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公安密着24時 加賀2話

加賀さんを尾行中、まんまと見つかってしまった。

(うう‥そういえば今まで、加賀さんを尾行して成功した試しがない‥)

加賀

誰の差し金だ?

私の背中を壁に押し付けて、加賀さんが片手であごを持ち上げる。

サトコ

「っ‥‥」

加賀

歩か、黒澤か‥?

昨日は勘弁してやったが、まさかあれで済むと思ってねぇだろうな

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(ご、ご機嫌ナナメ‥ってレベルじゃない!)

(不機嫌MAX‥お怒りモード突入!)

だけど、教官たちに口止めされているので、そう簡単に口を割るわけにはいかない。

(今回も黙秘権を行使する‥!?だけど、それで乗り切れる気がしない)

話そうとしない私に、さらに加賀さんが冷たい表情になった時‥

ヒラリと、私のポケットから紙が落ちた。

(あ、あれは‥“加賀さんメモ”!)

加賀

‥‥‥

メモを拾い上げた加賀さんが、それを見て眉をしかめる。

加賀

テメェは、ストーカーか‥

サトコ

「ち、違うんです!」

(まずい、完全にドン引きされてる!)

(ここ数日の加賀さんの行動が逐一記録されてるし、ストーカーって言われても仕方ない‥!)

加賀

何が違う?

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サトコ

「これは、その‥やむにやまれぬ事情がありまして」

結局、観念してすべてを加賀さんに話すことになった。

事情を聞いた加賀さんが、呆れたように舌打ちする。

加賀

また、くだらねぇことを押し付けられやがって

サトコ

「すみません‥でも、加賀さんのことをもっと知るチャンスかなって」

「つい、邪な気持ちがむくむくと‥」

加賀

‥‥‥

『チィッ!』と盛大な舌打ちの後、加賀さんが顎で大通りの方を指した。

加賀

さっさと行け

サトコ

「え?」

加賀

こんなとこじゃ、取材なんてできねぇだろ

サトコ

「えっ‥」

(つまり、堂々と取材させてくれるってこと!?)

サトコ

「ありがとうございます!」

加賀

ただし、やり方は変えろ

サトコ

「やり方?」

加賀

テメェのそのストーカー記録は無駄だ

取材の仕方もわからねぇなら、こんなもん、さっさと断れ

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(ストーカー記録‥言われてみれば確かに、取材っていうよりはただの行動記録だよね)

(加賀さんに直接聞かないと、本当のことなんて分かるはずないのに‥)

加賀さんの言葉に、やっと自分のやり方が間違っていたことに気付いた。

サトコ

「お願いします‥取材をやり直させてください!」

加賀

当然だ

ストーカー記録なんざ、引き受けるつもりもねぇ

(加賀さん本人に、ちゃんと取材が出来る‥!)

(これできっと、機関紙に載せるインタビューができるよね)

【加賀 マンション】

部屋にお邪魔すると、加賀さんがソファに身を投げ出すように座る。

加賀

それで、何が聞きてぇ

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サトコ

「えっと‥」

加賀

早くしろ

(ほ、本人に直接聞けるなんて思ってなかったから、インタビュー内容考えてなかった‥!)

加賀

質問がねぇなら、取材は終わりだ

サトコ

「待ってください‥えーと、ご趣味は!?」

咄嗟に出た言葉に、加賀さんがため息をつく。

加賀

‥見合いか

サトコ

「いや、だって‥取材なら、きっと趣味も聞くと思いますよ!」

加賀

‥一理あるな

趣味か‥

少し考えて、加賀さんが口の端を持ち上げて笑う。

加賀

使えねぇ駄犬を躾けることだ

サトコ

「だ、駄犬ですか‥」

「ちなみに加賀さん、犬、飼ってましたっけ‥?」

加賀

飼ってねぇ

サトコ

「知ってます‥」

(ってことは、この場合の “駄犬” は、間違いなく‥)

加賀

テメェは、躾けられていることにも気づかねぇほどのクズ犬だからな

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サトコ

「や、やっぱり私のこと‥!?」

「っていうかそれって、趣味なんですか!?」

加賀

立派な趣味だろうが

だが‥最近は飼い犬がますます駄犬になりやがって、いくら躾けても足りねぇ

サトコ

「すみません‥」

(ダメだ‥この話をこれ以上引っ張っても、インタビュー記事として載せられない‥)

サトコ

「そ、それじゃ、次の質問を‥えーと、昔のあだ名とか、ありますか?」

加賀

‥ひょーご、だ

サトコ

「っ‥‥‥!!!」

(リアル花ちゃん‥!もしかして、加賀さんのお姉さんがそう呼んでたとか‥?)

(花ちゃんのあの呼び方は、遺伝かもしれない‥!)

メモを取りながらニヤけてしまう私をひと睨みすると、加賀さんが目を逸らす。

加賀

あとで覚えてやがれ‥

サトコ

「!?」

(い、今‥地獄の底から聞こえてくるような、低い声がした‥)

(でも、加賀さんの顔‥少しだけ赤い?)

照れ隠しなのかもしれない、という淡い期待を持って、次の質問に進む。

サトコ

「得意科目はなんですか?」

加賀

全部だ

サトコ

「即答!さすが加賀さん‥」

加賀

テメェとは出来が違う

まあ、強いて言うなら数学だな

サトコ

「あ、わかります。そんなイメージです」

加賀

テメェの得意科目はなんだ

サトコ

「えーと‥お、お弁当ですかね」

加賀

どうしようもねぇな

吐き捨てるように笑われて、返す言葉もない。

(でも、知らないことを教えてもらうのってすごく楽しいな)

(他に、聞きたいことは‥)

サトコ

「あっ!寝るときの体勢は、どんな感じですか?」

加賀

なんだそのくだらねぇ質問は

俺の寝相なんざ、テメェが一番よく知ってんだろ

サトコ

「加賀さんの寝相‥」

(いつも、目が覚めると加賀さん、だいたい裸だよね)

(‥‥‥)

(‥ハッ!つい、妄想してた!)

加賀

気持ち悪ぃ

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サトコ

「す、すみません‥」

(そういえば‥私の二の腕をつかんで寝てることが多いかも)

(たまに、加賀さんに腕をむにゅむにゅされて起きることもあるし)

サトコ

「‥落ち着くんですか?」

加賀

何がだ

サトコ

「い、いえ‥」

これ以上聞くのは怖いので、話題を変えることにした。

サトコ

「ええと、好きな食べ物は大福系で‥」

加賀

大福は間違いねぇが、柔らかい食い物全般だ

サトコ

「加賀さん、柔らかいものに目がないですもんね」

「嫌いな食べ物は、野菜、っと‥」

加賀

カスタードの塊も入れとけ

(カスタードの塊って、プリンのこと‥?)

(石神教官への当てつけだろうな、絶対‥)

サトコ

「加賀さんって、料理するんですか?」

加賀

気が向いて時間があるときはな

あとは‥たまに、難波さんに作らされるときだ

サトコ

「室長に?」

加賀

あの人が要求してくんのは、たいてい酒のつまみになるものが多い

(お酒のおつまみも自分で作っちゃうんだ‥すごいな)

サトコ

「じゃあ、尊敬する人は」

加賀

難波さんだ

間髪入れず、そして迷いなく加賀さんが答えた。

加賀

尊敬って言われて思いつくのは、あの人くらいだ

サトコ

「そうなんですね」

(すごいな‥加賀さんにここまで言われるなんて)

(室長っていつも気だるげでやる気なさそうに見えるけど、実はすごい人だし)

サトコ

「あ!あの、これが一番聞きたかったんですけど」

「は、初恋はいつですか!?」

加賀

答えるわけねぇだろうが

サトコ

「ですよね‥」

「じゃあ‥今、恋してますか?」

恐る恐る尋ねると、加賀さんが意味ありげに笑う。

加賀

テメェの好きに書いとけ

サトコ

「いいんですか?」

加賀

くだらねぇこと書きやがったら、地獄を見るハメになるだろうがな

サトコ

「これは質問の項目から省いておきます‥」

「じゃあ‥最後に、黒澤さんに絶対聞いて来いって言われた質問なんですけど」

加賀

‥嫌な予感しかねぇな

サトコ

「あの‥『黒澤透のこと、どう思いますか!?』だそうです」

加賀

‥‥‥

思いのほか真剣に考えた後、加賀さんが顔を上げて悪魔の笑いを浮かべた。

加賀

クズの中のクズだな

サトコ

「‥‥‥!」

加賀

あいつに伝えろ。次に会った時には、血祭りに上げてやるってな

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(刑事の発言とは思えない‥!)

加賀

‥まだやんのか?

サトコ

「いえ‥もう大丈夫です!」

少し疲れ気味の加賀さんに、取材を終えることにした。

サトコ

「たくさん答えてくださって、ありがとうございました」

「それじゃ私、帰ってこのインタビュー内容をまとめなきゃいけないので」

帰るために立ち上がろうといると、勢いよく加賀さんに腕を引っ張られた。

サトコ

「きゃっ!?」

加賀

まさか、タダで帰るつもりじゃねぇだろうな

サトコ

「へ?」

加賀

面倒かけた分、テメェの身体で払え

サトコ

「かっ、身体!?」

慌てる私を軽々と担ぎ上げると、加賀さんは寝室へと向かった。

【寝室】

乱暴にベッドへ下されると、すぐに加賀さんが覆いかぶさってくる。

そして、一瞬で私を魅了してしまう意地悪な笑みを浮かべた。

加賀

今度は、こっちの番だ

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サトコ

「え‥」

加賀

主人として、飼い犬のことをよく知る必要があんだろ

耳たぶを食まれ、舌で濡らされる。

ビクリと腰を震えさせる私を、加賀さんが満足げに見下ろす‥

加賀

他の男からの頼みを引き受けるような駄犬には、躾けが必要だ

サトコ

「で、でも今回のは、仕事の一環で‥!」

反論を許さない、と言うように、加賀さんが舌で私の首筋をなぞる。

サトコ

「ひゃっ‥」

加賀

躾だけでなく、クズには仕置きも必要だな

分かるまで教え込んでやる。テメェは誰のもんなのか

熱を帯びた指が、私の身体を追い詰めていく。

その夜はインタビューに答えてくれた見返りに、たっぷりいじめ抜いたのだった。

【リビング】

翌朝、目が覚めるとベッドに加賀さんの姿はなく‥

リビングへ行ってみると、煙草を吸いながら着替え途中だったらしい加賀さんがそこにいた。

サトコ

「す、すみません!」

加賀

いつまで寝てやがる。さっさと着替えろ

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(そうだ‥今日は休みじゃなかったんだ!)

着替えて準備していると、黒澤さんからメールが届いた。

(『伝え忘れてたんですけど、加賀さんからサインもらってくださいね★』‥)

サトコ

「サイン!?」

加賀

黙れ

サトコ

「すみません‥」

(サインって‥加賀さん、絶対嫌がる気がする)

(だけど、もらわないと任務完了にならないんじゃ)

加賀

‥なんだ

サトコ

「あの、実はですね‥」

サインのことを伝えると、加賀さんはあからさまに嫌そうな顔をした。

サトコ

「ですよね‥」

加賀

‥しょうがねぇ

ペン

サトコ

「え?」

加賀

さっさとよこせ

(もしかして、サインくれるの‥!?)

慌ててテーブルにあったペンを渡すと、加賀さんが近くの紙にサッと名前を書いてくれる。

サトコ

「わあ‥」

加賀

あのクズ野郎に渡しとけ

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サトコ

「はい‥でも、私も欲しいです!」

加賀

あ゛あ゛?

サトコ

「だって、加賀さんのサインなんてこの先見られないかもしれないし」

「一生大事にします!お願いします!」

加賀

トチ狂いやがって

(やっぱりダメか‥1枚書いてくれただけでも奇跡だもんね‥)

加賀

‥そんなに欲しいか

サトコ

「えっ?はい!」

加賀

なら、くれてやる

強引に腕を引っ張られて、ソファに押し倒される。

何がなんだかわからないうちに、シャツのボタンを外された。

サトコ

「かっ、加賀さん!ダメです‥!」

加賀

何がだ

サトコ

「時間がないですから‥!あと10分で出ないとっ‥」

加賀

それだけありゃ充分だ

胸元に唇を寄せると、加賀さんがチュッと肌に吸い付く。

そしてすぐに、私の上から降りた。

加賀

ボサッとしてんじゃねぇ。行くぞ

サトコ

「え‥あの‥」

(ま、まさか‥キスマークつけられた!?)

(これが、加賀さんの “サイン” !?)

加賀

消えたら、またつけてやる

サトコ

「!!!」

加賀

一生大事にすんだろ?

その笑みに、身体の力が抜けていきそうだった。

(やっぱり、加賀さんには敵わない‥)

(でも‥加賀さんにつけられるキスマークなら、本当に一生、消えなくてもいいかも)

そんなことを考えて、一人でニヤける私だった。

Happy  End

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