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公安密着24時 プロローグ

【教官室】

ある日、朝の講義が終わるとなぜか黒澤さんに教官室に呼び出された。

(はあ‥もう嫌な予感しかしない)

(だって黒澤さんから呼び出しって‥絶対面倒なこと押し付けられる気がする‥)

重い足取りで教官室を訪れると、恐ろしいほどの笑顔を浮かべた黒澤さんに出迎えられた。

黒澤

やあやあ、サトコさん!よくぞお越しくださいました!

とにかくまずはここに座ってください!さあ、さあ!

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サトコ

「は、はい‥」

なぜか加賀教官の席を勧められて、言われるまま腰を下ろす。

石神

氷川、茶でも飲むか?

サトコ

「え!?いえ、教官に淹れていただくわけには‥」

颯馬

おや‥?肩が凝っていますね

訓練生と候補生の両立は大変でしょう。いつもお疲れ様です

私の後ろに立った颯馬教官が、肩を揉んでくれる。

サトコ

「颯馬教官‥!そんなことしなくても!」

石神

とっておきのプリンがある。これを食べて今日も励め

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サトコ

「!?」

(この待遇は、一体‥!?)

(颯馬教官が優しいのはいつものことだけど、石神教官まで!?)

東雲

はあ‥分かりやすすぎ

黒澤

歩さん!我慢ですよ。引き受けてもらうためですから!

東雲

怠‥

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私に聞こえないように、ふたりがコソコソ話している。

(ダメだ‥この雰囲気、耐えられない!)

サトコ

「あ、あの‥私に何かご用ですか?」

黒澤

よくぞ聞いてくれました!

キラッキラの笑顔で、黒澤さんが私の肩をつかむ。

サトコ

「せ、セクハラ!?」

東雲

うわー、透、引く

黒澤

なんですか!?セクハラ目的じゃないですよ!

実は、サトコさんに折り入ってお願いがあるんです

サトコ

「お願い‥?」

颯馬

最近、公安内で機関紙を作ろうという話になったんですよ

石神

そこで、ふたりの人間のインタビューを載せることになった

黒澤

ちなみにそのふたりって、難波さんと加賀さんなんですけどね

東雲

なんでか知らないけど、オレたちがそのためにふたりを取材しなきゃいけなくなったんだよね

だから、キミがやってよ

サトコ

「なぜ!?」

東雲

暇でしょ?

(断言された‥!補佐官の仕事もあるし、全然暇じゃないのに!)

サトコ

「情報収集は、東雲教官の方がお得意なんじゃ」

東雲

そうだけど、そんな時間ないよね

石神

上層部も何を考えているのか‥機関紙なんて無駄に目立つことを

よりによってこの忙しい時に‥

颯馬

まあ、暇だという理由なら黒澤の方が暇なんですけどね

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黒澤

周介さん、さりげなくひどい!

でも、もちろんオレもやりますよ。サトコさんが担当しなかった方を密着します☆

さすがに一人じゃ無理なので、サトコさんの協力が必要不可欠なんですよ!

(黒澤さん、やる気満々だ‥)

(きっと、取材に乗じてふたりの弱みを握ろうとかしてるんだろうな‥)

サトコ

「えっと‥わかりました。そういうことでしたら」

黒澤

サトコさんなら、きっとそう言ってくれると思ってました!

颯馬

ちなみに、ふたりには取材のことは内緒ですから

くれぐれも、バレないようにお願いしますね

サトコ

「え‥」

東雲

公安刑事なら、それくらい楽勝だよね

石神

そうだな。これまでの訓練の成果を見せろ

さっきまでのちやほやした雰囲気は消えて、いきなりハードルを上げられた。

(でも、引き受けた以上はやるしかない‥!問題は、どっちの取材をするかだけど)

加賀

テメェ‥

ドスの効いた声が背後から聞こえた直後、後頭部をわしづかみにされた。

サトコ

「ぎゃっ!」

加賀

いつからそんなに偉くなった?

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サトコ

「かっ、加賀教官!」

(そうだ‥ここ、加賀教官の席だった!)

瞬時に、加賀教官は私の後頭部をつかんだまま立ち上がらせた。

サトコ

「教官‥もげます!頭がもげる!」

加賀

喚くな

後藤

加賀さん、その辺で

加賀

チッ

ようやく解放されて、ホッと胸を撫で下ろす。

どうやら、後藤教官は加賀教官を呼びに行っていたらしい。

加賀

で?

サトコ

「え?」

加賀

テメェがここに、何の用だ

サトコ

「あ、いや、その‥もう用事は済みました!失礼しました!」

慌てて教官室を出ようとする私の背中を、東雲教官の声が追いかけてきた。

東雲

それじゃ、よろしく

サトコ

「は、ハイ‥」

(あの天使のような笑顔‥だけど、悪魔にしか見えない)

震えながら、教官室のドアを閉めた。

【廊下】

(うーん、取材かあ‥)

教官室を出ると、ついため息が漏れる。

(加賀教官に、難波室長‥どっちも一筋縄ではいかない気が)

(いや‥この学校に、一筋縄でいく教官なんて一人もいないけど)

難波

お?どうした?難しい顔して

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顔を上げると、室長が向こうから歩いてくるところだった。

サトコ

「室長‥」

難波

またあいつらに、面倒な資料整理でも頼まれたか?

(当たらずとも遠からず‥だけど、室長に相談するわけにいかないし)

サトコ

「なんでもないです‥ありがとうございます」

難波

そうか。まあ、もし悩んでるなら、ひとつアドバイスだ

室長が私の頭の上にDOSSを乗せる。

難波

お前が思うまま、勘で動け

サトコ

「‥え?」

難波

じゃあな

買ったばかりのDOSSを置いて、室長は歩いて行った。

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(DOSS‥缶‥勘‥)

(あ!?もしかして、『勘』と『缶』をかけたの!?室長らしい‥!)

思わず苦笑いしてしまったけど、なぜか心は晴れやかだった。

(そうだよね。自分の思うまま行動すればいいんだ)

(だとしたら、私が取材したいのは‥)

<選択してください>

A:加賀

B:難波

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