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ヒミツの恋敵 加賀特典ストーリー

【学校 廊下】

午後の講義が終わり、廊下を歩いていると、くだらねぇ会話が聞こえてきた。

男子訓練生A

「俺は、積極的な女が好みだけど」

男子訓練生B

「まあ、肉食系女子ってのも悪くないよな」

男子訓練生C

「恥ずかしがりながらも必死に攻めてくる姿とか、可愛いよな‥」

訓練生たちの横を通り過ぎた瞬間、話し声がぴたりと止んだ。

加賀

チッ‥‥‥

男子訓練生A

「か、加賀教官だ‥」

男子訓練生B

「今の、聞かれたか‥?」

男子訓練生C

「訓練に関係ない話を聞かれたら、グラウンド200周くらいさせられそうだよな‥」

(200?甘ぇんだよクズ‥500周だ)

(くだらねぇガキの戯言になんざ、興味ねぇ)

(それに‥女は、躾け甲斐がある方がいいに決まってんだろ)

ため息をつき、教官室へと戻った。

【教官室】

教官室のドアを開けると、聞き慣れた声が飛んできた。

サトコ

「違うんです!本当にそういうんじゃなくて」

黒澤

まったまた~☆難波さんから聞きましたよ。ハニートラップを覚えたって

東雲

サトコちゃんのハニートラップとか、おぞましくて想像もしたくないんだけど

何?全裸になって誘惑でもするの?

サトコ

「全裸!?む、むしろ想像しないでください!」

(またあいつら、人のおもちゃで遊びやがって‥)

(誰の許可得てんだ?あ?)

黒澤

それで、サトコさんに告白した奇特な人‥じゃない

 “新聞社の先輩” っていうのは、どんな人なんですか?

東雲

まさかそんなモノ好きが、この世にふたりもいたとはね‥

あ、3人目か

サトコ

「え?」

(‥あのガキ)

歩が、わざとこっちを見る。

俺に気付いたサトコが、毛を逆立てた猫のような反応をした。

サトコ

「かっ‥かかか、加賀教官!」

加賀

‥あ?

サトコ

「あの‥本日はお日柄もよく!」

ビクビクしながら、サトコが俺から後ずさる。

その姿を見るだけでも充分愉しく、頬が緩みそうだった。

( “新聞社の先輩” ‥か)

(コイツが潜入捜査をするって聞いた時には、あんなことになるとは思わなかったが‥)

新聞社で、どういうわけか一人の男に気に入られたサトコだったが‥‥‥

今回の事件が解決した後、本人を呼び出して告白を断っていた。

(他の飼い主にリード掴まれやがって‥)

そう思うものの、迷わず自分を選んだことは、褒めるに値するとは思っている。

(だが、ただ褒めるもの芸がねぇ)

(そもそもコイツは、褒められるよりけなされることに快感を覚えるタイプだ)

だからこそ、奥野の告白を断った日の夜、『仕置きだ』と言っておいた。

あの日以来、サトコはいつ仕置きされるのかと、分かりやすいくらいに怯えている。

サトコ

「あの‥か、加賀教官‥?なんでそんなにじっと見るんですか‥?」

加賀

‥なんでもねぇ

黒澤

蛇に睨まれた蛙、ってこのことですね!

東雲

ライオンに食べられたウサギ、って感じもするけど

サトコ

「食べられた!?」

加賀

‥他の男が持ってる美味そうな草に飛びつくウサギなんざ、食ってやる価値もねぇ

サトコ

「‥‥‥!?」

いちいちビクビクしながら、サトコが俺のデスクの資料のファイリングを始めた。

サトコ

「えーと‥あ!この事件って、前に私が担当したやつですねー」

「な、懐かしいなー!もう1年前なんですね!」

東雲

うっわ、わざとらしい

黒澤

加賀さんのご機嫌を損ねないよう、必死ですね

東雲

そんなの無理に決まってるのに

加賀

‥‥‥

歩たちの言葉になおさら焦るサトコを置いて、個別教官室に向かった。

【個別教官室】

個別教官室のドアを閉めると、持ってきた資料をデスクに投げるように置いて椅子に座る。

すると、恐る恐る、サトコがドアを開けて入ってきた。

サトコ

「か、加賀教官‥資料整理、終わりました‥」

加賀

そこに置いとけ

サトコ

「はい‥失礼します」

ドアを閉めると、サトコが持ってきたファイルを置く。

そして、デスク越しに俺の顔を覗き込んできた。

サトコ

「あの‥加賀さん‥?」

加賀

‥‥‥

サトコ

「その‥この前、山下部長の取り調べの時、奥野さんが来まして‥」

「会社から頼まれて、山下さんの状況を聞きに来たとかで‥」

加賀

それがどうした

サトコ

「い、いえ‥加賀さんによろしく、って言ってました‥」

どうやら、遠回しに俺の反応を知りたいらしい。

(全然遠回しになってねぇがな)

堂々と正面から聞いてこないサトコに、苛立ちが募った。

加賀

なんの『よろしく』だ?

サトコ

「え?」

加賀

テメェの女は他の男に容易く告白される奴だと、わざわざ教えに来てくれたのか?

サトコ

「そ、そそそ、そんなことは‥!」

加賀

安心しろ‥簡単に隙を見せたテメェには、時間を掛けてたっぷり仕置きをくれてやる

サトコ

「‥‥‥!」

「お、覚えてたんですか‥!」

加賀

うまく流せたとでも思ってたか?

わかりやすいくらいに震えながら、サトコが怯えた視線をよこす。

(テメェはいつでも、そういう顔をしてろ)

(俺を悦ばせたきゃ‥な)

翌日、サトコが差し入れを持って個別教官室を訪れた。

サトコ

「じゃーん!今日は餅入りきなこアイスです!」

(『じゃーん』じゃねぇ‥)

呆れながら黙って眺めていると、サトコが上目遣いで何か言いたそうに見つめていた。

加賀

なんだ?‥きめぇ

サトコ

「なっ‥!?」

「あの‥加賀さん、週末はお暇ですか?」

加賀

ああ゛?

サトコ

「じっ、実は日本酒の利き酒ができるイベントがあるらしくて」

「くっ、口直しに和菓子とかも置いてあるそうなんです!よかったら行きませんか!?」

逃げ腰で言われたものの、予想外の誘いに少し感心する。

(コイツにしては、洒落たこと考えるじゃねぇか)

(‥たまには、誘いに乗るのも悪くねぇ)

加賀

‥分かった

サトコ

「え!?行ってくれるんですか!?」

加賀

うるせぇ

サトコ

「す、すみません!ありがとうございます!」

素直に喜ぶサトコに、少し調子が狂う。

(相手の言葉をそのまま受け止める‥俺とは正反対だな)

(‥だから、心地いいのか)

ただ、サトコが俺の機嫌を取るためにデートに誘ってきたことは明らかだった。

よほど、『仕置き』が怖いのだろう。

(だがサトコのことだ、どうせすぐボロが出る)

そう思う俺に、サトコは屈託のない笑顔を浮かべる。

サトコ

「とっておきのデートにしますから!楽しみにしててくださいね」

加賀

‥‥‥

サトコ

「‥加賀さん?」

加賀

‥ああ

(コイツの『とっておき』なんざ、たかが知れてる)

(だが‥どう愉しませてくれるのか、見ものだな)

絶対に言葉に出しては言わないが、当日が少し待ち遠しかった。

【街】

デート当日、いつものように待ち合わせ場所に行くと、サトコが待っていた。

(‥何?)

今まで、待ち合わせでサトコよりもあとに来たことは一度もない。

あまりにも予想外な出来事に、少し離れたところからサトコを眺めた。

(駄犬が、飼い主よりも先に来てるとはな)

(‥忠犬にでもなったつもりか?)

普段は、待ち合わせ時間よりも少し早めに来てサトコを待つのが当たり前になっている。

サトコが焦りながら走ってくるのを見るのが、待ち合わせの楽しみだった。

(俺の姿を探してキョロキョロしてるアイツも、見てる分には悪くねぇ)

(どっかの犬の銅像みたいだな)

(‥人の愉しみを奪いやがって)

サトコ

「あ、加賀さん!こっちです!こっちこっち!」

俺より先に来ていたせいか、調子に乗ってサトコが手を振っている。

加賀

‥‥‥

サトコ

「ふふ、今日は私の方が早かったですね」

加賀

‥チッ

サトコ

「!?」

一瞬ビクッと肩を震わせたサトコが、誤魔化すように反対側を振り返る。

サトコ

「あ、あそこに、クレープを売ってるお店を見つけたんです!」

「加賀さん、お腹空いてませんか?食べましょう!」

(白々しく話を逸らしやがって)

心の中でもう一度舌打ちした時、手に柔らかい温もりが触れた。

サトコが、自分から手を繋いで指を絡めてくる。

加賀

‥‥‥

サトコ

「‥‥‥」

こちらの様子をうかがいつつ、サトコが先に歩き出した。

サトコ

「生クリームたっぷりのクレープも、きっと加賀さん好みの柔らかさですよ!」

「私はどれにしようかな~。やっぱりオーソドックスにカスタードチョコ‥」

(‥なんだ?)

なんとなく違和感を覚えて、サトコを眺める。

(普段よりも積極的なせいか‥なんとなく、雰囲気が違うな)

(生意気に、主人を惑わせるつもりか)

ひとまず様子を見ながら、ベンチに座ってクレープを食べる。

食べ終わった後、サトコが飲み物を買ってきた。

サトコ

「はい、加賀さんはDOSSでいいですか?」

加賀

‥そりゃ、室長の好みだ

(‥やっぱり妙だな)

(コイツが、こんなに気が付くわけがねぇ)

不審に思っていると、サトコが俺の隣に密着して座った。

サトコ

「えーと‥利き酒のイベントなんですけど、まだちょっと時間があるんです」

「それまで、ショッピングモールにでも行きませんか?」

加賀

‥ああ

(‥妙に積極的だな)

(‥積極的と言やぁ‥)

男子訓練生A

『俺は、積極的な女が好みだけど』

男子訓練生B

『まあ、肉食系女子ってのも悪くないよな』

男子訓練生C

『恥ずかしがりながらも必死に攻めてくる姿とか、可愛いよな‥』

チラリと見ると、サトコは真っ赤になりながらも必死に俺に身体を寄せている。

(まさか、このクズ‥)

どうやら、あの訓練生たちの話を真に受けたらしい。

人の話をすぐに信じるのはサトコらしいが、その理由が気に入らなかった。

(大方、俺の機嫌を取って仕置きを免れようとしてんだろ)

(テメェの考えなんざ、お見通しだ)

だが、サトコがその気ならこっちにも考えがある。

とりあえず、サトコと一緒にショッピングモールへ向かった。

【ショッピングモール】

ショッピングモールを少し歩くと、サトコが一軒の店の前で立ち止まる。

サトコ

「加賀さん、和アイスが売ってます!」

加賀

あ?

サトコ

「柔らかいお餅や白玉が入ったアイスだそうですよ!」

「美味しそう‥よかったら食べてみませんか?」

加賀

テメェはさっきから、食いもんばっかりだな

サトコ

「うっ‥じゃあやめておきますね‥」

加賀

さっさと買って来い

サトコ

「!」

途端に笑顔になり、サトコが店に駆け込む。

近くの柱にもたれかかり、サトコが出てくるのを待った。

(テメェが積極的になるってんなら、こっちも応じてやる)

(負けず嫌いなテメェは、どこまでやれるだろうな)

少しすると、カップに入ったアイスを持ってサトコが戻ってきた。

サトコ

「見てください、すごく美味しそうですよ!」

加賀

ああ

カップを差し出されたが、受け取らなかった。

サトコ

「加賀さん?」

加賀

普通に食ってもつまらねぇ

耳元に顔を寄せてそう言うと、一瞬にしてサトコが真っ赤になった。

サトコ

「そっ、それは‥」

加賀

‥‥‥

俺の視線に耐えかねたのか、頬を染めたままサトコがスプーンでアイスをすくう。

それを、俺の前に差し出した。

サトコ

「あ、あーん‥」

(ほう‥こういうことではすぐ怖気づくテメェが、よく耐えたな)

俺にアイスを食べさせると、サトコがホッとしたように肩の力を抜いた。

だが、これで終わらせるつもりはない。

加賀

テメェは食わねぇのか?

サトコ

「あ‥じゃ、じゃあ、いただきます」

加賀

まさか、ただでそれを食うだけなんて言わねぇだろうな

サトコ

「えっ?お金取るんですか!?」

加賀

バカか‥

こういう時、俺はどうやって味わってる?

サトコ

「!」

驚いたように俺を見上げて、サトコがさらに顔を赤くした。

サトコ

「ひっ、人前ですから‥!」

加賀

誰も見てねぇだろ

サトコ

「で、でも‥でも」

加賀

まあ、テメェならその程度だろうな

煽るように言うと、サトコが意を決したように俺の腕に手を添えて背伸びをする。

キスに応じてやると、遠慮がちに自分から舌を絡めてきた。

(ほう‥よく外でここまでやる度胸があったな)

(だが、この程度で終わると思ったら大間違いだ)

その後も、行く先々でサトコから積極的な行動をするよう仕向ける。

そして、散々もてあそんでやり‥

【ホテル】

サトコ

「あの‥この状況はいったい」

俺の仕置きがまだ終わっていないため、ホテルまで連れてきた。

ホテルを見て、サトコが困ったような表情をする。

加賀

まさか‥できねぇなんて、生ぬるいこと言わねぇよな?

サトコ

「っ‥!」

サトコの耳元で煽るようにわざと言ってやると、

断れないと観念したのか、覚悟を決めた様子のサトコ。

俺の手を引き、顔を赤くしながら中へ入って行く。

【部屋】

そこそこ満足した俺は、サトコに手を引かれてホテルの一室に入る。

加賀

‥‥‥

サトコ

「あのっ‥わ、私も、たまにはこのくらい‥その‥」

加賀

このくらい、なんだ?

サトコ

「っ‥‥‥」

勢い余ったように、サトコが俺をベッドに押し倒す。

サトコ

「か、加賀さん‥」

加賀

‥‥‥

サトコ

「加賀、さん‥」

俺の上に乗り、照れながらもサトコが何度もキスを繰り返す。

その姿に、不覚にも微かに心臓が跳ねた。

(クズのわりには、なかなかやるじゃねぇか)

(‥俺を煽るのは、テメェだけだ)

頭を引き寄せて、さらに深いキスを返してやる。

サトコ

「んっ‥」

加賀

‥‥‥

サトコ

「ぁ‥」

(普段は、自分からデートに誘うことすらできねぇ駄犬が)

(俺のために‥ずいぶん頑張ったな)

悔しいが、訓練生たちが言っていた『積極的な女』も、たまには悪くない。

サトコ

「加賀さん‥あ、あのっ‥」

加賀

‥上出来だ

抱き寄せると、またがるようにしてサトコがさらに俺を求める。

お互いを求め合う音が、ホテルの部屋を満たし始め‥

【加賀マンション】

サトコ

「さん‥」

「加賀さん!」

加賀

‥‥‥

サトコ

「こんなところで寝たら、風邪ひいちゃいますよ」

遠くで、サトコの声が聞こえる。

(なに言ってやがる‥)

(テメェがその身体で、俺を温めれば済むことだ)

サトコ

「加賀さん!起きてください!」

加賀

‥‥‥

あ゛‥?

サトコ

「あ、よかった、目が覚めて」

「何度呼んでも起きないから、もしかして倒れてるのかと」

ソファに横になった状態で、天井からサトコに視線を移す。

そこはホテルではなく、見慣れた自分の部屋だった。

(‥夢?)

ゆっくりと身を起こし、ようやく自分が置かれた状況を思い出す。

昨日は夜遅くまで仕事にかかりきりで、

書類の確認を終えるとベッドには行かずそのまま眠ってしまった。

サトコ

「大丈夫ですか?起きてきたら、ソファで加賀さんが寝てたんで‥」

「昨日も遅くまでかかったんですね」

心配そうに顔を覗き込むサトコに、苛立ちを覚えた。

(最悪のタイミングで起こしやがって‥)

(しかも、夢の中では俺の仕置きから逃げようと機嫌取りまでしやがる)

加賀

‥チッ

サトコ

「えっ!?なんで!?」

加賀

テメェはなんでそう、空気が読めねぇ

サトコ

「空気‥!?今、一体どこに読む空気があったのかと」

加賀

黙れ

戸惑うサトコの腕を引っ張り、無理やりソファに押し倒した。

サトコ

「な‥!?」

加賀

余計なことしやがって‥

サトコ

「あ、あの‥なんのことだか」

加賀

‥仕置きの件、忘れたわけじゃねぇよな?

サトコ

「!!!」

俺に押し倒された格好のまま、サトコが暴れる。

サトコ

「あの‥普段から充分、お仕置きされてますから!」

加賀

駄犬の躾は、飼い主の義務だ

‥じっくり、その身体に教え込んでやる

サトコ

「ヒイィ‥」

目に涙を浮かべて、サトコが俺を見上げる。

(‥やっぱりこいつは、この方が似合ってるな)

(俺に迫ろうなんざ、千年早ぇ)

サトコ

「な、なんでそんなに生き生きしてるんですか‥」

加賀

テメェをいたぶるのが愉しいからだ

サトコ

「い、いたぶる‥」

加賀

昨日はできなかったからな、覚悟しろ

そっと涙を指で拭い、キスで口を塞ぐ。

怯えていたわりには、背中に腕を絡みつかせてサトコが俺を求めた。

(これからもっと時間をかけて、ゆっくり調教してやる)

(俺にしか感じられねぇように‥な)

夢の続きを味わうため、ソファでサトコを掻き抱いた。

Happy  End

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