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ほてりが冷めるまで 加賀2話

【部屋】

加賀さんに連れられてやってきたのは、プール‥

ではなく、あらかじめとっておいたらしい、上階の部屋だった。

サトコ

「加賀さん、プールは‥」

加賀

喋ってる暇があったら、さっさと下着を外せ

サトコ

「しっ、下着!?」

(なんで‥!?この流れでどうして下着を‥!?)

意図が分からず戸惑っている間に、加賀さんが私のワンピースを無理やり脱がそうとする。

サトコ

「や、やめてください!」

加賀

喚くな

サトコ

「だって、どうしてっ‥」

(せっかく、新しい水着を買って‥今日、楽しみにしてたのに)

(結局、そういう感じで流されちゃうなんて‥嫌だ!)

ワンピースを脱がされないように、必死に押さえる。

加賀さんはめんどくさそうにため息をつくと、私をベッドに押し倒した。

サトコ

「加賀さっ‥」

加賀

死ぬ気か

サトコ

「こ、こういうことは、プールの後にっ‥」

「‥え?死ぬ?」

加賀

あのままプールに入ったら、間違いなく溺れて死ぬだろうな

体調悪いのに、無理してきやがって

(体調悪いのに‥って、どうして加賀さんがそれを)

身を起こすと、加賀さんがベッドから降りる。

加賀

あんだけ何度も立ちくらみ起こしてりゃ、嫌でも気づく

‥ばんざい

サトコ

「へ?」

(ばんざい‥?しろってこと?)

加賀

早くしろ

サトコ

「は、はい」

よくわからないけど、とりあえず言われた通り両手を上げる。

加賀さんは、私のワンピースを簡単に脱がしてしまった。

(あ‥『ばんざい』って、こういう意味だったのか)

(そういえば、私も前に、風邪を引いた加賀さんに『ばんざーい』ってやったっけ)

思わず笑う私を、加賀さんが睨みつけてきた。

加賀

‥なんだ

サトコ

「な、なんでもないです‥」

加賀さんの前で下着姿になってしまい、咄嗟に両手で身体を隠す。

でも加賀さんは、強引にその手を私の身体から引きはがした。

加賀

邪魔だ

サトコ

「で、でも‥」

加賀

だから、さっさとテメェで外せって言ったんだ

‥締めつけてるもんは、全部脱げ

背中に手を回され、下着が外れる。

もう一度両手で胸元を隠したけど、それもあっさり引きはがされた。

サトコ

「あ、あの‥あんまり見ないでください‥」

加賀

テメェも、あのとき見ただろうが

サトコ

「あのとき‥?」

(もしかして、加賀さんが風邪ひいた時のこと?)

(確かにあのときは、看病するために加賀さんの身体を色々見たけど)

サトコ

「‥いや!色々は見てません!」

加賀

うるせぇ

サトコ

「ハイ‥」

加賀

横になってろ

言われるまま、ベッドに横になる。

恥ずかしくて背を向けていると、戻ってきた加賀さんがタオルで背中を拭いてくれた。

加賀

汗かいてんな

サトコ

「あ‥今日、暑くて」

加賀

それだけじゃねぇ

サトコ

「え?」

加賀

自覚もねぇのか‥タチが悪ぃな

夏バテだろうが

サトコ

「夏バテ?私が?」

(言われてみれば、立ちくらみしたり、食欲がなかったり)

(鳴子にも、顔色が悪いって言われたっけ‥)

サトコ

「全然気づきませんでした‥」

加賀

だろうな

テメェはもう少し、体調に気を遣え

サトコ

「健康だけが取り柄なので、大丈夫かなって」

加賀

痩せたことにも気づかねぇで、何言ってやがる

加賀さんがこの前、私の二の腕を確認していたのは、どうやらそういうことらしい。

サトコ

「加賀さんって、私以上に私の身体に敏感ですよね」

加賀

あ゛?

サトコ

「なんでもないです‥」

フロントに連絡して用意してくれたのか、加賀さんが新しい服を持ってきてくれた。

身体を締めつけないデザインで、これならゆったり着られそうだ。

サトコ

「何から何まで、ありがとうございます」

加賀

さっさと着ろ

頭の上から服をかぶせて、加賀さんが着替えさせてくれた。

そのあとは横になるように命じられ、従うと濡れたタオルを首に押し付けられた。

サトコ

「冷たっ!」

加賀

我慢しろ

<選択してください>

A: もう少し優しく‥

サトコ

「せ、せめてもう少し優しくしてください」

加賀

充分だろうが

(加賀さんは、これを優しいと思ってる‥!?)

(確かに、いつもの加賀さんよりは少し‥ほんのちょっとだけ‥優しいかもしれないけど)

B: もう大丈夫です

サトコ

「もう大丈夫ですから、プールに行きましょう」

加賀

どこが大丈夫だ

‥青い顔しやがって

(そんなに、顔色悪いかな‥?)

C: 復讐ですか?

サトコ

「これはまさか‥復讐ですか?」

加賀

なんの話だ

サトコ

「私が、加賀さんを看病した時‥」

(おっと‥いけないいけない、加賀さんは “アレ” を食べた記憶がないんだった)

(命が惜しいし、あのことは一生、黙っていよう‥)

どこからか持ってきたうちわで、加賀さんが私を扇ぎ始めた。

サトコ

「加賀さん、疲れちゃいますよ」

加賀

この程度で疲れるほど、ヤワじゃねぇ

緩やかに、加賀さんが扇ぎ続けてくれる。

心地よい風に、頬が緩んだ。

(優しいな‥私が具合悪いせい?)

(たまには、こういう加賀さんもいいかも‥)

加賀

おい

ペシッと、うちわで顔面を叩かれた。

サトコ

「痛っ」

加賀

何笑ってやがる

サトコ

「な、何も顔叩くことないじゃないですか‥」

「加賀さんが優しいなって思ったら、自然と顔が緩んで」

ペシッ!

サトコ

「また!?」

加賀

‥くだらねぇこと言ってんじゃねぇ

テメェは、黙って寝ろ

(寝るなんて‥加賀さんが隣にいるのに、もったいない‥)

(でも最近寝不足だったせいか、確かに眠い‥)

加賀さんが扇いでくれるのが嬉しくて、心地よい風も手伝い、いつしかうとうとし始めていた。

目が覚めると、窓の外はすっかり暗くなっていた。

(私‥寝てた!?ば、爆睡‥!?)

サトコ

「今、何時‥!?」

加賀

起きたか

その声に振り返ると、加賀さんがベッドの脇に座っている。

サトコ

「すみません‥!完全に寝ちゃって」

「加賀さん、もしかしてずっと私に‥」

ついていてくれたんですか、と尋ねようとして、手の温もりに気付く。

なぜか、加賀さんと手をつないでいた。

サトコ

「あの‥?」

加賀

テメェが、つかんで離さなかったんだろ

サトコ

「え!?す、すみません!」

(うちわで扇いでもらって、眠りこけて‥その上、手をつないでもらってたなんて)

(恥ずかしい‥けど、おかげで熟睡できたかも)

そっと手を離すと、加賀さんが眉をしかめる。

加賀

もう行けんのか

サトコ

「はい!寝たら、すっきりしました」

加賀

寝不足か

サトコ

「うっ‥すみません。最近テストやら訓練に打ち込み過ぎて」

加賀

テメェの場合は、張り切り過ぎだ

(やっぱり、あのときの鳴子との話、聞かれてた‥)

起き上ると、加賀さんの手が伸びてきて、首にひんやりした指が触れた。

サトコ

「ひゃっ‥」

加賀

熱はねぇな

サトコ

「は、はい‥」

首のあとは耳を確認されて、吐息がこぼれそうになる。

なぜかニヤリと笑うと、加賀さんは置いてあったペットボトルの水を手に取った。

加賀

一応、飲んどけ

返事をする前に、加賀さんがそれを口に含む。

そして、そのまま深く口づけられた。

サトコ

「‥‥‥!」

加賀

どうした

サトコ

「っ‥‥こっ‥」

加賀

まだ足りねぇらしいな

サトコ

「い、言ってな‥」

ベッドに押し倒され、さらに水を飲まされる。

口の端から少しだけこぼれた水を、加賀さんが舌で舐めた。

サトコ

「っ‥‥」

「さ、さっきまでは、あんなに優しかったのに‥」

加賀

もう元気になったんだろ

サトコ

「だからって‥」

それ以上は何も言わせてもらえず、加賀さんの手が容赦なく服の中に滑り込んでくる。

咄嗟にその手を止めようとしたけど、逆に両手首をつかまれて頭の上でまとめられた。

サトコ

「あ‥」

加賀

抵抗するとは、偉くなったもんだな

二度と、飼い主に歯向かえねぇようにしてやる

(こっ、この笑い方は‥容赦してもらえない予感‥!)

加賀さんの手が、私の弱いところを確実に攻め立てる。

逆らえるはずもないまま、快感を与えられ続けた。

散々いじめられたあと、ベッドでぐったりしていると、加賀さんがシャツを手に起き上った。

加賀

行くぞ

サトコ

「行くって、どこに‥」

加賀

呆けてんじぇねぇ

ここに来た目的を思い出せ

(目的‥?そういえば私たち、何しに来たんだっけ‥?)

時間を確認しながら着替える加賀さんを眺め、私もとりあえず、それに続いた。

【プール】

水着に着替えるように言われて、加賀さんと共にホテルのナイトプールにやってきた。

サトコ

「わぁ‥すごい!綺麗!そういえば私たち、プールに来たんでしたね!」

「でも、私たち以外、誰もいませんけど‥」

加賀

知らねぇ奴と泳ぐなんざ、ごめんだからな

(まさか‥貸し切ったの!?)

(加賀さんって、たまにものすごいことするな‥)

さっき夏バテで倒れたばかりなので、いきなり泳ぐのは憚れる。

とりあえずプールサイドに座り、加賀さんと一緒に足を水に浸けてのんびり過ごした。

加賀

訓練やテストに力入れすぎてぶっ倒れるなんざ、まだまだだな

サトコ

「すみません‥加賀さんに水着姿を見てもらいたい気持ちで、完全に浮かれてました」

正直に告げる私を、加賀さんが無言で見つめる。

やがて、ゆっくりと口を開いた。

加賀

‥見るだけでいいのか

サトコ

「え‥」

加賀

テメェがそうしてほしけりゃ、それでいい

<選択してください>

A: 感想をください!

サトコ

「じゃ、じゃあ‥感想をください!」

加賀

‥贅沢だな

サトコ

「うう‥でも無理なら、見てもらえるだけでも‥」

加賀

ガキみてぇな水着着てんじゃねぇ

(そ、それが感想!?)

B: 見てもらえるだけで充分

サトコ

「できれば、感想が欲しいですけど‥でも、見てもらえるだけで充分です」

加賀

さりげなく注文つけてんじゃねぇ

サトコ

「すみません‥諦めきれなくて」

加賀

‥色気のねぇ水着だな

(うっ‥これでも、私にしては大胆なのを選んだつもりだったのに‥)

C: 脱がして欲しいなんて、そんな‥

サトコ

「ぬぬぬ、脱がして欲しいなんて、そんなっ‥」

加賀

‥‥‥

(うわあ‥ものすごく冷たい顔‥)

加賀

脱がして欲しいなら、もっと色気のあるもん着て来い

サトコ

「これでも充分、私にとっては大人っぽい水着なんですよ‥」

腰を引き寄せられて、加賀さんがついばむようなキスを何度もくれる。

逞しい腕に包まれ、素肌が触れ合う‥

(誰もいないけど、なんだか緊張する‥)

(でもプールだし、これ以上のことはないよね‥?)

必死に加賀さんのキスに応えていると、背中に回ってきた手が水着の紐に触れた。

サトコ

「‥‥‥!?」

脱がされそうになっていることに気付き、慌てて唇を離す。

サトコ

「な、何してっ‥」

加賀

騒ぐな

サトコ

「だって‥よ、欲情しないんじゃ」

加賀

黙れ

紐を解かれる感覚が恥ずかしくて、思わず身をよじる。

そのせいでバランスを崩し、咄嗟に支えてくれようとした加賀さんと共にプールに落ちた!

サトコ

「っ‥‥か、加賀さん!大丈夫ですか!?」

加賀

テメェ‥

サトコ

「あの‥涼しくなりましたね」

プールの中で、ぐいっと腕を引っ張られて再び腰を抱き寄せられた。

噛みつくようなキスに、思わず目を閉じる。

サトコ

「加賀さ‥」

加賀

うちの駄犬は、いくら仕置きしても賢くならねぇな

サトコ

「そ、それは否定できないんですけど‥」

「でも、誰よりも忠犬ですから!」

加賀

‥確かにな

クッと笑うと、今度こそ加賀さんが水着の紐を引っ張る。

火照った身体は、水の中でも冷えることはなかった‥

Happy  End

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