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総選挙2016② 難波1話

【映画館】

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室長と一緒に、ずっと気になっていた映画『プラネット☆LOVERS』を観終えた。

(なんだか、思ってたよりも壮大な話だったな)

(でも、今はそれよりも‥)

サトコ

「室長‥似てませんでしたか!?」

上映中にずっと気になって仕方なかったことを、開口一番、室長に伝える。

一瞬驚いた顔をしながらも、室長はすぐに、私が何を言いたいのか理解したらしかった。

難波

ああ‥似てた、同一人物かと思うほどだ

サトコ

「ですよね!ネムちゃんとそっくり‥」

難波

だよなあ。いやあ、たまげたたまげた

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どうやら室長も、同じことを考えながら映画を観ていたらしい。

映画に出てきた鳥人間は、以前室長とふたりで預かった鳥、『ネムちゃん』にそっくりだった。

(あの時は、沖縄で室長とプチ同棲したんだっけ)

(懐かしいな‥ネムちゃん、元気かな)

あれからまだそんなに時間は経ってないのに、もうかなり前のことのように感じる。

(室長とふたりきりで過ごした毎日‥楽しかったな)

(またあんなふうに、室長と同棲‥なんて、それよりも、無事に卒業する方が先だよね)

なんだか照れくさくて、さっき買った映画のパンフレットをパラパラとめくる。

すると後ろの方に、今回の映画の解説が載っていた。

サトコ

「室長、この映画に出てきた鳥人間、本物の鳥の映像を使って作られたそうですよ」

難波

ほう‥ってことは、アイツと同じ種類の鳥がモデルだったのか?

サトコ

「かなり似てたし、そうかもしれませんね」

(ん?そういえば‥前にネムちゃんを預かった時は聞き忘れてたけど)

サトコ

「ネムちゃんって、なんて種類の鳥だったんですか?」

「かなり珍しい鳥だっていうのはわかりましたけど」

難波

種類か‥言われてみれば、そこまでは聞かなかったな

腕組みをして、室長がうーんと唸る。

サトコ

「あ、あの‥室長、そこまで悩まなくても」

難波

いや‥いいことを思いついた

サトコ

「いいこと?」

難波

ああ。探しに行くか

サトコ

「‥え?」

(探しに行くって‥どこに、何を?)

【動物園】

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室長が連れて来てくれたのは、なんと動物園だった。

サトコ

「探すって、ネムちゃんと同じ種類の鳥を、ってことだったんですね」

難波

ああ。動物園にならいる可能性が高いだろ

サトコ

「ふふ‥私、動物園なんて久しぶりです!いつ以来だろう‥」

「確か高校生の頃に友達と来たような‥でももう、10年くらい前ですけど」

難波

10年前は、まだ高校生か‥俺が高校生だったのは、四半世紀近く前だぞ

サトコ

「そ、それは‥」

言葉を濁していると、室長がぐるりと園内を見回す。

難波

俺も、随分前に一度捜査で来たが‥その時は動物なんて見なかったからな

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サトコ

「じゃあプライベートでは室長も久しぶりなんですね」

難波

そうだな。ちょっと楽しみになってきたぞ

それにしても混んでるな‥さすが休日ともなれば、家族連れが目立つか

室長が言うように、園内は親子連れが多いような気がする。

難波

じゃあ行くか。はぐれんなよ

サトコ

「はい、気を付けま‥」

返事をしかけた私の手を掴み、室長が奥へと歩き出した。

鳥類コーナーを目指しているのか、どんどん中へ入って行ってしまう。

サトコ

「し、室長!ちょっと待ってください!」

慌てて室長を止めて、近くにあった園内案内図を手に取った。

サトコ

「これで、鳥類コーナーがどこにあるのか確認してから行きましょう」

「闇雲に歩くよりも、その方が早くたどり着けますよ」

難波

なるほど。さすがひよっこは手馴れてるな

感心する室長の隣で、案内図を開く。

鳥類コーナーを探していると、突然、ひょいっと室長が案内図を覗き込んできた。

難波

ん?現在地はどこだ?

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サトコ

「!!」

(しっ、室長‥近っ‥息が耳にかかるっ‥)

予期せぬタイミングで近づいた室長の顔に、一気に心臓がうるさく鳴り始めた。

慌てて「現在地」と書かれているところを指さすと、室長がうんうんとうなずく。

難波

おー、さすが広いな。まあ、野生の王国だもんなぁ

サトコ

「そ、そうですね‥」

(自分から離れるのはおかしい‥!?いや、むしろ離れたくない‥!)

(でもこんなにくっつかれたら、心臓がもたないっ‥)

難波

で、鳥類コーナーはどこだ?

私の気持ちを知ってか知らずか、室長はのんびりと鳥類コーナーを探す。

案内図の端にその文字を見つけて、勢いよく指さした。

サトコ

「こっ、ココです!一番奥みたいです!」

難波

おっ、よく見つけたなー

サトコ

「とりあえず、行ってみましょう!」

真っ赤になっていることに気付かれないように、案内図を畳むふりをして歩き出す。

室長は私からパンフレットを持っていくと、もう一度手を繋いでくれた。

(ふう、さっきは緊張した‥けど、まさか室長とこんなアクティブなデートができるなんて)

(なんだか、わくわくしてきちゃったな。せっかくだし、楽しもう!)

室長とつながれた手に喜びを感じながら、一番奥の鳥類コーナーを目指すのだった。

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鳥類コーナーへ向かう途中で、長い長い坂にぶち当たった。

サトコ

「こ、これは‥」

難波

おーおー、こりゃーおっさんにはきついぞー

‥まさか、これを登らないといけないのか?

最初は冗談めかして感心していた室長が、真剣な顔で案内図を確認する。

鳥類コーナーへ行く迂回路などなく、ここを歩くしか方法はなさそうだ。

サトコ

「行くしかないみたいですね‥」

難波

おっさんにとっては心臓破りの坂だな‥

今から救急車呼んでおくか‥

サトコ

「大騒ぎになるからやめてください‥」

難波

よし!じゃあ、覚悟決めて行くか

気合いを入れる室長の後から、私もついて行く。

でも坂は思ったよりも長く急で、半分くらいまで来ると息が切れ始めていた。

(ま、まずい‥話すのもつらくなってきた)

(なんか、こういうシーンをどこかで見たような‥)

思い出したのは、さっき観た映画、『プラネット☆LOVERS』の砂漠でのシーン。

(そうだ‥あの主人公たちも、かなりしんどい思いをしてたっけ)

(でも、私は大丈夫‥だって、室長がいるから!)

気持ちを奮い立たせる私を、室長が振り返った。

そして、疲れている私を見て手を伸ばしてくれる。

難波

大丈夫か?へばったら言えよ

サトコ

「は、はい‥大丈夫です!」

室長の手を掴むと、力強い腕で引っ張り上げてくれる。

そのおかげで、急斜面もこれまでよりずいぶんと楽に歩けるようになった。

難波

つらくないか?悪かったな、俺が変なこと言い出したばっかりに

サトコ

「平気です。室長がいてくれるなら、どんなところだってへっちゃらですよ」

元気に返事すると、室長の笑い声が聞こえてきた。

難波

よし、あと少しだぞ。頑張れ

サトコ

「はい!」

その後は苦労しながらも、室長のおかげでなんとか坂を登り切ることができた。

サトコ

「や、やりましたね‥!」

難波

そうだな。よく頑張った

サトコ

「室長は疲れてないですか?途中から、私を引っ張って‥」

室長を振り返ると、すぐ目の前にその顔が迫っていることに気付く。

何か言う前に唇が触れ合い、くすぐったい感触がすぐに離れて消えた。

サトコ

「!?」

難波

さーて、目的地まではもう少しだぞ

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サトコ

「し、室長‥!」

あまりにも突然の出来事に、頭がついていかない。

呆然と立ち尽くす私を見ても、室長は特に気にした様子はなかった。

難波

ん?どうした?

サトコ

「い、今のって‥」

難波

頑張ったひよっこへのご褒美だ

(ご、ご褒美‥!嬉しいけど、でもっ‥)

サトコ

「誰かに見られたら、大変なことに‥!」

難波

別に、見られたって困らないだろ?

いつものように飄々とした様子で、室長が首を傾げる。

(そうだ‥室長は最初から、誰にも私たちのことを隠すつもりないんだった‥)

(それは嬉しいけど‥でも、それ以上に恥ずかしい!)

サトコ

「もう‥!先に行きますよ!」

難波

おーい、年寄りを置いていくなよ

照れ隠しのつもりで足早になる私を、室長は笑いながらのんびり追いかけてくる。

でも鳥類コーナーへ向かう途中、とんでもないものを見つけて思わず立ち止まった。

(こ、これって‥)

難波

おいおい、ちょっと早すぎるぞー

後ろから追い付いてきた室長が、私の少し手前で立ち止まる。

難波

どうした?なんかあったのか?

サトコ

「し、室長‥これ‥」

難波

これは‥

そこで、私たちが見つけたものは‥

to be continued

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