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ほてりが冷めるまで 後藤1話

【コンビニ】

サトコ

「ふぅ、涼しいな‥」

教官たちに買い出しを頼まれた私は、コンビニに立ち寄っていた。

クーラーの冷たい風が、身体の火照りを冷ましてくれる。

(ここで少し涼んでいこうかな)

サトコ

「ん?」

壁に貼られているチラシが目に入り、足を止める。

サトコ

「花火大会、か‥」

(確かこの日は、何も予定入ってなかったよね)

(どうせなら、後藤さんと一緒に行きたいな‥)

【お祭り】(妄想)

サトコ

「わぁ‥!」

大きな音と共に、大輪の花が夜空に咲く。

サトコ

「今の花火、とても綺麗でしたね!」

後藤

いや‥

後藤さんは私の腰を引き寄せると、フッと微笑む。

後藤

アンタの方が綺麗だ

サトコ

「後藤、さん‥?」

後藤

‥その浴衣姿、すごくそそられる

サトコ

「あ‥」

優しい笑みを浮かべたまま、ゆっくり顔が近づく。

そして‥‥

【コンビニ】(現実)

(後藤さんと、花火の下でキスを‥)

「‥お前、やべー顔してるぞ」

サトコ

「‥ハッ!」

「い、一柳教官!?」

いつの間にか、目の前に一柳教官がいた。

「お前、あんな顔してたらいつか捕まるぜ?」

(捕まるって、どんな顔してたの!?)

(っていうか、妄想しているとこ見られた‥)

サトコ

「気を付けます‥」

「で、あんな変顔するくらい何考えてたんだよ?」

サトコ

「へ、変顔って‥ここ、行きたいなって思ってただけです」

チラシを指すと、一柳教官の眉がピクリと跳ねた。

「へぇ‥」

(あれ?なんか微妙そうな顔してるけど‥)

「それでアイツと一緒に行くとこ妄想してたってわけか」

サトコ

「妄想なんかしてません!」

「はいはい」

一柳教官は喉を鳴らすと、踵を返す。

「じゃあな」

(こんなところで一柳教官と会うなんて思わなかった‥)

一柳教官の姿が見えなくなり、もう一度チラシを見る。

(せっかくだし、誘ってみようかな)

【後藤マンション リビング】

翌日。

後藤

なら行くか

サトコ

「本当ですか!?」

休日が重なり、私は後藤さんの家に遊びに来ていた。

思い切って花火大会に誘ってみると、意外にもあっさりOKをもらう。

(やった、後藤さんと花火大会デートだ!)

嬉しさのあまり、自然と頬が緩んでしまう。

後藤

アンタって、本当分かりやすいよな

後藤さんは薄く微笑みながら、手の甲で私の頬をそっと撫でる。

(ふふっ、くすぐったい)

私は目を細めて、後藤さんの手にそっと頬をすり寄せた。

後藤

そうやってると、甘えん坊に見えるな

サトコ

「えっと‥たまにはいいかなと思って」

後藤

‥そうだな

サトコ

「ん‥」

頬を撫でていた手が顎に添えられ、唇にキスが落とされる。

私は幸せな気持ちに満たされながら、後藤さんの肩に頭を寄せた。

サトコ

「後藤さん、花火大会では浴衣を着てきてくれませんか?」

後藤

浴衣?

サトコ

「はい!」

後藤

別に構わないが‥なら、アンタも着て来いよ

サトコ

「へ‥?私もですか?」

後藤

ああ。俺が着るのにアンタが着てないなんておかしいだろ

(まさか交換条件を出されるなんて思わなかったけど‥)

サトコ

「‥着付け、頑張りますね!」

後藤

ああ。楽しみにしてる

後藤さんはフッと微笑むと、もう一度私の唇にキスをした。

【駅】

花火大会当日。

(後藤さん、まだかな‥)

約束の時間より早く着いてしまい、落ち着きなく何度も時計を見る。

後藤

悪い、待たせた

しばらくして、浴衣に身を包んだ後藤さんがやってきた。

(久々に見る浴衣姿、めちゃくちゃカッコいい‥!)

サトコ

「すごく似合ってます‥!」

後藤

そうか?

後藤さんの浴衣姿は様になっていて、近くにいる女の子たちから熱い視線を向けられている。

(私も頑張って着つけてみたけど‥)

後藤

‥それじゃ、行くか

(あ、あれ‥?)

後藤さんは私をチラリと見て、そう言葉にする。

<選択してください>

A: 違う柄がよかったのかな‥

(この浴衣、後藤さんの好みから外れてる‥とか?)

(違う柄がよかったのかな‥)

サトコ

「あの‥後藤さんはどんな柄が好きですか?」

後藤

柄?

サトコ

「そうです!」

食い気味の私に、後藤さんは不思議そうに私を見る。

後藤

突然、どうした?

サトコ

「だって‥」

(後藤さんが、浴衣のこと何も言ってくれないから心配で‥)

そう口をつきそうになるも、ぐっと飲み込む。

サトコ

「いえ‥やっぱり、なんでもないです」

後藤

そうか‥?

ニッコリと笑みを浮かべる私の手に、後藤さんの手が重ねられた。

B: 似合っていませんか?

サトコ

「あの‥似合っていませんか?」

後藤

‥‥‥

後藤さんは私に視線を向けると、すぐに逸らしてしまう。

(やっぱり、似合ってなかったのかな‥)

後藤

‥‥と、思う

サトコ

「え?」

後藤

‥‥‥

後藤さんはほのかに頬を赤くし、私の手をそっと握った。

後藤

なんでもない

C: 照れてるのかも

(浴衣に興味がないのかな?)

(でも、この前『アンタも着て来い』って言ってたし‥)

そこまで考え、ある結論に達する。

(もしかして‥照れてる、とか?)

(‥なんて、都合よく考えすぎかな)

後藤

‥顔がニヤけてるぞ

サトコ

「!」

(ま、また顔に出ちゃった‥)

だけど、もし本当に後藤さんが照れているなら‥これほど嬉しいことはない。

後藤

‥‥‥

後藤さんは小さく笑みを漏らすと、私の手を握る。

後藤

ほら、行くぞ

サトコ

「はい!」

【祭り】

サトコ

「‥‥‥」

射的の銃を構えた私は、お菓子の箱に照準を合わせる。

(この銃はクセが強いから、少し上を狙って‥)

サトコ

「えいっ!」

引き金を引くと、お菓子の箱に命中した。

サトコ

「やった!」

おじさん

「お姉ちゃん、上手いねー!これで3つ目じゃないか」

サトコ

「ふふっ、ありがとうございます」

おじさんからお菓子の箱を受け取ると、後藤さんが感心したように呟く。

後藤

すごいな

サトコ

「射的は昔から好きだったので、かなりやり込んだんですよ」

「地元のお祭りでは、射的屋のおじさんに」

「『もう勘弁してくれ』って言われたこともあるんですから!」

後藤

それなら、今度の射撃のテストが楽しみだ

サトコ

「えっ!?」

後藤

自信があるんだろう?

サトコ

「そ、それとこれとは話が別‥むぐっ」

突然、視界が狭くなる。

サトコ

「わっ!」

(お、お面!?)

???

「ふふっ、似合いますね」

聞き覚えのある声に、お面を取って振り返る。

サトコ

「藤咲、さん‥?」

瑞貴

「はい。お久しぶりですね」

ニッコリと微笑む藤咲さんに、後藤さんは眉を寄せる。

後藤

藤咲‥仕事か?

瑞貴

「はい。とある方の警護中なんですが、庶民の文化に触れたいらしくて」

「それで僕らが駆り出されたってわけです」

(僕らって‥もしかして、一柳教官もいるのかな?)

先日出会った時の、一柳教官の様子を思い返す。

(だから微妙そうな顔してたんだ‥)

後藤

こんなところで油売ってていいのか?

瑞貴

「ローテーションで今は休憩中なんですよ」

???

「瑞貴ー」

少し離れたところから、藤咲さんを呼ぶ声がする。

「もうそろそろ‥‥」

「げっ」

後藤

‥‥‥

一柳教官は後藤さんを見るなり、心底嫌そうな顔をする。

「くそっ、会っちまった」

後藤

それはこっちの台詞だ

「なんだと?」

睨み合う2人の間に、火花が散る。

(ど、どうしよう‥)

止めようかどうしようか迷っていると、一柳教官と目が合う。

「‥ん?」

上から下まで私を見ると、ニヤリと笑みを浮かべる。

「馬子にも衣装だな」

サトコ

「‥褒めてるんですか?」

「まあな。でも、簪(かんざし)がちょっと曲がってる」

一柳教官の手が私の頭に伸び、簪に触れようとした瞬間。

後藤

誰が触っていいって言った

後藤さんが一柳教官の手を振り払った。

一柳教官は振り払われた手を見て、口角を上げる。

「心が狭いな」

後藤

黙れ

「やるか?」

後藤

望むところだ

(や、やるって‥)

<選択してください>

A: 喧嘩はダメです!

サトコ

「喧嘩はダメです!」

後藤

安心しろ。喧嘩じゃない

「ああ。ただの勝負だもんな?」

(ど、どう見たって勝負って雰囲気じゃないよ‥!)

瑞貴

「ほらほら、2人とも落ち着いてください。サトコさんが怯えてるじゃないですか」

「ここは‥あれで決着を決めたらどうですか?」

B: 見守る

(止めたいのは山々だけど、こういう時は下手に口出ししない方がいいよね‥)

瑞貴

「サトコさん、大丈夫ですよ」

サトコ

「藤咲さん‥」

瑞貴

「なんだかんだ言って、おふたりは仲良しですから」

後藤・昴

「仲良くない」

瑞貴

「ほら、ね?」

後藤・昴

「‥‥‥」

2人はバツが悪そうにし、再び睨み合う。

そんな2人を、藤咲さんはニコニコしながら見ていた。

「どうせなら、祭りらしいことで決着つけようぜ」

後藤

いいだろう。勝負の方法は?

「そうだな‥あれなんてどうだ?」

C: 私のせいで2人が争いを‥!?

サトコ

「わ、私のために争うのは止めてください!」

「はあ?」

訝しげに私を見る一柳教官に、ハッとする。

(私ったら、なんて恥ずかしいことを‥!)

サトコ

「い、今のは冗談と言いますか‥」

「コイツのために、ね‥」

「いいじゃねぇか。こいつを掛けて勝負しようぜ」

後藤

は?

「その方が盛り上がるだろ?」

後藤

‥‥‥

一柳教官の軽口に、後藤さんが目を細める。

後藤

いいだろう

「決まりだな。それじゃ‥あれで決着をつけようぜ」

(あれって、金魚すくい?)

後藤

分かった

2人はおじさんにお金を払うと、ポイを受け取る。

「より多く金魚をすくった方が勝ちでいいな」

後藤

ああ

お椀に水を入れて準備が整うと、勝負が幕を開ける。

後藤

‥‥‥

後藤さんはポイを水に浸け、金魚を隅に追いやる。

「甘いな。ポイを水に浸けるタイミングが早すぎるぜ」

後藤

そういうお前こそ、よそ見をしていていいのか?

2人は言い争いをしながらも、次々に金魚をすくっていく。

サトコ

「すごい‥」

(‥けど、これって私がきっかけで始まった勝負なんだよね?)

後藤

くっ、少し破れたか‥

「こっちの金魚は頂いた!」

まるで私の存在を忘れているかのように、2人は勝負に熱中している。

瑞貴

「2人とも、楽しそうですね」

サトコ

「楽しそうなんですかね‥?」

瑞貴

「はい。とてもイキイキしていますから」

(確かに、後藤さんがここまで熱くなるのは珍しいかも‥)

まるで少年のような後藤さんの姿に、笑みがこぼれた。

後藤

結局、同数だったか‥

サトコ

「でも、あんなにすくうなんてすごいですよ!」

(後藤さんは不満そうだけど‥)

2人の熾烈な勝負に人だかりができ、最後の方は歓声が上がっていた。

(一柳教官といる時の後藤さんって、雰囲気変わるよね)

いつも大人な面ばかり見ているせいか、新鮮に感じる。

後藤

‥ん?

サトコ

「どうかしましたか?」

後藤

あっちの方が賑やかだな

後藤さんの視線を追うと、イベントステージに人が集まっていた。

サトコ

「行ってみませんか?」

後藤

ああ

(何のイベントをやってるんだろう?)

期待に胸を膨らませ、私たちはイベントステージに向かった。

to  be  continued

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