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キスしてうつして 颯馬 2話

【キッチン】

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颯馬さんが寝付いたので、そっと寝室を出てキッチンへ。

(眠るまで手を離さないでなんて、颯馬さん可愛かったな)

子どもみたいな要求をしてくれたことが、とても嬉しい。

お粥を作りながら、自然と頬が緩んでしまう。

(無理やりにでも看病しに来て、よかった)

持ってきたドリンクなどを冷蔵庫に入れ、薬も用意しておく。

お粥が出来上がると頃合いを見て、再び寝室へ向かった。

【寝室】

(まだ寝てるかな‥)

そおっとドアを開けた私は、ハッと息を呑む。

(‥颯馬さん!?)

目の前に、上半身裸の颯馬さんが立っていた。

程よく筋肉のついた綺麗な裸体を目の当たりにし、思わず鼓動が速くなる。

颯馬

ああ、すみません‥汗を拭こうと思って

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ドキドキしている私に、悪びれる様子もなく言う颯馬さん。

サトコ

「そ、そういう時も呼んでください」

颯馬

これくらいは自分でできます

サトコ

「今日は甘えてくださいって言ったじゃないですか‥」

抗議するも、なんだか恥ずかしくて真っ直ぐ見ることができない。

颯馬

フフッ‥じゃあお願いします

恥ずかしがる私を見て楽しむように微笑むと、颯馬さんはタオルを差し出した。

熱で少し上気したその顔も、やけに色っぽく見える。

サトコ

「‥後ろ向いてください」

タオルを受け取ると、私は俯いたまま指示を出す。

颯馬さんは素直に従い、ゆっくりと背を向ける。

私も、ゆっくりと視線を上げる。

(背中も‥綺麗だな‥)

広い背中には、男らしいしっかりとした肩甲骨が浮き上がっている。

美しい逆三角形の後ろ姿は、まるでギリシャ彫刻のようだ。

(なんて‥見惚れてる場合じゃないよね)

サトコ

「じゃあ、拭きますね‥」

颯馬

お願いします

片手にタオルを持ち、もう一方の手で颯馬さんの肩に触れる。

(熱い‥)

汗でしっとりとした肌から、熱気が伝わってくる。

ドキドキしながら、恐る恐る拭いていると‥

颯馬

‥ックシュン

(わ‥くしゃみまでエレガント‥じゃなくて!早く済ませてあげなくちゃ)

うっとりしかけてしまい、慌てて我を取り戻す。

(かえって風邪を悪化させたりしたら大変‥!)

広い背中を拭き終わり、今度は前を向いてもらう。

サトコ

「そのままベッドに腰掛けてください」

颯馬

これでいいですか?

サトコ

「はい」

素直に座ってくれた颯馬さんの腕を取り、肩から指先までを拭く。

二の腕の逞しさとは裏腹に、スッとしなやかで美しい指先。

そのギャップが、また私の胸を騒がせる。

(ダメダメ!余計に事は考えない)

颯馬

もしかして、誘ってるんですか?

サトコ

「はい!?」

颯馬

この状況はどう考えても‥

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サトコ

「え‥?」

いつの間にか、颯馬さんをベッドに押し倒すような体勢になっている。

(ウソ‥なんで!?)

邪念を払うように一心拭いているうちに、前のめりになりすぎてしまったらしい。

(これじゃ本当に襲ってるみたいだよ!)

サトコ

「す、すみませ‥あっ!」

慌てて離れようとすると、逆に引き寄せられてしまった。

颯馬

‥ちゃんと、最後まで拭いてください

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裸の胸に抱き寄せられ、耳元で囁かれる。

颯馬

何事も、中途半端は良くありません

サトコ

「‥!」

ドキン!と心臓が跳ね上がった。

ゆっくりと顔を近づけられ、これでもかというくらい鼓動が高鳴る。

(もしかして、キス‥!?)

そんな期待を抱いた瞬間、颯馬さんの動きがピタリと止まる。

颯馬

ちゃんと、おでこも拭いてもらえますか?

サトコ

「え?‥あ‥‥は、はい‥」

今にも唇が触れそうな距離で微笑まれ、ガックリと身体の力が抜けてしまう。

(ふぅ‥私の方が汗だくだよ‥)

熱で顔を赤らめた颯馬さんが、楽しそうに笑う。

颯馬

フフ‥どうかしましたか?

(完全に遊ばれてる‥)

風邪をひいても、やっぱり颯馬さんの方が1枚も2枚も上手のようだった。

【キッチン】

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一夜明け、私は早起きして朝ご飯を作る。

(ねぎと生姜をたっぷり入れて‥)

身体を温めるための特製スープを作っていると‥

ガタッ‥

(ん?起きたかな?)

リビングの方で音がしたため、火を止めてキッチンを出た。

【リビング】

サトコ

「颯馬さん?起きたんですか?」

颯馬

‥!

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リビングに戻ると、颯馬さんが少し驚いた顔をした。

サトコ

「どうしたんですか?」

颯馬

目を覚ましたら貴女がいなかったので‥

サトコ

「え‥」

(それって、ちょっとは寂しいと思ってくれたってこと‥?)

<選択してください>

A: 子どもみたいですね

サトコ

「ふふ、小さな子どもみたいですね」

颯馬

いけませんか?

サトコ

「いえ、そんなことないです」

B: 落ち着くまでいます

サトコ

「大丈夫ですよ、体調が落ち着くまでいますから」

颯馬

では、このまま治らない方がいいですね

サトコ

「それは困ります」

C: 黙って帰ったりしません

サトコ

「黙って帰ったりしませんよ。颯馬さんみたいに」

颯馬

おや、朝から責められてしまいましたね

サトコ

「ふふ‥」

朝日が射すリビングで、穏やかに微笑み合う。

(そういえば颯馬さん、鼻声じゃなくなってる‥?)

微笑む顔も、どこかすっきりとしている。

(よかった‥よくなってるみたい)

ホッとしていると、颯馬さんが少し鼻をクンクンさせる。

颯馬

何やらいい香りがしますね?

サトコ

「風邪に効く、スペシャルスープを作ってるんです」

颯馬

スペシャルスープですか‥

サトコ

「はい。骨付きの鶏肉をコトコト煮込んで、生姜とねぎをたっぷり入れて、それから‥」

(え‥)

スープの説明をしていると、いきなり優しく抱きしめられた。

颯馬

‥風邪はもう治りました

サトコ

「‥?」

颯馬

貴女という、どんな薬よりも効く良薬を貰いましたからね

サトコ

「‥颯馬さん」

恥ずかしいような、嬉しいような、くすぐったい気持ちになる。

颯馬

心配かけてすみません

サトコ

「いえ‥」

颯馬

守るべき貴女に、弱っている姿を見せたくなくて

サトコ

「私は、どんな颯馬さんも好きですよ?」

「私を守ってくれる颯馬さんも、私を頼ってくれる颯馬さんも」

颯馬

サトコ‥

サトコ

「たまには私にも、颯馬さんを守らせてください」

そっと微笑み、そのまま颯馬さんの胸に頬を寄せる。

そこには、昨夜感じたような熱さはない。

ただほんのりと、とても心地いい温かさだけがある。

(よかった‥熱も下がったみたいだし、本当にもう大丈夫みたい)

改めてホッとしたその時、突然ふわっと身体が浮き上がった。

サトコ

「わっ!」

颯馬

ほら、体力も回復しているようです

軽々と私を持ち上げ、颯馬さんはニヤリと微笑んだ。

(そ、その微笑みは‥)

颯馬

では、行きましょうか

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サトコ

「‥どこへですか?」

颯馬

想像はついているのでは?

<選択してください>

A: ‥わかりません

サトコ

「‥わかりません」

颯馬

相変わらず嘘がヘタですね

B: ベッド‥?

サトコ

「ベッド‥?」

颯馬

なるほど、そうしましょう

C: 黙ったまま赤面

サトコ

「‥‥‥」

颯馬

その赤い顔が全てを物語っていますね

更に妖しい笑みを浮かべられ、私はもう何も言えなくなった。

【寝室】

寝室に私を運び、颯馬さんが囁く。

颯馬

病み上がりなので、うつしてはいけないと思ってたんですが‥

サトコにあのように可愛らしく甘えられては、仕方がありませんね

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(甘えた‥?私が?いつ?)

サトコ

「私、甘えたつもりは‥」

颯馬

ないとは言わせませんよ?

その柔らかな頬をあのように私の胸に摺り寄せておいて‥

サトコ

「‥!」

颯馬

それに、昨夜も応えてあげられませんでしたから

優しくベッドに降ろされ、真上から見つめられる。

両側にある逞しい腕に阻まれ、逃げ場を失う。

颯馬

せっかく誘ってくれたのに、すみませんでした

サトコ

「ちょ‥待ってください!私は誘ってなんか‥」

(あ‥‥)

反論しようとした唇は、甘いキスで塞がれた。

そっと包み込まれるようなキスに、思わず目を閉じる。

颯馬

サトコにキスできないなんて、もう二度と風邪にはかかりたくありません

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サトコ

「んっ‥」

優しいキスはだんだんと深まり、気付けば颯馬さんは服を脱いでいる。

唇を重ねたまま、颯馬さんの指が私のブラウスのボタンにかかる。

サトコ

「ダ、ダメです‥」

思わず胸元をガードした。

颯馬

どうして?

サトコ

「‥まだ激しい運動は‥‥」

颯馬

フフッ、激しいことをしたいんですね?

サトコ

「ち、ちがっ‥」

ガードしていた手をやんわり取られ、あっという間にボタンを外される。

颯馬

俺はまだ甘え下手のようだから‥

その身体で教えてくれる?甘え上手さん

(ど、どこが甘え上手‥!?)

そう思うも、再び降りてきたキスにまたも反論の余地を奪われる。

(甘えたつもりはないし、昨日だって誘ってなんかいないのに‥)

(でも‥こんなに甘いキスを貰えるなら‥勘違いされてもいいかな‥)

だんだんと思考がぼやけてきて、身体に力が入らなくなる。

唇を離れたキスが、首筋へと移動する。

やがて露わになった胸元に到達する。

サトコ

「ん‥」

熱く柔らかな唇を、颯馬さんは私の身体のあちこちに押し当てる。

昨夜の弱っていた姿が嘘のように、激しく情熱的に。

サトコ

「颯馬‥さん」

あの彫刻のように美しい背中に手を回し、そっと視線を交える。

颯馬

サトコは、俺にしか効かない特効薬だ

昨日とは違う熱を帯びた瞳が、キラリと妖しく輝いた‥

Happy  End

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