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総選挙2016① プラネット☆LOVERS:難波 カレ目線

【研究所】

その夜、長年の夢が叶う瞬間がついに訪れた。

(やっとだ‥サトコと二人三脚で頑張ってきた研究が、ついに完成した‥!)

サトコ
「室長、おめでとうございます!ついにやったんですね!」

嬉しそうに、サトコが俺に駆け寄る。
抱き合って、タイムマシンの完成を喜んだ。

(思えば、今までサトコには苦労ばっかりかけてきたな)
(研究に明け暮れて、貧乏な生活で‥)

でもこれで、少しは楽にしてやれる。
ふたりだけの時間も、今までより取れるようになるだろう。
何よりも、夢が叶ったこの時間を共有できたことが嬉しかった。

【砂漠】

(それなのに‥)

タイムマシンの誤作動なのか、時代の分からない砂漠に来てしまった。

(砂漠っていや、有名なのはアフリカか‥)
(でもそれは、現代だったら、の話だ)

本当にタイムマシンが作動したのなら、時間を移動している可能性が高い。

(だがそれだけじゃ、過去か未来かは断定できんな)
(サハラ砂漠は、1万年前にはすでにあったとされてるし‥)

ふと視線に気づき振り向くと、サトコが不安そうな表情でこちらを見ている。

(‥俺だって不安なくらいだから、こいつが怖がるのは当然だな)
(それに‥今、ひよっこを守れるのは、俺しかいない)

難波
大丈夫だ。何があっても、俺が守ってやる
だから、必ずふたりで、一緒に帰ろう。な?

サトコ
「‥はい」

手を繋ぐと、サトコは幾分ホッとした様子で歩き出した。
内心気を引き締めて、ふたりで一緒に砂漠を歩き始める‥

随分と歩いた気がするものの、景色は全く変わることなく日が暮れようとしていた。
サトコは歩き疲れて参っているのか、会話すらままならない状態だ。

(それでも、泣き言も言わず気丈に頑張ってるな‥)
(陽があるうちに少し休むか?それとも今はもう少し頑張って、寝床を確保するべきか‥)

疲れのせいか、冷静な判断ができなくなっている。
だが、辛そうなサトコを見てすぐに心が決まった。

(今は、こいつを休ませてやるのが先だ)
(歩けなくなった時に、俺も体力を消耗してたら守ってやれんしな)

ポケットを探ると、思った通りいつものお菓子がいくつか入っていた。
その中から飴の包み紙を取り出して、サトコに見せる。

難波
ほら、食え。腹の足しくらいにはなるだろ?

サトコ
「わぁ‥キャンディ!」

一瞬、目を輝かせたサトコだが、すぐに遠慮したような様子を見せる。
どうやら、貴重な食糧だからと手を付けづらいらしい。

(これからどれだけの旅になるか想像もできないんだから、無理もねぇか‥)

反対側のポケットに入っていた石ころを取り出すと、それを口に含む。
それを見て、サトコも安心したように飴を舐め始めた。

(飴にも、限りがあるからな‥できるだけ、サトコに食わせてやりたい)
(街でも見つかるまでは、慎重にいかねぇとな)

サトコが見つけた人影‥と思わしきものは、厳密には“人”ではなかった。
鳥の頭をした妙な生き物たちに捕まった俺たちは、軽いパニックを起こしていた。

(あれは一体なんだ‥?違う時代に飛んだと思っていたが、そもそもここは地球なのか?)

得体の知れない生き物、帰れないかもしれない可能性‥
それを思うと、今さらながらに恐怖が込み上げてくる。

(あの鳥人間たち、話した限り、あんまり穏便に済みそうにねぇな)
(とにかく今は、あいつらからサトコを守るのが先決だ)

頭をフル回転させている間に、鳥人間たちが乱暴に俺たちを檻から引きずり出す。
強く腕を引っ張られた弾みで転びかけ、ポケットから飴が転がった。

鳥人間1
「なんだ?あの美しいものは‥」

鳥人間2
「見たこともない‥あいつらの国のものか?」

奴らが目の色を変えたのを見て、咄嗟にそのチャンスにしがみついた。

難波
これは、私たちの国の貴重な宝石です
解放してくれるなら、特別に分けてあげますよ

その言葉に、鳥人間たちは一斉に集まり相談を始めた。

(どんな嘘だろうが、卑怯な手だろうが使ってやる)
(なんとかこいつらから逃げ出して、サトコと一緒に無事に元の世界に帰るために)

だがそう思った時、鳥人間たちが銃口をサトコに向けた。

鳥人間
「交渉は決裂だ」

サトコ
「‥‥‥!」

難波
サトコ!

何かを考える余裕などなく、気が付いた時にはサトコの前に飛び出していた‥‥‥

【研究室】

無事に元の世界に戻ってきてから、数日後。
あのことを思い出すたびに、疑問が浮かんでくる。

(そもそも、あれはなんだったんだ?)
(言葉は通じたが、いつの時代だったのか、どこの国か‥‥)
(それとも‥地球ですらなかったのか)

サトコ
「室長、そろそろお昼にしませんか?」

難波
ん?ああ、そうだな

サトコとも、時たまあの話をするものの、今ではもう思い出に近い。

(とにかく、あいつを守りきれたことが一番だな)
(タイムマシンは、イチから作り直しだが‥)

隣にサトコがいれば、いくらでも頑張れる。
食事が終わってしばらくすると、サトコがしょんぼりし始めた。

難波
どうした?

サトコ
「さっきごはん食べたばっかりなのに、小腹が空きました‥」

難波
頭を使う仕事は、糖分が大事だからな

笑いながら、ポケットからお菓子をいくつか取り出した。
それは、砂漠に行ったときに食べずにとっておいた“貴重な食糧”だ。

難波
ほれ

サトコ
「わあ‥ありがとうございます!」

今度は躊躇なく俺の手から飴を持っていくと、サトコが早速包みを開けて飴を口に入れた。

(やっぱりかわいいねぇ、俺のひよっこは)

自然と手が伸びて、サトコの頭を撫でている自分がいる。
サトコが、不思議そうに俺を見上げた。

サトコ
「なんですか?」

難波
いや‥なんとなくな

サトコ
「あ、室長もキャンディ食べますか?」

俺から持っていったお菓子を差し出すサトコの笑顔が、いつも以上に愛おしい。
サトコの頭を引き寄せて、顔を近付けた。

サトコ
「え‥」

難波
そうだな。俺も食うか

唇が触れ合うと、微かに飴の甘い味がする。

難波
うん、美味い

サトコ
「‥もう!」

不意打ちのキスに照れたのか、サトコが慌てた様子で俺から目をそらす。
赤く染まった頬に、思わず唇を押し付けた。

サトコ
「室長‥くすぐったいです」

難波
ちょっとくらい我慢しろ

サトコ
「なんですか、それ‥」

恥ずかしそうに、でもどこか嬉しそうにサトコが笑う。

(こうして、こいつが隣で幸せそうにしてんのを見るのが、俺の幸せか)
(‥なんて柄でもないことは恥ずかしくて、おじさん、絶対言えないけどな)

そう思いながら、もう一度サトコと唇を重ねた。

End

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