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キスしてうつして 加賀 2話

サトコ

「私だって、加賀さんを支えたいんです!」

「だから‥こういう時くらいは頼ってください!」

加賀

‥ほう

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なぜか加賀さんがニヤリと笑う。

(今の笑みは‥!?なんか嫌な予感がする!)

(いや、でも加賀さん的には通常運行の笑い方‥?)

とりあえず気にせず、もう一度お粥を勧める。

サトコ

「今日一日、私は加賀さんの専属看護師です!」

「なんでも言ってください!看病しますから!」

加賀

‥‥‥

気合を入れる私に、加賀さんが呆れたようにため息をつく。

(やっぱりダメか‥加賀さんが素直に看病させてくれるはずがなかった‥)

加賀

早くしろ

サトコ

「えっ?」

顎で、お粥を指された。

(もしかして、食べさせろってこと!?)

加賀

おい、いつまで待たせるつもりだ

サトコ

「は、はい!ただいま!」

急いで、持っていたレンゲを加賀さんの口に持っていく。

憮然とした表情ながらも、加賀さんは素直に口を開けた。

(か、加賀さんが『あーん』を受け入れてる‥!)

(こんなこと、もう二度とないかもしれない!)

黙って口を開けてお粥を食べている加賀さんがかわいくて、ついニヤけてしまう。

顔を逸らして笑いを堪える私に気づいたらしく、加賀さんのオーラが一変した。

加賀

今すぐ、その情けねぇツラをしまえ

サトコ

「は、はい!」

(まずい‥!『かわいい』なんて言ったら、この世にはいられないかもしれない)

(最近、加賀さんが放つオーラで、怒りの度合いがわかるようになってきた‥)

ひとまず、加賀さんはお粥を残さず食べてくれた。

サトコ

「これで、少し体力が戻ればいいんですけど」

加賀

最初から失ってねぇ

サトコ

「でも、私が来た時はぐったりしてましたよね」

加賀

寝てただけだ

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(東雲教官が言ったように、ほんとに弱みを見せてくれないな‥)

(そういうのも全部含めて、甘えてほしいんだけど)

【寝室】

さっき買ってきたデザートを冷蔵庫から取り出して、加賀さんの待つ寝室へ向かう。

ベッドに横になっている加賀さんに、中身を見せないように尋ねてみる。

サトコ

「食後のデザート、食べられますか?」

加賀

大福か?

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サトコ

「い、いえ‥さすがに、風邪の時に大福はまずいと思って」

加賀

シュークリームか

サトコ

「違います」

加賀

羽二重もちか

(全部柔らかくてふわふわしてるものだ‥さすが加賀さん)

サトコ

「どれも違うんですけど‥えーと、とりあえず食べてみませんか?」

加賀

どっちでもいい

(ってことは、食べたいのかな‥加賀さんは本心を言わないから分かりにくいけど)

プリンのふたを開けて、スプーンで掬って加賀さんの口に持っていく。

口を開けると、加賀さんは美味しそうにプリンを食べ始めた。

サトコ

「‥‥‥!?」

(食べた‥!?加賀さんが、プリンを!?)

 

加賀

なんだ

サトコ

「い、いえ‥つかぬことをお聞きしますが、美味しいですか?」

加賀

悪くねぇ

(『悪くねぇ』‥!!!)

(あの加賀さんがプリンを食べて、『悪くねぇ』!?)

(もしかして熱のせいで、これがプリンだって気づいてない?)

(石神教官が見たらビックリするだろうな‥いや、他の教官たちも、みんな驚くかも!)

結局、加賀さんはプリンをすべて食べ終えてしまった。

サトコ

「お、お粗末様でした‥」

加賀

ああ

(加賀さん、もしかしてプリンも好きだったのかな)

(でも石神教官の好物だから、素直に言えなかっただけとか)

お粥とプリンを片付けて、薬とお水を持ってくる。

加賀さんに渡そうとすると、その手を掴まれた。

サトコ

「え?」

加賀

口に入れろ

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サトコ

「えっと‥薬を、ですか?」

加賀

テメェはどこまでも使えねぇ

薬だけじゃ飲めねぇだろうが

(それって‥水も、ってことだよね)

そう気づいた瞬間、加賀さんが何を言いたいのか理解できた。

サトコ

「つまり‥あの、く、く、く、口移しで飲ませろ、と!?」

加賀

駄犬のくせに、察しがよくなったな

サトコ

「ま、待ってください!さすがに薬を口移しっていうのは!」

「錠剤が口の中で溶けちゃうかもしれないし、無理がっ‥」

加賀

バカが‥誰が薬って言った

(え?じゃあお水だけ?)

(いや!それにしたって、じ、自分から口移しなんて)

加賀

やり方はわかるな?

サトコ

「!!!」

加賀

初めてじゃねぇだろ

サトコ

「そ、それは‥確かに今まで、何度か加賀さんにしてもらったことはありますけど」

「でもですね、心情的なものとしては」

加賀

病人の言うことなら、なんでも聞くんだったよな

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意地悪に笑われ、断れるはずもない。

(なんでも‥とは言ってないけど、加賀さんの力になりたいって自分から言ったんだし)

(恥ずかしくても、ここは覚悟を決めてっ‥)

思い切って水を口に含もうと、グラスを手に取る。

でもそれを止めるかのように、加賀さんが私の手首をつかんだ。

加賀

‥どうしようもねぇな、テメェは

サトコ

「えっ?」

加賀

もういい

(あれ‥?加賀さん、なんだか嬉しそう?)

サトコ

『私だって、加賀さんを支えたいんです!』

(もしかして、あの言葉が本気だったのか、試したとか‥!?)

加賀

今のところ、主人に従順に育ってるな

サトコ

「うう‥せめて『恋人に尽くす』って言って欲しいです‥」

「あの‥とにかく、薬を飲んじゃいましょう」

口移しできなかったので、せめて水を飲ませてあげようと、グラスを口に持っていく。

加賀さんは大人しく飲もうとしたものの、私の手元が狂ってシャツに水がこぼれてしまった。

サトコ

「す、すみません!」

加賀

‥水も満足に飲ませられねぇのか

サトコ

「すぐに着替えを用意しますから‥!」

急いでクローゼットからシャツを取り出したものの、加賀さんはベッドに座ったまま動こうとしない。

サトコ

「加賀さん‥?着替えないんですか?」

加賀

テメェが着替えさせろ

サトコ

「!?」

加賀

今日は、俺の専属看護師なんだろうが

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サトコ

『今日一日、私は加賀さんの専属看護師です!』

(言った‥確かに自分でそう言った‥!)

(あの時、加賀さんが一瞬悪い笑顔を見せた気がしたのは、こういうことだったんだ‥!)

自分の言ったことに、今さら後悔しても遅い。

でもなかなか着替えさせられない私に、加賀さんの手が伸びてきた。

加賀

まさか、今さら『できねぇ』とは言わねぇよな‥?

ムニュッと頬をつねられて、必死に首を振る。

サトコ

「で、できます!出来るに決まってるじゃないですか‥!」

加賀

ならいい

(断ったら、風邪が治った時にどんなお仕置きが待ってるか‥!)

(口移しできなかった分、着替えくらいはがんばらないと‥)

サトコ

「じゃあ‥あの、ばんざーい‥」

加賀

‥‥‥

冷たい視線をくれながらも、加賀さんが両手を挙げる。

(かわいい‥)

加賀

ぁあ゛?

サトコ

「な、なにも言ってませんよ!?」

シャツを脱がせると、たくましい身体が目の前に現れた。

(恥ずかしくて、直視できない‥!)

(いつもは部屋を暗くしてるから、こんな間近で見ることなんて‥)

加賀

‥おい

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サトコ

「はい‥」

加賀

‥見過ぎだ

サトコ

「えっ?」

直視できない、と思いつつ、その身体に釘付けになっていたことに気付く。

サトコ

「す、すみません!つい‥!」

加賀

つい、か

(口が滑った‥!ダメだ、余計なことしないで、とにかく無心で看護しよう!)

必死に首を振って邪念を取り払い、新しいシャツを加賀さんに着せてあげようとした時‥

加賀さんに腰を引き寄せられて一緒にベッドに倒れ込み、私が加賀さんを押し倒す格好になった。

加賀

このままでいい

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サトコ

「え‥」

加賀

どうせ、脱ぐからな

サトコ

「!?」

優しい指が頬に触れて、そっとなぞっていく。

(風邪、大丈夫なのかな‥薬を飲んだから、熱は少し下がった‥?)

(加賀さんが平気なら、私は風邪がうつっても構わない‥)

見つめ合い、身体が反転して今度は加賀さんに押し倒される。

そのまま、唇が首筋に下りてくる。

加賀

‥テメェは、風邪なんざひかねぇだろ

サトコ

「え‥?」

加賀

クズは風邪ひかねぇって言うしな

サトコ

「それ、『バカは風邪ひかない』の間違いじゃ」

加賀

どっちも一緒だ

サトコ

「ひ、ひどいですよ!」

少し拗ねて顔を逸らしたけど、私の頬に手を添えた加賀さんに、無理やり正面を向かされた。

加賀

なら、証明してみろ

クズでもバカでもねぇってことをな

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サトコ

「それは‥」

加賀さんの唇が、ゆっくりと近づく‥

でも目を閉じたとき、柔らかい唇が触れたのは、私の胸元だった。

サトコ

「んっ‥」

加賀

今日はここまでだ

サトコ

「え‥」

身体を離し、改めて私を抱きしめると加賀さんがベッドに横になる。

その胸の優しさに、加賀さんの気持ちが伝わってくる気がした。

(バカだクズだって言いながら、きっと私に風邪をうつさないようにしてくれてるんだ)

(加賀さんの優しさって、わかりにくいけど‥それも全部まとめて、加賀さんらしさなんだよね)

いつもより少し高い体温に身を任せ、加賀さんと一緒に目を閉じた。

【学校 廊下】

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数日後、加賀さんの体調も良くなり、日常が戻ってきた。

(でもきっと、まだ体調は万全じゃないよね)

(今日はプリンを差し入れして、加賀さんにゆっくりしてもらおう!)

【個別教官室】

放課後、加賀さんの個別教官室にお邪魔する。

ドアを閉めると、意気揚々とコンビニの袋を渡した。

加賀

なんだ

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サトコ

「差し入れです!まだ体調は完全じゃないかと思って」

「これを食べて、早くいつもの加賀さんに‥」

加賀

‥テメェ

袋の中を見た瞬間、加賀さんのオーラが一気に邪悪になった。

加賀

誰への差し入れだ?

サトコ

「へ?」

加賀

懲りずに、何度他の男を餌付けすりゃ気が済む

サトコ

「あ、あの‥違います!それは石神教官じゃなくて、加賀さんへの差し入れ‥」

加賀

寝言は寝てから言え

鋭い言葉と同時に、正面から顔を掴まれた!

(アイアンクロー!)

加賀

「かっ、加賀さん!どうして‥」

加賀

そんなに仕置きされてぇのか

どのツラ下げて、プリンなんざ買ってきた

<選択してください>

A: 好きなんですよね?

サトコ

「だ、だって、お好きなんですよね?」

加賀

寝言も言えねぇようにしてやろうか

サトコ

「寝言じゃないです!バッチリ起きてます!」

(もしかして、加賀さん‥自分がプリンを食べたこと、覚えてない!?)

B: この間食べてましたよ

サトコ

「加賀さん、この間プリン食べてたじゃないですか!」

加賀

ついに幻覚でも見たか

サトコ

「幻覚じゃないです!確かにこの目で‥」

加賀

一生、妄想の中で生きてろ

(完全に、私が間違ったことにされてる‥!)

C: すぐに別なものを買ってきます

サトコ

「す、すみません!すぐに別なものを買ってきますから!」

加賀

もう遅ぇ

サトコ

「そんな!どうか、最後のチャンスを‥!」

加賀

チャンスなんざ、現実にはそうそう巡ってこねぇ

(正論‥!)

加賀

出来の悪ぃクズには、イチから躾が必要だな

サトコ

「ひ、必要ないです!大丈夫ですから‥」

私が逃げ出す前に、加賀さんが背中を壁に押し付ける。

脚の間に膝を入れられて、身動きが取れない。

加賀

風邪はうつらなかったらしいが‥やっぱりテメェはクズでバカだな

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サトコ

「それはっ‥」

反論の声は、深いキスに遮られた。

少し強引に中を掻き回されて、すぐに身体の力が抜ける。

サトコ

「っ‥‥」

加賀

二度とこんなもんを買ってこれねぇように、躾けてやる

プリンなんざ、思い出したくなくなるほどな‥

ドアに鍵をかけられ、耳たぶを食まれた。

加賀さんの意地悪な笑みに、ゾクリと背筋が震えあがる。

サトコ

「二度と、プリンは買ってきませんから‥!」

「だから、今回ばかりはどうか!」

加賀

喚くな

‥風邪でお預け食らって、物足りねぇと思ってたところだ

制服の上から加賀さんの大きな手が私の身体に触れる。

(結局加賀さんは、プリンのこと覚えてないの‥?)

(それとも、熱のせいでプリンだって気づいてなかった?)

真実は謎に包まれたまま‥

病み上がりとは思えないほど、加賀さんから激しいお仕置きを受けたのだった。

Happy  End

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