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バーベキュー 颯馬

【バーベキュー会場】

サトコ

「野菜の皮むき、お手伝いします!」

颯馬

ありがとうございます。助かります

一番に颯馬さんの元へ行くと、颯馬さんは満足そうに微笑んだ。

2人並んで、シュッシュとリズミカルに野菜の皮を剥いていく。

颯馬

手際がいいですね

サトコ

「颯馬さんも。この調子ならすぐに終わりそうですね」

颯馬

私としては、2人でたっぷり時間をかけてやってもいいんですが

(え‥)

意味深な微笑みにドキッとしていると、カボチャの下処理をしている後藤教官の声がする。

後藤

できればこっちも手伝って欲しいんだが

サトコ

「あ、はい‥皮むきが終わったら行きます!」

「氷川、冷やしキュウリ作るんだけど、割り箸はどこだ?」

サトコ

「え、あ、ちょっと待ってくださいね!」

あちこちから声を掛けられ、皮むきのスピードを上げる。

(女手が私しかいないから、大忙しだな‥!)

(でも、必要とされるって、やっぱり嬉しい!)

張り切っているうちに、野菜の皮むきが終わった。

サトコ

「皮むき完了しました!」

颯馬

ご苦労さまでした

報告を終えた私は、次はどうしようか迷う。

<選択してください>

A: 他の人を手伝う

サトコ

「他の皆さんも大変そうなので、ちょっとお手伝いしてきますね」

颯馬

そうですか。貴女も大変ですね

サトコ

「いえ、私で力になれるならと思って」

颯馬

良い心がけですね

B: 颯馬の指示を待つ

(ひとまず颯馬さんの指示を待とうかな)

颯馬

他の方の手伝いがあればどうぞ

サトコ

「行って来てもいいですか?」

颯馬

いつでも呼び戻し可能でしたら

C: 颯馬の傍にいる

サトコ

「次は何しましょう?」

颯馬

他の方がお待ちですよ?

サトコ

「でも、颯馬さんのお手伝いがあればそちらを優先します」

颯馬

では、また何かあればお呼びします

笑顔で見送られ、まずは後藤教官を手伝いに行くことに。

サトコ

「お待たせしました!えっと、カボチャの下ごしらえですよね」

後藤

ああ。これ全部頼む

(こ、こんなに!?)

ドカッと目の前に出されたカボチャの山に、思わず怯む。

「おい氷川、割り箸は?」

サトコ

「あ、はい、ただいま!」

カボチャの種取を始める前に、慌てて割り箸を取ってくる。

サトコ

「すみません。お待たせしました」

「お前もキュウリを刺すの手伝えよ」

サトコ

「じゃあ、カボチャのあとで‥」

「キュウリとカボチャ、どっちが大事なんだよ?」

(そ、それって比べられないんですけど‥)

後藤

当然カボチャだろう。キュウリなんざカッパの食うものだ

「はあ?カボチャなんてのは、冬至の日に食ってりゃいいんだよ」

サトコ

「ちょ‥やめてください!どっちも美味しいですから!」

颯馬

クスッ

(え‥?)

慌てて仲裁に入ると、少し離れたところで颯馬さんが小さく笑った。

(早くキュウリとカボチャ合戦を終わらせて、颯馬さんの元へ戻ろう)

そう思い、後藤教官と一柳教官の間に立ち、交互に2人の手伝いをする。

後藤

周さんの監視付きか‥

「周さん、ああ見えて怒ると怖いよな」

後藤

お前、よく注意されてたからな

「それはお前だろ、パジャマ」

(また始まっちゃった‥結局仲が良いってことだよね)

2人のやりとりを微笑ましく見ていると、颯馬さんがやってきた。

颯馬

お取込み中のようですが‥

仲良く言い争う2人に笑顔を向ける颯馬さん。

その手には、釣り竿とバケツを持っている。

颯馬

少々サトコさんをお借りしていいですか?夕食の材料を釣ってきます

後藤

もちろんです。どうぞ

颯馬

では行きましょうか。サトコさん

サトコ

「はい‥」

「じゃあ、ちょっと行ってきます」

後藤教官と一柳教官に一言告げ、颯馬さんのあとに続こうとすると‥

「へぇ‥楽しんでこいよ。氷川」

一柳教官が、意味深にフッと笑った。

(もしかして颯馬さんのこと、バレてる!?)

【川辺】

調理場からすぐの川辺で、颯馬さんと魚釣りを始める。

(こんな風に2人きりになれるなんて、思ってもみなかったな)

調理場からの視線を気にしながらも、ついウキウキと心が弾む。

サトコ

「颯馬さんと釣り、楽しいです」

颯馬

フフ、ダメですよ

みんなに聞こえないよう小声で言うと、颯馬さんはそっと目を細めた。

颯馬

そんな可愛い内緒話は禁止です。‥欲が出てしまうので

サトコ

「‥!」

艶っぽい微笑みにドキッとし、同時に嬉しさも込み上げる。

(颯馬さんも、2人になりたいって思ってくれてたのかな?)

忙しい日々が続き、なかなか会う時間がなかった今日この頃。

思いがけず訪れた2人の時間を楽しむ。

颯馬

最近は何か変わったことはありましたか?

サトコ

「いえ、相変わらず勉強と実習に追われる日々です」

颯馬

そういえば、来週は法学概論のテストではなかったですか?

サトコ

「‥そうなんです。バーベキューしてる場合じゃないんですけどね‥」

颯馬

たまには息抜きも必要ですよ

なんなら後日、特別個別講義をしましょうか?

サトコ

「本当ですか!?」

思わず声を上げたその時、冷たいしぶきのようなものが飛んできた。

(雨‥?)

空を見上げるも、よく晴れた真っ青な空だ。

川で魚が跳ねた様子もない。

(気のせいかな?)

そう思った瞬間、またピシャッと水がかかった。

(何?しかもさっきより勢いが増してる?)

そう思って振り返ると、そこには水鉄砲を構えた黒澤さんの姿が。

黒澤

バーベキューとはいえ、隙を見せると危ないですよ?

サトコ

「え?」

黒澤

一番濡れた人は、帰りの運転と後片付け全部です!

サトコ

「何ですかそれ!聞いてないですよ!」

黒澤

今日のメインイベントの水鉄砲大会ですよ

颯馬

そういえば、そのようなゲームをすると言ってましたね‥

サトコ

「でも、そんなルールは初めて聞きました」

黒澤

余興担当のわたくし黒澤が、たった今ルールを決めさせていただきました!

颯馬

担当の選択を間違えましたね‥

黒澤

さあ皆さん!戦闘開始です!!

張り切る黒澤さんが、所構わず水鉄砲を打ち放つ。

サトコ

「キャッ」

颯馬

大丈夫ですか?

サトコ

「ちょっと濡れちゃいました‥」

颯馬

黒澤‥

颯馬さんは私を庇うように立ち上がると、水鉄砲を手にした。

それを見て、他の人たちも次々に立ち上がる。

「周さんが本気出したらヤバいぞ‥」

後藤

俺たちも戦えってことか‥

難波

酒が飲めなくなるのは御免だな‥

サトコ

「禁酒のルールなんてありました?」

加賀

帰りの運転しろってことは、そういうことだろうが

サトコ

「そっか!そうですよね‥」

室長と加賀教官は、お酒飲みたさに参戦するらしい。

石神

いい大人が何を‥

加賀

運転手にしてやるよ。眼鏡野郎

石神

なっ‥

加賀教官が撃ち放った水が、石神教官の眼鏡にかかった。

石神

‥やってくれたな

眼鏡の奥をキラリと光らせ、石神教官も臨戦状態に入る。

あちこちから水が飛び交い、木陰で寝ていた東雲教官にも降りかかる。

東雲

‥ウザ

髪を濡らされ、不機嫌そうに身を起こす東雲教官。

自身も水鉄砲を手にするのかと思いきや、その手は何やら別のものを掴む。

(リモコン‥?)

そう思った瞬間、ブーンと低い機械音と共にドローンが舞い上がった。

サトコ

「まさか、ドローンで参戦!?」

思わず声に出してしまい、東雲教官の視線がキラリと私に注がれる。

東雲

ロックオン‥

サトコ

「え‥」

ニヤリと笑った東雲教官が、リモコンを操作する。

すると、ドローンが私の頭上めがけて飛んできた。

(まずい、狙われた‥!)

水を撒き散らしながら飛んでくるドローンから逃げて走る。

と、その行く手を阻むように加賀教官が立ちはだかる。

加賀

地上にも敵がいることを忘れたか

サトコ

「っ!」

難波

悪いな。順番から行くとまずはお前に消えてもらうしかなさそうだ

サトコ

「そんな‥!」

集中放水の危機に焦りながら、なんとか反撃する。

と、颯馬さんと千葉さんが援護するように教官たちを攻撃してくれる。

千葉

「氷川、こっちだ!」

手首を掴まれ、木の影に引き込まれる。

千葉

「まともに浴びたら風邪ひくだろ?」

(まだ昼間だからそんなに寒くないけど‥ありがとう千葉さん!)

颯馬

そういう君も風邪をひかないように‥

千葉

「うわっ!」

一緒に援護してくれていたはずの颯馬さんが、いきなり千葉さんに向けて水を放った。

加賀

こいつから仕留めた方が早いか

千葉

「!?」

石神

標的は決まったな‥

颯馬さんに誘導されるかのように、他の皆が千葉さんを狙い始める。

千葉

「‥そ、颯馬教官に嵌められた!」

(え?)

と思ったその時、背後からそっと囁く声が。

颯馬

さ、夕食用の魚、釣りに行きますよ

サトコ

「‥!」

にやりと不敵に笑うと、颯馬さんはそのまま私の手を引いて森の奥へと進んでいった。

【川】

颯馬

やっと静かになりましたね

バーベキュー場から離れた、川の上流まで来て一息つく。

(はぁ‥なんかやられっぱなしのまま逃げて来ちゃったみたい‥)

岩場に座り、私は深く息を吐き出す。

颯馬

疲れましたか?

サトコ

「いえ、水鉄砲とはいえ、射撃の弱さが露呈しちゃったなって思って‥」

颯馬

反省も必要ですが、他にも気にすべきことがあるのでは?

サトコ

「え‥?」

颯馬

刑事とはいえ女性なんですから、もう少し気を付けてくださいね

注意の言葉と共に、そっと肩に触れられる。

その手に視線を移した私は、ようやくハッと気が付いた。

(シャ、シャツが空けてる!?)

水を浴びてシャツが濡れ、インナーのキャミソールがバッチリ透けている。

サトコ

「す、すみません。こんなの見せて‥」

颯馬

いいんです、私の前なら。しかし‥

微笑みながら、そっとジャケットを掛けてくれる颯馬さん。

颯馬

あの人たちも、なんだかんだ貴女を狙っているようですし

サトコ

「射撃が弱いので。見事標的にされちゃいました‥」

颯馬

そういう意味ではありません

サトコ

「?」

颯馬

彼らも貴女を一人の女性として気に入っているようですし‥

俺のモノでいてもらえるよう、しっかり捕まえておく努力をしないとな

耳元で囁かれ、そのままチュッと音を立てて耳たぶにキスされる。

サトコ

「努力なんてしなくても‥」

(私は颯馬さんのモノです‥)

恥ずかしくて声に出せずにいると、颯馬さんは真っ直ぐに私の瞳を見つめた。

颯馬

じゃあ、そうであることをわからせてくれる‥?

まるで私の心の声が聞こえたかのように、怪しげに微笑む颯馬さん。

そのどこか余裕のある微笑みに、ドキドキと鼓動が高鳴る。

(キス‥しろってことだよね‥?)

絡み合う視線から無言のメッセージを読み取り、さらに鼓動が跳ね上がる。

(恥ずかしいけど‥)

私は颯馬さんの服の袖をぎゅっと掴む。

そしてそのまま、そっと颯馬さんの頬にキスをした。

颯馬

‥よくできました。続きは俺の部屋で‥ね?

答えられるわけもなく真っ赤になるだけの私の頬に、颯馬さんはそっと優しく触れた。

(私、もう完全に捕まえられちゃってるよね‥)

一枚どころかどこまでも上手な颯馬さんの手中で、転がされっぱなしの私だった‥

Happy  End

【管理人より】

本編では昴のことを『昴さん』と呼んでいたので、『一柳教官』と訂正しました。

『昴さん』なんて呼ばねえから!

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