窟。

颯馬

事前に地図で見て、何かに使えるなと思っていたんです

サトコ

「そうだったんですね‥」

(事前にちゃんとチェックしていたなんて、さすが颯馬さんだな)

その下準備をこうしてきちんと役立てていることにも感心する。

(私ももっと物事を先回りして考えられるようにならなきゃ‥!)

サトコ

「ここなら雨宿りも作戦会議にもちょうどいいですね」

洞窟の中の様子を見ようとすると、サッと手を取られた。

颯馬

手当がまだですよ

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取られた手を引かれ、颯馬さんの前にある岩の上に座らされる。

颯馬

右足でしたね

サトコ

「は、はい‥」

足首にそっと添えられた颯馬さんの手の感覚に、ドキンと鼓動が跳ね上がる。

颯馬

痛みますか?

サトコ

「少し‥」

颯馬

この辺りを中心にしっかり巻きましょう

言いながら、救護セットのポーチからテーピングを取り出す颯馬さん。

とても手際よく、器用に私の足首に巻いてくれる。

(そういえば、前にもこうして颯馬さんに手当してもらったな‥)

公安学校の体育祭で、リレーに出場して転んだことを思い出す。

(あの時もお姫様抱っこされて、颯馬さんの教官室まで運んでもらったんだよね)

(そこで丁寧に傷を消毒してくれて、なぜか太ももにキスされて‥)

颯馬

そんなに痛みますか?顔が真っ赤ですが

サトコ

「え、わっ、何でもないです!痛くないです!」

甘い瞬間を思い出して、いつの間にか赤面していたらしい。

颯馬

巻き終えましたので、立ってみてください

サトコ

「はい‥」

手を取ってもらい、恐る恐る立ち上がる。

(あ、ちゃんと立てる‥!)

颯馬

大丈夫そうなら、少し歩いてみてください

サトコ

「はい」

一歩二歩と足を踏み出し、足場の悪い洞窟内を歩いてみる。

サトコ

「全然痛くないです!すごく歩きやすいです!」

颯馬

それはよかった

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数歩先で振り返ると、颯馬さんはニッコリと微笑んだ。

サトコ

「颯馬さん、テーピングまで上手いんですね」

颯馬

剣道で足や手首を捻ってしまうことがよくありましたから

何でもないことのように言う颯馬さん。

でも、本当に驚くほどしっかり巻かれ、私は感心しきりだ。

サトコ

「これならまだまだ戦えそうです!」

気を良くした私は、さらに洞窟内を歩き回る。

すると、なにやら不自然に地面が盛り上がってる場所を見つけた。

(これって‥落とし穴?)

盛られた土の下に、わずかに網状の物が見えている。

(もしかしてこれ、黒澤さんが仕掛けたとかいう罠!?)

サトコ

「颯‥」

颯馬さんに報告しようと振り返ろうとしたその時、突然後ろから抱きしめられた。

颯馬

‥まだ手当は終わってませんよ

サトコ

「え‥」

耳元で囁かれ、罠のことなど一瞬で頭から飛んでしまう。

(あったかいな‥)

雨で身体が冷えていたため、背中から感じる颯馬さんの温もりが心地いい。

颯馬

こっちを向いて

くるっと前を向かされ、颯馬さんと向かい合う。

もうそれだけで、一気に鼓動が速くなる。

そのまま両頬に手を添えられ、おでことおでこを優しくコツンと合わせられた。

颯馬

早く治るおまじないです

サトコ

「‥‥‥」

ただドキドキするばかりで、何も言葉が出てこない。

颯馬さんも黙って私の目を見つめてくる。

そのまま無言で見つめ合うと、颯馬さんはそっとおでこにキスをした。

颯馬

フフ

私の反応を楽しむかのように、頬を緩める颯馬さん。

(‥訓練中に、わざとこうしてドキマギさせるようなことするんだよね)

それに、こうして唇にキスするのを焦らすようなことをするのも、いつものことだ。

(わかってるのに‥どうしてもドキドキしちゃう‥)

鼓動はどんどん速くなり、自分の頬が赤くなっていくのもわかる。

(でも、止められない‥)

そんな私の唇を、颯馬さんは指先で意味深になぞる。

颯馬

もっと温かくしましょうか

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(え!?)

<選択してください>

A: ダメです

サトコ

「ダ、ダメです、そんなこと!」

颯馬

どうしてですか?

サトコ

「どうしてって‥」

B: お願いします‥

サトコ

「お、お願いします‥」

颯馬

フフ、ではそうしましょうか

サトコ

「はい‥」

C: 何言ってるんですか!?

サトコ

「な、何言ってるんですか!?」

颯馬

はて?何かおかしなことを言いましたか?

サトコ

「だ、だって‥」

颯馬

ほら、ちょうどいい枝がたくさんあります

(枝‥?)

戸惑う私をよそに、颯馬さんは地面に落ちている小枝を拾い始める。

颯馬

雨に濡れて、かなり体が冷えてしまっていますからね

サトコ

「あ、あの、もっと温かくって‥」

颯馬

たき火で暖を取りましょう

(そ、そういうことだったの!?)

颯馬

何かほかのことでも考えていましたか?

私をからかうように聞いてくる颯馬さんに、私はぶんぶんと首を横に振る。

サトコ

「べ、別に何も考えてません‥」

颯馬

フフッ

(うぅ‥完全に見透かされている‥)

恥ずかしくて、私はこれでもかというくらい顔が熱くなる。

(自家発電で身体まで温まりそうだよ‥)

とはいえ、濡れた服がどんどん体温を奪っていく。

颯馬さんは器用に火を起こし、炎はみるみる大きくなる。

(颯馬さんって、意外とアウトドアもいけるんだよね)

またも感心しながら、たき火の炎に手をかざす。

サトコ

「あったかいです‥」

颯馬

今のうちに体力を回復させましょう

サトコ

「はい」

二人で並んでたき火に当たり、束の間の休息を取る。

心地良い温かさに包まれ、少し眠くなってくる。

(なんだか訓練中だってことを忘れちゃいそう)

そんなことを考えていると‥

コトッ‥

サトコ

「‥!?」

洞窟の外でかすかな物音がした。

(石が転がるような、誰かの足音のような‥)

警戒して身構えたその時‥

東雲

オレもあったまっていいですか?

千葉

「こんな所に隠れていたのか‥」

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サトコ

「!!」

東雲・千葉ペアが洞窟に乗り込んできた。

東雲

はい、みんなでゴー!

サトコ

「みんな!?」

千葉

「実は、訓練生ペアが仲間になってくれて‥」

サトコ

「え‥」

見ると、東雲・千葉ペアの後ろに、訓練生ペアが駆け込んでくる。

訓練生A

「協力すれば次のテストでボーナス点を進呈するって言われたからな」

サトコ

「そ、それって脅迫じゃないですか!」

東雲

あれ、足をくじいた割には元気そうだね

(えっ、なんで足のことを知っているの!?)

東雲

雨の中で優雅にダンスしてたし

やっぱり教官と補佐官は相性がいいみたいだね?

サトコ

「!!」

(‥全部、見られてたんだ‥‥)

それで密かにここまであとをつけられてたに違いない。

(どうしよう、見つかったのは私のせいだ‥!)

思わず颯馬さんの方を振り返った。

颯馬

大丈夫。想定内ですよ

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颯馬さんは、余裕たっぷりにニコッと微笑んだ。

(でも‥相手が4人じゃ、とても太刀打ちできない‥)

既に4人は洞窟の中まで侵入してきている。

容赦なく飛んでくるBB弾をなんとかかわしながら、岩陰に身を潜める。

そんな中、颯馬さんは訓練生ペアを挑発するように岩場に立った。

颯馬

さあ諸君たち、テストでボーナス点を貰うためにも、私を倒してみなさい

訓練生ペア

「‥では遠慮なく!」

挑発された訓練生ペアが、颯馬さんめがけて走り出す。

颯馬さんは岩陰に隠れながら、巧みに洞窟の奥へとペアを導く。

そして‥

訓練生ペア

「あっ‥うわーーーっ!!」

悲鳴と共に、訓練生ペアの姿が突然消えた。

(もしかして、あの落とし穴に落ちた!?)

颯馬

フフッ、恨むなら黒澤を恨んでください

穴の上からペアを見下ろすと、颯馬さんは笑顔で彼らを撃ちとった。

(すごい!私もくよくよしてられない!)

東雲

ったく、透も余計なことしてくれちゃって

千葉

「颯馬教官って、こんな時でもスマートなんですね‥」

(今だ‥)

颯馬さんに感心している千葉さんの隙を狙い、銃を構えた。

が、すぐに東雲教官に気付かれる。

東雲

千葉、お友だちが狙ってるよ?

千葉

「!」

撃ち放った弾は、素早く身を翻した千葉さんの真横を通り過ぎていく。

逆に今度は千葉さんに銃を向けられた。

(まずい‥)

隠れられる岩が近くになく、このままでは撃たれてしまう。

が、千葉さんの視線は私の足首に注がれ、なかなか撃とうとしない。

(怪我に同情してくれてるの‥?)

東雲

早く片付けるのも優しさだと思うけど

千葉

「‥‥‥」

引き金に掛けた千葉さんの指が、かすかに震えている。

サトコ

「千葉さん‥私は潔く散る覚悟が‥」

颯馬

あるわけないですよね

千葉

「!?」

背後から現れた颯馬さんの銃弾を、千葉さんは間一髪で避けた。

(この隙に‥)

<選択してください>

A: その場から逃げる

(逃げるなら今!)

東雲

千葉、逃がすな!

千葉

「!!」

B: 颯馬の元へ走る

サトコ

「颯馬さん‥!」

颯馬

奥へ逃げるんだ!

サトコ

「え‥は、はい!」

C: 千葉を撃つ

サトコ

「今度こそ!」

千葉

「おっと!」

千葉さんの背中めがけて撃つも、またもかわされた。

(ここはひとまず、逃げるが勝ち!)

駆け出す私を、千葉さんはすかさず追いかけてくる。

その千葉さんをさらに颯馬さんが追いかける。

千葉

「くそっ‥」

暗がりの中、千葉さんの足元はおぼつかない。

洞窟内の地形を把握している私と颯馬さんは、そんな千葉さんを翻弄するように走る。

東雲

忍者‥?

千葉

「くそっ‥負けてたまる‥」

「あっ!」

(今だ!)

つまずいてよろけた千葉さんを、私を颯馬さんが素早く挟み撃ちにする。

千葉

「‥‥‥」

サトコ

「‥‥‥」

千葉

「キミにやられるなら本望だよ‥」

サトコ

「‥千葉さん、ごめんね!」

心を鬼にして、私はとどめの一発を千葉さんめがけて発射した。

東雲

あーあ、やられちゃった

東雲教官は笑顔でそう言うが、明らかに目の奥が笑っていない。

この後のお仕置きを思い、千葉さんは苦い表情を浮かべていた。

颯馬

よくやりましたね

サトコ

「はい‥」

暗がりの中で、颯馬さんと私は微笑み合った。

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洞窟から出ると、なんとこそには雨上がりの虹がかかっている。

サトコ

「わあ、キレイ‥!」

颯馬

これも想定内です‥なんてね

サトコ

「ふふ‥」

(颯馬さんが言うと、冗談に聞こえないからすごいよね!)


颯馬

それにしてもサトコ、貴女は侮れませんね

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サトコ

「え?」

颯馬

ハニートラップで敵を仕留めるとは

サトコ

「ハニートラップ?」

颯馬

千葉は明らかに貴女に心を乱されていた‥

サトコ

「わ、私はそんなつもりじゃ‥!それに千葉さんはただの同期ですし‥!」

誤解を晴らそうと慌てて弁解するも、その口を柔らかなキスで塞がれてしまった。

サトコ

「っ‥!?」

颯馬

‥今夜は俺にもトラップ仕掛けてくれる?

サトコ

「!!」

突然のキスに戸惑う私の耳元で、颯馬さんは甘く妖しく囁いた。

颯馬

さあ、行きましょう。敵はまだまだ潜んでいます

何事もなかったかのように私の手を取ると、颯馬さんは再び走り出す。

颯馬

足は大丈夫ですね?

サトコ

「はい」

私を労わりながら、まるでエスコートするかのように優雅に森の中を走る颯馬さん。

颯馬

やるからには勝たなければいけませんから

サトコ

「はい‥!」

優雅さの中にも闘志を見せる颯馬さんが頼もしい。

(颯馬さんとなら勝てる‥!そして、その勝利の後は‥)

『‥今夜は俺にもトラップ仕掛けてくれる?』

耳元で囁かれた甘い言葉が頭の中に甦る。

私はさらに鼓動を高鳴らせながら、虹がかかる森を颯馬さんと共に駆け抜けた。

Happy  End



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