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キスしてうつして 石神 2話

サトコ

「石神さん?」

石神

待ってくれ‥

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石神さんは、掴んだ手に力を込める。

石神

まだ一緒にいてくれないか‥

ダメ、か?

(さっきは『さっさと帰れ』だなんて、頑なだったのに‥)

掠れた声に、キュッと胸が締め付けられる。

サトコ

「ダメじゃ、ないです」

「いいんですか‥?」

石神

ああ。‥もしうつしたら、俺の責任だな

フッと笑う石神さんに、笑みを返す。

サトコ

「そうしたら次は、石神さんに看病してもらわなきゃですね」

石神

そうだな

サトコ

「ふふ」

顔を見合わせて笑い合うと、石神さんは優しい眼差しを私に向ける。

石神

不思議だな。最初はお前にうつすから一緒にいない方がいいと思ったんだが‥

お前といると、それでも一緒にいたいと思ってしまう‥

サトコ

「石神さん‥」

<選択してください>

A: 嬉しいです

サトコ

「そう言ってもらえて‥すごく嬉しいです」

「ここに来る前は、『いきなり来ちゃって迷惑かな?』って思ってましたから」

石神

迷惑だなんて‥そんなわけないだろう

サトコ

「ふふ、そうですよね。石神さんは優しいですから」

石神

お前は‥本当、ストレートにものを言うな

石神さんは照れ隠しをするように、視線を逸らす。

サトコ

「あ~、石神さん‥照れてます?」

石神

照れてない

視線を逸らしたまま断言する石神さんに、笑みが漏れる。

B: もっと甘えてください!

サトコ

「もっと甘えてください!」

石神

充分、甘えているつもりだが‥

石神さんは苦笑しながら、私の腕を離す。

サトコ

「さっきの『あーん』だって遠慮してたじゃないですか」

石神

あれは遠慮したというか‥‥ただ恥ずかしかっただけというか‥

サトコ

「?」

言葉尻が小さくなり、最後の方がうまく聞き取れない。

サトコ

「どうかしましたか?」

石神

いや‥なんでもない

(よくわからないけど‥)

頬を赤らめたまま布団を被り直す石神さんが、なんだか可愛い。

C: 一緒にいるだけでいいんですか?

サトコ

「一緒にいるだけでいいんですか?」

「石神さんのためなら、なんだってしますよ!」

石神

なんでも‥か

石神さんは何か考える風にして、私に視線を向ける。

石神

なら、添い寝でもしてくれるか?

サトコ

「へ?添い寝‥ですか?」

石神

ああ

サトコ

「わわっ」

腕を強く引かれ、石神さんとの距離がぐっと縮まる。

石神

甘えていいんだろう?

頬が高揚し、熱で潤んだ瞳に射抜かれる。

サトコ

「は、はい‥」

小さく頷くと、石神さんの手が私の頬に伸びて‥

石神

‥冗談だ

サトコ

「ひゃっ!」

私の頬を、軽くつねった。

サトコ

「な、なにするんですか~!?」

石神

すまない。お前の反応が面白くてな

サトコ

「面白いって‥」

(どうせなら可愛いって言われたいけど‥)

楽しそうに微笑んでいる石神さんに、それもいいかと思ってしまう。

サトコ

「石神さん、すぐ戻ってきますので洗い物だけしてきますね」

石神

洗い物‥?

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サトコ

「はい!」

石神

そうか‥

石神さんはバツが悪そうに、瞳を伏せる。

石神

‥悪い。俺の勘違いだったようだな

サトコ

「ふふ、気にしないでください」

私は石神さんに笑みで返しながら、部屋を後にする。

【キッチン】

(石神さんでも、風邪ひくんだな‥)

洗い物の手を進めながら、石神さんのことを考える。

(石神さんってサイボーグって言われてるけど‥)

石神

それなら、今日はとことん甘えさせてもらうぞ

待ってくれ‥

(私のこと、頼ってくれてるんだよね‥)

石神さんの素の部分に触れ、顔がにやけそうになる。

(ふふ、早く洗い物を終わらせて‥)

ガタッ

サトコ

「‥ん?」

物音がして、キッチンから顔を覗かせる。

サトコ

「石神さん!?どうしたんですか?」

石神さんはフラフラになりながら、壁に手をついている。

サトコ

「ちゃんと寝てないとダメじゃないですか」

石神

風呂で汗を流そうと思ってな

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サトコ

「今日は安静にしていた方がいいですよ。お風呂も、もちろん禁止です」

石神

風呂くらい問題ないだろ

サトコ

「ダメです。汗なら私が拭きますから」

石神

いや‥大丈夫だ

風呂に入ったら、すぐに寝る‥っ

サトコ

「石神さん!」

大きくふらつく石神さんに駆け寄り、身体を支える。

サトコ

「大丈夫じゃないですよ」

石神

すまない‥

サトコ

「無理したら風邪が長引くだけですよ?」

「ここは私に任せてください!」

石神

‥ああ

石神さんは渋々頷くと、私の手を借りて寝室へ戻っていく。

【寝室】

サトコ

「お待たせしました」

洗面器にぬるま湯を入れて、タオルを濡らす。

石神

悪いな

石神さんと向かい合い、パジャマのボタンに手をかける。

ひとつひとつボタンを外していくたび、石神さんの素肌があらわになっていき‥

(ど、どうしよう‥目のやり場に困る‥)

鍛えられた腹筋が目に入り、恥ずかしさのあまり視線を逸らしてしまう。

石神

お前が照れてどうするんだ‥

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サトコ

「す、すみません‥」

石神

そんな可愛い顔されると、困る

サトコ

「え‥?」

石神さんの言葉に顔を上げると、顔が真っ赤に染まっている。

石神

今日は‥これ以上は触れられないからな

サトコ

「!」

「か、身体!拭きますね」

石神

ああ

(うぅ、緊張する‥)

恥ずかしさに堪えながら、石神さんの身体を丁寧に拭いていく。

身体を拭いている間、心臓が大きく鳴り続けていた。

石神

‥‥‥

身体を拭き終えて間もなく、石神さんは眠りについた。

サトコ

「さっきは苦しそうだったけど‥」

静かな寝息を立てる石神さんに、ほっと息をつく。

サトコ

「ふわぁ~‥」

(なんだか私も眠くなってきちゃった‥)

石神さんの顔をぼんやりと眺めながら、ベッドに両腕をついてうつぶせになる。

サトコ

「石神さん‥早く良くなってくださいね」

ひとりごちるように言って‥ゆっくりと瞼を閉じた。

サトコ

「ん‥」

目を擦りながら、大きく伸びをする。

サトコ

「ふわぁ~、よく寝た‥」

「って、あれ?私、いつの間にベッドで寝てるの‥?」

(っていうか、もう朝!?石神さんは!?)

辺りを見回すも、石神さんの姿はどこにもない。

私は慌てて起き上ると、寝室を出た。

【リビング】

サトコ

「石神さん!?」

石神

‥ん?起きたのか

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石神さんはパソコンを使う手を止め、振り返る。

サトコ

「何してるんですか!?休まないとダメじゃないですか」

石神

熱なら下がった

(確かに、顔色は良くなったけど‥)

サトコ

「でも、さすがに仕事するのは早すぎるんじゃ‥」

石神

1日しっかり休んだからな。もう大丈夫だ

(さすがの回復力だな‥)

サトコ

「って、石神さん?何をしてるんですか?」

石神さんはパソコンの電源を落とすと、何やら準備を始めている。

石神

何って‥出かける準備だ

サトコ

「今日ってお休みでしたよね‥?」

石神

そうだが‥昨日、早く帰らせてもらったからな

(病み上がりなのに、仕事に行こうとするなんて‥)

(みんながサイボーグって呼ぶ理由が分かったかも)

(でも‥)

サトコ

「さすがに病み上がりですし、今日くらいちゃんと身体を休ませた方がいいです」

石神

俺なら、問題ない‥

サトコ

「石神さん」

真剣な眼差しを向けると、石神さんはフッと口元に笑みを浮かべる。

石神

‥そうだな。風邪をぶり返すわけにもいかないしな

(よかった‥)

安堵のため息を漏らし、キッチンに足を向ける。

サトコ

「お腹空いてますよね?今、朝ご飯作りますから‥」

石神

サトコ

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サトコ

「あっ‥」

腕を引かれ、後ろから抱きしめられる。

石神

‥お前の懸命な看病のおかげだ。ありがとう

サトコ

「っ‥」

吐息が耳元を掠め、トクンと胸が高鳴る。

石神

昨日触れられなかった分、今日は触れさせてもらうぞ

<選択してください>

A: くすぐったいです‥

サトコ

「ん‥くすぐったいです‥」

石神

‥お前は耳が弱かったな

サトコ

「ひゃあっ」

耳元に息を吹きかけられ、ヘンな声を上げてしまう。

サトコ

「な、何するんですか!」

石神

フッ‥やはり、お前の反応は面白いな

サトコ

「っ‥」

今度はチュッと音を立てて、耳にキスされる。

サトコ

「お、面白くないですよ‥」

B: 私も触れたい

サトコ

「私も‥触れたいです」

石神

昨日はあんなに照れていたのにか?

サトコ

「昨日って‥」

石神さんの身体を拭いていた時のことが、脳裏を過る。

サトコ

「い、石神さんだって顔赤くしてたじゃないですか」

石神

アレは熱で赤くなっていただけだ

サトコ

「っ‥」

首筋にキスが落とされ、声が漏れそうになる。

C: だ、ダメですよ!

サトコ

「だ、ダメですよ!病み上がりなのに‥」

石神

‥イヤか?

甘い声音で囁かれ、鼓動が早鐘を打つ。

サトコ

「‥そんな言い方、ズルいです」

石神

昨日はずっと我慢してたんだ。これくらい、いいだろう?

耳元でイタズラに笑う石神さんに、顔が熱くなる。

(やっぱり、石神さんはズルい‥)

石神さんの腕をつかむ手に、ギュッと自然と力が入った。

石神

サトコ‥

サトコ

「きゃっ」

石神さんは私を抱き上げると、寝室へと足を運ぶ。

【寝室】

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サトコ

「っ‥」

ベッドに優しく降ろされ、石神さんは私の顔の横に手をつき覆いかぶさる。

サトコ

「石神、さん‥」

石神

‥‥‥

ゆっくりと顔が近づき、それに合わせて瞼を閉じると‥

(‥あれ?)

額に、優しくて温かい感触がした。

目を開けると、石神さんが口元に笑みを浮かべている。

石神

風邪は治りかけが一番うつるらしいからな

期待させてしまったか?

サトコ

「!」

顔だけじゃなく、耳まで赤くなるのが自分でもわかる。

サトコ

「石神さん、イジワルです‥」

石神

好きな女には、イジワルをしたくなるものだろう?

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石神さんはいたずらな笑みを浮かべたまま、額や頬、首筋にキスを落としていく。

唇が触れる度、愛しさと嬉しさが込み上げてくるけど‥

石神

物足りなさそうな顔しているな

サトコ

「だ、だって‥」

石神

どうしてほしい?

サトコ

「それは‥」

石神

言わないと分からないぞ?

サトコ

「うぅ‥」

(昨日は可愛いって思ったけど‥今日の石神さん、いじめっ子だ‥)

サトコ

「‥です」

石神

ん?

サトコ

「キス、してほしいです‥」

石神

ああ‥

サトコ

「ん‥」

触れるだけのキスがたくさん降り注ぎ、石神さんの服の裾をギュッと握る。

石神

‥あまり可愛いことをするな

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そっと頬を撫でられ、小さく身じろぎをする。

サトコ

「石神さん‥」

石神

うつしても知らないからな‥

サトコ

「んっ‥」

触れるだけのキスは、やがて深いキスへと変わっていく。

大切な人の重みを感じながら、たくさんの愛情に満たされていった。

Happy  End

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