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誕生日 石神1話

【個別教官室】

サトコ

「石神さん、お誕生日おめでとうございます!」

教官室のドアが開いた瞬間、クラッカーの紐を引く。

すると、石神さんは部屋の様子を見て目を丸くしていた。

石神

これは‥

教官室は『HAPPY BIRTHDAY』と書かれたガーランドや

折り紙で作られた輪っかなどで飾りつけが施されている。

石神さんが任務で出かけている間に、急いで用意したものだ。

石神

サトコが用意してくれたのか‥

サトコ

「はい!あと、石神さんの大好きなプリンケーキも用意してあるんですよ」

冷蔵庫の中で冷やしていたプリンケーキを取出し、デスクの上に置く。

サトコ

「今、取り分けますので‥」

石神

‥サトコ

サトコ

「っ‥石神さん」

突然、私の身体が石神さんの腕に包まれる。

石神さんは腕に力を込めると、私の耳元に唇を寄せた。

石神

‥ありがとう

サトコ

「んっ‥」

私の唇をそっと撫でると、石神さんの唇で優しく塞がれた。

ついばむようなキスを受け、なんだかこそばゆく感じる。

サトコ

「石神さん、ケーキが‥」

石神

後でいい

サトコ

「ん‥」

瞳をじっと覗きこまれ、やがて、もう一度唇が重なり合った。

先ほどのついばむようなキスとは違い、激しくも甘美なキス。

(石神さん‥)

私は石神さんの舌使いに翻弄され、彼の服を強く握った。

サトコ

「あっ‥」

名残惜しそうに唇が離れると、ソファに押し倒される。

石神さんは私の顔の横に手をつくと、ぐっと距離を縮めた。

石神

サトコ‥

甘い声で囁かれ、心臓が高鳴る。

吐息が肌に触れ、ピクリと肩が跳ねた。

石神

どんなプレゼントでも嬉しいが‥俺は、お前が欲しい

サトコ

「っ‥」

身体を抱きすくめられ、今度は強引なキスが贈られる。

息もできないような激しさに、頭がクラクラした。

(ここ、教官室なのに‥いいのかな‥)

翻弄されつつも、頭の片隅で理性が強く主張している。

サトコ

「い、石神、さん‥」

唇が離れた瞬間、私は再び唇が塞がれるまでの短い間に言葉を発する。

サトコ

「ダメです!ここは‥教官室です!」

勢いよく起き上ると、石神さんの姿はなかった。

サトコ

「あ、あれ‥?」

見慣れた自室の風景に、小さくため息を吐く。

サトコ

「夢、か‥」

胸に手を当てると、鼓動は早鐘を打ち続けていた。

サトコ

「あんな夢を見るなんて‥恥ずかしい!」

来週は、石神さんの誕生日。

寝る前にどうやってサプライズをしようとか考えていたせいで、あんな夢を見てしまったのだろう。

(やっぱり、教官室でお祝いは出来ないよね‥)

(誕生日は平日だから‥ディナーがいいkな)

参考のためにと枕元に置いてった、雑誌のページを捲る。

オシャレなレストランを見つけ、付箋を貼った。

(後は‥石神さんに会ったら、当日の予定を聞かなくちゃ!)

そう意気込むと、身支度を整えて部屋を出た。

【個別教官室】

いつもより少しだけ早い時間に学校へ着くと、石神さんを誘うため個別教官室に来た。

サトコ

「おはようございま‥‥あれ?」

しかし、そこには誰の姿もなかった‥

(いつもはこの時間、いるはずなんだけど‥急な用事でもできたのかな?)

石神さんを誘おうと意気込んでいただけに、肩透かしを食らってしまう。

(でも、今日は石神さんの講義があるし‥午後には会えるよね!)

私は気持ちを切り替えると個別教官室を後にし、教場へと向かった。

【教場】

午前中の講義が終わり、昼休憩を挟むとすぐに午後の講義の時間になる。

次はようやく、石神さんの講義の時間だ。

(講義が終わったら、折を見て誕生日の予定を聞きに行こう)

講義に使う資料やノートを用意しながら、石神さんの姿を今か今かと待ちわびる。

しばらくして、教場のドアが開くと‥‥‥

黒澤

皆さん、こんにちは!黒澤透でっす☆

(な、なんで黒澤さんが‥!?)

突然の登場に面食らっていると、黒澤さんはニッコリと満面の笑みを浮かべる。

黒澤

石神さんは急な捜査が入ったので、一週間不在です。そこで、代理で黒澤が来ました~!

気軽に黒澤教官って呼んでくださいね☆

サトコ

「えっ‥!」

(一週間不在って‥)

石神さんの誕生日は、来週に控えている。

(もしかしたら、誕生日当日に会えないなんてことも‥)

そんな想像をしてしまい、私は誰にも気づかれないように小さく肩を落とした。

【寮 自室】

講義が終わり寮に帰ると、携帯を取り出す。

石神さんにメールを送ろうと、アプリを起動した。

サトコ

『お疲れ様です。来週の予定ですが‥』

途中まで文面を打ち、手を止める。

サトコ

「‥‥‥」

(やっぱり、捜査の邪魔になるからやめた方がいいよね)

常に凛とした姿勢で、任務に向かっている石神さん。

私はそんな石神さんのことを、誰よりも尊敬している。

(石神さんが帰ってきたら、改めて誘おう)

メールのアプリを終了させ、代わりにダイヤル画面を開く。

目星をつけていたレストランに予約を入れ、少しずつ準備を進めていくことにした。

【個別教官室】

石神さんの誕生日、前日。

資料の整理をしていると、石神さんが捜査から戻ってきた。

サトコ

「捜査、お疲れ様でした!」

石神

急に留守にして、悪かったな。頼んでおいた資料は?

サトコ

「まとめてデスクの上に置いておきました」

石神

ああ

石神さんは資料に目を通し、私に視線を向ける。

石神

難しい部分もあったと思うが‥よくまとまっている。日頃の成果が表れているな

サトコ

「ありがとうございます!」

(ふふっ、頑張ってよかった)

お褒めの言葉をいただき、頬が緩むのを感じた。

(あっ、そうだ‥)

ふと石神さんの誕生日が頭をよぎり、口を開く。

サトコ

「石神さん、明日の夜ですが‥よかったら、食事に行きませんか?」

石神

明日、か‥すまない、捜査報告書と溜まっている仕事を終わらせる予定だ

サトコ

「そうですか‥」

予想できたこととはいえ、少しだけ落胆してしまう。

(ということは、今日も忙しいよね‥もうディナーでお祝いは無理かな)

いくら誕生日だからとはいえ、無理に誘ってまで石神さんの邪魔をしたくない。

(‥でも、せめてケーキだけでも渡してお祝いしたいな)

サトコ

「あの、石神さん!」

私は石神さんに断りを入れると、足早で寮に戻った。

【寮 自室】

(いざって時のために、材料を用意しておいてよかった)

寮に戻ると、大急ぎでプリンケーキを作る。

そして簡易ながらも、『HAPPY BIRTHDAY』と書かれたガーランドを用意した。

サトコ

「こんな感じでいいかな」

時計を見ると、もう21時を回っていた。

(石神さんは‥きっとまだ、教官室にいるよね)

私は作りたてのプリンケーキとガーランドを鞄に忍ばせ、教官室へ足を向けた。

【個別教官室】

石神

夜遅くまで、悪いな

サトコ

「気にしないでください!」

「こうしてお手伝いするのも、補佐官の仕事ですし‥何より、勉強になりますから」

教官室へ戻った私は、石神さんの手伝いをしていた。

用意していたケーキとガーランドは、それぞれ石神さんの目を盗んで冷蔵庫と本棚に隠してある。

(冷蔵庫の上の方に隠しておけば見つからないよね‥!)

(0時ピッタリにお祝いできるかもしれないし‥チャンスが来るといいな)

だけど、お祝いをするには仕事を終わらせる必要がある。

私はいつも以上に気合を入れ、資料をまとめていった。

石神

‥ん、いいだろう

石神さんに資料を渡し、OKをもらう。

なんとか誕生日が来る前に仕事を終わらせることができて、ほっと一息ついた。

石神

お前のお陰で、予定よりもだいぶ早く片付いた。ありがとな

サトコ

「お役に立てたならよかったです」

さりげなく時計を見ると、今日が終わるまで1分を切っていた。

私はすぐにケーキを取り出せるよう、冷蔵庫の近くに移動する。

(あと、10秒。7、6、5‥)

心の中でカウントダウンをし、0になった瞬間にお祝いの言葉を言うため口を開く。

サトコ

「石神さ‥‥‥」

???

「石神さん、お誕生日おめでとうございまーす!!」

(えっ‥‥‥!?)

突然ドアが開かれたかと思うと、パーンッ!と軽快な音が鳴った。

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