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放課後 後藤2話

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【屋上】

翌日の夜。

誰もいない屋上庭園で、私は芝生の上に座り込んでいた。

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サトコ

「はぁ‥」

(今日は散々だった‥どの訓練でも失敗ばっかりで)

(後藤さんの講義でも、大事な情報を見落としちゃって合格できなかったし)

特に苦手な項目でもなかったのだけど、今日はなぜか上手くいかないことばかりだった。

(失敗の理由は分かってる。同じ間違いをしないようにすればいい)

(明日までにリセットしなくちゃ)

サトコ

「ふぅ‥」

ブサ猫

「ぶみゃー」

サトコ

「あ‥慰めに来てくれたの?」

のそのそと隣に座るブサ猫。

癒しを求めて撫でようとすると‥‥‥

ブサ猫

「ぶみゃ」

伸ばした手をうっとうしそうにシッポではたかれる。

サトコ

「ちょっと撫でるくらいいいじゃない」

ブサ猫

「ぶみゃー」

サトコ

「ダメなの?ケチ‥そういうこと言うと、もうゴハンあげないよ?」

ブサ猫

「ふん」

(うぅ‥ブサ猫にすら構ってもらえないなんて、ツイてないなぁ)

(はぁ‥お腹も空いた‥)

気がつけば朝から何も食べていないけれど、ご飯を食べに行く元気もなかなか出なかった。

後藤

ここにいたのか

突然降ってきた声に顔を上げると、庭園を歩いてくる後藤さんの姿が見える。

サトコ

「後藤さん!」

後藤

そこは俺の席だ

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ブサ猫

「ぶみゃ?」

私の隣にいたブサ猫をひょいっと持ち上げて移動させると、後藤さんが私の隣に腰を下ろした。

後藤

腹、減ってるだろ

サトコ

「え‥」

後藤さんはゴソゴソとコンビニの袋を広げる。

後藤

昼、食ってないよな

サトコ

「‥知ってたんですか?」

後藤

授業の復習をしてたんだろ

サトコ

「今日は散々だったので‥」

「後藤さんも呆れましたか?」

後藤

いや‥

後藤さんはペットボトルのお茶を出して芝生の上に2本置く。

後藤

アンタの実力は、俺が一番よく知ってる

調子が上がらない日も時にはあるだろう

サトコ

「後藤さん‥」

その言葉にほっとし、肩の力がやっと抜けるようだった。

後藤

食え

サトコ

「いただきます!」

差し出されたコンビニの袋を見ると、そこにはいろいろな種類のおにぎりが入っている。

サトコ

「シャケにツナマヨ‥煮卵おにぎりにジャガバタおにぎり?」

後藤

変わり種のおにぎりも、たまにはいいって話しただろ

サトコ

「そういえばそうでしたね」

(補佐官になりたてのころ、後藤さんの教官室でお昼を食べた日だったっけ)

(後藤さんも覚えてくれてたんだ)

そんなことが嬉しく、私はジャガバタおにぎりから食べてみることにした。

後藤

俺も同じのを食ってみるか

サトコ

「ん‥美味しい‥」

後藤

美味いな

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サトコ

「コンビニの変わり種おにぎりは本当にあなどれませんね」

後藤

ああ。これならまた食べてもいい

(コンビニのおにぎりでも、後藤さんと一緒だといつも以上に美味しく感じられる気がする)

全部のおにぎりを食べ終えると元気が出てくる気がした。

サトコ

「ご飯って大事ですね!」

後藤

メシが食えれば、大抵のことは乗り切れる

サトコ

「はい!」

食休みがてら、私たちは芝生の上に寝転ぶ。

サトコ

「よく見ると、東京の夜でも星が見えるんですね」

後藤

ああ

(お腹いっぱいになって夜空を見上げて‥うん、また明日から頑張れる!)

サトコ

「ありがとうございました。後藤さんのおかげで‥」

後藤

‥‥‥

元気になった‥とお礼を言おうとした時、隣の後藤さんが身体を起こした。

そのまま横から覆いかぶさるように距離を詰められる。

(え‥っ)

後藤

‥‥‥

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後藤さんは私の頭の上へと手を伸ばす。

すると‥‥‥

ブサ猫

「ぶみゃっ」

サトコ

「え?」

後藤

サトコの髪はオモチャじゃないだろ

ブサ猫

「ぶみゃー」

後藤さんはブサ猫をひょいと遠ざける。

後藤

アンタの髪、イタズラされてた

サトコ

「あ‥ありがとうございます」

(ブサ猫か‥びっくりした‥)

サトコ

「あ、あの‥」

後藤

‥‥‥

横から覆いかぶさる後藤さんがさらに移動し、まるで押し倒されるような格好になってしまう。

サトコ

「まだブサ猫が?」

後藤

ブサ猫はもういない

サトコ

「それじゃあ‥」

後藤

アンタのここは俺の場所だ

そのまま顔が近づいてきて、私は軽く後藤さんの肩を押す。

サトコ

「じゃ、ジャガバタおにぎり食べたばっかりですし!」

後藤

気にするな。俺も同じものを食べてる

頬に手を添えられ、少し強引にキスをされる。

サトコ

「ん‥」

急なキスに緊張で身を固くしていると、すぐにその唇は離れた。

ふっと間近で微笑んだ後藤さんが私の腕を引いて起こしてくれる。

後藤

次の休み、どこに行きたいか決めておけよ

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サトコ

「はい!」

後藤さんは髪についた芝生を払って、私の頭を撫でてくれた。

サトコ

「今度出かけるときは、お日様の下でおにぎりを食べたいですね」

後藤

アンタのおにぎりがいい

サトコ

「私も次は変わり種おにぎりに挑戦してみますね!」

後藤

楽しみにしてる

(後藤さんがいてくれれば、どんな時も頑張れる気がする)

昼間は教官の厳しい顔で鍛えてくれて、放課後は恋人として優しい顔を見せてくれる。

そんな彼に励まされながら、私の訓練生としての日々は続いていく‥‥‥

Happy  End

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