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アナタの誕生日 後藤

【個別教官室】

私の誕生日当日。

午前中は後藤さんの教官室で資料整理の手伝いをしていた。

サトコ

「この書類はこっちのファイルにまとめてしまっていいですか?」

後藤

ああ、頼む

サトコ

「了解です」

(思ったより早く進んでるし、予定より早く終わりそう)

ファイルに書類を束ねていると、不意に感じる視線。

顔を上げると、じっとこちらを見つめている後藤さんと目が合う。

サトコ

「どうかしましたか?もしかして、書類の分類を間違ってるとか‥」

後藤

いや、そうじゃない。アンタ‥植物を育てるのは好きか?

サトコ

「え?」

唐突な質問に首を傾げながらも、私は頷く。

サトコ

「はい!長野ではいろいろ育ててました。花から野菜まで幅広く‥」

後藤

そうか。なら、よかった

ほっとした顔を見せた後藤さんが、私に紙袋のギフトバッグを差し出してきた。

後藤

誕生日おめでとう

サトコ

「わ‥!ありがとうございます!覚えててくれたんですね」

プレゼントを受け取って微笑むと、後藤さんの手が私の頭をポンッと撫でた。

サトコ

「プレゼント、見てもいいですか?」

後藤

ああ。本当は花を買おうと思ったんだが‥

ギフトバッグの中を見てみると、そこには可愛らしいサボテンが入っていた。

サトコ

「可愛い‥!」

後藤

どの花がいいか迷ってるうちに、そのサボテンを見つけたら目が離せなくなってな‥

誕生日にサボテンというのもどうかと思って、渡そうか迷ってたんだ

照れた顔を見せながらも、本当のことを話してくれる後藤さんの気持ちが嬉しい。

サトコ

「取っても嬉しいです!後藤さんらしいプレゼントで‥」

「私のために後藤さんが花屋さんに行ってくれたのも嬉しいですし」

(花に囲まれて、どれにするか迷う後藤さんが目に浮かぶようで‥)

(きっと注目されちゃったんだろうな)

微笑ましい光景に頬が緩むと、軽く後藤さんにおでこを小突かれた。

後藤

笑うな

サトコ

「ふふ、花が咲くように大事に育てますね」

後藤

サボテンの花を咲かせるのは難しいが‥できるか?

サトコ

「後藤さんからの誕生日プレゼントですから!」

「きっと咲かせてみせます!」

後藤

そうか。俺も楽しみにしてる

サボテンを手に笑うと、後藤さんも笑い返してくれる。

(きっと素敵な花を咲かせてくれるよね)

私たちの関係と同じように。

大切に育てれば、きっと綺麗な花を咲かせてくれると信じていた。

【後藤マンション キッチン】

夜は後藤さんの部屋で一緒に過ごすことになった。

後藤

よかったのか?外に行かなくて

サトコ

「はい。誕生日だからこそ、後藤さんとゆっくり過ごしたいです」

「二人でギョウザパーティーなんて、私には最高の誕生日ですよ」

私の前に並ぶのは手作り餃子の材料。

誕生日の過ごし方の希望を聞かれた私は、一緒に餃子を作りたいとリクエストした。

後藤

餃子なんて自分で作れるんだな

サトコ

「自分で作ると、好きな具を入れられるのでいいですよね」

(普通の餃子に海老餃子‥チーズを入れたりキムチの変わり種も‥)

後藤

‥アンタ、上手いな

サトコ

「そうですか?」

後藤

すぐに具が溢れるか皮が破けるかしてしまうんだが‥

後藤さんは具がはみ出た餃子を手に困った顔を見せる。

サトコ

「私も最初の頃は同じ失敗をよくしてました」

「思ったよりも入らないですよね」

後藤

半分くらいにすればいいのか?

サトコ

「そうですね。このスプーンひと匙くらいが適量だと思いますよ」

「あとはそっと皮を閉じて‥」

後藤さんの手に自分の手を重ねて、餃子を包んでみる。

後藤

さすがだな‥あっという間に形が整った

サトコ

「慣れですよ。私も餃子が好きでたくさん作っていただけなので」

見上げると、距離が近くなっていてドキッとする。

サトコ

「あ、あの‥餃子、蒸し餃子にしますね!その方がヘルシーなので!」

後藤

ああ

赤くなった頬を隠すように、私は餃子を蒸し器にセットした。

【リビング】

餃子を蒸している間ひと休みしていると、部屋に新しいサボテンが増えていることに気が付く。

サトコ

「新しいの買ったんですか?」

後藤

あれは‥

サトコ

「ん?これって‥」

その形に見覚えがあり、今日プレゼントでもらったサボテンにそっくりだとわかる。

サトコ

「もしかして‥ペアサボテン!?」

後藤

2つセットだったんだ

同じものを2つ渡しても‥と思って、俺が1つ育てることにした

サトコ

「お揃いなんですね」

後藤

そういうことになるな

照れているのか、ぼそっと答える後藤さんに私は微笑む。

サトコ

「後藤さんの部屋に、同じサボテンがあると思うと嬉しいです」

後藤

サボテンの花を咲かせるのは難しい‥

甘やかしすぎても、厳しすぎても花は咲かない

後藤さんはサボテンを見つめ、今度は私に視線を移す。

後藤

目が離せないアンタみたいだと思った

サトコ

「後藤さん‥」

後藤さんの大きな手が髪に触れ、頬へと滑って優しく包む。

目を合わせると、後藤さんの想いが伝わってきて私の胸を熱くした。

サトコ

「じゃあ、後藤さんはトゲに気を付けないと」

後藤

少しくらいトゲがあった方が刺激的だ

時間をかけて、ゆっくりと育てよう

‥今の、キザすぎるか?

自分でそう言う後藤さんに、私は首を振る。

サトコ

「私も同じことを思ってました」

「サボテンも私たちみたいに大切に育てれば、綺麗な花を咲かせてくれるって」

後藤

来年の誕生日も一緒に、このサボテンを見よう

サトコ

「はい」

頷くと、後藤さんが私を抱き寄せる。

自然に唇が重なり合って。

情熱的なキスは、まるで私たちの関係を更に育ててくれるかのようだった。

Happy  End

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